白銅株式会社(以下、同社)は、アルミニウム、伸銅、ステンレスなどの非鉄部材を仕入れ、顧客のニーズに応じ部材に加工を加えて販売する専門商社。2021年3月期までの過去10年間において、売上高は22,151百万円(最低:2013年3月期)から45,228百万円(最高:2019年3月期)、営業利益は1,375百万円(2012年3月期)から2,785百万円(2018年3月期)のレンジで推移した。この期間における営業利益率は4.0%(2020年3月期)~6.9%(2015年3月期)のレンジであった。業績は、主要取扱い素材であるアルミニウム、銅、ステンレスなどの市場価格や、それらの部材を多く利用する半導体製造装置向けなど顧客の需要動向によって変動する。例えば、2020年3月期は米中貿易摩擦で半導体需要が減少し、半導体製造装置業界の設備投資が低調となったうえ、非鉄金属の市況も悪化したため、同社の業績は下落局面にあった。2022年3月期は非鉄金属の市況回復や半導体製造装置関連向けの需要ひっ迫を背景に、市場環境が急速に改善し、同社は前期比32.4%増収、同72.6%営業増益を見込んでいる。
売上高は、市場価格を基準に、加工サービスや配送サービス、顧客の支払い条件などの付加サービスを考慮した取引単価×注文数量で構成される。2021年3月期の売上高39,219百万円(前年比6.2%減)の素材別構成は、アルミニウム65.4%、伸銅13.0%、ステンレス16.6%、特殊鋼1.7%、その他3.3%。利益面では、商社の基本的な収益源である仕入れ販売に係る口銭をベースに、注文品の加工サービスや納入スピードなどの利便性に対する対価や、材料の調達と販売時の価格変動差益などの上乗せが取引価格に反映され、同社の利益の源泉となっている。
同社は、1932年に個人経営の非鉄商社として創業された。1968年には、顧客の需要情報、販売情報、そのための在庫品管理を目的としたコンピューターによる管理を導入し、顧客情報、在庫情報などを一元管理するシステムを独自に構築した。また、この頃までには、顧客が同社に対し在庫調整機能を求めるようになり、同社は、顧客の必要量に応じて必要な分量の素材を顧客毎に切り分けて販売するようになった。1970年代からは、工場機能や在庫保管機能の拡張を図るため、都心郊外に施設を拡充して取扱い品目のラインアップを拡大してきた。2021年3月期末で、取扱い商品は、仕入れ部材を標準のサイズ・形状に切断加工した自社の標準在庫品(約5,300品目)と取り寄せ商品(約16,000品目)で計21,300品目(冊子・電子カタログ掲載)からなる。顧客からの加工要望に対しては、全国5工場に各種金属切断加工機を数百台規模で設置し、即納で供給できる体制を整備している。
商品の見積もり・受注は、電話・ファックス・電子メール、インターネット販売サイト「白銅ネットサービス」(24時間・365日対応)で受ける。顧客アカウントは2021年3月期で約13,000件、うちネットサービスの登録社数では延べ9,000件以上。例えば、同社によれば、半導体製造装置関連の主要な取扱業者は大半が登録済みである、とのことである。問合せ・見積りは一日当り約20,000件受信し、同社によれば、注文件数はその半分程度(特注品は含まず)。国内であれば、受注を受けてから加工、発送まで即日~翌日といったカタログに記載された短納期で提供する。主な顧客は、非鉄部材が製品製造に不可欠である半導体製造装置(東京エレクトロン(東証1部、8035)、アルバック(東証1部、6728)など、関連協力企業も含む)、OA機器(キヤノン(東証1部、7751)、リコー(東証1部、7752)および、関連協力企業も含む)などの精密機器メーカーをはじめ、各種産業用機械メーカーやその関連企業。
販売価格は、素材の品質、取引時の市場価格、商品量、加工内容、顧客の注文実績、代金支払い方法や企業信用度などの蓄積情報を基に、顧客毎に同社「基幹システム」で決定される。販売価格に大きく影響するのは、その時点での素材の市場価格動向で、同社の標準在庫のアルミニウム商品はアルミニウム市場価格、標準在庫の伸銅商品は電気銅価格にほぼ連動する。従って、市場価格の下降局面では、取引上評価損のリスクはある。製造原価は、仕入れた部材価格に加え、顧客の注文内容に応じた加工などに係る諸費用から構成される。販売費および一般管理費を構成する主要費用は、営業管理部門の人件費(従業員数は2021年3月期末347名、うち営業人員数140名)や運送費など。セグメント開示は地域別のみで、売上高構成は日本95.2%、中国3.5%、その他1.3%、セグメント利益構成は日本96.5%、中国2.3%、その他1.4%(2021年3月期実績)。
同社のビジネスは、在庫を抱え、蓄積した顧客情報を活用して短納期を実現しているものの、2021年3月期の棚卸資産回転率は5.9回転(在庫期間は2か月程度)と卸売業の平均(12.9回転、経済産業省)と比較すると低位。このため同社は、顧客の要望する多様な加工を加え商材に付加価値を上乗せすることで収益性を高めている。取扱う商品が標準在庫品と取寄せ品や特注品で21,300品目と多い点、加工機能を有しながら短納期を実現する点で特徴があり、同社によれば、同様なビジネスモデルを有する非鉄専門商社は希少。類似する企業としては、同社の標準在庫品ビジネスで株式会社UEX(JQ、9888)、同社特注品でアルコニックス株式会社(東証1部、3036)などが挙げられる。
同社は、ESG/SDGsへの取組みとして、経営幹部を中心にESG/SDGs経営委員会を設置している。アルミニウム、カドミレス真中など環境に配慮した非鉄素材の利用拡大、代替利用促進を通じ、社会における金属材料のリサイクル推進を促進することで低炭素社会の実現や、産業廃棄物の削減などに貢献する、としている。
2022年3月期実績は、売上高55,441百万円(前年比41.4%増)、営業利益4,256百万円(同114.7%増)、経常利益4,374百万円(同109.9%増)、親会社株式に帰属する当期純利益2,964百万円(同131.2%増)となった。売上高では、「白銅ネットサービス」の利用促進や「リモート営業」ツールの活用により、顧客サービス低下への影響を一定範囲に抑制することができた。「白銅ネットサービス」の取扱商品数を2021年3月末の21,200品目サイズから2022年3月末には、32,700品目サイズへ拡充し、利便性の向上を図った。利益面では、増収に加え、原材料市況の影響などもあり売上高総利益が10,310百万円(前年比54.6%増)、売上総利益率は18.6%(同1.6ポイント上昇)と向上した。販管費は6,054百万円(同29.1%増)と増加したものの、売上高販管費比率は同1.2ポイント減少した。これにより、営業利益は同114.7%増、営業利益率は7.7%(同2.6ポイント上昇)となった。なお、当期間の棚卸資産影響額の差益は610百万円であった。
2022年3月期会社業績見通しは、売上高62,100百万円(前期比12.0%増)、営業利益3,970百万円(同6.7%減)、経常利益4,080百万円(同6.7%減)、当期純利益2,860百万円(同3.5%減)となった。同社では、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せず、ロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻等により、見通しが困難としている。なお、原材料市況の予測は困難であるため、棚卸資産影響額は第1四半期までの予想を織り込んでおり、第2四半期以降はその影響を織り込んでいない。
同社は、2022年5月下旬をめどに、中期経営計画を発表する見通しである。
同社の強みとしては、1)商社としての在庫機能にとどまらず、顧客の製造コスト低減に繋がる加工機能を保有すること、2)市場価格、加工コスト、顧客情報などのデータを駆使した、即時受発注可能で利便性の高い「白銅ネットサービス」、3)同社の在庫管理、加工コスト管理に繋がる顧客データの蓄積、である。一方、同社の弱みとしては、1)特定顧客層への取扱いが多いため原材料市況の影響が拡大しやすいこと、2)小ロット・即納体制であるために物流において規模の経済が出しにくく、物流費のコントロールが難しいこと、3)海外展開を進める国内顧客への対応の限界、である。
同社グループ業績に影響が大きい半導体製造装置業界は、5G関連やデータセンター向けに需要拡大が続いており、設備投資は好調に推移している。その他、工作機械業界は、半導体不足の影響が懸念されるものの、輸出向けを中心に受注環境は改善傾向にある。一方で、航空機業界の設備投資は、依然として低調な状況が継続している。
顧客往訪や対面営業が制約を受ける中で、以前より同社が注力してきた24時間365日見積り・注文可能なWEBサイト「白銅ネットサービス」の利用促進、および「リモート営業」ツールの活用により、顧客サービス低下への影響を一定範囲に抑制することができた。また、「白銅ネットサービス」の取扱商品数を2021年3月末の21,200品目サイズから2022年3月末には、32,700品目サイズへ拡充し、利便性の向上を図った。その他、連結子会社3社(株式会社AQR、上海白銅精密材料有限公司、Hakudo(Thailand)Co., Ltd.)の売上高も前年度実績を上回り、好調に推移した。
顧客満足度の向上および事業規模拡大等の施策を実行した結果、売上高は、前年比41.4%増となった。
2022年3月末時点での主要な原材料の市況は、電気銅建値1,330千円/トン(2021年3月末比29.1%増)、アルミニウム地金(日本経済新聞月別平均値)488千円/トン(同66.0%増)、ステンレス鋼板(鉄鋼新聞月別中心値)500千円/トン(同31.6%増)と、いずれも上昇している。
利益面では、増収に加え、原材料市況の影響などもあり売上高総利益が10,310百万円(前年比54.6%増)、売上総利益率は18.6%(同1.6ポイント上昇)と向上した。販管費は6,054百万円(同29.1%増)と増加したものの、売上高販管費比率は同1.2ポイント減少した。これにより、営業利益は同114.7%増、営業利益率は7.7%(同2.6ポイント上昇)となった。なお、当期間の棚卸資産影響額の差益は610百万円であった。
実績は、各セグメントで収益が発生した地域ベースで区分されており、日本セグメントは主に個別と株式会社AQRの実績、中国セグメントは上海白銅精密材料有限公司の業績、その他はHakudo(Thailand)Co., Ltd.の業績で構成されている。ベトナムのオリスター社との協業は継続する見通し。
同社では、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せず、ロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻等により、見通しが困難としている。
2022年3月期通期決算発表時点での業績見通しは、売上高62,100百万円(前期比12.0%増)、営業利益3,970百万円(同6.7%減)、経常利益4,080百万円(同6.7%減)、当期純利益2,860百万円(同3.5%減)とした。
なお、原材料市況の予測は困難であるため、棚卸資産影響額は第1四半期までの予想を織り込んでおり、第2四半期以降はその影響を織り込んでいない。
予想と実績との差異が目立つのは、2012年3月期~2013年3月期、2018年3月期~2021年3月期である。
2012年3月期は、東日本大震災からの需要回復を見込んだものの、円高の進行や欧州財政に起因する世界経済の景気減速から、国内製造業関連の新規設備投資が低迷し、想定したほどの回復とはならなかった。また、新しい販売方針の浸透や経費削減が不充分であったことも利益計画未達の原因となった。世界経済の減速の影響は2013年3月期も続いた。
2018年3月期は、同社グループ業績に最も影響度の高い業界の一つである半導体製造装置業界が活況となり、その業界に関係する顧客への販売が高水準で推移したことが予想を上回る要因となった。利益面でも、売上高の増加や、原材料市況の好転で計画を上回った。2019年3月期は、前年度の半導体好調の反動の影響を受けた。半導体メモリ価格の低下や需給の急速な緩みを受け、半導体産業の設備投資が調整局面に入りしたうえ、液晶製造装置業界も急速に減速したことが影響した。2020年3月期も、米中貿易摩擦の影響で半導体需要が伸び悩んだことから、半導体製造装置業界が低調に推移したうえ、原材料市況の悪化が利益の押し下げ要因となった。
2021年3月期は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響等を考慮していたものの、下半期以降、IoT、AI、5G等の情報通信技術の用途拡大に伴って半導体の需要が増加した。こうした背景から半導体製造装置市場が拡大し、原材料市況も上昇したことから、期初計画を上回った。
同社は中期経営計画は、2021年8月末時点で公表していない。しかしながら、同社は、非鉄部材がワンストップで調達可能な在庫機能を拡大する方針を有している。SR社では、非鉄金属の市況も堅調に推移していることから、早期に中期見通しを明示する可能性がある、と考えている。
まず、海外事業に関して同社は、ベトナムの大手非鉄金属商社Oristar Corporation(非上場、以下、オリスタ―社)との協業構築や、海外での非鉄・ステンレスのオーダーメード板形状の商品の販売網確立、米国や韓国など新規進出国の検討なども始めることを言及しており、具体的は施策などの検討段階に入っているとSR社ではみている。
新規事業については、現在、3Dプリンターによる金属製品の受託製造や、航空宇宙規格材料の分野でのコンビニエンスディーラーを目指す取り組みを始めており、同社の神奈川工場と滋賀工場で、航空宇宙産業特有の要求事項を織り込んだJIS Q 9100認証を取得している。2020年1月には、あらゆる材質を任意の形状に切断加工できるウォータージェット加工機を航空宇宙分野向けの加工機械として導入するなど、中長期の事業戦略の柱のひとつとして取り込まれるものとSR社ではみている。
現在、売上高の構成では、半導体製造装置向けが大きな比率を占めており(需要先別売上高構成比は非公表)、事業の分散という観点から新たな仕向け先の開拓の必要性を感じている。同社が得意とするアルミニウムの軽量化、リサイクル性などの特徴から、航空機や自動車関連分野への強化も考えている。同社は、アルミニウムがその特性から環境への貢献度も高いと考えており、SDGsの観点からも重視される、と考えている。
さらに、同社は、モノづくり支援という立場から、非鉄金属材料に限らず、工具など製造業に必要な資材全般へと領域を拡大することも視野に入れている、と述べている。
同社のビジネスは、基本的にはVMI(ベンダーによる在庫管理)である。アルミニウムや伸銅などの非鉄素材を仕入れ、顧客の注文内容に応じて、それらの素材を標準的なサイズ・形状に切断して、顧客の必要なタイミング、分量に応じて提供する。標準在庫品の在庫期間はおよそ2か月程度。ただし、通常のVMIと異なるのは、同社に多用な加工機能があり、顧客の指定する仕様に加工して提供できる点である。また、通常のVMIは、供給側と購入側とで在庫情報について共有する必要があるが、同社の場合、購入側である顧客の在庫に関する情報は過去の受注実績の蓄積である。
同社は、こうした加工機能を有している点、VMIの供給側に求められる製品の品質や納期で他社より優れている点を差別化要因として捉えている。同社のスローガンには、「ダントツの品質、ダントツのスピード、ダントツのサービス、納得の価格」とあるが、提供する商品の材質、加工双方での品質や製品カタログに記載された納期期日の厳守を重要視している。在庫機能と加工機能の部分が同社の付加価値となっている。
2021年3月期までの過去10年間において、売上高は22,151百万円(最低:2013年3月期)から45,228百万円(最高:2019年3月期)、営業利益は1,375百万円(2012年3月期)から2,785百万円(2018年3月期)のレンジで推移した。この期間における営業利益率は4.0%(2020年3月期)~6.9%(2015年3月期)のレンジであった。
業績は、主要取扱い素材であるアルミニウム、銅などの市場価格動向や、それらの部材を多く利用する半導体製造装置向けなど顧客の需要動向によって変動する。例えば、2020年3月期は新型コロナウイルスの影響で経済活動が停滞し、同社の業績は下落局面にあった。2022年3月期は、非鉄部材の市況回復や半導体製造装置関連向けの需要ひっ迫を背景に、市場環境が急速に改善し、同社は前年比32.4%増収、同72.6%営業増益と、大幅な増収増益を見込んでいる。
主な顧客は、半導体製造装置関連分野、OA機器メーカー、各種産業機械メーカーとなっている。顧客別の販売実績は公表していない。半導体製造装置及びその関連業界が大きな顧客となっているが、それは半導体製造装置の製造において、耐腐食性、加工精度、低ガス発生度などの特性のあるアルミニウム部材が適しているため。半導体製造装置の需要は、世界的な半導体不足を背景に増加しており、同社の素材別売上高実績(2021年3月期)では、アルミニウムの取扱いが売上高の65%を占めている。
顧客企業では、アルミニウム部材を真空チャンバーなどで多用する半導体製造装置メーカー、OA機器などの精密機器メーカーをはじめ、各種産業用機械メーカーやその関連企業が挙げられる。
同社によれば、顧客はアカウント数で13,000件である。実際にアクティブアカウントはこれよりも少ないとSR社ではみている。同社のインターネットサイト「白銅ネットサービス」の登録顧客が9,000件を超えていることから、電話・ファックスの顧客(同社によれば、比較的、特注品の顧客が多い)も含め、毎日10,000件程度顧客との取引が行われている、とSR社では推計している。同社の2021年3月期の売上高が39,219百万円であったことから、年間の稼働日数を250日とした場合、1回の注文の平均金額は16,000円程度と算定される。バルクで取扱う鋼材の専門商社と異なり、小口の注文を数多く受けていることになる。同社によれば、取引量の多い顧客では、年間2,000百万円となることもある。
同社は仕入れた素材をそのまま販売するのではなく、仕入品を標準在庫品と呼ばれる一定のサイズ形状に切断加工して販売する。在庫になる時点で、その際の市場価格で評価替えが行われる。販売時にはその時点での市場価格が取引価格の基準となるため、在庫期間中に市場価格が変動すれば、同社の利益面では、評価差損益が発生することになる。主要素材であるアルミニウムの価格は3か月毎、銅価格は毎日変動するため、同社では、市場価格動向、在庫の状況、顧客の需要動向などを判断し仕入れの調節を行う。
同社の取引価格は、対象となる素材の時価をベースに、商社としての手数料となる口銭、素材の加工サービス、配送に関する顧客負担分、顧客の支払い条件などが加味され、顧客毎に取引単価が算出される。例えば、アルミニウム素材の部材が複数個注文された場合、以下のような計算になる。1個当たりの単価は、まず、注文時のアルミニウムの単位重量あたり相場価格(2021年3月末時点で、1トンあたり238千円)が基準となる。
これに加え、各種取扱い手数料(在庫コストも含む、いわゆる口銭)や、部材に対して施す加工賃、顧客の取引・支払い実績、与信情報などが加味され、その顧客に適用される取引単価が算出される。これに注文数量を乗じたものが1注文の金額となる。同社のような加工サービスができない同業他社の場合、取引価格は、原材料の市場価格に、商社としての手数料である口銭分が上乗せされたものになる。
同社の業務の流れとしては、非鉄素材を外部から仕入れ、在庫として保有する(「標準在庫品」と呼ばれる)。標準在庫品は約5,300品目に上る。自社で在庫を持たない商品も同社経由で購入は可能であり、これは取り寄せ品と呼ばれる。自社の在庫とするには販売量が小さい、同社が手掛けない製品などはこれにあたる。
顧客からの問合せ、見積もり依頼、受注は、電話、ファックス、電子メールのほか、同社独自のインターネットによるECサイトである「白銅ネットサービス」を経由する。見積り内容は、問い合わせの段階からほぼ即時に顧客に応じた見積り内容が提示される。顧客はその見積りを判断し、納得できたら発注になる。
同社は、非鉄材料の調達は、国内の特定企業から購入する。取扱量の最も多いアルミニウムに関しては、国内最大手の株式会社UACJ(東証1部、5741)や、日本軽金属ホールディングス株式会社(東証1部、5703)などの素材メーカーから仕入れる。伸銅に関しては、国内外の素材メーカー各社から幅広く購入しているが、国内企業では三菱マテリアル株式会社(東証1部、5711)といった企業から仕入れる。同社としては、仕入れに関しては、特殊な部材向けを除き、調達先を限定することなく、仕入れリスクを分散するかたちで調達を行っている。
一般社団法人日本アルミニウム協会によれば、国内のアルミニウムの生産は、二度のオイルショック以降、電力コストの上昇により国内での精錬によるアルミニウムは価格競争力を失い、現在ではアルミニウム新地金は100%輸入に依存している。アルミニウムの二次地金(再生品)は国内を中心に、海外からの輸入で賄われており、これらが板加工、押出加工、箔加工される。用途に応じて加工されるアルミニウム材は輸送、建設などの最終製品の製造業に供給される。
伸銅品とは、銅や、銅に亜鉛、すず、ニッケル、を加えた銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造などにより、板や、管、棒、線などの形状に加工した製品を指す。一般社団法人日本伸銅協会によれば、2021年度の銅および銅合金製品の需要は738千トン(前年比13.4%増)と見込まれている。
同社は標準在庫品と呼ばれる自社在庫を一定量保有するため、供給メーカーからは一定量の販売が見込めるが、仕入れとの関係性で有利な関係があることはない。仕入時の交渉力が高いとは考えにくい。複数からの購買により、安定的に供給される体制は構築できている、とのこと。
調達された金属材料は、販売用の「標準在庫品」とする。アルミニウム素材の場合、標準品は形状により板状、棒状、管状に分かれ、それぞれ寸法、板厚の標準寸法があり、それに従って同社が取り扱う標準品は約5,300品目である。
例えば、アルミニウム素材であれば、素材メーカーから調達したアルミニウム合金の板、条(コイル状に巻かれたもの)、棒、管などの素材を在庫している。板状のアルミニウム合金であれば、畳2畳程度の大きさのものが、在庫母材サイズとなる。加工と在庫管理は、国内の5工場(福島、埼玉、神奈川、滋賀、九州の5工場、後述)が担っている。
注文から出荷までの流れは、以下の各ステップを踏んで行われるのが一般的である。
電話、ファックス、電子メール、インターネットサービスなどで見積り依頼や発注を受ける。東日本・西日本お客様センター、あるいは各営業拠点で入力された注文データは、「総合情報システム」に入力され、各工場に出荷指図書として出力される。出荷指図書にはバーコードが印刷されており、トレーサビリティ(追跡可能性)に対応している。
注文に応じて、出荷が指示された工場では切断加工がおこなわれる。切断加工は、国内5工場で行われる。ここには約200台の切断機(丸鋸、バンドソー、シャーリング、コンターマシン)が設置されている。フライス加工(複雑な形状の加工や穴開けなどを行う加工)も、フライス加工機(汎用機・専用機)が設置されている国内5工場で行われる。設置台数は200台以上。顧客の要望に応じて、複雑な形状への加工や穴開けなど、回転する刃物(フライス)による加工を行う。加工の種類は、切断、フライス加工のほかに、異形・マシニング加工、研磨、面取りなどがある。
加工が終わった後、顧客の要望に応じて、3次元測定器や手作業などで、寸法など加工結果の検査を実施する。検査工程の後、梱包されて配送となる。梱包の仕様は品種・形状・加工サービスにより異なる。高品質の商品を維持するため、商品に最適な梱包を実施する。バーコードシステムを利用して、積み残しや届け先の最終確認を実施した後、同社専用トラックや路線便、場合によっては宅配便などを利用して、迅速に配送する。
同社の注文の約80%を占める受注形式である。同社ホームページ内にある「白銅ネットサービス」ポータルからログイン(あるいは、新規ユーザー登録)して注文する。注文形式は、「標準」、「かんたん」、「複数詳細」の3種類の入力モードから選択できる。同社標準品のみに限定されるが、新規やネット注文に慣れていない顧客向けの「かんたん入力」、注文品に対する詳細な加工寸法データをエクセルやCSVデータを添付して1回に付き15品目指示できる「複数詳細入力」モードもある。
同社は、全国を8ブロックに分け、それぞれに営業所を設置し、地域密着型の営業体制を構築している。各拠点は、仙台営業所(宮城県仙台市、北海道・東北地域管轄)、高崎営業所(群馬県高崎市、上越・北関東地域管轄)、東京営業課(本社内、首都圏管轄)、厚木営業所(神奈川県厚木市)、名古屋営業所(愛知県名古屋市、東海・北陸地域管轄)、大阪営業課(大阪府大阪市、和歌山県、京阪神地域管轄)、広島営業所(広島県広島市、山口県を除く中国・四国地域管轄)、九州営業所(佐賀県鳥栖市、山口県を含む九州地域管轄)、また、本社内には、大手メーカーを主な顧客とし、全国エリアに営業展開する特注品営業本部がある。これに加えて、東西2か所のコールセンター(東日本お客様センター(川崎)と西日本お客様センター(大阪)、静岡出張所)を持つ。
同社は、国内5か所に加工工場を有している。各工場の所在地や特色は以下のとおり。
福島工場(福島県郡山市):同社の保有する加工方法のうち、研磨加工やマシニング加工の設備を保有しているのが特徴
埼玉工場(埼玉県加須市):定尺板・アルミ型材・銅管・伸銅とステンレスの角棒や細径丸棒などの取扱いが中心
神奈川工場(神奈川県厚木市):品揃え、在庫量、出荷量が同社グループで最多。グループで取扱う製品の品質・技術の向上を図る、マザー工場としての機能を有する。
滋賀工場(滋賀県蒲生郡):多彩な商品を取扱う工場で、アルミニウム板は板厚1ミリ~350ミリまで在庫し、顧客の多様な切断加工ニーズに対応する。ウォータージェットやマシニング加工の設備を保有しているのが特徴。
九州工場(佐賀県鳥栖市):地元に根付いた工場を目指し、営業と一緒になって顧客の声を品質・技術・サービスにすぐ反映できる。
中国には広州、天津に営業所を構えるほか、上海には連結子会社の上海白銅精密材料有限公司があり、自前の在庫・加工センターを整備している。タイには、子会社のHakudo (Thailand) Co.,LTdがあるほか、現地提携企業Fujimaki Steel (Thailand) Co.,Ltd.もある。その他のASEAN地域においては、ベトナム(ORISTAR CORPORATION)、マレーシア(PHH SPECIAL STEEL SDN BHD)、インドネシアにて現地提携企業と協業するほか、ベトナムには駐在員事務所を設置している。海外拠点は以下のとおり。中国とタイに子会社があり、ベトナムには駐在員事務所と出資企業があるほか、マレーシア、インドネシアに提携企業がある。
同社では、取引価格の算出には、取引時の市場価格を参考に決定される。問題は、商品の販売時の市場価格と素材の取引価格に乖離、特に素材の市場価格が低下した際に発生する差損であり、在庫品を抱えることのリスクとなる。市場価格が上昇局面にある場合には、取引価格決定の前提が直近の市場価格であるため、差益が発生する場合がある一方で、市場価格が下落局面にある場合、取引価格決定のメカニズム上、差損が発生することになる。
同社では、取引価格の値上がりや値下がりが確定している場合を除き、相場の動向を判断材料にした仕入れ調整は行わない一方、標準品加工時における端材の発生を極力抑えた効率的な加工、顧客の支払い実績など信用情報を組み合わせた販売価格の提示などを通じて、差損を最小限に抑制している。こうした情報は同社の「総合情報システム」(社内の呼称では、「基幹システム」)で一元的に管理されており、このシステムを通じて、差損の発生の極小化につながる需要動向の判断や仕入れの調節など、在庫に関する運営管理が指示される。
同社は取扱い商品を製品カタログにまとめており、標準在庫品、取り寄せ品(標準在庫品にない、他社製品)合わせて21,300品目(2021年3月期末現在)である。主な製品は以下の通りである。
同社が各地の工場に在庫として常備している商品である。現在、同社の標準在庫品は5,300品種。ホームページ上に掲載されている製品カタログ(標準在庫品)は以下の通り。英語版は2018年版、日本語版は2021年版となっている。
同社は、標準在庫品には顧客にとって6つの利点がある、と考えている。第1は豊富なラインアップである。同社は、アルミニウムや伸銅などの非鉄金属を中心に、ステンレス、チタン、特殊鋼やプラスチック材料を専門に取り扱っており、産業用資材を加工して提供している。同社の標準品は約5,300品目におよぶ。
第2の利点は、小口対応である。同社は、資材1枚・1本・1グラムから、顧客の要望に合わせて希望するサイズ・形状で加工し、全国に配送する。同社は、5×5ミリメートルの小型資材から顧客指定の寸法で正確に切断・加工し、必要な数量だけを最短で翌営業日に配達する方針である。
第3の利点は、クイック・レスポンスである。国内東西に分かれたお客様センターが、FAX、電話、電子メール、インターネットでの見積りや注文、問い合わせに迅速に対応する。同社では、営業活動において顧客を待たせない、という方針を持っており、見積りは、標準在庫品に限らず特注品においてもお客様センターの専門スタッフが最新のITシステムによって速やかに回答する体制となっている。
第4の利点は、クイック・デリバリーである。同社は、国内5ヶ所に「工場」と呼ばれる在庫・加工センターを持ち、注文を受けた日から最短で翌日納品を実現している。同社は、受注を受けた顧客に対して、配送距離や在庫状況などに応じて、最適な手段により各センターから出荷する体制を採っている。
第5の利点は、多彩な加工バリエーションを有することである。同社は、自社で在庫する全ての商品について、顧客が指定する寸法での切断に加え、フライス、研磨などの加工にも対応している。同社では34種類にわたる切断・加工方法を用意しており、顧客が希望する形状と精度で商品を提供する。形状は四角形、サークル、リングに限らず、様々な形状での切断や、0.1ミリ単位の指定寸法によるフライス、研磨加工のほか、マシニングセンター・ウォータージェットによる異形加工に対応する加工設備も備えている。
第6の利点は、高精度な加工である。同社が行うフライス加工や研磨加工では、板厚・巾・長さに加え、直角度、平行度や平面度まで精度保証している。同社は、顧客から精度の高い要求にも対応できるよう、特別に設計された高精度なフライス加工機など最新の設備をはじめ、マシニングセンターを導入している。また、加工プロセスや検査手法の研究・改良にも注力し、加工精度の向上を目指している。
アルミニウム素材の標準在庫品は、形状が板、棒、管に大きく分類されており、各形状の商品については、サイズや材質の違いなどの詳細に分類されている。
以下の事例は、「A1050」という規格のアルミニウム1000系(純アルミニウム)で、純度99.5%アルミニウム板(幅100ミリメートル×長さ2000ミリメートル)、通称「メーターバン(板)*」と呼ばれる標準在庫品のサイズ別カタログの一部である。
英語版にはないが、日本語版には、1枚当たりの重量(kg)と同社の5工場のうち、どの工場で生産・在庫されているのかが色分けで表示されている。
*「メーターバン」とは、定尺板の一種「1000mm×2000mm」規格の通称。精密板金・板金加工に用いられる主な鋼板・板金材料は、ある一定の決められた材料サイズ・寸法の板材(定尺板)として市場に流通している。主な定尺サイズ・寸法には次のような定尺板の種類がある。3×6(呼称「サブロク」:サイズ914mm×1829mm)、3×8(呼称「サンパチ」:サイズ914mm×2438mm)、5×8(呼称「ゴハチ」:サイズ1524mm×2438mm)は、一般に鋼板にのみ適用されている定尺サイズで、ステンレス鋼板やアルミ板、銅板、真ちゅう板などにはない。一方で、1×2(呼称「メーター板(めーたーばん)」: サイズ1000mm×2000mm)は、一般にステンレス鋼板やアルミ板、銅板、真ちゅう板などに適用されている定尺サイズ。鋼板にはこの定尺サイズはない。なお、4×8(呼称「シハチ」:サイズ1219mm×2438mm)は一般に、鋼板、ステンレス鋼板、アルミ板、銅板、真ちゅう板など、全ての鋼板適用されている定尺サイズで、3×6や1×2ではカバーしきれない大きな板金加工品の製作向けである。5×10(呼称「ゴトウまたはゴットウ」:サイズ1524mm×3048mm)は、4×8と同様に鋼板に適用されるが、一般には銅板と真ちゅう板には通常は適用されない。
伸銅についても、板、棒、管の形状でのラインアップとなっている。銅は導電性や熱伝導性が高く、また耐久性や色調が優れていることから、用途の幅が広く、空調(銅管)や電子部品(半導体のリードフレーム)などの需要が多い素材である。この素材の標準在庫品も、形状が板、棒、管に大きく分類されており、各形状の商品については、サイズや材質の違いなどにより詳細に分類されている。
以下の事例は、「クローム銅丸棒」という銅とクロームの合金で極めて高い電気伝導性を持ち、硬度も高い特長を持つ商品である。高温時における耐摩耗性が優れ、組織が均一であるため、靭性に富む。主に溶接用電極材・電極材・コネクター設備の冷却部品、ダイカスト用金型、各種機械部品(熱伝導・導電性が必要な部品)に使用される。
アルミニウムと同様、日本語版には、1枚当たりの重量(kg)が記載されているほか、同社の5工場のうち、どの工場で生産・在庫されているのかが色分けで表示されている。
鉄にニッケルやクロームなどを添加した素材で、「錆にくい鉄」として認識されている。錆にくいことから、食品機械や厨房設備での需要が多く、また化粧管として手すりやモニュメントにも使用される。さらに機械部品としての使用量も増加しており、用途開発次第では需要が高まる、と同社は考えている。
以下の事例は、構造用ステンレス押出管「304シームレス丸管(TKA)」の事例である。TKAとは、機械構造用ステンレス鋼管を意味し、シームレスは継目がないという意味である。丸棒や板材からくり抜くような厚肉パイプ状の加工品に使用する。
要約
事業概要
白銅株式会社(以下、同社)は、アルミニウム、伸銅、ステンレスなどの非鉄部材を仕入れ、顧客のニーズに応じ部材に加工を加えて販売する専門商社。2021年3月期までの過去10年間において、売上高は22,151百万円(最低:2013年3月期)から45,228百万円(最高:2019年3月期)、営業利益は1,375百万円(2012年3月期)から2,785百万円(2018年3月期)のレンジで推移した。この期間における営業利益率は4.0%(2020年3月期)~6.9%(2015年3月期)のレンジであった。業績は、主要取扱い素材であるアルミニウム、銅、ステンレスなどの市場価格や、それらの部材を多く利用する半導体製造装置向けなど顧客の需要動向によって変動する。例えば、2020年3月期は米中貿易摩擦で半導体需要が減少し、半導体製造装置業界の設備投資が低調となったうえ、非鉄金属の市況も悪化したため、同社の業績は下落局面にあった。2022年3月期は非鉄金属の市況回復や半導体製造装置関連向けの需要ひっ迫を背景に、市場環境が急速に改善し、同社は前期比32.4%増収、同72.6%営業増益を見込んでいる。
売上高は、市場価格を基準に、加工サービスや配送サービス、顧客の支払い条件などの付加サービスを考慮した取引単価×注文数量で構成される。2021年3月期の売上高39,219百万円(前年比6.2%減)の素材別構成は、アルミニウム65.4%、伸銅13.0%、ステンレス16.6%、特殊鋼1.7%、その他3.3%。利益面では、商社の基本的な収益源である仕入れ販売に係る口銭をベースに、注文品の加工サービスや納入スピードなどの利便性に対する対価や、材料の調達と販売時の価格変動差益などの上乗せが取引価格に反映され、同社の利益の源泉となっている。
同社は、1932年に個人経営の非鉄商社として創業された。1968年には、顧客の需要情報、販売情報、そのための在庫品管理を目的としたコンピューターによる管理を導入し、顧客情報、在庫情報などを一元管理するシステムを独自に構築した。また、この頃までには、顧客が同社に対し在庫調整機能を求めるようになり、同社は、顧客の必要量に応じて必要な分量の素材を顧客毎に切り分けて販売するようになった。1970年代からは、工場機能や在庫保管機能の拡張を図るため、都心郊外に施設を拡充して取扱い品目のラインアップを拡大してきた。2021年3月期末で、取扱い商品は、仕入れ部材を標準のサイズ・形状に切断加工した自社の標準在庫品(約5,300品目)と取り寄せ商品(約16,000品目)で計21,300品目(冊子・電子カタログ掲載)からなる。顧客からの加工要望に対しては、全国5工場に各種金属切断加工機を数百台規模で設置し、即納で供給できる体制を整備している。
商品の見積もり・受注は、電話・ファックス・電子メール、インターネット販売サイト「白銅ネットサービス」(24時間・365日対応)で受ける。顧客アカウントは2021年3月期で約13,000件、うちネットサービスの登録社数では延べ9,000件以上。例えば、同社によれば、半導体製造装置関連の主要な取扱業者は大半が登録済みである、とのことである。問合せ・見積りは一日当り約20,000件受信し、同社によれば、注文件数はその半分程度(特注品は含まず)。国内であれば、受注を受けてから加工、発送まで即日~翌日といったカタログに記載された短納期で提供する。主な顧客は、非鉄部材が製品製造に不可欠である半導体製造装置(東京エレクトロン(東証1部、8035)、アルバック(東証1部、6728)など、関連協力企業も含む)、OA機器(キヤノン(東証1部、7751)、リコー(東証1部、7752)および、関連協力企業も含む)などの精密機器メーカーをはじめ、各種産業用機械メーカーやその関連企業。
販売価格は、素材の品質、取引時の市場価格、商品量、加工内容、顧客の注文実績、代金支払い方法や企業信用度などの蓄積情報を基に、顧客毎に同社「基幹システム」で決定される。販売価格に大きく影響するのは、その時点での素材の市場価格動向で、同社の標準在庫のアルミニウム商品はアルミニウム市場価格、標準在庫の伸銅商品は電気銅価格にほぼ連動する。従って、市場価格の下降局面では、取引上評価損のリスクはある。製造原価は、仕入れた部材価格に加え、顧客の注文内容に応じた加工などに係る諸費用から構成される。販売費および一般管理費を構成する主要費用は、営業管理部門の人件費(従業員数は2021年3月期末347名、うち営業人員数140名)や運送費など。セグメント開示は地域別のみで、売上高構成は日本95.2%、中国3.5%、その他1.3%、セグメント利益構成は日本96.5%、中国2.3%、その他1.4%(2021年3月期実績)。
同社のビジネスは、在庫を抱え、蓄積した顧客情報を活用して短納期を実現しているものの、2021年3月期の棚卸資産回転率は5.9回転(在庫期間は2か月程度)と卸売業の平均(12.9回転、経済産業省)と比較すると低位。このため同社は、顧客の要望する多様な加工を加え商材に付加価値を上乗せすることで収益性を高めている。取扱う商品が標準在庫品と取寄せ品や特注品で21,300品目と多い点、加工機能を有しながら短納期を実現する点で特徴があり、同社によれば、同様なビジネスモデルを有する非鉄専門商社は希少。類似する企業としては、同社の標準在庫品ビジネスで株式会社UEX(JQ、9888)、同社特注品でアルコニックス株式会社(東証1部、3036)などが挙げられる。
同社は、ESG/SDGsへの取組みとして、経営幹部を中心にESG/SDGs経営委員会を設置している。アルミニウム、カドミレス真中など環境に配慮した非鉄素材の利用拡大、代替利用促進を通じ、社会における金属材料のリサイクル推進を促進することで低炭素社会の実現や、産業廃棄物の削減などに貢献する、としている。
業績動向
2022年3月期実績は、売上高55,441百万円(前年比41.4%増)、営業利益4,256百万円(同114.7%増)、経常利益4,374百万円(同109.9%増)、親会社株式に帰属する当期純利益2,964百万円(同131.2%増)となった。売上高では、「白銅ネットサービス」の利用促進や「リモート営業」ツールの活用により、顧客サービス低下への影響を一定範囲に抑制することができた。「白銅ネットサービス」の取扱商品数を2021年3月末の21,200品目サイズから2022年3月末には、32,700品目サイズへ拡充し、利便性の向上を図った。利益面では、増収に加え、原材料市況の影響などもあり売上高総利益が10,310百万円(前年比54.6%増)、売上総利益率は18.6%(同1.6ポイント上昇)と向上した。販管費は6,054百万円(同29.1%増)と増加したものの、売上高販管費比率は同1.2ポイント減少した。これにより、営業利益は同114.7%増、営業利益率は7.7%(同2.6ポイント上昇)となった。なお、当期間の棚卸資産影響額の差益は610百万円であった。
2022年3月期会社業績見通しは、売上高62,100百万円(前期比12.0%増)、営業利益3,970百万円(同6.7%減)、経常利益4,080百万円(同6.7%減)、当期純利益2,860百万円(同3.5%減)となった。同社では、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せず、ロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻等により、見通しが困難としている。なお、原材料市況の予測は困難であるため、棚卸資産影響額は第1四半期までの予想を織り込んでおり、第2四半期以降はその影響を織り込んでいない。
同社は、2022年5月下旬をめどに、中期経営計画を発表する見通しである。
同社の強みと弱み
同社の強みとしては、1)商社としての在庫機能にとどまらず、顧客の製造コスト低減に繋がる加工機能を保有すること、2)市場価格、加工コスト、顧客情報などのデータを駆使した、即時受発注可能で利便性の高い「白銅ネットサービス」、3)同社の在庫管理、加工コスト管理に繋がる顧客データの蓄積、である。一方、同社の弱みとしては、1)特定顧客層への取扱いが多いため原材料市況の影響が拡大しやすいこと、2)小ロット・即納体制であるために物流において規模の経済が出しにくく、物流費のコントロールが難しいこと、3)海外展開を進める国内顧客への対応の限界、である。
主要経営指標の推移
業績動向
四半期実績推移
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
2022年3月期通期実績
業績概要:
市場動向と需要動向
同社グループ業績に影響が大きい半導体製造装置業界は、5G関連やデータセンター向けに需要拡大が続いており、設備投資は好調に推移している。その他、工作機械業界は、半導体不足の影響が懸念されるものの、輸出向けを中心に受注環境は改善傾向にある。一方で、航空機業界の設備投資は、依然として低調な状況が継続している。
顧客往訪や対面営業が制約を受ける中で、以前より同社が注力してきた24時間365日見積り・注文可能なWEBサイト「白銅ネットサービス」の利用促進、および「リモート営業」ツールの活用により、顧客サービス低下への影響を一定範囲に抑制することができた。また、「白銅ネットサービス」の取扱商品数を2021年3月末の21,200品目サイズから2022年3月末には、32,700品目サイズへ拡充し、利便性の向上を図った。その他、連結子会社3社(株式会社AQR、上海白銅精密材料有限公司、Hakudo(Thailand)Co., Ltd.)の売上高も前年度実績を上回り、好調に推移した。
業績概況:増収増益
顧客満足度の向上および事業規模拡大等の施策を実行した結果、売上高は、前年比41.4%増となった。
2022年3月末時点での主要な原材料の市況は、電気銅建値1,330千円/トン(2021年3月末比29.1%増)、アルミニウム地金(日本経済新聞月別平均値)488千円/トン(同66.0%増)、ステンレス鋼板(鉄鋼新聞月別中心値)500千円/トン(同31.6%増)と、いずれも上昇している。
利益面では、増収に加え、原材料市況の影響などもあり売上高総利益が10,310百万円(前年比54.6%増)、売上総利益率は18.6%(同1.6ポイント上昇)と向上した。販管費は6,054百万円(同29.1%増)と増加したものの、売上高販管費比率は同1.2ポイント減少した。これにより、営業利益は同114.7%増、営業利益率は7.7%(同2.6ポイント上昇)となった。なお、当期間の棚卸資産影響額の差益は610百万円であった。
セグメント別
実績は、各セグメントで収益が発生した地域ベースで区分されており、日本セグメントは主に個別と株式会社AQRの実績、中国セグメントは上海白銅精密材料有限公司の業績、その他はHakudo(Thailand)Co., Ltd.の業績で構成されている。ベトナムのオリスター社との協業は継続する見通し。
2023年3月期通期見通し
同社では、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せず、ロシア連邦によるウクライナへの軍事侵攻等により、見通しが困難としている。
2022年3月期通期決算発表時点での業績見通しは、売上高62,100百万円(前期比12.0%増)、営業利益3,970百万円(同6.7%減)、経常利益4,080百万円(同6.7%減)、当期純利益2,860百万円(同3.5%減)とした。
なお、原材料市況の予測は困難であるため、棚卸資産影響額は第1四半期までの予想を織り込んでおり、第2四半期以降はその影響を織り込んでいない。
過去の期初会社予想と実績の差異
予想と実績との差異が目立つのは、2012年3月期~2013年3月期、2018年3月期~2021年3月期である。
2012年3月期は、東日本大震災からの需要回復を見込んだものの、円高の進行や欧州財政に起因する世界経済の景気減速から、国内製造業関連の新規設備投資が低迷し、想定したほどの回復とはならなかった。また、新しい販売方針の浸透や経費削減が不充分であったことも利益計画未達の原因となった。世界経済の減速の影響は2013年3月期も続いた。
2018年3月期は、同社グループ業績に最も影響度の高い業界の一つである半導体製造装置業界が活況となり、その業界に関係する顧客への販売が高水準で推移したことが予想を上回る要因となった。利益面でも、売上高の増加や、原材料市況の好転で計画を上回った。2019年3月期は、前年度の半導体好調の反動の影響を受けた。半導体メモリ価格の低下や需給の急速な緩みを受け、半導体産業の設備投資が調整局面に入りしたうえ、液晶製造装置業界も急速に減速したことが影響した。2020年3月期も、米中貿易摩擦の影響で半導体需要が伸び悩んだことから、半導体製造装置業界が低調に推移したうえ、原材料市況の悪化が利益の押し下げ要因となった。
2021年3月期は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響等を考慮していたものの、下半期以降、IoT、AI、5G等の情報通信技術の用途拡大に伴って半導体の需要が増加した。こうした背景から半導体製造装置市場が拡大し、原材料市況も上昇したことから、期初計画を上回った。
中期事業計画
同社は中期経営計画は、2021年8月末時点で公表していない。しかしながら、同社は、非鉄部材がワンストップで調達可能な在庫機能を拡大する方針を有している。SR社では、非鉄金属の市況も堅調に推移していることから、早期に中期見通しを明示する可能性がある、と考えている。
まず、海外事業に関して同社は、ベトナムの大手非鉄金属商社Oristar Corporation(非上場、以下、オリスタ―社)との協業構築や、海外での非鉄・ステンレスのオーダーメード板形状の商品の販売網確立、米国や韓国など新規進出国の検討なども始めることを言及しており、具体的は施策などの検討段階に入っているとSR社ではみている。
新規事業については、現在、3Dプリンターによる金属製品の受託製造や、航空宇宙規格材料の分野でのコンビニエンスディーラーを目指す取り組みを始めており、同社の神奈川工場と滋賀工場で、航空宇宙産業特有の要求事項を織り込んだJIS Q 9100認証を取得している。2020年1月には、あらゆる材質を任意の形状に切断加工できるウォータージェット加工機を航空宇宙分野向けの加工機械として導入するなど、中長期の事業戦略の柱のひとつとして取り込まれるものとSR社ではみている。
現在、売上高の構成では、半導体製造装置向けが大きな比率を占めており(需要先別売上高構成比は非公表)、事業の分散という観点から新たな仕向け先の開拓の必要性を感じている。同社が得意とするアルミニウムの軽量化、リサイクル性などの特徴から、航空機や自動車関連分野への強化も考えている。同社は、アルミニウムがその特性から環境への貢献度も高いと考えており、SDGsの観点からも重視される、と考えている。
さらに、同社は、モノづくり支援という立場から、非鉄金属材料に限らず、工具など製造業に必要な資材全般へと領域を拡大することも視野に入れている、と述べている。
事業内容
ビジネスモデルの概要
ビジネスモデル
同社のビジネスは、基本的にはVMI(ベンダーによる在庫管理)である。アルミニウムや伸銅などの非鉄素材を仕入れ、顧客の注文内容に応じて、それらの素材を標準的なサイズ・形状に切断して、顧客の必要なタイミング、分量に応じて提供する。標準在庫品の在庫期間はおよそ2か月程度。ただし、通常のVMIと異なるのは、同社に多用な加工機能があり、顧客の指定する仕様に加工して提供できる点である。また、通常のVMIは、供給側と購入側とで在庫情報について共有する必要があるが、同社の場合、購入側である顧客の在庫に関する情報は過去の受注実績の蓄積である。
同社は、こうした加工機能を有している点、VMIの供給側に求められる製品の品質や納期で他社より優れている点を差別化要因として捉えている。同社のスローガンには、「ダントツの品質、ダントツのスピード、ダントツのサービス、納得の価格」とあるが、提供する商品の材質、加工双方での品質や製品カタログに記載された納期期日の厳守を重要視している。在庫機能と加工機能の部分が同社の付加価値となっている。
主要取扱い素材の市場価格動向や顧客の需要動向によって変動する業績
2021年3月期までの過去10年間において、売上高は22,151百万円(最低:2013年3月期)から45,228百万円(最高:2019年3月期)、営業利益は1,375百万円(2012年3月期)から2,785百万円(2018年3月期)のレンジで推移した。この期間における営業利益率は4.0%(2020年3月期)~6.9%(2015年3月期)のレンジであった。
業績は、主要取扱い素材であるアルミニウム、銅などの市場価格動向や、それらの部材を多く利用する半導体製造装置向けなど顧客の需要動向によって変動する。例えば、2020年3月期は新型コロナウイルスの影響で経済活動が停滞し、同社の業績は下落局面にあった。2022年3月期は、非鉄部材の市況回復や半導体製造装置関連向けの需要ひっ迫を背景に、市場環境が急速に改善し、同社は前年比32.4%増収、同72.6%営業増益と、大幅な増収増益を見込んでいる。
業務内容
顧客
主な顧客は、半導体製造装置関連分野、OA機器メーカー、各種産業機械メーカーとなっている。顧客別の販売実績は公表していない。半導体製造装置及びその関連業界が大きな顧客となっているが、それは半導体製造装置の製造において、耐腐食性、加工精度、低ガス発生度などの特性のあるアルミニウム部材が適しているため。半導体製造装置の需要は、世界的な半導体不足を背景に増加しており、同社の素材別売上高実績(2021年3月期)では、アルミニウムの取扱いが売上高の65%を占めている。
顧客企業では、アルミニウム部材を真空チャンバーなどで多用する半導体製造装置メーカー、OA機器などの精密機器メーカーをはじめ、各種産業用機械メーカーやその関連企業が挙げられる。
同社によれば、顧客はアカウント数で13,000件である。実際にアクティブアカウントはこれよりも少ないとSR社ではみている。同社のインターネットサイト「白銅ネットサービス」の登録顧客が9,000件を超えていることから、電話・ファックスの顧客(同社によれば、比較的、特注品の顧客が多い)も含め、毎日10,000件程度顧客との取引が行われている、とSR社では推計している。同社の2021年3月期の売上高が39,219百万円であったことから、年間の稼働日数を250日とした場合、1回の注文の平均金額は16,000円程度と算定される。バルクで取扱う鋼材の専門商社と異なり、小口の注文を数多く受けていることになる。同社によれば、取引量の多い顧客では、年間2,000百万円となることもある。
加工による付加価値と標準在庫品の保有
同社は仕入れた素材をそのまま販売するのではなく、仕入品を標準在庫品と呼ばれる一定のサイズ形状に切断加工して販売する。在庫になる時点で、その際の市場価格で評価替えが行われる。販売時にはその時点での市場価格が取引価格の基準となるため、在庫期間中に市場価格が変動すれば、同社の利益面では、評価差損益が発生することになる。主要素材であるアルミニウムの価格は3か月毎、銅価格は毎日変動するため、同社では、市場価格動向、在庫の状況、顧客の需要動向などを判断し仕入れの調節を行う。
取引単価の決定方法
同社の取引価格は、対象となる素材の時価をベースに、商社としての手数料となる口銭、素材の加工サービス、配送に関する顧客負担分、顧客の支払い条件などが加味され、顧客毎に取引単価が算出される。例えば、アルミニウム素材の部材が複数個注文された場合、以下のような計算になる。1個当たりの単価は、まず、注文時のアルミニウムの単位重量あたり相場価格(2021年3月末時点で、1トンあたり238千円)が基準となる。
これに加え、各種取扱い手数料(在庫コストも含む、いわゆる口銭)や、部材に対して施す加工賃、顧客の取引・支払い実績、与信情報などが加味され、その顧客に適用される取引単価が算出される。これに注文数量を乗じたものが1注文の金額となる。同社のような加工サービスができない同業他社の場合、取引価格は、原材料の市場価格に、商社としての手数料である口銭分が上乗せされたものになる。
業務の流れ
同社の業務の流れとしては、非鉄素材を外部から仕入れ、在庫として保有する(「標準在庫品」と呼ばれる)。標準在庫品は約5,300品目に上る。自社で在庫を持たない商品も同社経由で購入は可能であり、これは取り寄せ品と呼ばれる。自社の在庫とするには販売量が小さい、同社が手掛けない製品などはこれにあたる。
顧客からの問合せ、見積もり依頼、受注は、電話、ファックス、電子メールのほか、同社独自のインターネットによるECサイトである「白銅ネットサービス」を経由する。見積り内容は、問い合わせの段階からほぼ即時に顧客に応じた見積り内容が提示される。顧客はその見積りを判断し、納得できたら発注になる。
仕入れ
同社は、非鉄材料の調達は、国内の特定企業から購入する。取扱量の最も多いアルミニウムに関しては、国内最大手の株式会社UACJ(東証1部、5741)や、日本軽金属ホールディングス株式会社(東証1部、5703)などの素材メーカーから仕入れる。伸銅に関しては、国内外の素材メーカー各社から幅広く購入しているが、国内企業では三菱マテリアル株式会社(東証1部、5711)といった企業から仕入れる。同社としては、仕入れに関しては、特殊な部材向けを除き、調達先を限定することなく、仕入れリスクを分散するかたちで調達を行っている。
一般社団法人日本アルミニウム協会によれば、国内のアルミニウムの生産は、二度のオイルショック以降、電力コストの上昇により国内での精錬によるアルミニウムは価格競争力を失い、現在ではアルミニウム新地金は100%輸入に依存している。アルミニウムの二次地金(再生品)は国内を中心に、海外からの輸入で賄われており、これらが板加工、押出加工、箔加工される。用途に応じて加工されるアルミニウム材は輸送、建設などの最終製品の製造業に供給される。
伸銅品とは、銅や、銅に亜鉛、すず、ニッケル、を加えた銅合金を、溶解、鋳造、圧延、引抜き、鍛造などにより、板や、管、棒、線などの形状に加工した製品を指す。一般社団法人日本伸銅協会によれば、2021年度の銅および銅合金製品の需要は738千トン(前年比13.4%増)と見込まれている。
同社は標準在庫品と呼ばれる自社在庫を一定量保有するため、供給メーカーからは一定量の販売が見込めるが、仕入れとの関係性で有利な関係があることはない。仕入時の交渉力が高いとは考えにくい。複数からの購買により、安定的に供給される体制は構築できている、とのこと。
在庫(標準在庫品の加工)
調達された金属材料は、販売用の「標準在庫品」とする。アルミニウム素材の場合、標準品は形状により板状、棒状、管状に分かれ、それぞれ寸法、板厚の標準寸法があり、それに従って同社が取り扱う標準品は約5,300品目である。
例えば、アルミニウム素材であれば、素材メーカーから調達したアルミニウム合金の板、条(コイル状に巻かれたもの)、棒、管などの素材を在庫している。板状のアルミニウム合金であれば、畳2畳程度の大きさのものが、在庫母材サイズとなる。加工と在庫管理は、国内の5工場(福島、埼玉、神奈川、滋賀、九州の5工場、後述)が担っている。
受注・販売
注文から出荷までの流れは、以下の各ステップを踏んで行われるのが一般的である。
電話、ファックス、電子メール、インターネットサービスなどで見積り依頼や発注を受ける。東日本・西日本お客様センター、あるいは各営業拠点で入力された注文データは、「総合情報システム」に入力され、各工場に出荷指図書として出力される。出荷指図書にはバーコードが印刷されており、トレーサビリティ(追跡可能性)に対応している。
注文に応じて、出荷が指示された工場では切断加工がおこなわれる。切断加工は、国内5工場で行われる。ここには約200台の切断機(丸鋸、バンドソー、シャーリング、コンターマシン)が設置されている。フライス加工(複雑な形状の加工や穴開けなどを行う加工)も、フライス加工機(汎用機・専用機)が設置されている国内5工場で行われる。設置台数は200台以上。顧客の要望に応じて、複雑な形状への加工や穴開けなど、回転する刃物(フライス)による加工を行う。加工の種類は、切断、フライス加工のほかに、異形・マシニング加工、研磨、面取りなどがある。
加工が終わった後、顧客の要望に応じて、3次元測定器や手作業などで、寸法など加工結果の検査を実施する。検査工程の後、梱包されて配送となる。梱包の仕様は品種・形状・加工サービスにより異なる。高品質の商品を維持するため、商品に最適な梱包を実施する。バーコードシステムを利用して、積み残しや届け先の最終確認を実施した後、同社専用トラックや路線便、場合によっては宅配便などを利用して、迅速に配送する。
白銅ネットサービス
同社の注文の約80%を占める受注形式である。同社ホームページ内にある「白銅ネットサービス」ポータルからログイン(あるいは、新規ユーザー登録)して注文する。注文形式は、「標準」、「かんたん」、「複数詳細」の3種類の入力モードから選択できる。同社標準品のみに限定されるが、新規やネット注文に慣れていない顧客向けの「かんたん入力」、注文品に対する詳細な加工寸法データをエクセルやCSVデータを添付して1回に付き15品目指示できる「複数詳細入力」モードもある。
営業体制
同社は、全国を8ブロックに分け、それぞれに営業所を設置し、地域密着型の営業体制を構築している。各拠点は、仙台営業所(宮城県仙台市、北海道・東北地域管轄)、高崎営業所(群馬県高崎市、上越・北関東地域管轄)、東京営業課(本社内、首都圏管轄)、厚木営業所(神奈川県厚木市)、名古屋営業所(愛知県名古屋市、東海・北陸地域管轄)、大阪営業課(大阪府大阪市、和歌山県、京阪神地域管轄)、広島営業所(広島県広島市、山口県を除く中国・四国地域管轄)、九州営業所(佐賀県鳥栖市、山口県を含む九州地域管轄)、また、本社内には、大手メーカーを主な顧客とし、全国エリアに営業展開する特注品営業本部がある。これに加えて、東西2か所のコールセンター(東日本お客様センター(川崎)と西日本お客様センター(大阪)、静岡出張所)を持つ。
国内工場
同社は、国内5か所に加工工場を有している。各工場の所在地や特色は以下のとおり。
福島工場(福島県郡山市):同社の保有する加工方法のうち、研磨加工やマシニング加工の設備を保有しているのが特徴
埼玉工場(埼玉県加須市):定尺板・アルミ型材・銅管・伸銅とステンレスの角棒や細径丸棒などの取扱いが中心
神奈川工場(神奈川県厚木市):品揃え、在庫量、出荷量が同社グループで最多。グループで取扱う製品の品質・技術の向上を図る、マザー工場としての機能を有する。
滋賀工場(滋賀県蒲生郡):多彩な商品を取扱う工場で、アルミニウム板は板厚1ミリ~350ミリまで在庫し、顧客の多様な切断加工ニーズに対応する。ウォータージェットやマシニング加工の設備を保有しているのが特徴。
九州工場(佐賀県鳥栖市):地元に根付いた工場を目指し、営業と一緒になって顧客の声を品質・技術・サービスにすぐ反映できる。
海外拠点
中国には広州、天津に営業所を構えるほか、上海には連結子会社の上海白銅精密材料有限公司があり、自前の在庫・加工センターを整備している。タイには、子会社のHakudo (Thailand) Co.,LTdがあるほか、現地提携企業Fujimaki Steel (Thailand) Co.,Ltd.もある。その他のASEAN地域においては、ベトナム(ORISTAR CORPORATION)、マレーシア(PHH SPECIAL STEEL SDN BHD)、インドネシアにて現地提携企業と協業するほか、ベトナムには駐在員事務所を設置している。海外拠点は以下のとおり。中国とタイに子会社があり、ベトナムには駐在員事務所と出資企業があるほか、マレーシア、インドネシアに提携企業がある。
取引価格の決定プロセス
同社では、取引価格の算出には、取引時の市場価格を参考に決定される。問題は、商品の販売時の市場価格と素材の取引価格に乖離、特に素材の市場価格が低下した際に発生する差損であり、在庫品を抱えることのリスクとなる。市場価格が上昇局面にある場合には、取引価格決定の前提が直近の市場価格であるため、差益が発生する場合がある一方で、市場価格が下落局面にある場合、取引価格決定のメカニズム上、差損が発生することになる。
同社では、取引価格の値上がりや値下がりが確定している場合を除き、相場の動向を判断材料にした仕入れ調整は行わない一方、標準品加工時における端材の発生を極力抑えた効率的な加工、顧客の支払い実績など信用情報を組み合わせた販売価格の提示などを通じて、差損を最小限に抑制している。こうした情報は同社の「総合情報システム」(社内の呼称では、「基幹システム」)で一元的に管理されており、このシステムを通じて、差損の発生の極小化につながる需要動向の判断や仕入れの調節など、在庫に関する運営管理が指示される。
取扱製品群
同社は取扱い商品を製品カタログにまとめており、標準在庫品、取り寄せ品(標準在庫品にない、他社製品)合わせて21,300品目(2021年3月期末現在)である。主な製品は以下の通りである。
標準在庫品
同社が各地の工場に在庫として常備している商品である。現在、同社の標準在庫品は5,300品種。ホームページ上に掲載されている製品カタログ(標準在庫品)は以下の通り。英語版は2018年版、日本語版は2021年版となっている。
同社は、標準在庫品には顧客にとって6つの利点がある、と考えている。第1は豊富なラインアップである。同社は、アルミニウムや伸銅などの非鉄金属を中心に、ステンレス、チタン、特殊鋼やプラスチック材料を専門に取り扱っており、産業用資材を加工して提供している。同社の標準品は約5,300品目におよぶ。
第2の利点は、小口対応である。同社は、資材1枚・1本・1グラムから、顧客の要望に合わせて希望するサイズ・形状で加工し、全国に配送する。同社は、5×5ミリメートルの小型資材から顧客指定の寸法で正確に切断・加工し、必要な数量だけを最短で翌営業日に配達する方針である。
第3の利点は、クイック・レスポンスである。国内東西に分かれたお客様センターが、FAX、電話、電子メール、インターネットでの見積りや注文、問い合わせに迅速に対応する。同社では、営業活動において顧客を待たせない、という方針を持っており、見積りは、標準在庫品に限らず特注品においてもお客様センターの専門スタッフが最新のITシステムによって速やかに回答する体制となっている。
第4の利点は、クイック・デリバリーである。同社は、国内5ヶ所に「工場」と呼ばれる在庫・加工センターを持ち、注文を受けた日から最短で翌日納品を実現している。同社は、受注を受けた顧客に対して、配送距離や在庫状況などに応じて、最適な手段により各センターから出荷する体制を採っている。
第5の利点は、多彩な加工バリエーションを有することである。同社は、自社で在庫する全ての商品について、顧客が指定する寸法での切断に加え、フライス、研磨などの加工にも対応している。同社では34種類にわたる切断・加工方法を用意しており、顧客が希望する形状と精度で商品を提供する。形状は四角形、サークル、リングに限らず、様々な形状での切断や、0.1ミリ単位の指定寸法によるフライス、研磨加工のほか、マシニングセンター・ウォータージェットによる異形加工に対応する加工設備も備えている。
第6の利点は、高精度な加工である。同社が行うフライス加工や研磨加工では、板厚・巾・長さに加え、直角度、平行度や平面度まで精度保証している。同社は、顧客から精度の高い要求にも対応できるよう、特別に設計された高精度なフライス加工機など最新の設備をはじめ、マシニングセンターを導入している。また、加工プロセスや検査手法の研究・改良にも注力し、加工精度の向上を目指している。
取扱商品(標準在庫品)
アルミニウム
アルミニウム素材の標準在庫品は、形状が板、棒、管に大きく分類されており、各形状の商品については、サイズや材質の違いなどの詳細に分類されている。
以下の事例は、「A1050」という規格のアルミニウム1000系(純アルミニウム)で、純度99.5%アルミニウム板(幅100ミリメートル×長さ2000ミリメートル)、通称「メーターバン(板)*」と呼ばれる標準在庫品のサイズ別カタログの一部である。
英語版にはないが、日本語版には、1枚当たりの重量(kg)と同社の5工場のうち、どの工場で生産・在庫されているのかが色分けで表示されている。
伸銅製品
伸銅についても、板、棒、管の形状でのラインアップとなっている。銅は導電性や熱伝導性が高く、また耐久性や色調が優れていることから、用途の幅が広く、空調(銅管)や電子部品(半導体のリードフレーム)などの需要が多い素材である。この素材の標準在庫品も、形状が板、棒、管に大きく分類されており、各形状の商品については、サイズや材質の違いなどにより詳細に分類されている。
以下の事例は、「クローム銅丸棒」という銅とクロームの合金で極めて高い電気伝導性を持ち、硬度も高い特長を持つ商品である。高温時における耐摩耗性が優れ、組織が均一であるため、靭性に富む。主に溶接用電極材・電極材・コネクター設備の冷却部品、ダイカスト用金型、各種機械部品(熱伝導・導電性が必要な部品)に使用される。
アルミニウムと同様、日本語版には、1枚当たりの重量(kg)が記載されているほか、同社の5工場のうち、どの工場で生産・在庫されているのかが色分けで表示されている。
ステンレス鋼
鉄にニッケルやクロームなどを添加した素材で、「錆にくい鉄」として認識されている。錆にくいことから、食品機械や厨房設備での需要が多く、また化粧管として手すりやモニュメントにも使用される。さらに機械部品としての使用量も増加しており、用途開発次第では需要が高まる、と同社は考えている。
以下の事例は、構造用ステンレス押出管「304シームレス丸管(TKA)」の事例である。TKAとは、機械構造用ステンレス鋼管を意味し、シームレスは継目がないという意味である。丸棒や板材からくり抜くような厚肉パイプ状の加工品に使用する。