2021年7月期実績は、売上高31,252百万円(前期比1.5%減)、営業利益701百万円(同44.9%減)、経常利益895百万円(同28.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益877百万円(前期は純損失519百万円)。前期比1.5%減収:ライフスタイルサポート事業は、新型コロナウイルス感染症の影響により主に結婚式場情報サイト「ハナユメ」が引き続き減少したものの、引越し比較サイト「引越し侍」の繁忙期が堅調に推移したことにより同1.5%増収。エンターテインメント事業は、既存ゲームが引き続き減収傾向にあり同13.9%減収。EC事業は、オペレーション効率の改善・在庫管理の徹底・品揃えの見直しの奏功、およびコロナ禍での高い自転車需要、タレントを起用したマスプロモーションを実施したことから同12.5%増収。同44.9%営業減益:ライフスタイルサポート事業は、「ハナユメ」の売上高減少に伴う利益の減少に加え、2020年12月に行われたGoogleコアアルゴリズムアップデートによるキャッシング・カードローン総合検索サイトやクレジットカード総合検索サイトのSEO(検索エンジン最適化)への影響に伴うリスティング広告への投資の増加により同23.5%減益となった。エンターテインメント事業は、引き続き既存ゲームアプリの効率的な運用を実現できているものの、株式会社スクウェア・エニックスとの共同開発による、グローバル市場を対象にしたスマートデバイス向けアプリ『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』の開発費を計上しているため同52.4%減益。EC事業は、増収と業務効率化により損益が改善(前期は損失43百万円)し、セグメント利益84百万円と初の通期黒字となった。売上総利益率は前期比2.3%ポイント低下の70.2%、販管費率は同0.8%ポイント低下の68.6%となり、営業利益率は同1.4%ポイント低下の1.6%となった。
2022年7月期会社計画(2022年3月11日発表):売上高は32,500百万円(前期比4.0%増)、営業損失700百万円(前期は営業利益701百万円)、経常損失700百万円(同経常利益895百万円)、親会社株主に帰属する四半期純損失850百万円(同当期純利益877百万円)。同社は、2022年7月期通期業績同社予想について、2021年11月17日にリリースした『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』についての適切かつ合理的な数値の算定が困難であったため開示を見合わせていたが、業績予想を作成するうえで十分な数値が整ったため通期会社予想を発表した。
当上半期の売上高は、『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER』が既存ゲームアプリや他事業の一部サービスの減衰を補うには至らず、全体の底上げとなる大きな収益の獲得には繋がらなかった。ライフスタイルサポート事業では、金融メディアが引き続き苦戦するも、中古車市場活況の後押しもあり、車の査定・買取サイト「ナビクル」で提携企業数増加に伴うARPU上昇、獲得件数の増加が寄与した。新型コロナウイルス感染症の影響が最も大きいブライダル関連事業は、業績は回復傾向にある。EC事業も、例年第2四半期が閑散期にあたる「cyma」にて、車体毎の販売価格の見直しを行ったことや、モール型ECサイトでの販売好調により、増収となった。利益は、主に『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』にかかるリリース時の開発費及び広告宣伝費の計上が全体へ大きく影響した。
当第3四半期については、ライフスタイルサポート事業・EC事業が繁忙期となることに加え、エンターテインメント事業も『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER』での収益増加を目指した施策を順次進めていくとともに、一時投資の負担が解消するため、同社は下半期の収益回復を予想している。
当上半期(2021年8月~2022年1月)の売上高は14,982百万円(前年同期比0.7%増)、営業損失1,143百万円(前年同期は営業利益221百万円)、経常損失1,136百万円(同経常利益363百万円)、親会社株主に帰属する四半期純損失729百万円(前期は純利益741百万円)となった。営業損失となったのは、株式会社スクウェア‧エニックスとの共同開発による、グローバル市場を対象としたスマートデバイス向けアプリ『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』(2021年11月17日リリース)の開発コスト(リリース前最後の開発費計上)とプロモーション費用が最大の要因。当上半期に一時的投資約1,200百万円が発生した。同社は、当下半期には当該負担が解消し、収益性が改善すると予想している。
グローバル市場を対象としたスマートデバイス向けアプリ『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER』が既存ゲームアプリや他事業の一部サービスの減衰を補うには至らず、全体の底上げとなる大きな収益の獲得には繋がらなかった。ライフスタイルサポート事業では、金融メディアが引き続き苦戦するも、中古車市場活況の後押しもあり、車の査定・買取サイト「ナビクル」で提携企業数増加に伴うARPU上昇、獲得件数の増加が寄与した。新型コロナウイルス感染症の影響が最も大きいブライダル関連事業は、業績は回復傾向にある。EC事業も、例年第2四半期が閑散期にあたる「cyma」にて、車体毎の販売価格の見直しを行ったことや、モール型ECサイトでの販売好調により、増収となった。
当上半期の営業損失は1,143百万円(前年同期は営業利益221百万円)となった。ライフスタイルサポート事業は金融メディアでの減収、CPA悪化が影響し同39.2%減益。エンターテインメント事業は、セグメント損失897百万円を計上。株式会社スクウェア・エニックスとの共同開発による、グローバル市場を対象にしたスマートデバイス向けアプリ『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』のリリース時に、大型プロモーションのための広告宣伝費を計上したことが背景。EC事業は、販売価格の見直しの反動で利益率が低下したことに加え、新規サービス「Obremo(オブレモ)」への投資により、セグメント損失53百万円を計上。
売上高は、既存ゲームアプリは、イベント開催などにより一時的に好調に推移した一部ゲームアプリがあったものの引き続き減少傾向となった。2021年11月17日にリリースした新規ゲームアプリ『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』は、リリース後の売上高が、既存ゲームアプリの減衰を補うには至らず、全体では前年同期比減収となった。
セグメント利益は、『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』のリリース時における大型プロモーションのための広告宣伝費計上により大幅に減少した。
当第2四半期(2021年11月~2022年1月)の売上高は1,822百万円(同5.8%減収、同23.1%増収)、セグメント損益は営業損失737百万円(前年同期は営業利益121百万円、前四半期は営業損失160百万円)の計上となった。既存タイトルの下降傾向と、新規タイトルの初速売上高の低調により、前年同期比減収となった。利益については、新規タイトル(『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』)の開発費および広告宣伝費の計上を主因に、損失計上となった。当第2四半期のエンターテインメントセグメントの広告宣伝費は874百万円と、第1四半期比でも743百万円程度増加しており、一時的に広告宣伝費が膨らんだ。開発投資額も第2四半期には増加している。ただし、これら一過性の費用による影響は当下半期には減少し、売上高の伸びに伴い利益も確保すると同社は想定している。プロモーション費用も第3四半期以降は減少する見込みであるとのこと。
『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』
当第3四半期以降、運営の改善およびユーザーの要望を踏まえたアップデートを重ねつつ、収益改善を図る。2022年2月28日、シーズン2「Dominate the Sky」がリリースされ、投入後にKPIは徐々に改善しているとのこと。コラボレーションや更なるアップデートにより、ユーザーが購入したくなるようなアイテムの販売やガチャ的な要素により課金率を増やし、マネタイズ手法を改善させる。また、クラッシュしてアプリが落ちるなどの問題も発生しているため、ゲームとしての遊びやすさも向上させていくとしている。
同社は、2022年7月期通期業績同社予想について、2021年11月17日にリリースした『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』についての適切かつ合理的な数値の算定が困難であったため開示を見合わせていたが、業績予想を作成するうえで十分な数値が整ったため通期会社予想を発表した。
当上半期の売上高は、『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER』が既存ゲームアプリや他事業の一部サービスの減衰を補うには至らず、全体の底上げとなる大きな収益の獲得には繋がらなかった。ライフスタイルサポート事業では、金融メディアが引き続き苦戦するも、中古車市場活況の後押しもあり、車の査定・買取サイト「ナビクル」で提携企業数増加に伴うARPU上昇、獲得件数の増加が寄与した。新型コロナウイルス感染症の影響が最も大きいブライダル関連事業は、業績は回復傾向にある。EC事業も、例年第2四半期が閑散期にあたる「cyma」にて、車体毎の販売価格の見直しを行ったことや、モール型ECサイトでの販売好調により、増収となった。
利益は、主に『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』にかかるリリース時の広告宣伝費計上が全体へ大きく影響した。
当第3四半期については、ライフスタイルサポート事業・EC事業が繁忙期となることに加え、エンターテインメント事業も『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER』での収益増加を目指した施策を順次進めていくとともに、一時投資の負担が解消するため 、同社は下半期の収益回復を予想している。
以下は通期会社計画公表前の内容となる。SR社では取材後の更新を予定している。
同社は、2022年7月期通期業績同社予想について、合理的な数値の算定が困難であるため開示を見合わせるとしている。具体的には、2021年11月17日にリリースした株式会社スクウェア・エニックスとの共同開発による、グローバル市場を対象としたスマートデバイス向けアプリ『FINAL FANTASY VIITHE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』のリリース後の状況が、期初時点では見えていなかったため。リリース後の状況を勘案し、当第2四半期決算発表のタイミングを目途に開示することを検討しているとしている。
引き続き「ヴァルキリーコネクト」「ユニゾンリーグ」「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-」など既存の主力タイトルの効率的な運用を進める。同時に、2022年7月期にリリースを予定している株式会社スクウェア・エニックス(東証1部、9684)との共同開発による、グローバル市場を対象にしたスマートデバイス向けゲームアプリ『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』の開発およびリリース後の運営に注力する。本タイトルのリリース時期、その後のプロモーションや運営の動向次第では大きな業績のアップサイド要因となり得るが、2021年9月10日現時点で合理的な収益の見通しを立てることは困難な状況であるとしている。
方向転換の背景:Newzoo Global Games Market Reportによれば、グローバルゲーム市場規模は2021年の1,758億USドルから2024年に2,187億USドルに拡大すると予想される(2021年から2024年の予想年平均成長率7.5%)。1ゲーム当りの開発費用が高騰している(2018年に同社がリリースしたゲームの開発費用は2012年にリリースしたゲームの開発費用に比べて10倍となった)。10年前にコンソール、PC、モバイルに分けれていたゲームのエコシステムは、クロスプラットフォームの継続的な革新により、相互にクロスするものとなりつつある。1つのゲームをマルチデバイス展開することで開発費を希薄化することができる。
スマートフォン向け大型協業IPゲーム1本:株式会社スクウェア・エニックスとの共同開発による、グローバル市場を対象にしたスマートデバイス向けアプリ『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』。2021年中に配信予定。
ヘルスケア領域:6.7百万人の女性が利用する女性向け体調管理・悩み相談アプリ「ラルーン」による女性向けヘルスケアサービスを展開している。MAU(Monthly Active Users)1.3百万人(以上、2020年7月期実績)。広告収入、プレミアム会員からの課金、サプリメントEC収入(妊活サプリ「minorie」が収益源。
要約
事業概要
同社は、インターネットを軸に、引越し、自動車、ブライダル、金融などを含む多様なマーケット向けに、多角的に事業を展開する総合IT企業である。顧客は企業および個人、最終ユーザーは個人。日常生活に密着した比較サイトや情報サイトの企画・開発および運営を行う「ライフスタイルサポート事業」(2021年7月期売上高構成比65.2%、同営業利益構成比76.2%)、グローバルデジタル配信ゲーム市場(モバイルゲーム、PCゲームデジタル配信、コンソールゲームデジタル配信)全般向けゲームの企画・開発および運営を行う「エンターテインメント事業」(同23.3%、同19.4%)、完全組立自転車を消費者へ届ける自転車専門通販サイトの企画・開発および運営を行う「EC事業」(同11.5%、同4.4%)を展開している。
特徴の異なる3つの事業を手掛けることで、経営の安定性と高い成長性のバランスを実現してきた(2018年7月期までの過去5年間の営業利益年平均成長率(CAGR)22.3%)。その後、「エンターテインメント事業」の成長鈍化、「ライフスタイルサポート事業」の新規領域開拓などの先行投資に加え、新型コロナウイルス感染症のネガティブ影響を受けるなどにより、2021年7月期に掛けて3期連続の営業減益となった。「エンターテインメント事業」ではグローバルデジタル配信ゲーム市場全般への展開を進め、「ライフスタイルサポート事業」では既存サービスの拡大と同時に新規領域を軌道に乗せ、「EC事業」では品揃えNo.1且つ実店舗と同等の接客品質を兼ね備えたオンライン自転車ストアを目指す。2022年7月期については、前年度に先行投資した様々な施策が全体の収益増大に結び付くよう、下支えとなる既存サービスでの安定的な収益獲得及び運営の効率化を進め、耐え忍ぶ1年になると考えている。
「ライフスタイルサポート事業」は、サブセグメント「デジタルマーケティング支援ビジネス」と「プラットフォームビジネス」から成る。「デジタルマーケティング支援ビジネス」では、引越し、自動車、ブライダル、金融など、人生のイベントにおける様々な領域において、比較サイトや情報サイトの企画・開発および運営を行っている。主な収益は、同社運営の比較・情報サイトで集客した利用者を顧客企業(引越し業者、中古車買取事業者、結婚式場など)に紹介することで得る見込客送客手数料である。「プラットフォームビジネス」では、女性の体調管理・お悩み相談アプリ「ラルーン」を中心とするヘルスケア領域と、プログラマ向け技術情報共有サービス「Qiita」やエンジニア向け転職支援サービス「Qiita Jobs」などのエンジニアリング領域を含む。広告収入およびEC収入、人材紹介料などが主な収益源となる。
一方、「エンターテインメント事業」では、従前は同社オリジナルのスマートデバイス向けゲームおよびツールアプリに的を絞っていたが、2020年7月期以降は他社が保有するIPとの提携やモバイルゲーム、PCゲームデジタル配信、コンソールゲームデジタル配信を含むデジタル配信ゲーム市場全般への展開により、全世界マーケットでのサービス提供を視野に入れた企画・開発を進めている。同社は世界155ヵ国へ直接配信できる体制を構築し、ノウハウを蓄積している。ロールプレイングゲームの「ユニゾンリーグ」、「ヴァルキリーコネクト」、シミュレーションゲームの「ダービーインパクト」など、海外でも遊ばれている人気タイトルを複数保有している。主な収入は提供ゲームなどにおけるユーザーのゲーム内アイテム課金料である。
原則として同社の技術者がサイトやコンテンツを開発し、企画から運営に至るノウハウを自社内に蓄積している。サービス展開により蓄積したWebプロモーションノウハウ、多様な領域に転用可能なシステム基盤、複数サービスの展開により相互送客を可能ならしめる顧客資産を有する。検索エンジン経由でWebの来訪者を増やすSEM(Search Engine Marketing)、顧客企業との地道な関係性構築、コールセンターなどによるユーザーサポートも特徴。これらが同社の競争優位の源泉となっている。
同社の林社長は、小学生時代からソフト開発に熱中し、ソフト開発技術を蓄積してきた。一方で、徹底したマーケットインの発想を貫き、少数のヒットタイトルに依存しがちなゲーム業界において、同社では複数のタイトルが収益成長に寄与している。また、世界向けのタイトルでは、開発チームに外国人を加えるとともに、海外で人気のあるゲームの要素を織り込みヒットにつなげている。ライフスタイルサポート事業では、利用者アンケートを顧客企業にフィードバックするなどの取組で、顧客企業と密接な関係を構築している。
業績動向
2021年7月期実績は、売上高31,252百万円(前期比1.5%減)、営業利益701百万円(同44.9%減)、経常利益895百万円(同28.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益877百万円(前期は純損失519百万円)。前期比1.5%減収:ライフスタイルサポート事業は、新型コロナウイルス感染症の影響により主に結婚式場情報サイト「ハナユメ」が引き続き減少したものの、引越し比較サイト「引越し侍」の繁忙期が堅調に推移したことにより同1.5%増収。エンターテインメント事業は、既存ゲームが引き続き減収傾向にあり同13.9%減収。EC事業は、オペレーション効率の改善・在庫管理の徹底・品揃えの見直しの奏功、およびコロナ禍での高い自転車需要、タレントを起用したマスプロモーションを実施したことから同12.5%増収。同44.9%営業減益:ライフスタイルサポート事業は、「ハナユメ」の売上高減少に伴う利益の減少に加え、2020年12月に行われたGoogleコアアルゴリズムアップデートによるキャッシング・カードローン総合検索サイトやクレジットカード総合検索サイトのSEO(検索エンジン最適化)への影響に伴うリスティング広告への投資の増加により同23.5%減益となった。エンターテインメント事業は、引き続き既存ゲームアプリの効率的な運用を実現できているものの、株式会社スクウェア・エニックスとの共同開発による、グローバル市場を対象にしたスマートデバイス向けアプリ『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』の開発費を計上しているため同52.4%減益。EC事業は、増収と業務効率化により損益が改善(前期は損失43百万円)し、セグメント利益84百万円と初の通期黒字となった。売上総利益率は前期比2.3%ポイント低下の70.2%、販管費率は同0.8%ポイント低下の68.6%となり、営業利益率は同1.4%ポイント低下の1.6%となった。
2022年7月期会社計画(2022年3月11日発表):売上高は32,500百万円(前期比4.0%増)、営業損失700百万円(前期は営業利益701百万円)、経常損失700百万円(同経常利益895百万円)、親会社株主に帰属する四半期純損失850百万円(同当期純利益877百万円)。同社は、2022年7月期通期業績同社予想について、2021年11月17日にリリースした『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』についての適切かつ合理的な数値の算定が困難であったため開示を見合わせていたが、業績予想を作成するうえで十分な数値が整ったため通期会社予想を発表した。
当上半期の売上高は、『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER』が既存ゲームアプリや他事業の一部サービスの減衰を補うには至らず、全体の底上げとなる大きな収益の獲得には繋がらなかった。ライフスタイルサポート事業では、金融メディアが引き続き苦戦するも、中古車市場活況の後押しもあり、車の査定・買取サイト「ナビクル」で提携企業数増加に伴うARPU上昇、獲得件数の増加が寄与した。新型コロナウイルス感染症の影響が最も大きいブライダル関連事業は、業績は回復傾向にある。EC事業も、例年第2四半期が閑散期にあたる「cyma」にて、車体毎の販売価格の見直しを行ったことや、モール型ECサイトでの販売好調により、増収となった。利益は、主に『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』にかかるリリース時の開発費及び広告宣伝費の計上が全体へ大きく影響した。
当第3四半期については、ライフスタイルサポート事業・EC事業が繁忙期となることに加え、エンターテインメント事業も『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER』での収益増加を目指した施策を順次進めていくとともに、一時投資の負担が解消するため、同社は下半期の収益回復を予想している。
同社の強みと弱み
SR社では、同社の強みを、ビジネスサイクルが異なる3つの事業を有することで収益の安定化が図られていること、マーケットニーズを強く意識したゲーム開発、多角化の源泉となるデジタルマーケティングノウハウ、ビジネス展開力、技術力、だと考えている。一方、弱みは、現時点における事業セグメント間のシナジー効果の少なさ、金融メディア事業等参入障壁が低い事業領域が存在すること、知名度の低さと地方立地であるが故の人材確保の難しさ、と考えている。(「SW(Strengths, Weaknesses)分析」参照)
主要経営指標の推移
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**2013年7月期より連結決算となっている。
直近更新内容
役員報酬の減額
株式会社エイチームは、役員報酬の減額に関して発表した。
(リリース文へのリンクはこちら)
同社は、経営業績悪化の状況を真摯に受け止め、費用削減による経営の効率化を図るとともに、経営上の責任を明確にするため、以下の通り役員報酬を減額することを決議した。
役員報酬減額の内容
自己株式の取得結果及び取得終了
株式会社エイチームは、自己株式の取得結果及び取得終了に関して発表した。
(リリース分へのリンクはこちら)
同社は、⾃⼰株式取得を以下のとおり実施した。2021年9⽉10⽇開催の取締役会決議に基づく⾃⼰株式の取得は、これをもって終了した。
取得対象株式の種類:同社普通株式
取得株式の総数:71,700株
株式の取得価額の総額:57,199,700円
取得期間:2022年1⽉4⽇〜2022年1⽉19⽇(約定ベース)
取得⽅法:東京証券取引所における市場買付
業績動向
四半期実績推移
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**ライフスタイルサポートの引越し関連事業で展開している引越し周辺サービス「エアコン取付け・取外し工事」などの外部委託費用については、2017年7月期までは「支払手数料」として計上していた。取引に対する同社および委託先の役割の変化を鑑み、外注委託に該当すると判断したため、2018年7月期より「外注費」として計上している。2018年7月期第1四半期における計上変更対象額は185百万円
2022年7月期第2四半期実績(2022年3月11日発表)
概要
2022年7月期第2四半期累計(上半期)実績
当上半期(2021年8月~2022年1月)の売上高は14,982百万円(前年同期比0.7%増)、営業損失1,143百万円(前年同期は営業利益221百万円)、経常損失1,136百万円(同経常利益363百万円)、親会社株主に帰属する四半期純損失729百万円(前期は純利益741百万円)となった。営業損失となったのは、株式会社スクウェア‧エニックスとの共同開発による、グローバル市場を対象としたスマートデバイス向けアプリ『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』(2021年11月17日リリース)の開発コスト(リリース前最後の開発費計上)とプロモーション費用が最大の要因。当上半期に一時的投資約1,200百万円が発生した。同社は、当下半期には当該負担が解消し、収益性が改善すると予想している。
進捗率
2022年7月期通期会社予想(2022年3月11日発表*)に対する当上半期実績の進捗率(2020年7月期実績に対する前年同期実績の進捗率)は、売上高46.1%(47.6%)、営業損失計上(31.5%)、経常損失計上(40.6%)、親会社株主に帰属する四半期純損失計上(85.2%)であった。
2022年7月期第2四半期(2021年11月~2022年1月)実績
当第2四半期(2021年11月~2022年1月)の売上高は7,648百万円(前年同期比3.7%増、前四半期比4.3%増)、営業損失891百万円(前年同期は営業損失157百万円、前四半期は営業損失252百万円)、経常損失894百万円(同経常損失30百万円、同経常損失242百万円)、親会社株主に帰属する四半期純損失584百万円(同純利益483百万円、同純損失145百万円)。
売上高
上半期実績
当上半期の売上高は14,982百万円(前年同期比0.7%増)となった。ライフスタイルサポート事業は前年同期比3.1%増収。エンターテインメント事業は同11.2%減収、EC事業は同14.8%増収。
グローバル市場を対象としたスマートデバイス向けアプリ『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER』が既存ゲームアプリや他事業の一部サービスの減衰を補うには至らず、全体の底上げとなる大きな収益の獲得には繋がらなかった。ライフスタイルサポート事業では、金融メディアが引き続き苦戦するも、中古車市場活況の後押しもあり、車の査定・買取サイト「ナビクル」で提携企業数増加に伴うARPU上昇、獲得件数の増加が寄与した。新型コロナウイルス感染症の影響が最も大きいブライダル関連事業は、業績は回復傾向にある。EC事業も、例年第2四半期が閑散期にあたる「cyma」にて、車体毎の販売価格の見直しを行ったことや、モール型ECサイトでの販売好調により、増収となった。
第2四半期実績
当第2四半期(2021年11月~2022年1月)の売上高は7,648百万円(前年同期比3.7%増、前四半期比4.3%増)となった。ライフサポートサポート事業は前年同期比0.3%増収、前四半期比3.3%減収、エンターテインメント事業は同5.8%減収、同23.1%増収、EC事業は同59.9%増収、同15.8%増収となった。
営業損失
上半期実績
当上半期の営業損失は1,143百万円(前年同期は営業利益221百万円)となった。ライフスタイルサポート事業は金融メディアでの減収、CPA悪化が影響し同39.2%減益。エンターテインメント事業は、セグメント損失897百万円を計上。株式会社スクウェア・エニックスとの共同開発による、グローバル市場を対象にしたスマートデバイス向けアプリ『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』のリリース時に、大型プロモーションのための広告宣伝費を計上したことが背景。EC事業は、販売価格の見直しの反動で利益率が低下したことに加え、新規サービス「Obremo(オブレモ)」への投資により、セグメント損失53百万円を計上。
売上総利益率は前年同期比2.8%ポイント低下の72.4%、販管費率は同6.3%ポイント上昇の80.0%となった。
第2四半期実績
当第2四半期(2021年11月~2022年1月)の営業損失は891百万円(前年同期は営業損失157百万円、前四半期は営業損失252百万円)となった。ライフスタイルサポート事業は営業利益118百万円(前年同期比84.1%増益、前四半期比38.4%減益)となった。エンターテインメント事業は営業損失737百万円(前年同期は営業利益121百万円、前四半期は営業損失160百万円)を、EC事業は営業損失19百万円(同営業利益6百万円、同営業損失34百万円)を計上した。ライフスタイルサポート事業は、中古車市場活況に伴い、車の査定・買取サイトの「ナビクル」が堅調であった。エンターテインメント事業は新規協業ゲームの開発費および広告宣伝費の計上により収益性が悪化した。EC事業は「cyma-サイマ-」の販売戦略の見直し(価格一部下げて販売している)による利益率の低下、およびペットフード「Obremo」への投資により、営業損失計上となった。
連結子会社の再編および連結子会社の商号変更
同社は、2022年2月1日、連結子会社の再編(会社分割および吸収合併)および連結子会社の商号変更を予定通り完了した。
会社分割および吸収合併の目的
ライフスタイルサポート事業におけるデジタルマーケティング支援ビジネスのさらなる成長に向け、経営資源を集中し効率化および機能強化を図るとともにLTV向上を目指したDXを実現すること。
商号変更
自己株式の取得
同社は、2021年9月13日から2022年1月19日にかけて、以下の自己株式取得を行った。
セグメント別業績動向
セグメント別の業績動向は以下の通りである。
ライフスタイルサポート事業
上半期実績
当上半期の売上高は9,880百万円(前年同期比3.1%増)となった。金融メディアで引き続きGoogleアルゴリズムアップデートによるSEO(検索エンジン最適化)順位の変動と競合他社のWeb広告の出稿強化が影響し減少したものの、車の査定・買取サイトの「ナビクル」において提携企業数増加に伴うARPU(1ユーザーあたりの平均売上)の上昇及び獲得件数の増加により、ライフスタイルサポート事業全体では微増収となった。
セグメント利益は、「ナビクル」が増収に伴い増益となるも、金融メディアでの減収とCPA悪化が影響し、全体として減益となった。
同セグメントの事業では、様々な事業領域において、個人の利用者に向けてサービスを展開する事業者と提携し、「三方よし」のサービス理念のもと、人生のイベントや日常生活に密着した比較サイト・情報サイト等様々なウェブサービスを展開している。
2020年7月期より、サブセグメント区分を「デジタルマーケティング支援ビジネス」と「プラットフォームビジネス」の2つに変更した。また、2021年7月期より、「プラットフォームビジネス」において展開していたヘルスケア領域のEC(「minorie (ミノリエ)」など)を「その他」と区分した。
デジタルマーケティング支援ビジネスは、オウンドメディア等を通じて、提携事業者へ見込顧客を送客するデジタルマーケティング支援を中心に、スピーディに事業を横展開できる特徴を持つ。多様な事業領域におけるサービスを急速に立ち上げ、拡張させることで、収益を積み上げるビジネスモデル。個人の利用者へは基本無料でサービスを提供し、パートナー企業に見込客を紹介することに対する紹介手数料及び成約報酬が主な売上高である。
プラットフォームビジネスは、アプリケーションやウェブサイトなどを通じて情報を集めた「場」を提供し、ユー ザーデータの蓄積と活用、そして独自価値の向上により、市場での優位性を構築し、さらにデータを活用したソリューションを提供することで、価値向上のサイクルを図っていくビジネスモデル。 主な収益は広告収入や有料会員向けの利用料、ツールやECなどのソリューション提供による売上高。現在は、ヘルスケア・エンジニア領域においてプラットフォームを展開している。
第2四半期実績
当第2四半期(2021年11月~2022年1月)の売上高は4,859百万円(前年同期比0.3%増収、前四半期比3.3%減収)となった。その内、デジタルマーケティング支援ビジネスが4,299百万円(同2.9%減収、同4.7%減収)、プラットフォームビジネスが186百万円(同8.8%増収、同7.5%増収)、その他が374百万円(同53.9%増収、同10.3%増収)となった。
営業利益は118百万円(前年同期比84.1%増益、前四半期比38.4%減益)となった。
デジタルマーケティング支援ビジネスにおいては、中古車市場の活況を受けて、車の査定・買取サイトの「ナビクル」において提携企業数増加に伴うARPU(1ユーザーあたりの平均売上)の上昇および獲得件数の増加した。また、コロナ禍でネガティブ影響が大きかったブライダル事業が前年同期比増収となった。更に、新規事業において、投資を行っている一方で、売上高が増収傾向にあり、収益性が改善した。一方で、金融メディアで引き続きGoogleアルゴリズムアップデートによるSEO(検索エンジン最適化)順位の変動と競合他社のWeb広告の出稿強化の影響を受けた。キャッシング・クレジットカードで当該提供を強く受けるも、保険では集客のための出稿が拡大傾向にあるとのこと。
プラットフォームビジネスでは、「ラルーン」が、薬機法の改正(その一つに、信頼確保のための法令遵守体制当の整備があり、その1つが虚偽・誇大広告による医薬品当の販売に対する課徴金制度創設)の影響により、広告単価が低下し、前年同期比減収となった。一方、「Qiita Jobs」が2021年12月に開催したイベント報酬などにより前年同期比増収となり、全体でも増収となった。2022年1月25日、日本最大級のエンジニアコミュニティ「Qiita」のユーザーと運営のコミュニケーションの場として「Qiita Discussions」の正式運用を開始した。「GitHub Discussions」(コミュニティ向けの共同コミュニケーションフォーラム)を用いて、ユーザーからの意見表明や、運営から情報共有を行うことができる、双方向のオープンなコミュニケーションを実現する場を提供した。
*図の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた差異であることに留意
*図の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた差異であることに留意
*利用件数、ARPU、CPAの定義は、以下の通り。
①利用件数:主要サブセグメント4事業のサービス利用件数(売上高が発生したもののみ)の合計(同一利用者が複数サービスを利用した場合は、獲得コストの発
生ベースでカウント)
②ARPU(Average Revenue per User):利用者1人/組当たりの売上高=セグメント売上高÷①利用件数
③CPA(Cost per Acquisition):顧客獲得1人当たりの広告単価=広告宣伝費÷①利用件数
*図の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた差異であることに留意
エンターテインメント事業
上半期実績
当上半期の売上高は3,301百万円(前年同期比11.2%減)、セグメント損失は897百万円(前年同期はセグメント利益214百万円)となった。
売上高は、既存ゲームアプリは、イベント開催などにより一時的に好調に推移した一部ゲームアプリがあったものの引き続き減少傾向となった。2021年11月17日にリリースした新規ゲームアプリ『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』は、リリース後の売上高が、既存ゲームアプリの減衰を補うには至らず、全体では前年同期比減収となった。
セグメント利益は、『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』のリリース時における大型プロモーションのための広告宣伝費計上により大幅に減少した。
同セグメントでは、自社で開発したオリジナルスマートデバイス向けゲームアプリを、Apple Inc.が運営するApp StoreおよびGoogle Inc.が運営するGoogle Play等を配信する専用のプラットフォームを通じて提供している。ゲームアプリ自体は基本無料で提供し、ユーザーがゲームをより効率よく進めるためのアイテムを購入することで、そのアプリ内アイテム購入代金が主な収益となる。
近年のグローバルにおけるゲーム市場環境の変化・ユーザーニーズの変化、技術の進化等を踏まえ、エンターテインメント事業はスマートフォンゲーム専業からの脱却を図る。グローバルゲーム市場(モバイルゲーム、PCゲームデジタル配信、家庭用ゲームデジタル配信)全体をターゲットに、グローバルで人気のIPと提携し、展開することを中長期方針とし、さらなる成長を狙う。
第2四半期実績
当第2四半期(2021年11月~2022年1月)の売上高は1,822百万円(同5.8%減収、同23.1%増収)、セグメント損益は営業損失737百万円(前年同期は営業利益121百万円、前四半期は営業損失160百万円)の計上となった。既存タイトルの下降傾向と、新規タイトルの初速売上高の低調により、前年同期比減収となった。利益については、新規タイトル(『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』)の開発費および広告宣伝費の計上を主因に、損失計上となった。当第2四半期のエンターテインメントセグメントの広告宣伝費は874百万円と、第1四半期比でも743百万円程度増加しており、一時的に広告宣伝費が膨らんだ。開発投資額も第2四半期には増加している。ただし、これら一過性の費用による影響は当下半期には減少し、売上高の伸びに伴い利益も確保すると同社は想定している。プロモーション費用も第3四半期以降は減少する見込みであるとのこと。
『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』
当第3四半期以降、運営の改善およびユーザーの要望を踏まえたアップデートを重ねつつ、収益改善を図る。2022年2月28日、シーズン2「Dominate the Sky」がリリースされ、投入後にKPIは徐々に改善しているとのこと。コラボレーションや更なるアップデートにより、ユーザーが購入したくなるようなアイテムの販売やガチャ的な要素により課金率を増やし、マネタイズ手法を改善させる。また、クラッシュしてアプリが落ちるなどの問題も発生しているため、ゲームとしての遊びやすさも向上させていくとしている。
ファイナルファンタジーのファンがユーザーの中心であり、バトルロイヤルのみならず、ストーリー的な部分のユーザーからの期待の高さもあり、定着しているユーザーが同社の当初想定より少ないと同社は認識している。シーズン2はリリース前に開発が終了しているため、課題の改善については、シーズン3移行のリリースからとなる。ユーザーの声に応える機能を追加し、マネタイズすることを検討していくとしている。
今後の方針
同社は、これまでに培った技術・ノウハウを活用して、NFTゲームおよびメタバースへの参入に向け準備をしていることを、当第2四半期決算発表の場で明らかにした。同社が認識する以下の3つの強みを新領域に生かすことが可能であると同社は考えている。
2021年にベトナムに拠点を置く運営会社Sky Mavisがリリースした「Axie Infinity」というNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)*ゲームがゲーム業界から注目されており、同社も注目しているとのこと。所有権やデジタルコンテンツの扱いには難しい部分があると同社は見ているが、同社が参入を準備するNFTゲームは新興国をターゲットとするため、同社の強みであるグローバルでのリリースや運用といった経験を活かすことが可能であると同社は考えている。メタバースについては、3Dによるグローバル展開を同社は想定しているとのこと。メタバースは完全同期型コンテンツとなるため、バトルロイヤルで培ったサーバー・アプリ運用といった同社の強みを活用することが可能であると同社は考えている。
新規開発パイプライン
従来からの2本(以下の1と2:自社オリジナル、他社協業)については、2に若干の変更(IPが外された)があった。それら2つに加え、NFTとメタバース(いずれも自社オリジナル)が加わり、以下の通り、4つのパイプラインとなった。
*図の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた差異であることに留意
*図の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた差異であることに留意
EC事業
上半期実績
当上半期の売上高は1,799百万円(前年同期比14.8%増)、セグメント損益は営業損失53百万円(前年同期は営業利益80百万円)となった。
売上高は、「cyma-サイマ-」が車体ごとの販売価格の見直しにより販売台数が増加したことに加え、モール型ECサイトでの販売が好調に推移したことにより全体として前年同期比増収となった。
セグメント損益は、販売価格の見直しの反動で利益率が低下したことに加え、新規サービス「Obremo(オブレモ)」への投資により、全体としては同減益、営業損失の計上となった。
同セグメント事業では、自転車専門通販サイトを運営する「cyma-サイマ-」をはじめ、複数の商材を取り扱うECサイトを運営している。
自転車通販サイト「cyma-サイマ-」は、2013年12月にサービスを立ち上げて以来、東海、関東、関西3カ所に物流倉庫を構え、国内外から仕入れた200種類以上の完成品自転車を自社で在庫を持ち、専属のプロ整備士により整備された完全組立自転車をオンラインで販売し、自宅まで配送する自転車専門通販サイトである。
「ココロが動く買い物を」をミッションに、品揃えや販売方法、配送品質を日々改善し、ユーザーの期待を大きく超える購買体験ができるサービスを提供している。
第2四半期実績
当第2四半期(2021年11月~2022年1月)の売上高は966百万円(同59.9%増収、同15.8%増収)、セグメント損益は営業損失19百万円(前年同期は営業利益6百万円、前四半期は営業損失34百万円)の計上となった。自転車通販サイト「cyma-サイマ-」の自転車販売価格の見直しによる数量増およびモール型ECサイトでの販売が好調に推移し、増収となった。一時、在庫過多に加え価格競争などもありKPIが悪化したが、販売価格の見直しにより、在庫回転率などのKPIが改善するとともに増収となった。
一方、利益面では、「cyma-サイマ-」における販売価格見直しに伴う利益率低下や新規サービス「Obremo」への投資により、若干の損失計上となった。ヒューマングレードドッグフード「Obremo」の累計販売量が当第2四半期末までに50,000食を突破した。
自転車については、コロナ影響による需要の拡大は一巡したが、自転車をECで購入する文化が定着したと同社は考えている。ペットフードについては、コロナ影響で人々がペットと過ごす時間が増え、高品質なペットフードの需要も伸びているため、需要に合わせて同社業績も伸ばしていけると同社は考えている。当第2四半期末現在はドッグフードのみだが、キャットフードなども展開していくとのこと。
*図の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた差異であることに留意
2022年7月期の会社計画
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。事業別の営業利益構成比は調整前利益を100%として計算
**会社予想は直近の値
概要
2022年7月期会社計画(2022年3月11日発表):売上高は32,500百万円(前期比4.0%増)、営業損失700百万円(前期は営業利益701百万円)、経常損失700百万円(同経常利益895百万円)、親会社株主に帰属する四半期純損失850百万円(同当期純利益877百万円)。
同社は、2022年7月期通期業績同社予想について、2021年11月17日にリリースした『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』についての適切かつ合理的な数値の算定が困難であったため開示を見合わせていたが、業績予想を作成するうえで十分な数値が整ったため通期会社予想を発表した。
当上半期の売上高は、『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER』が既存ゲームアプリや他事業の一部サービスの減衰を補うには至らず、全体の底上げとなる大きな収益の獲得には繋がらなかった。ライフスタイルサポート事業では、金融メディアが引き続き苦戦するも、中古車市場活況の後押しもあり、車の査定・買取サイト「ナビクル」で提携企業数増加に伴うARPU上昇、獲得件数の増加が寄与した。新型コロナウイルス感染症の影響が最も大きいブライダル関連事業は、業績は回復傾向にある。EC事業も、例年第2四半期が閑散期にあたる「cyma」にて、車体毎の販売価格の見直しを行ったことや、モール型ECサイトでの販売好調により、増収となった。
利益は、主に『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』にかかるリリース時の広告宣伝費計上が全体へ大きく影響した。
当第3四半期については、ライフスタイルサポート事業・EC事業が繁忙期となることに加え、エンターテインメント事業も『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER』での収益増加を目指した施策を順次進めていくとともに、一時投資の負担が解消するため 、同社は下半期の収益回復を予想している。
以下は通期会社計画公表前の内容となる。SR社では取材後の更新を予定している。
同社は、2022年7月期通期業績同社予想について、合理的な数値の算定が困難であるため開示を見合わせるとしている。具体的には、2021年11月17日にリリースした株式会社スクウェア・エニックスとの共同開発による、グローバル市場を対象としたスマートデバイス向けアプリ『FINAL FANTASY VIITHE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』のリリース後の状況が、期初時点では見えていなかったため。リリース後の状況を勘案し、当第2四半期決算発表のタイミングを目途に開示することを検討しているとしている。
各セグメント事業の強化・拡大を図るとともに、引き続き事業の育成に向けた投資を進めながら、事業ポートフォリオの強化を図る。
在宅勤務をはじめ多様な働き方の実現に伴い、オフィスなど固定費の最適化を進め、人材採用は抑制しつつも、引き続き人材育成および組織体制・ガバナンスの強化に注力する。引き続き事業への投資は継続するも、2022年7月期については、前年度に先行投資した様々な施策が全体の収益増大に結び付くよう、下支えとなる既存サービスでの安定的な収益獲得及び運営の効率化を進め、耐え忍ぶ1年になると考えている。
2022年7月期の1株当たり配当金は16.0円(前期比横ばい)を予定している。
セグメント別業績動向
ライフスタイルサポート事業
新型コロナウイルス感染症による影響が引き続き想定されるものの、サブセグメントとなるデジタルマーケティング支援事業およびプラットフォーム事業において、利用者数の増加、利用者1人当たり売上高の向上並びに利益率の向上を図りながら、引き続きサービス間の相互送客・継続顧客の獲得に注力する。
エンターテインメント事業
引き続き「ヴァルキリーコネクト」「ユニゾンリーグ」「少女☆歌劇 レヴュースタァライト -Re LIVE-」など既存の主力タイトルの効率的な運用を進める。同時に、2022年7月期にリリースを予定している株式会社スクウェア・エニックス(東証1部、9684)との共同開発による、グローバル市場を対象にしたスマートデバイス向けゲームアプリ『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER(ファイナルファンタジーVII ザ ファーストソルジャー)』の開発およびリリース後の運営に注力する。本タイトルのリリース時期、その後のプロモーションや運営の動向次第では大きな業績のアップサイド要因となり得るが、2021年9月10日現時点で合理的な収益の見通しを立てることは困難な状況であるとしている。
EC事業
「自転車を買うならサイマ」を育てていくとともに、2021年8月より新商材である「Obremo(オブレモ)」(「中長期方針」の章で詳述)をリリースした。引き続きフルフィルメントの強化を行いながら、新しい購入体験を提供することにより独自のECサービスとしてのポジションを確立し、中長期での持続的な利益創出を目指す。季節要因およびコロナ影響、新商材への立ち上がりなど不確定な要素が多いが、長期的な成長を見据え、外部環境の変化を見据えながら機動的な投資を行っていく予定である。
自己株式の追加取得
同社は、2021年9月13日から2022年1月31日にかけて、総額500百万円(上限)、350,000株(上限)の自社株買い(東京証券取引所における市場買付)を行う。2021年3月15日から同年8月24日までに行った742,400株(取得金額1,200百万円)の自己株式取得(東京証券取引所における市場買付)に続く、追加取得となる。自己株式の取得を通じ、資本効率の向上および経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を遂行する。同社が想定する同社の企業価値および株主価値に比べて、2021年8月末時点の時価総額(約30,000百万円)が低いことも背景。株主還元策として1株当たりの価値向上を目指す。取得に要する資金は、同社が保有する投資有価証券の売却金額で賄う。
持株会社体制への移行
同社は、2021年8月1日、持株会社体制へ移行した。完全子会社である分割準備会社として設立した「株式会社エイチームエンターテインメント」にエンターテインメント事業を、「株式会社エイチームコマーステック」にEC事業を、吸収分割の方式により2021年8月1日をもって継承させ、持株会社体制への移行を完了した。同社は持株会社として引き続き上場を維持する。
ライフスタイルサポート事業の組織再編
同社子会社であるエイチーム引越し侍(商号変更を予定)を存続会社として、自動車関連事業、ライフエンディング事業、金融メディア事業、人材事業を行う同社子会社群を会社分割および吸収合併により集約する。会社分割および吸収合併の契約締結日は2021年11月中旬から同年12月(予定)、同効力発生日は2022年2月1日(予定)。ライフスタイルサポート事業におけるデジタルマーケティング支援事業ビジネスでの組織の集約による効率化と機能強化が目的の一つ。また、DX・AI投資の集中投下による成長促進と競争優位性獲得も目的の一つである。
中長期方針
中長期的、継続的な成長性を重視していく
同社は、これまで具体的な中期経営計画を発表してこなかったが、2019年7月期決算発表時には中長期方針を発表した。「エンターテインメント事業」の成長鈍化、「ライフスタイルサポート事業」の新規領域開拓などの先行投資に加え、新型コロナウイルス感染症のネガティブ影響を受けるなどにより、2019年7月期、2020年7月期に続き、2021年7月期も3期連続営業減益となった。同社は2021年7月期を2022年7月期以降に業績を飛躍させるための底打ちの1年として位置付けている。2022年7月期は、引き続き事業への投資を継続するも、前期までに先行投資した様々な施策が花開き、飛躍の1年になると同社は考えている。「エンターテインメント事業」ではマルチデバイス展開を進め、「ライフスタイルサポート事業」では既存サービスの拡大と同時に新規領域を軌道に乗せ、「EC事業」では品揃えNo.1且つ実店舗と同等の接客品質を兼ね備えたオンライン自転車ストアを目指す。
同社は、経営理念として、「みんなで幸せになれる会社にすること」「今から100年続く会社にすること」を掲げている。この基本理念の下で、単年度・四半期利益の最大化ではなく、市場環境などの変化に柔軟に対応し、中長期的・継続的な成長性を重視して経営を行うとしている。
インターネットを通じて個人の利用者に支持・利用してもらえる比較サイト・情報サイト、ゲームコンテンツ、ECサイトなどの企画・開発および運営という既存の事業軸を基本としながらも、多様な技術領域・ビジネス領域にチャレンジし、新たな収益機会を創出していくとしている。
戦略面では、「安定性」と「継続成長性」を兼ね備えたライフスタイルサポート事業、「爆発的な成長性」が期待できるエンターテインメント事業、新しい収益源創出のためのチャレンジとなるEC事業の3つの事業のバランスにより、成長を狙うとのことである。同社が考える3事業共通の同社の強みである3つの要素、デジタルマーケティングのノウハウ、ビジネス展開戦略、技術力を3事業の土台としていく。これにより中長期的には売上高で100,000百万円、営業利益率で15%程度を目指していくとしている。
セグメント別では、ライフスタイルサポート事業については、就職、結婚、出産、介護、葬儀など、ゆりかごから墓場まで、人生の各ステージにおけるライフイベントをより豊かに、生活をより便利にするサービスを多数展開している。2020年7月期にサブセグメントをデジタルマーケティング支援ビジネスとプラットフォームビジネスの2つに区分し、デジタルマーケティング支援ビジネスを軸にプラットフォームビジネス化を図っている。既存サービスの拡大と同時に新規開拓も進めている。結婚式場情報サイト「ハナユメ」のウエディングデスクの成功事例のように、ネットに加えてリアルな人材やコールセンターなどの機能も活用するなどして、「ネット」×「リアル」を実現するサービスを提供していく。新型コロナウイルス感染症の影響で結婚式の準備に不安を抱いているユーザーに対して、オンラインのブライダルイベントなどを開催し、サポートしている。また、エンターテインメント事業においては、(他社IPを活用した)他社との協業やグローバルデジタル配信ゲーム市場全般への展開により、世界中の人々に娯楽を提供していく。従来の自社オリジナルによるスマートデバイス(スマートフォン・タブレット)向け専業から脱却し、PCゲームデジタル配信やコンソールゲームデジタル配信向けを含むデジタル配信ゲーム市場全般への展開を視野にグローバル市場の開拓を図っていく。海外売上高比率50%(2021年7月期実績34%)を目指す。更に、EC事業においては、自転車の通信販売だけでなく、自転車周辺のサービスにも積極的に参画していく。品揃えNo.1且つ実店舗と同等の接客品質を兼ね備えたオンライン自転車ストアを目指す。中長期的に国内自転車販売台数の3%を目指すとしている。
一方、営業利益については、ライフスタイルサポート事業は、利用件数の増加や新規事業の収益寄与、サービス間の相互送客拡充による広告費の抑制などの貢献を見込むとしている。エンターテインメント事業は、他社との協業による新規ゲームの開発に注力するほか、売上規模に応じた適切な広告宣伝費の費消により、利益拡大を目指す。EC事業は、売上拡大や、仕入や配送の効率化により、2021年7月期に営業黒字化を1年前倒しで達成した。
同社によれば、エンターテインメント事業はヒットタイトルが生まれることで大きな収益を獲得できる爆発的な成長性が期待できる反面、飽きられないよう常に更新し続ける必要がある。一方、ライフスタイルサポート事業およびEC事業はサービスが軌道に乗り安心して使ってもらえるブランドになれば安定的、継続的な収益向上が期待できるとしている。このように、特徴の異なる事業を並行して手掛けることにより、経営の安定性の実現を目指すとのことである。またこれらの事業軸を基本としながらも、枠にとらわれずにさまざまな新規事業にチャレンジして新たな収益源の創出を図ることで、持続的な企業価値の向上を目指すとしている。
各事業における今後の目標および取組は、以下の通りである。
ライフスタイルサポート事業
サブセグメントをデジタルマーケティング支援ビジネスとプラットフォームビジネスの2つに区分した。デジタルマーケティング支援ビジネス既存4サービス(引越し関連、自動車関連、ブライダル関連、金融メディア)は堅実に利益を出しつつ、新規領域についても拡大を図る。デジタルマーケティング支援ビジネスを軸に、プラットフォームビジネスへの転換を進めていく。
ライフスタイルサポート事業において既に立ち上がっているサービスにおける同社の強みとして、Webプロモーション(規模と経験によるノウハウの蓄積)、システム(多様なサービス領域で展開するシステムの転用性)、シナジー(複数サービスで拡大する顧客基盤)の3つがあると同社では考えている。
サブセグメントをデジタルマーケティング支援ビジネス(ネット送客)とプラットフォームビジネスの2つに区分し、既存サービスの拡大と同時に新規開拓も進める。
事業領域の前提となる国内インターネット広告市場は、矢野経済研究所によれば、2019年度の1兆6,950億円から2023年には2兆8,400億円へ年率10.9%成長を遂げると見込まれる。デジタルマーケティング支援ビジネスにおいては、以下の3つの軸の観点から、ライフエンディング、不動産、生活・家計・節約などの新規サービスを含め、サービスの拡大を図る。ゆりかごから墓場まで、人生の各ステージにおけるライフイベントをより豊かに、生活をより便利にするサービスを順次開拓する。事業展開の考え方は以下の通りである。
但し、例えば、該当するサービスのインターネット広告市場の規模が大きくなくても既存事業との顧客シナジーが高い、あるいは市場成長率が低くてもノウハウが活用できるような場合には、新サービスを展開するような場合もある。
一方、プラットフォームビジネスでは、ユーザー基盤を土台に、ユーザーが投稿したデータを蓄積し、新たな価値・ソリューションを提供していく。具体的には、ラルーン(女性の体調管理ツール)を中心とするヘルスケア領域と、Qiita(プログラマ向け技術情報共有サービス)をはじめとするエンジニア領域において、顧客やエンジニアが情報を提供する場(プラットフォーム)を提供し、ユーザーデータの蓄積と活用(独自価値の向上)により、市場での優位性を確立していく。
デジタルマーケティング支援ビジネス(ネット送客)を軸に、プラットフォームビジネスへの転換を進めていく。具体例は、以下の通り。
2021年2月に、ライフサポート事業に属する同社子会社群を同社子会社エイチーム引越し侍に集約する予定である。ユーザーのデータベースを統合し、各サービスのユーザーをグループ全体のユーザーとして捉え、次のサービスにつなげるデータ基盤を構築していく。それぞれのサービスで利用者数増加と顧客単価(ARPU)向上を図る。但し、従来はARPU志向であったが、LTV志向で収益の拡大を図っていく。従来はサービス毎に独立したサービス体制であったために、1人のユーザーに対してサービス横断的な取り組みはメルマガを通じてしか実現ができていなかった。また、バーティカルメディアの各メディアで集客してビジネスを展開していたが、成長が鈍化してきている。各メディアにおいてある程度のシェアを取っているが、次の柱となる大きなものが見いだせておらず、各メディアのスポット収益となっており、ストック型のように収益が積み上がっていない。フローユーザーからストックユーザーへの転換を組織的に行うため、バーティカルメディアサイトの効率化を進める必要性があると判断したことが組織集約の背景にあるとのこと。
エンターテインメント事業
日本で企画・開発・運営行い、他社との協業による(他社IPを活用した)マルチデバイス展開により、世界中にサービスを提供する
2020年7月期以降、従前のスマートデバイス(スマートフォン・タブレット)向け専業から脱却し、PCゲームデジタル配信やコンソールゲームデジタル配信向けを含むデジタル配信ゲーム市場全般への展開を視野にグローバル市場の開拓を図っていく。キーワードは「IP」・「Global」・「マルチデバイス」。方針転換の背景および根拠は、以下の通り。
方向転換の背景:Newzoo Global Games Market Reportによれば、グローバルゲーム市場規模は2021年の1,758億USドルから2024年に2,187億USドルに拡大すると予想される(2021年から2024年の予想年平均成長率7.5%)。1ゲーム当りの開発費用が高騰している(2018年に同社がリリースしたゲームの開発費用は2012年にリリースしたゲームの開発費用に比べて10倍となった)。10年前にコンソール、PC、モバイルに分けれていたゲームのエコシステムは、クロスプラットフォームの継続的な革新により、相互にクロスするものとなりつつある。1つのゲームをマルチデバイス展開することで開発費を希薄化することができる。
方向転換の根拠①:IPホルダーとの協業・提携実績
同社の複数のゲームアプリのグローバル展開の実績により、技術力が認知・評価され、過去数年間様々なIPホルダーから協業・提携の提案がある
IPホルダーと様々なゲーム内イベントコラボレーションなどの実績もある
同②:効率良くグローバル展開可能なノウハウ
過去9年間(2020年7月期まで)に亘り、同社のゲームアプリはほぼ全てをグローバルで展開していきた
社内に約10ヵ国のスタッフがおり、社内グローバルチームが確立され、クオリティ管理体制が構築されている
9年間で培ってきた低コストで多言語対応が可能な体制と実績がある
グローバルにプロモーションを実施できる、複数地域の主要メディアとのパートナーシップが構築されている
多言語対応可能な顧客サポート体制とコミュニティ運営力を備えている
世界155ヵ国へ直接配信できる体制を構築し、ノウハウを蓄積している
同③:マルチデバイス対応可能な環境と経験
スマートフォンの台頭時期からアプリを提供し、2Dから3D、オフラインからオンラインと様々な技術を駆使してコンテンツを提供する技術力を持つ
Wiiウェアなど家庭用ゲーム機向けコンテンツの制作経験・実績があり、その際にも、北米と日本で同時にリリースを行っている
コンシューマーゲーム制作経験者などの人的リソースも持つ
ゲーム開発環境としても、ゲームエンジンの活用により、スムーズにPC・家庭用ゲーム機への移植が可能となる環境が整っている
日本、北米に加えて、アジア圏、欧州などの大きな市場を狙う。
タイトル数を絞って、人的リソースを集中的に投下し、タイトルのリッチ化を進める。2020年7月期以降の開発パイプラインは、2020年9月末現在、3本。内、1本はスマートデバイス向け大型協業IPゲーム。内、2本はマルチデバイス展開を視野に入れている。
全世界におけるマーケットの合計で年商数百億円規模の達成を目指す。海外売上比率50%以上を目指す。
EC事業
自転車専門通販No.1サイトを目指す
中長期的に国内自転車販売台数の3%を目指す。国内自転車市場(製造および輸入台数)は2012年の9,512千台から2018年の7,042千台へ緩やかに減少した後、2019年には7,124千台へ回復した。また、新型コロナウイルス感染症が拡大した2020年には7,178千台となった。特に、2020年4~6月には前年同期比12.1%増の2,048千台を記録。一方で、同(製造および輸入原価)は2012年1,130億円から2015年1,400億円へ上昇した後、2019年は1,284億円、2020年は1,306億円となっている。原価率を50%とした場合の国内自転車小売市場の規模は約2,600億円となる(以上、出所:一般財団法人自転車産業振興協会統計)。
2022年7月期に売上高3,800百万円(2021年7月期実績3,595百万円)、営業利益30百万円(同営業利益84百万円)を目標とする。自転車に特化したECサイトの展開を行ってきた過去6年間(2019年7月期まで)に、様々な課題が発生し、解決してきたノウハウ*を活用し、今後3年間かけて、収支均衡化を図る(2021年7月期に1年前倒しで達成)。2021年7月期の中盤から、効率化・精度向上のためのシステム投資を行い、仕入・物流・販売のサプライチェーン全般の改善を図ることで、損益分岐点売上高到達後、中期的に営業利益率5~10%程度を目指す。
自転車の通信販売だけでなく、自転車周辺のサービスにも積極的に参画していく。
国産・合成添加物不使用のヒューマングレードドッグフード「Obremo(オブレモ)」のEC販売
同社は、かねてよりEC化が進んでいない商材へ挑戦するとしており、2021年8月30日より、国内素材調達・国内生産、合成添加物を使わないことにこだわったヒューマングレードドッグフード**「Obremo(オブレモ)」のEC販売を開始した。厳選した生産体制で生産(委託工場でOEM生産)し、素材や栄養バランスが整った商品を提供していく。新型コロナウイルス感染症の拡大や外出自粛の影響により、自宅でペットと過ごす時間が増えたことや、ペットの健康に配慮したフードを与えたいというニーズの高まりにより、ドッグフードのプレミアム指向がより強くなっていることが背景。
小型犬向けに3種類の商品(鶏肉、馬肉、鹿肉)から選択が可能。8つの質問に回答すると、3種類の中から、愛犬に最適の1種類が提案される。合成添加物、保存料を含んでいないため、パッケージは800gの小分けサイズ。単品価格は税込4,900円(800g×2袋)。定期販売コースの場合、初回税込3,920円、2回目以降同3,920円。
M&Aおよびベンチャー投資
同社はかつては必要な要素を自社で揃える傾向が強かったが、中長期な成長の実現や企業価値の向上のためにM&Aを行うことについて前向きなスタンスに転じている。M&Aのターゲットは、既存事業の競争力強化につながると想定される企業や事業、ないしは、自社では容易に参入できない/参入するのに時間のかかる事業を営む企業である。例えば、ライフスタイルサポート事業ではシェア拡大やシナジーが見込まれる事業や関連メディアなど、エンターテインメント事業ではユーザーを獲得・確保するための国内外のメディアなど、EC事業では自転車に限らず、国内外における他のEC商材などである。
また、ベンチャー投資についても積極的な考えを持っている。ターゲットは主に以下の2つ。1つは、不確実性が高く自社による参入は躊躇されるも、中長期視点で魅力の高い事業領域や技術を保有する未上場ベンチャー企業への出資。もう1つは、同社のノウハウを活用することにより、大きな成長が見込める事業を展開する未上場ベンチャー企業への出資および業務提携。
事業内容
事業概要
同社は、「ライフスタイルサポート事業」、「エンターテインメント事業」、「EC事業」の3つを事業領域とする。特徴の異なる3つの事業を並行して手掛けることにより、経営の安定性と継続成長性を実現している。2021年7月期における主要事業の売上構成比は、「ライフスタイルサポート事業」65.2%、「エンターテインメント事業」23.3%、「EC事業」11.5%、営業利益構成比は、それぞれ76.2%、19.4%、4.4%である。
「ライフスタイルサポート事業」は、サブセグメント「デジタルマーケティング支援ビジネス」と「プラットフォームビジネス」から成る。
「デジタルマーケティング支援ビジネス」では、引越し、自動車、ブライダルなど、人生のイベントや日常生活に密着した様々な領域において、比較サイトや情報サイトの企画・開発および運営を行っている。原則として同社の技術者によりサイトやアプリを開発し、企画から運営に至るノウハウを自社に蓄積(競争力の源泉と)している。主な収益は、同社運営の比較・情報サイトで集客した利用者を顧客企業(引越し業者、結婚式場、中古車買取事業者など)に紹介することで得る見込客送客手数料である。
「プラットフォームビジネス」では、利用者に対して情報の「場」を提供し、ユーザーデータを蓄積・活用することで、独自価値を高めている。女性の体調管理・お悩み相談アプリ「ラルーン」では、生理日予測・基礎体温管理・体重管理などに加え、コミュニティ機能を充実させ、会員同士の悩み相談などを基本無料で提供している。同アプリの主な収益には、アプリ内に掲載する広告からの収益、プレミアム会員サービス(課金)などがある。また、妊活サプリ「minorie」ではサプリ販売が主な収益となる。一方、プログラマ向け技術情報共有サービス「Qiita」をはじめとするエンジニアリング領域ではコミュニティスポンサーからの収入に加え、エンジニア向け転職支援サービス「Qiita Jobs」における人材紹介料が主な収益となる。
「エンターテインメント事業」は、従前は同社オリジナルのスマートデバイス向けゲームおよびツールアプリに的を絞っていたが、2021年7月期以降は他社が保有するIPとの提携やモバイルゲーム、PCゲームデジタル配信、コンソールゲームデジタル配信を含むデジタル配信ゲーム市場全般への展開戦略により、全世界マーケットでのサービス提供を視野に入れた企画・開発を進めている。近年の世界的なゲーム市場環境の変化・ユーザーニーズの変化、技術の進化などが背景。同社は世界155ヵ国へ直接配信できる体制を構築し、ノウハウを蓄積している。
既存タイトルでは、ロールプレイングゲームの「ユニゾンリーグ」や「ヴァルキリーコネクト」、シミュレーションゲームの「ダービーインパクト」などのスマートデバイス(スマートフォンやタブレット端末)向けゲーム・ツールアプリの企画・開発・運営を行っており、ユーザーからゲーム内アイテム課金料を得ている。
今後は、エンターテインメント事業はスマートフォンゲーム専業から脱却する方針である。スマートフォンゲーム、PCゲームデジタル配信、コンソールゲームデジタル配信を含む グローバルゲーム市場全体をターゲットに、グローバルで人気のIPと提携し、デジタル配信ゲーム市場全般への展開を中長期方針とし、さらなる成長を狙うとしている。
「EC事業」では、自転車専門通販サイト「cyma -サイマ-」を運営している。主な収益は、利用者からの自転車購入代金である。
*同社は2017年7月期より「ライフスタイルサポート事業」から「EC事業」を分離し、単独セグメントとしている。上表の2014年7月期以降の数字はこの変更を反映した遡及修正値である。
特徴の異なる事業展開による経営の安定性と高い成長性のバランスの実現
同社は、さまざまな市場の外部環境の変化に直面しながらも、堅調な収益拡大を続けている。この一因は、「ライフスタイルサポート事業」と「エンターテインメント事業」と「EC事業」といった特徴の異なる3つの事業を有する点にある。
「ライフスタイルサポート事業」は安定性と継続成長性を兼ね備えた事業として位置付けられる。
「エンターテインメント事業」は、ゲームがヒットすれば爆発的な成長力が期待できるが、好不調の波が激しいゲーム事業のボラティリティの影響を受ける可能性がある。
「EC事業」は新しい収益源を創出するためのチャレンジとして同社が考えている事業である。
同社が考える3事業共通の同社の強みである3つの要素、デジタルマーケティングのノウハウ、ビジネス展開力、技術力を3事業の土台として活用していく。
事業推移:3つのフェーズ
同社によれば、現在に至る同社の事業の推移を大別すると、3つのフェーズ(局面)に区分される。各フェーズにおける同社の主な動向は以下の通りである。
第1フェーズ(創業期。1997年から2003年ごろまで)
第1フェーズでは、従来型携帯電話向け公式サイトの開発受託で事業規模が拡大した。同社の源流は、現社長の林氏が1997年6月に個人事業として開始した、ソフトウェアの受託開発事業である。その後、2000年2月に有限会社エイチームを設立した。当初は、業務用システム開発の受託がメインであった。しかし、2000年8月に日本エンタープライズ株式会社(東証1部4829)より従来型携帯電話向け公式サイトの開発をはじめて受託してから、徐々に日本エンタープライズ社からの受託開発が主となっていた。
第2フェーズ(転換期。2003年から2006年ごろまで)
第2フェーズでは、受託開発から脱却を目指し、自社開発商品への展開を加速した。同社は、従来型携帯電話向け公式サイトの受託開発を手掛けることで売上を伸ばしたが、条件の厳しい下請け事業から脱却するために、2003年夏より自社のゲーム開発に着手。2003年12月に、同社初の自社開発ゲームとなる恋愛シミュレーションゲーム(KDDI株式会社(au)の従来型携帯電話向け)をリリースした。さらに、自社開発製品の比率を向上させるために従来型携帯電話向けの公式サイトを簡単に作れるツールを開発し発売。
これらを活用して着うたや待ち受け画面などの従来型携帯電話向けコンテンツのラインナップを広げ、従来型携帯電話向け公式サイト関連を軸に「エンターテインメント事業」の拡充に注力した。なお、2006年9月には、従来型携帯電話向けでは日本初となるMMORPG*をリリースした。現在、同社はMMORPGを得意としているが、他社に先駆けて従来型携帯電話向けMMORPGをリリースしたアドバンテージが現在につながっているとしている。
第3フェーズ(拡大期。2006年以降)
第3フェーズでは、「ライフスタイルサポート事業」への参入とスマートフォン関連へのシフトを進めた。同社は、従来型携帯電話向け公式サイト関連に続く、第2の柱として、2006年6月より引越し関連の比較サイトの企画・開発および運営を行う「ライフスタイルサポート事業」にも参入した。同社では、既に人気を博していたホテルの比較サイトにヒントを得て同事業に参入した。同社では、その後も自動車関連(車査定・車買取サイト)、ブライダル関連(結婚式場の比較・情報・予約サイト)、金融メディア(キャッシング・カードローン総合検索サイト)などの新分野への展開も進めている。
「エンターテインメント事業」については、スマートデバイス(スマートフォンやタブレット端末)へのシフトを本格化させている。従来型携帯電話向け公式サイト関連を軸に順調に売上拡大を続けていた「エンターテインメント事業」であるが2008年ごろに売上高の伸びが鈍化した。一方で、2008年ごろからスマートデバイスが登場し始めた。また、2009年ごろからはグリー株式会社(東証1部3632)や株式会社ディー・エヌ・エー(東証1部2432)、株式会社ミクシィ(東証マザーズ2121)が展開するソーシャルゲーム市場も拡大し始めた。このため、同社は、ソフト開発の主軸を従来型携帯電話向け公式コンテンツからスマートデバイスへとシフト、また、ソーシャルゲームに関しても、グリー社やDeNA社、ミクシィ社のソーシャルプラットフォーム向けにいち早く参入した。
ソーシャルゲームに関しては、2012年までに100タイトル以上をリリースしたが、大半は、出だしの好調を維持することが出来ず、失敗に終わった。なお、2011年に、同社の技術力を評価するグリー社と資本業務提携を行い、協業して製作したゲーム「AKB48ステージファイター」をリリースして、ヒットを収めた。一方、スマートデバイスは、従来の携帯電話と異なり、世界統一プラットフォームの端末であるため、ゲーム開発についても、米国市場を中心としたグローバル展開を意識したタイトルの開発に注力した。この結果、2012年2月にグローバルタイトル「ダークサマナー」を発売。同タイトルは、国内外でトップランキングを確保する大ヒットを収めた。
2020年7月期~2021年7月期:拡大期の中での再構築のフェーズ
新規事業開拓などの先行投資負担に加え、新型コロナウイルス感染症のネガティブ影響を受けるなどにより、2019年7月期から2021年7月期にかけて、3期連続の営業減益となった。
2020年7月期に、ライフスタイルサポート事業において、サブセグメントをデジタルマーケティング支援ビジネスとプラットフォームビジネスの2つに区分し、デジタルマーケティング支援ビジネスを軸にプラットフォームビジネス化を図ることを表明。エンターテインメント事業においては、2020年7月期以降、従来のスマートデバイス(スマートフォン・タブレット)向け専業から脱却し、コンソール(家庭用ゲーム機)ゲームデジタル配信やPCゲームデジタル配信向けを含むデジタル配信ゲーム市場全般への展開によるグローバル市場の開拓を図っていく。キーワードは「IP」・「Global」・「マルチデバイス」。EC事業においては、自転車に特化したECサイトの展開を行ってきた過去8年間(2021年7月期まで)に、様々な課題が発生し、解決してきたノウハウを活用した結果、2021年7月期に、計画を1年間前倒しで営業黒字への転換を果たした。
2022年7月期以降:2021年7月期までの先行投資が花開き、飛躍するフェーズ
2022年7月期は、引き続き事業への投資は継続するも、2021年7月期までに先行投資した様々な施策が花開き、飛躍の1年になると同社は考えている。
徹底したマーケットインの発想によるソフト開発と顧客企業との密接な関係の構築で差別化を実現
同社の林社長は、小学生時代からゲームソフトの開発に熱中し、ソフト開発の技術を蓄積してきた。同時に、学習塾経営やさまざまなアルバイトを経験して、同社を創業した。従来型携帯電話向け公式サイト運営時の経験や、ソーシャルゲーム立ち上げ期に苦しんだ経験を踏まえ、林氏はソフト開発の技術者でありながらも、徹底したマーケットインの発想を貫いている。
この結果、他のゲーム関連企業が少数のヒットタイトルに依存する傾向があるのに対し、同社の「エンターテインメント事業」は複数ゲームタイトルが安定した収益を計上している。また、海外展開に際しても、開発メンバーに外国人を加えるとともに、海外で人気のあるゲームの世界観や用語、絵柄と日本で人気のあるゲームを組み合わせたタイトルを制作しヒットを生み出している。
顧客企業との密接な関係性の構築
ライフスタイルサポート事業では、自社サイトで集客した利用者を顧客企業に紹介するだけではなく、利用者アンケートを定期的に顧客企業にフィードバックするなどの地道な取り組みにより顧客企業と密接な関係を構築している。IT企業でありながらも、技術だけに頼ることなく、人手をかけて顧客企業との関係性を構築することが同社のアドバンテージにつながっている。例えば、引越し関連事業(引越し侍)では、サイトの利用者に対して引越し事業者のサービスに対するアンケート(価格やサービス品質に対する満足度調査)を実施しており、2カ月から3か月分を集計して、各引越し業者にフィードバックしている。また、顧客企業に対して、担当営業員のサービスについてのアンケートも実施しており、サービス改善に役立てている。同社によればブライダル関連でも同様の取り組みを実施しているとのこと。引越し関連サービスや自動車関連サービスでは、全国の引越し業者や中古車買い取り事業者を担当営業員が定期的に訪問している。
成功モデルの横展開
既に成功しているモデルを新しい分野で展開する。例えば、国内初の携帯電話向け多人数参加型リアルタイムオンラインRPGとして同社が2006年9月に発売した「エターナルゾーン」は、パソコンで人気のあったゲームを参考にして、従来型携帯電話向けゲームとして開発し、人気を得た。また、国内外で人気を博し、現在も根強い人気を有している「ダークサマナー」は、米国市場で人気のあるダークファンタジーの要素を取り入れた。また、ライフスタイルサポート事業では、引越し関連サービスの「引越し侍」は、人気を博していたホテル予約サイトの成功モデルを参考に参入している。
SEM、SEOのノウハウ
詳細は開示されていないが、金融メディアは、後発ながら、ブライダル関連や自動車関連の売上規模を上回り、引越し関連をも上回る最大の項目に成長している(グラフから読み取ったSR社推定)。この成功は、「引越し侍」をはじめ、複数サービスの運営で蓄積した、SEM*、SEO*ノウハウの活用が寄与したとしている。
同社によれば、SEMに係る同社のエンジニアは常に経営の視点を持ちながらSEMの運用を行っているとのこと。企画段階からエンジニアが参画し、営業・デザイン・事業企画担当者や同社経営陣と議論しながら、ユーザーの動向を分析している。各エンジニアが能動的に開発・運営を行っているとのことである。
売れているものと売れているものを組み合わせ
同社が、グリー社と共同開発した、「AKB48ステージファイター」は、人気アイドルグループのAKB48と、人気ゲームのカードバトルを組み合わせることで成功を収めたとのこと。最近では、この組み合わせ戦略を重視しつつ、同社独自の新たな要素を加えて、新たな商品開発を進めているとしている。
「ネット」×「リアル」を実現するサービスの提供
結婚式場情報サイト「ハナユメ」では、全国11カ所*にウエディングデスク(来店型の相談受付店舗)を設け、ウェブとリアル店舗連携の独自ハイブリッド型ビジネスモデルを構築している。大手の寡占状態だったブライダル分野において独自の存在感を示すことに成功している。
サービス個々のターゲット属性を明確化し、提携事業者や利用者にとって選別しやすく利用しやすいサービスを提供すると当時に、Webとリアル店舗連携による顧客一元管理の徹底により、提携事業者からの信頼性と高い利用者満足度を実現している。ユーザーサポートとして、店舗での相談のほか、オンライン、LINE、電話を活用した相談に応じていている。
ネット上だけでアイデアを広げる戦い方では、チャンスを狙うベンチャー企業に追いつかれるリスクがあると同社は考えている。ただし、設備投資のリスクを負い、ハードを含めたサービスを展開することで他のベンチャー企業に模倣されにくい。
サテライトオフィスを活用した人材確保の取り組み
同社は、積極的に事業を拡充しているため、ソフトウェア開発者を中心とした継続的な人材確保が不可欠である。しかしながら、同社の本社は名古屋に立地していることもあり、人材の確保には苦戦していた。このため、同社では、サテライトの開発拠点として大阪オフィス(2012年9月開設)、東京オフィス(2015年9月開設)、子会社としてベトナムにAteam Vietnam Co., Ltd.(2016年12月)、また福岡オフィス(2018年2月開設)を設置した。
2020年に入って、新型コロナウイルス感染症が拡大するに至り、同社は2020年2月より段階的に在宅勤務を推進し、2020年8月末には約85%の従業員が在宅勤務であった。オフィスでの就業と比べて事業運営に支障がないことや、従業員の柔軟な働き方を支援する観点から、在宅勤務を継続している。
それらを踏まえ、業務運営体制の最適化と固定費の削減を目的として、2021年7月期において、大阪オフィスの一部と福岡オフィスなどの解約を決定した。
事業セグメント
ライフスタイルサポート事業
*同社は2017年7月期より「ライフスタイルサポート事業」から「EC事業」を分離し、単独セグメントとしている。上表の2014年7月期以降の数字はこの変更を反映した遡及修正値である。
概要
「ライフスタイルサポート事業」の売上構成比は65%、営業利益構成比は76%(2021年7月期)となる。
「ライフスタイルサポート事業」におけるサービス別売上構成比(2019年7月期)は、金融メディアが約33%、引越し関連が約25%、ブライダル関連が約22%、自動車関連が約17%、その他が約3%であった(グラフからの読み取り推定値;尚、2020年7月期以降は非開示)。
2020年7月期より、サブセグメントの見直しが行われ、デジタルマーケティング支援ビジネスとプラットフォームビジネスの2つに区分された。さらに、2020年7月期より、「プラットフォームビジネス」において展開していたヘルスケア領域のEC(「minorie(ミノリエ)」等)を「その他」と区分し、サブセグメント区分を「デジタルマーケティング支援ビジネス」、「プラットフォームビジネス」及び「その他」の3つとしている。
デジタルマーケティング支援ビジネスでは、引越し、自動車、ブライダルなど、人生のイベントにおける様々な領域において、比較サイトや情報サイトの企画・開発および運営を行い、サービス間で相互送客を実施している。プラットフォームビジネスはプログラマ向け情報共有サービス「Qiita」をはじめとするエンジニアリング領域を含む(後段で詳述)。
同社は、意思決定の迅速化および事業の効率化を図るために、「ライフスタイルサポート事業」の各事業を分担する子会社として、2013年2月に株式会社A.T.brides(現エイチームブライズ。ブライダル関連事業)、2013年8月に株式会社引越し侍(現エイチーム引越し侍。引越し関連事業)、株式会社 A.T.サポート(現エイチームコネクト。引越し関連事業)、株式会社エイチームライフスタイル(自動車関連事業、女性向けヘルスケア事業)と2019年2月に株式会社エイチームフィナジー(金融メディア事業)を設立している。
2017年12月、プログラマ向け技術情報共有サービス「Qiita」などを提供するIncrements株式会社の全株式を1,460百万円で取得して、子会社化した。自社で容易に参入できない、あるいは参入に時間が掛かる事業を持つ企業に該当するため、買収を通じて新たな事業展開を加速させることができると同社は判断した。
2021年8月1日、同社の完全子会社である株式会社エイチームフィナジーを存続会社とし、同じく同社の完全子会社である株式会社リンクスを消滅会社とする吸収合併を行った。リンクス社は、ライフサポート事業の転職サイトおよび転職エージェント比較サイトの企画・開発・運営を行っていた。
2022年2月1日、株式会社株式エイチーム引越し侍を存続会社として、株式会社エイチームブライズと株式会社コネクトを消滅会社とする吸収合併を行う予定。
2022年2月1日、同時に、株式会社株式エイチーム引越し侍を存続会社として、株式株式会社エイチームライフスタイルおよび株式会社エイチームフィナジーを消滅会社とする吸収合併を行う予定。同社子会社が運営するライフスタイルサポート事業におけるデジタルマーケティング支援ビジネスの更なる成長に向け、経営資源を集中し、効率化および機能強化を図ることが目的。
ビジネスモデル
デジタルマーケティング支援ビジネス
デジタルマーケティング支援ビジネスでは、引越し、自動車、ブライダルなど、人生のイベントにおける様々な領域において、比較サイトや情報サイトの企画・開発および運営を行い、サービス間で相互送客を実施している。規模と経験によるノウハウの蓄積に基づいたWebプロモーション、多様な領域で転用性の高いシステム、複数サービスにおける顧客基盤のシナジーといった特徴を持つ。代表的なサービスとしては、以下のようなものがある。
主な収入は同社が運営する比較サイトで集客した利用者を顧客企業に紹介することから得る見込客送客手数料、成約報酬、広告収入などとなる。具体的には、以下の通り。
主なコストは広告宣伝費、開発・運用・営業などの人件費など。
デジタルマーケティング支援ビジネスは2006年6月の引越し関連サービスを皮切りに、提供サービスを増やしており、事業全体の利用件数は順調に増加している。また、効率化を進め、ARPU(利用者1人/組あたり売上高)向上を進める一方でCPA(獲得者1人あたり広告宣伝費)上昇抑制も推進している。但し、2020年7月期は新型コロナウイルス感染症の影響により一部サービスにおいて需要が減少し、利用件数が減少したほか、採算の良くないエアコン販売から撤退したことにより、ARPUが減少した。連結業績における売上および利益の構成比はともに上昇傾向にある。
SR社の推計では、デジタルマーケティング支援ビジネス全体の2020年7月期の利用件数は約2.34百万件(過去5年間の平均成長率は約16%)、ARPUは約8,600円(同約5%)、CPAは約5,000円(同約4%)となる。内訳は開示されていないが、相対的に利用者単価が高いのはブライダル関連や金融関連であるが、利益額および利益率では、引越し関連および自動車関連の方が高いもようである。
プラットフォームビジネス
プラットフォームビジネスは、「ラルーン」を中心とするヘルスケア領域と、プログラマ向け技術情報共有サービス「Qiita」をはじめとするエンジニアリング領域を含む。情報を集めた「場」を提供し、ユーザーデータを蓄積・活用することで、独自価値を高める。
ヘルスケア領域:6.7百万人の女性が利用する女性向け体調管理・悩み相談アプリ「ラルーン」による女性向けヘルスケアサービスを展開している。MAU(Monthly Active Users)1.3百万人(以上、2020年7月期実績)。広告収入、プレミアム会員からの課金、サプリメントEC収入(妊活サプリ「minorie」が収益源。
エンジニアリング領域:子会社Incrementsがプログラマ向け技術情報共有サービス「Qiita」の開発・運営、および手軽に書き込みができるチーム内情報共有ツール「Qiita:Team」を展開している。また、エンジニア向け転職支援サービス「Qiita Jobs」にも注力している。Increments社の2020年7月期売上高276百万円(前期比24.9%増)、営業利益55百万円(前期は営業損失21百万円)、Qiita月間ユニークユーザー数6.79百万UU(前期比46.0%増)、Qiita期末会員数0.39百万人(同62.5%増)、Qiita月間PV57.14百万PV(同49.3%増)。コミュニティスポンサーからの収入や人材紹介料が収益源。
具体的サービスの概要
主なサービスの概要は以下の通りである。
引越し関連事業(「引越し侍」)
サービス概要
引越し関連事業は、「引越し侍」ブランドで引越し価格の一括見積サイトなどを運営している。「引越し侍」のサイトでは、利用者は1度の入力(現住所・引越し先住所・引越し希望日・荷物の量など)で、同時に最大20社超の引越し事業者から引越し料金の見積もりを受けることができる。また、一括見積だけでなく、ネット上で一覧比較・予約サービスも提供している。なお、同社では全国280社以上の引越し事業者と提携している。
同社の調べによれば、国内で引越し事業者を使って引越しをする人の28.2%(2018年末時点)が、同社の「引越し侍」を利用しているという。また、付随サービスとして、引越しに伴い手続きが必要な電話・インターネット回線・新聞等の申し込み紹介サービスなど、引越し前後に利用する関連サービスをコールセンター経由で紹介している。
ビジネスモデル
引越し関連事業の主な収益は引越し事業者に見込客を紹介することに対する紹介手数料および成約報酬である。一方、費用の最大項目は広告宣伝費である。同事業では、集客をグーグルやヤフー社のリスティング広告に依存しており、売上高に対する広告宣伝費は費用の大部分を占めるもようである。また、同事業には、100名強の人員が従事しているもようである。ウェブサイトの運営に加えて、コールセンターの人員も増加するため、他事業に比べて相対的に人員の比率が高くなっている。他事業に比べて顧客単価は低いものの、ARPU(顧客単価)とCPA(獲得者1人当たり広告宣伝費)の差が他事業より大きいため、利益額および利益率は「ライフスタイルサポート事業」の平均値よりも高い水準にある。
同サービスの持つ強みと戦略
サービス面では、価格優先の「一括見積」に加え、品質優先で煩わしさ低減の「比較・予約」という2つの選択肢を提供できる強みがある。また、多様な周辺サービスの拡充により、充実したサービスポートフォリオ、多様なマネタイズ手法を確立できる。営業面では、提携引越し事業者数280社強を有する点が強みである。また、営業努力を絶やさず、利用者の声をフィードバックする等、提携事業者に付加価値を継続して提供することで、利用者・提携事業者との密接な関係を構築している。マーケティング面では、同社が有する技術力を背景として、高いSEO(検索エンジンの最適化)ノウハウを有しており、効率的な運用により高い利益率を実現している。
今後のマーケット戦略としては、認知度向上のためのマスマーケティングにより、比較サイトを利用せずに引越し業者を選ぶ潜在層にアプローチするとのことである。また、引越し時に発生する周辺サービスをさらに拡充し、ワンストップ型サービスの確立を目指すとしている。
自動車関連事業(「ナビクル」)
サービス概要
自動車関連事業では「ナビクル」などのブランドで中古車買取価格の一括査定サイトなどを運営している。「ナビクル」のサイトでは、利用者は1度の入力(車種・年式・走行距離など)で、同時に最大10社の中古車買取事業者から買取価格の見積もりを受けることができる。中古車買取事業者の業界団体である一般社団法人日本自動車流通研究所(略称JADRI)を通じてJADRIに加盟する全国の中古車買取事業者と提携しており、同社はサービスを無償で利用者に提供している。
ビジネスモデル
自動車関連事業の主な収益は、中古車買取事業者に見込客を紹介することに対する中古車買取事業者からの紹介手数料である。同事業も、集客はリスティング広告を用いているため、広告宣伝費は費用の大部分を占める。また、同事業にはウェブサイトの運営のために10~20人程度の人員が従事しているもようである。他事業に比べてARPU(顧客単価)とCPA(獲得者1人当たり広告宣伝費)の差が他事業より大きいため、利益額および利益率は「ライフスタイルサポート事業」の平均値よりも高い水準にある。
同サービスの持つ強みと戦略
同社では、JADRIと一緒にビジネススキームを構築するとともに、消費者への安全・安心なサービス提供を促進するJPUC(一般社団法人日本自動車購入協会)に所属し、利用者・提携事業者との信頼関係を構築しているとのことである。また、ソフト開発会社でもある同社は独自の集客システム・WEBマーケティングノウハウおよびその運用体制が強みであるとしている。自動車販売・自動車保険等、周辺サービスを拡充し、顧客1人あたり単価を向上しつつ、収益の積上成長を図るとしている。
ブライダル関連事業(「すぐ婚navi」。2016年11月8日より「ハナユメ」へサービス名称を変更)
サービス概要
ブライダル関連事業では、「ハナユメ」ブランドで結婚式場(全国約600カ所以上)の見学・予約・情報サイトを運営している。同社では、「6か月以内の空き日程」だからこそお得になるすぐ婚特典をメインコンテンツにすることで、他の結婚式場情報サイトとの差別化を図っていたことからスタートし、「ハナユメ」ブランドにリニューアルして以来より幅広い層にターゲットを広げている。なお、同サービスは、関東、関西、東海、九州、海外の結婚式場と提携している。また、サイト運営だけでなく、直営のウエディングデスク(ハナユメ無料相談デスク)を11店舗(関東3店舗、関西4店舗、東海3店舗、九州1店舗)運営している。
ビジネスモデル
同社はサービスを利用者に無償で提供しており、主な収益はサイトへの情報掲載料、結婚式場に見込客を紹介することに対する紹介手数料および成約した結婚式代金に応じた成約報酬である。同事業の主な費用項目は人件費、広告宣伝費、リアル店舗(ハナユメ無料相談デスク)の家賃などである。リアル店舗を構えているため、同事業に属する人員は約100人強と他の事業に比べて多くなっている。また、広告宣伝費はマス広告などのブランディング広告が主体である。