同社は中期的に物流投資事業の年間開発件数を増やすことによりフロービジネスの収益変動幅を縮小できる。物流施設は、電子商取引、3PL(Third Party Logistics)市場の成長を背景とする先進的物流施設の需要拡大、首都圏近郊の道路整備進展により新規物流施設開発候補地が創出される事業環境を背景として、開発量を拡大できる余地がある。
ベトナムにおける物流施設の賃貸・開発事業の推進:Sembcorp Infra Services Pte. Ltd.への出資(発行済株式総数の30%)
2018年6月に同社子会社であるCRE Asiaは、Sembcorp Infra Services Pte. Ltd.(以下「SIS SG」)が第三者割当により発行した普通株式を引き受けた(取得株式数:6,152,952株(発行済株式総数の30%))。SIS SGは、シンガポール政府系企業であるSembcorp Development Ltd(以下「セムコープ」)の子会社である。セムコープ社はシンガポール政府系企業であり、アジアにおける大規模都市開発のための基本計画策定や造成、インフラ開発分野において25年以上の経験を持っている。
CRE AsiaとSIS SGはSIS SG傘下のSembcorp Infra Services Hai Phong(以下「SIS HP」)を通じ、共同でベトナムのVSIP(Vietnam Singapore Industrial Park:ベトナム・シンガポール工業団地事業) ハイフォン複合都市・工業団地内において、物流施設の開発計画を進めている。2020年7月、同開発計画に阪急阪神不動産株式会社が参画した。建築済みの2棟の物流施設(約30,000㎡)の賃貸運営に加え、2020年4月に3棟目が竣工、2021年年末には4棟目の物流施設が竣工予定である。
要約
事業概要
同社は、物流不動産を中心に、一括借上げ、管理、テナント誘致、物流施設の開発・売却、不動産ファンドの組成・運用を行っている。事業セグメントは、不動産管理事業(2021年7月期売上高構成比51.0%、営業利益構成比29.5%)、物流投資事業(同46.8%、62.7%)、アセットマネジメント事業(同2.2%、7.7%)からなる。同社によれば、事業部門ごとに類似企業は存在するが、物流施設に関するあらゆるサービスを一企業(ワンストップ)で提供し、様々な事業の相乗効果を創出できるという点では、同社の類似企業はないという。さらに、2019年7月期から“物流インフラプラットフォーム”を事業ビジョンに掲げ、事業領域を拡大することを標榜している。
同社では、物流不動産を中心とした循環型の事業展開を行っている。すなわち、物流施設を建設、テナントを誘致し、プロパティマネジメントを受託。当該物流施設を自社で組成した不動産投資ファンドに組み入れ(売却し)、売却益を獲得するとともに、子会社で不動産投資ファンドの運用を担うことでアセットマネジメント報酬を得るというビジネスの循環である。
上述の循環型ビジネスモデルの構想に基づき、同社は物流関連施設を主たる投資対象として運用する不動産投資法人であるCREロジスティクスファンド投資法人を2016年5月に設立し、2018年2月に東証不動産投資信託証券市場に上場した。これにより、物流施設の開発・管理機能と、運用・保有機能を切り分けた。具体的には、物流施設の開発による売却益、アセットマネジメント報酬、プロパティマネジメント報酬は同社が享受し、不動産保有による賃料収益は投資法人の投資口が享受する仕組みとしている。
物流投資事業は同社の主要収益源の一つであるが、物流施設開発注力型の事業戦略は景気変動影響を受けやすいと考え、同社は景気後退時の業績悪化に耐えられるように全社費用を安定収益源(不動産管理事業およびアセットマネジメント事業)の売上総利益でカバーし、それに付加して物流施設開発の利益が上乗せされる収益構造を構築している。
業績動向
2021年7月期通期の実績は、売上高47,556百万円(前期比15.4%増)、営業利益5,773百万円(同36.5%増)、経常利益5,314百万円(同31.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3,575百万円(同36.9%増)となった。ストック収入であるマスターリースの賃貸収入が着実に増加した上に、物流投資事業においてロジスクエア川越Ⅱなど3物件の売却が業績拡大を牽引した。
2022年7月期通期会社予想(2022年3月14日付上方修正)は、売上高61,600百万円(前回修正計画比500百万円減)、営業利益9,300百万円(同500百万円増)、事業利益10,400百万円(同700百万円増)、経常利益8,200百万円(同400百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,600百万円(同不変)である。修正理由は、物流投資事業において物流施設の売却が順調に進んでいる一方、不動産管理事業において、小型物件の売却を保守的に見直したため、売上高は前回計画を下回る見通しとなった。
同社は2021年9月9日、2026年7月期を最終年度とする第2次中期経営計画を発表した。2026年7月期の数値目標は、事業利益12,000百万円(年率成長率18%、5ヵ年で2021年7月期実績6,224百万円を倍増)、ROE平均15%以上、マスターリース管理面積を5ヵ年で約27%増の0.6百万坪、プロパティマネジメント管理面積を同約27%増の1.6百万坪へ、AUMを5ヵ年で倍増の4,500億円とする計画である。
同社の強みと弱み
SR社では同社の強みを、1)不動産開発分野での成長分野に特化していること、2)物流不動産に対する知見、情報、テナント誘致力、3)不動産管理事業およびアセットマネジメント事業が安定収益源であることの3点だと考えている。一方、弱みは、1)規模、資金力が大手不動産ファンドに劣ること、2)物流投資事業は収益変動幅が大きいこと、3)成長戦略推進により、相対的な財務健全性劣位が不可避であることと考えている。(後述の「SW(Strengths, Weaknesses)分析」の項参照)
主要経営指標の推移
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*同社は2016年11月1日および2018年8月1日に1株につき2株の割合で株式分割を実施した。
2021年7月期(予想)のEPSは、同年8月に払込が完了した公募、第三者割当による新株発行及び自己株式の処分に係る増加株式数並びに2020年9月払込完了のオーバーアロットメントによる売出に関連する第三者割当増資に係る増加株式数を考慮して算出されている。
直近更新内容
2022年7月期通期業績予想の修正を発表
株式会社シーアルイーは、2022年7月期通期業績予想の修正に関して発表した。
(リリースへのリンクはこちら)
同社は2022年3月14日、当第2四半期決算発表にあわせ通期予想を上方修正した。修正後の売上高は61,600百万円(前回修正計画比500百万円減)、営業利益9,300百万円(同500百万円増)、事業利益10,400百万円(同700百万円増)、経常利益8,200百万円(同400百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,600百万円(同不変)である。修正理由は、物流投資事業において物流施設の売却が順調に進んでいる一方、不動産管理事業において、小型物件の売却を保守的に見直したため、売上高は前回計画を下回る見通しとなった。
物流施設の売却に関して発表
株式会社シーアルイーは、物流施設の売却に関して発表した。
(リリースへのリンクはこちら)
同社は、2022年3月1日付で物流施設「ロジスクエア三芳Ⅱ」に係る信託受益権を売却することを決定した。
同社は、5年後までに国内物流施設を投資対象資産とするオープンエンド型コアファンド(以下、「OEF」)を組成するための準備を始めており、当該物件はその第一号ブリッジファンドに売却する。中長期的にOEFの資産規模を1,000億円にすることを目指している。
売却物件の概要
施設名称:ロジスクエア三芳Ⅱ
主要用途:倉庫(倉庫業を営む倉庫)
敷地面積:12,072.92 ㎡(3,652.05坪)
延べ面積:18,135.21 ㎡(5,485.90坪)※付属建物含む
売却先
合同会社 CB1
売却価格
非開示。ただし、2021年7月期の連結売上高(47,556百万円)の10%に相当する額以上としている。売却利益については、同連結営業利益(5,772百万円)、同経常利益(5,313百万円)及び親会社株主に帰属する当期純利益(3,574百万円)のそれぞれ30%に相当する額以上を見込む。
業績動向
四半期業績動向
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*前期比は1,000%を超える場合は-と表示。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*前期比1,000%を超える場合は“-”と表示
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
2022年7月期第2四半期累計期間実績
売上高は前年同期比2,442百万円増の37,194百万円(前年同期比7.0%増)だった。増収額2,442百万円の内訳は、不動産管理事業が同1,075百万円増、物流投資事業が同1,114百万円増、アセットマネジメント事業が同250百万円増である。物流投資事業の業績が伸長したのは、ロジスクエア大阪交野の売却による(当第1四半期累計期間)。アセットマネジメント事業では、CREロジスティクスファンド投資法人が第5回公募増資を実施、AUM(公募)は1,347億円、私募ファンドと合わせたAUM(公募+私募)は225,100百万円となった(2022年1月末現在)。
営業利益は前年同期比252百万円増の6,106百万円と、修正通期計画9,300百万円に対する進捗率は65.7%である。第2四半期累計期間で過去最高の営業利益・事業利益であった。増益幅252百万円の内訳は、フロービジネスである物流投資事業が同102百万円増(前年同期の営業利益は4,885百万円)、ストックビジネスである不動産管理事業が同292百万円増(同25.6%増)、アセットマネジメント事業が同213百万円増(同61.6%増)、全社費用(セグメント控除額)が同355百万円増となったことによる。物流投資事業では、土地開発に伴う特別利益565百万円(不動産売買契約違約金)を計上した。
ストックビジネス(不動産管理事業+アセットマネジメント事業)の売上高は前年同期比1,325百万円増(同10.1%増)の14,449百万円となった。ストックビジネスの営業利益は同506百万円増(同34.0%増)の1,990百万円となった。売上高合計に対するストックビジネスの割合は38.8%である。不動産管理事業ではマスターリース賃貸差益が稼働率上昇により増加した。アセットマネジメント事業では、AUM(公募)の増加によりアセットマネジメントフィーが順調に計上された。加えて、中小型倉庫特化型私募ファンド及びセルフストレージ特化型ファンドを組成したことにより、アレンジメントフィーを計上した。
当第2四半期累計期間の業績を受けて、同社は通期会社予想を上方修正した(2022年3月14日付)。2021年12月13日付に続いて今期2回目の上方修正である。修正後の売上高は61,600百万円(前回計画比500百万円減)、営業利益9,300百万円(同500百万円増)、事業利益10,400百万円(同700百万円増)、経常利益8,200百万円(同400百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,600百万円(同不変)である。
不動産管理事業
マスターリース物件が前期に引き続き高稼働率(99.2%)を維持したこと、管理面積が堅調に推移したことから、安定的に収益を計上した。中小型倉庫特化型私募ファンドに同社保有の中小型倉庫を売却した。2022年1月末時点での管理面積は1,819千坪(前年同期比8.3%増)、内訳はマスターリース管理面積:478千坪(前年同期比1.6%増)、プロパティマネジメント管理面積:1,341千坪(同10.9%増)である。
物流投資事業
ロジスクエア各物件のリーシング及び建設を進めている。ロジスクエア大阪交野をCREロジスティクスファンド投資法人に売却したことにより売上高、営業利益が伸長した。セグメント利益率は21.9%だった(前年同期は22.6%)。コスト削減効果もあって、同社想定を上回る粗利を計上した。また、当第1四半期に開発に伴う特別利益565百万円を計上した。なお、ロジスクエア三芳Ⅱは2022年3月1日にコアブリッジファンドに売却済、売却実績は当第3四半期累計期間に計上される。
アセットマネジメント事業
CREロジスティクスファンド投資法人からの期中運用報酬が順調に計上された。同投資法人が2021年9月に新投資口の発行及び資産取得を行ったことにより、2022年1月時点の受託資産残高は134,686百万円となった。これによりアセットマネジメントフィーが順調に積み上がった。中小型倉庫特化型私募ファンド及びセルフストレージ特化型ファンドを組成したことによるアレンジメントフィー等を計上した。
トピックス
増資:2021年10月11日、同社は公募及び第三者割当による新株式発行並びに株式の売出しに関して発表した。実際の調達額は手取概算額合計で4,138,187,440円。物流投資事業における2025年7月期以降竣工予定の販売用大型物流施設の開発用地取得資金の一部に充当される。
セルフストレージ特化型ファンド組成(2021年12月):同社と連結子会社ストラテジック・パートナーズは、セルフストレージ特化型ファンドの組成を目指して、株式会社パルマと共同で2018年からセルフストレージを順次開発してきた。今般、シンガポールに拠点を置く投資家が出資する特定目的会社にブリッジ物件を売却した。特定目的会社のアセットマネジメント業務は連結子会社ストラテジック・パートナーズが受託する。引き続きポートフォリオの拡大を目指す。
国内物流施設に特化したオープンエンド型コアファンド(OEF)組成準備に着手(2022年2月):同社と連結子会社ストラテジック・パートナーズは、5年後までに、OEFの組成に向けて準備する。資産規模1,000億円を目指す。同社では、上場リートのみならず、機関投資家を対象とした私募ファンド領域においても旗艦ファンドを持つことが、同社の安定的な物流施設開発に繋がると考えている。
ロジスクエア一宮:2021年10月25日、同社は愛知県一宮市において開発用地を取得し、中京エリア初のプロジェクトとなるマルチテナント型物流施設「ロジスクエア一宮」の開発に着手した。2023年秋に竣工予定である。敷地面積約27,863㎡、延べ面積約63,000㎡(予定)。
2022年7月期会社計画
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*下期の数値は通期の数値から上期の数値を差引計算して算出。
2022年7月期期初会社予想は、売上高61,600百万円(前期比29.5%増)、営業利益8,600百万円(同49.0%増)、事業利益9,000百万円(同44.6%増)、経常利益7,600百万円(同43.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,000百万円(同39.9%増)であった。なお、事業利益は、営業利益に持分法投資損益とのれん償却費(連結子会社・持分法適用会社)を加えたものである。
同社は2021年12月13日、当第1四半期決算発表にあわせ通期予想を上方修正した。修正後の売上高は62,100百万円(期初計画比500百万円増)、営業利益8,800百万円(同200百万円増)、事業利益9,700百万円(同700百万円増)、経常利益7,800百万円(同200百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,600百万円(同600百万円増)である。期初予想との差額は、主に同社による積み上げ計画の再計算による。事業利益の期初計画比700百万円増のうち約565百万円は、当第1四半期累計期間で計上した開発に伴う特別利益(不動産売買契約違約金)が反映されたものである。
同社は2022年3月14日、当第2四半期決算発表にあわせ通期予想を上方修正した。修正後の売上高は61,600百万円(前回修正計画比500百万円減)、営業利益9,300百万円(同500百万円増)、事業利益10,400百万円(同700百万円増)、経常利益8,200百万円(同400百万円増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,600百万円(同不変)である。修正理由は、物流投資事業において物流施設の売却が順調に進んでいる一方、不動産管理事業において、小型物件の売却を保守的に見直したため、売上高は前回計画を下回る見通しとなった。
不動産管理事業
売上高27,600百万円(前期比13.7%増)、営業利益2,100百万円(同2.2%増)を見込んでいる。新型コロナウイルスの影響は特段考慮していない。不動産管理事業は同社の安定収益源であり、主にマスターリースまたはプロパティマネジメントの管理面積の積み上げによって収益を得る。第2次中期経営計画でも既存収益基盤の維持拡大を施策として掲げ、引き続き管理面積の拡大と収益性の向上を図る方針であるとSR社は認識している。マスターリース物件の建て替えの促進、プロパティマネジメント業務の付帯ビジネスの促進も施策としてあがるだろう。
物流投資事業
売上高32,650百万円(前期比46.7%増)、営業利益7,760百万円(前期比78.0%増)を見込んでいる。前期は2物件29,848坪を開発したが、2022年3月期に開発予定の物件はない。売却については売上高32,650百万円を予定しているが、2021年9月にロジスクエア大阪交野(10,779.71坪)をCREロジスティクスファンド投資法人に22,370百万円(2021年9月2日付同社リリース)で売却した(当第1四半期累計期間に計上)。また、ロジスクエア三芳Ⅱをコアブリッジファンドに売却しており(2022年3月1日付)、当第3四半期会計期間に計上される見通しである。同社では、今期、ロジスクエア狭山日高の20%部分の売却を予定している。
アセットマネジメント事業
売上高1,350百万円(前期比31.7%増)、営業利益840百万円(同56.1%増)を見込んでいる。物流特化型上場REITであるCREロジスティクスファンド投資法人が2021年1月に公募増資及び資産取得を行ったことによりAUM(公募)は1,347億円、 私募ファンドと合わせたAUM(公募+私募)は225,100百万円となった(以上、2022年1月末現在)。
私募では、CREマスターリース3号ファンドに物件売却し収益を計上している。同4号ファンドを今期中に組成する計画である。セルフストレージ特化型ファンドの組成(2021年12月)も行った。また、私募ファンドであるオープンエンド型コアファンドを1,000億円規模を目指して組成開始した。2022年3月1日に、ロジスクエア三芳Ⅱを第1号ブリッジファンドに組み入れた。
同社では、長期的にグループAUMを2026年7月期に450,000百万円まで増加させることを目指している。
中長期展望
第2次中期経営計画(2022年7月期~2026年7月期)
数値計画
同社は2021年9月9日に中期経営計画(2022年7月期~2026年7月期)を発表した。前回中期経営計画は3か年であったが、第2次中期経営計画は5ヵ年計画となった。同社は、事業ビジョンとして「世界の人とモノを繋ぐ物流インフラプラットフォームとしてNO.1企業グループ」を掲げ、物流不動産のワンストップサービスを提供する企業から、物流を支えるすべてのサービスの基盤となる企業グループへの進化を目指す。
2026年7月期の数値目標は、事業利益12,000百万円(年平均18%増)、ROE平均15%以上を数値目標として掲げた。不動産投資事業における開発を成長ドライバーに、コアストック(CRE単体の不動産管理事業の収益(新規の請負工事収益・不動産販売収益を除く)+アセットマネジメント事業の期中運用収入)を着実に成長させる内容である。
規模拡大を前面に押し出した中期経営計画だが、販売費及び一般管理費を安定収益源であるストックビジネス(不動産管理事業およびアセットマネジメント事業)でカバーする収益構造を基盤にするという従来の考え方に変更はない。
フロービジネス(物流投資事業)はストックビジネスの成長ドライバー
同社は中期的に物流投資事業の年間開発件数を増やすことによりフロービジネスの収益変動幅を縮小できる。物流施設は、電子商取引、3PL(Third Party Logistics)市場の成長を背景とする先進的物流施設の需要拡大、首都圏近郊の道路整備進展により新規物流施設開発候補地が創出される事業環境を背景として、開発量を拡大できる余地がある。
パイプラインの整備が進み、2023年7月期以降に売却予定の開発物件は2,000億円規模となっている。投資エリア拡大や土壌汚染地への投資も拡がっている。一方、共同開発案件の拡充については今後の課題であるとSR社では認識している。同社は、ソーシング能力にレバレッジをかけていけるよう共同開発に注力したいとしている。
2022年7月期~2026年7月期において、総額2,000億円以上の物流倉庫開発を行うと同時に、各プロジェクトについてIRR15%以上の開発を目指す。
約2,000億円に相当するプロジェクトは既に手当て済みである。2022年7月期の開発予定はないが、2023年7月期以降は公表・契約済物件が10物件・開発面積138,123坪、未公表だが契約済物件が3物件・開発面積105,704坪の計243,827坪を積み上げている。
2022年7月期については、2021年7月期までに開発・竣工した3物件(ロジスクエア大阪交野、ロジスクエア三芳Ⅱ、ロジスクエア狭山日高(20%部分))を売却する予定である。なお、ロジスクエア大阪交野は2021年9月2日にCREロジスティクスファンド投資法人へ22,370百万円(予定)で売却を確定した。
売却予定パイプラインが2,000億円規模に積み上がっているため、年間400億円~500億円の売却を想定する。
引き続き売却見込みパイプラインを増やすべく物件の取得・開発を継続する計画であり、2027年7月期のパイプラインとして3,500億円まで拡大させたいとしている。2026年7月期以降のパイプラインは3,500億円を想定しているため、年間700億円の売却を想定できる。
ストックビジネスの規模拡大へ
年間400億円~500億円規模のロジスクエア物件をCREロジスティクスファンド法人へ売却することを通じて、マスターリースの管理面積の拡大やAUMの積み上げを図る。アセットマネジメント報酬、プロパティマネジメント報酬を継続的に獲得する。
不動産管理収入・利益の拡大:2026年7月期のマスターリース管理面積600,000坪(2021年7月期は471,247坪)、プロパティマネジメント管理面積1,600,000坪(同1,260,132坪)を目指す。5ヵ年で約27%の増加である。特にプロパティマネジメントは同社の開発に伴って増加が期待できる。管理ポートフォリオにおいて自社開発案件の割合が増えていくため、より高い報酬率を期待できる。一方、マスタリース管理面積は同社営業努力によるところがおおきい。
アセットマネジメント受託資産残高の拡大:受託資産残高450,000百万円を目標とする(2021年7月期末のグループ受託資産残高は209,700百万円)。2021年7月期のグループ受託資産残高は209,700百万円である。物流投資事業における売却見込パイプラインに2,097億円あるから、REITへの売却を勘案すれば、ファンド規模は目標の4,500億円が視野に入ってくる。但し4,500億円規模でも収益性50bpsを前提にすれば、中長期的に利益水準は2,250百万円に留まるため、規模拡大の加速化が期待される。マスターリースの基盤拡充に向けては、旧ロジコム級のM&Aを模索していくものとSR社では認識している。
共同開発の積極化:外部資本を活用した共同事業を通じて、より多くの開発機会を取り込むことに注力する。開発型ファンドを指向することで、国内外投資家に開発への投資機会を提供していく。
長期的に、共同開発を含めた物流投資事業におけるフロービジネスを成長のドライバーとし、物件売却を通じた管理面積およびAUMの積上げでストックビジネスの拡大を図ることとする。
新領域への取組み
同社は物流インフラプラットフォーム(LIP)の強化に注力してきた。LIPは、本業の「倉庫」だけでなく、必要な人材の確保、在庫管理システム・倉庫管理システム、倉庫の自動化など「倉庫の利便性を高めるサービス」に加えて、「配送」機能までワンストップで「物流全体最適化」を支援しようとするものである。
第2次中期経営計画では、LIPの中核企業である「はぴロジ」(EC事業者)、「APT」(システム提供)、「A-TRUCK」(冷凍冷蔵車輛を含む車輛レンタル)の収益化を加速させる計画である。2026年7月期に事業利益12,000百万円の10%(1,200百万円)を構成させたい考えである。
海外事業の収益化
ベトナム・インドネシアを中心に積極投資を継続する。従来は現地での物流会社の支援に留まっていたが、今後は現地で物流のワンストップサービスモデルを構築することを目指す。ベトナムでは倉庫開発を継続、インドネシアでは倉庫開発とアセットマネジメント会社を設立、タイではアセットマネジメントビジネスの獲得を狙う。その後は物流インフラプラットフォーム(LIP)の構築を目指すとした。海外事業の利益も2026年7月期の事業利益12,000百万円の10%確保を目指している。
中期経営計画における収益の考え方
ストックとフローの循環型ビジネス
同社は不動産管理事業とアセットマネジメント事業をストックビジネス、物流投資事業をフロービジネスと定義し、フロービジネスが長期的なストックビジネスの収益につながる循環型ビジネスを展開している。具体的には、物流施設開発、テナント誘致を行い、プロパティマネジメントを受託する。当該物流施設を自社で組成した不動産投資ファンドに組み入れ(売却し)、売却益を獲得し、子会社が不動産投資ファンドの運用を担うことによってアセットマネジメント報酬を獲得するというビジネスの循環である。
このビジネス循環の中で、同社は資産を極力保有せず、ローリスク・ローリターンの不動産管理事業およびアセットマネジメント事業で資金の投資・回収を繰り返し、ハイリスク・ハイリターンの物流投資事業を事業領域としている。ミドルリスク・ミドルリターンの不動産長期保有については、J-REITの事業領域と考えている。
コアストックの成長
同社では、従来、景気後退時の業績悪化に耐えられるように、販売費及び一般管理費を安定収益源であるストックビジネス(不動産管理事業およびアセットマネジメント事業)の売上総利益でカバーする収益構造を既に構築している。第2次中期経営計画でも、ストックビジネスの収益の中でも特に安定性の高い収益をコアストック収益と定義し、コアストック収益で販売費及び一般管理費をカバーできる収益構造の構築を目指している。
ストックにフローを積み上げる収益構造
同社の収益は、ストックビジネスの安定成長をベースに、フロービジネスの収益が変動的に上乗せされる構造となっている。だが物流投資事業において売却可能パイプラインが積みあがっているため、フロービジネスで得られる利益の再投資によってストックビジネスの事業基盤を拡大させるという好循環の中にある。加えて、2018年7月期にCREロジスティクスファンド投資法人を上場したことで、アセットマネジメント事業の収益成長がストックビジネスの収益成長を牽引する体制を構築した。同社のREITビジネスが装置産業の色彩が濃いため、規模の経済を効かすことによりアセットマネジメントの売上高増に加速度がつきやすい。AUMの積み上がりにより利益率が上昇していきやすい。
同社は、受託資産の増加に伴いアクイジションフィーを計上するほか、アセットマネジメントフィーを得る。CREロジスティクスファンド投資法人の運用は連結子会社であるCREリートアドバイザーズ株式会社が担っている。CREリートアドバイザーズ社は、同投資法人の資産取得時に取得価額の0.5%を上限とする取得時報酬(アクイジションフィー)を受領する。また、同投資法人の純資産額の0.4%を上限とする運用報酬(アセットマネジメントフィー)を受領することとなっている。
事業内容
事業概要
同社は、物流不動産を中心に、一括借上げ、管理、テナント誘致、施設の開発・売却、不動産ファンドの組成・運用を行っている。事業セグメントは、不動産管理事業、物流投資事業、アセットマネジメント事業からなる。同社によれば、事業部門ごとでは類似企業は存在するが、物流施設に関するあらゆるサービスをワンストップで提供できる企業という点では、同社に類似する企業はないという。さらに、2019年7月期から“物流インフラプラットフォーム(LIP)”を事業ビジョンに掲げ、事業領域を拡大することを標榜している。
同社の前身にあたる公共ロジスティックスは、公共建物株式会社取締役(現任)の山下会長が物流不動産の成長力を見据えて、2009年12月に設立。2010年8月にコマーシャル・アールイーから事業譲受、2011年7月に天幸総建を吸収合併した。千葉県を中心にマスターリース・プロパティマネジメント事業を展開していたコマーシャル・アールイーと神奈川県を中心にマスターリース・プロパティマネジメント事業を展開していた天幸総建の事業基盤を引き継いで、同社は関東一円でマスターリース・プロパティマネジメントを中心とした物流不動産サービスを開始した。また、アセットマネジメント事業を行うために2014年8月にストラテジック・パートナーズ(現CREリートアドバイザーズ)を子会社化。2018年12月には東京都多摩エリアをマスターリース物件の主たる事業領域とするロジコムを子会社化するなど、M&Aによって事業領域および規模を拡大した。
同社では、物流不動産を中心とした循環型の事業展開を行っている。すなわち、物流施設建設、テナントを誘致し、プロパティマネジメントを受託する。当該物流施設を自社で組成した不動産投資ファンドに組み入れ(売却し)、売却益を獲得するとともに、子会社で不動産投資ファンドの運用を担うことでアセットマネジメント報酬を獲得するというビジネスの循環である。また、物流投資事業は同社の主要な成長ドライバーであるが、物流施設開発注力型の事業戦略は景気変動影響を受けやすいと考え、同社は景気後退時の業績悪化に耐えられるように、全社費用を安定収益源(不動産管理事業およびアセットマネジメント事業)の売上総利益でカバーし、それに付加して物流施設開発の利益が上乗せされる収益構造の構築を目指している。
不動産管理事業(2021年7月期売上高構成比51.0%、同営業利益構成比(調整額消去前)29.5%)ではマスターリース、プロパティマネジメント、建設工事、リーシングを行っている。主な収益源はマスターリースであり、同事業の売上高の大半を占める(SR社推定)。マスターリースでは首都圏の物件の管理面積が全体の約9割を占める。2021年7月現在、マスターリースの管理物件数は1,344物件(前期比0.5%減)、管理面積は471千坪(同0.8%増)である。コマーシャル・アールイーからの事業譲受および天幸総建の吸収合併、その後の自助努力およびロジコムの連結化によって、同社の管理面積は増加傾向にある。マスターリースの収益は管理面積、賃料、稼働率で決まるが、物流施設はオフィスなどと比較して移転頻度が低く、賃料変動が少ないことから、同社の安定的な収益源となっている。マスターリースの原価はオーナーへの借上げ賃料であり、売上総利益率は15%程度である。
物流投資事業(2021年7月期売上高構成比46.8%、同営業利益構成比(調整額消去前)62.7%)は、物流施設用地を取得し、1物件4,000~30,000坪の物流施設を建築、テナント誘致のうえ、不動産ファンド等に売却する事業である。同社によれば、コマーシャル・アールイーおよび天幸総建での長年の物流施設の運営・管理経験をもとに使用者目線に立った物流施設開発が可能であり、用地情報にも長けているという。また、先行開発型の物流施設ではテナント誘致が必要となるが、同社では不動産管理事業で培ったリーシング力を活用している。同事業は2014年7月期に開始し、初年度は1物件、延床面積9,097坪の売却であったが、2017年7月期には3物件、延床面積27,283坪の売却にまで拡大した。2021年7月期は3物件・売却面積19,5481坪となった。物流施設の売却価額は面積、賃料、NOI(Net Operating Income)、キャップレート(Capitalization Rate)が決定要因である。主な原価項目は土地代と建築費であり、内訳は土地代が20~30%、建築費が70~80%である。同社は売上総利益率10%内外を同事業の利益のターゲットとしている。
アセットマネジメント事業(2021年7月期売上高構成比2.2%、同営業利益構成比(調整額消去前)7.7%)は、子会社であるCREリートアドバイザーズが公募ファンドの運営を、同ストラテジック・パートナーズが私募ファンドの運営を担う。同社は不動産ファンドの企画・組成、投資家の募集、金融機関からの借入、物件の購入、運用・管理、売却、リファイナンスまでを一貫して手掛けており、アップフロントフィー、アセットマネジメントフィー、ディスポジションフィー等の収入を得る。
事業セグメント
同社は、物流施設を中心に、一括借上げ、管理、テナント誘致、施設の開発・売却、不動産ファンドの組成・運用を行っている。事業セグメントは、不動産管理事業、物流投資事業、アセットマネジメント事業からなる。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
不動産管理事業
(2021年7月期売上高構成比51.0%、同営業利益構成比(調整額消去前)29.5%)
同事業では、マスターリース、プロパティマネジメント、建設工事、リーシングを行っているが、収益源はマスターリースであり、同事業セグメントの売上高の大半を占める(SR社推定)。2021年7月期の管理面積は1,731千坪・1,578件で、内マスターリース管理面積が471千坪・1,344件、プロパティマネジメント管理面積が1.260千坪・234件である。マスターリース物件の稼働率は98.2%と、高水準を維持している。
*2013年03月より集計方法を変更
マスターリース
マスターリースとは、不動産オーナー(物件所有者等の賃借人)に一定額の家賃収入を保証したうえで、同社が土地・建物等を借り上げ、賃借した物件等を貸主としてテナントに賃借する業務である。同社は300~500坪の土地に、一階層なら土地の半分、二階層なら土地と同程度の面積の倉庫を建築し、不動産オーナーと15~25年の借り上げ契約を締結する。倉庫の建築も請け負うことで、建築関連収益も獲得する。
マスターリースのビジネスモデル
マスターリース業務において、同社は不動産オーナーに賃料を保証して、倉庫を借上げ(一括借上げ)、その物件を倉庫利用者(テナント)に転貸することにより、テナントから受け取る賃料を収益に計上する。
マスターリース業務の収益
マスターリース業務の収益は以下の通り、管理面積、賃料、稼働率で決まる。
マスターリース業務の収益=管理面積×賃料×稼働率
2021年7月現在、同社におけるマスターリースの管理物件数は1,344物件(前期比0.5%減)、管理面積は471千坪(同0.8%増)である。賃料水準の参考として、CBRE「MARKETVIEW Japan Logistics, Q2 2021」によれば、2021年第2四半期(2021年4-6月)における大型マルチテナント型物流施設の実質賃料は首都圏4,470円/坪、東京ベイエリア7,470円/坪、外環道エリア5,200円/坪、圏央道エリア3,590円/坪であった。また、日本不動産研究所「第42回 不動産投資家調査」によれば、2020年4月現在、マルチテナント型物流施設の期待利回り(キャップレート)は、東京都(江東地区)4.2%(前年同月は4.5%)、東京都(多摩地区)4.4%(同4.6%)、千葉県(成田地区)5.0%(同5.1%)であった。SR社の認識では、物流施設は移転に伴う労働力、費用負担が大きいために、オフィスなどと比較して移転頻度が低く、賃料の変動が少ない(「市場とバリューチェーン」の項参照)という特徴がある。同社のマスターリースの稼働率は98%前後で推移している。
マスターリース業務の費用
同業務の原価は、同社が不動産オーナーに支払う倉庫の借上げ賃料である。同社は賃貸差益10%以上の獲得を目途に借上げ賃料を決定する。ただし、賃貸差益はリスクリターン見合いで物件によって異なるという。リスクは、高速出入り口、道路付け、近隣の居住者の有無、中央分離帯の有無などの項目を、リーシング部門で賃料査定スコアリングにより、判断するという。なお、同業務の売上総利益率は15%程度である模様。
マスターリースの特徴
同社の営業エリアは首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)であり、同社が運営・管理している物流施設のうち、首都圏の物件は、物件数の約90%、管理面積の約90%を占める。長期経営方針では首都圏以外の管理面積割合を20%に引き上げる方針である。
コマーシャル・アールイーからの事業譲受および天幸総建の吸収合併、その後の自助努力およびロジコムの連結化によって、管理面積は増加傾向にある。
プロパティマネジメント
同業務では、不動産所有者や不動産ファンド等から不動産の管理業務を受託し、遂行する。具体的にはテナントマネジメント(テナント誘致を行うリーシング、賃貸借契約代行、トラブル対応)、企画運営業務(建物や設備の点検代行、管理予算案の設定、建物長期修営繕計画の策定)等を行う。同社の1物件あたり面積を比較すると、マスターリース業務の1物件あたり管理面積が351坪であるが、プロパティマネジメント業務では1物件あたり管理面積は5,385坪と、相対的に大型の物流施設が多い。
プロパティマネジメントのビジネスモデル
プロパティマネジメント業務では主に不動産ファンド等が保有する大型の物流施設の管理を受託する。不動産所有者による物流施設を、同社のマスターリースによる運営・管理が終了した後に、プロパティマネジメント契約に切り替えたものもある。
プロパティマネジメント業務の収益
プロパティマネジメントの収益は物件によって異なるという。同社が受領する料金は、賃料に対する料率を乗じた金額、1棟あたり定額料金、基本料金に1テナントあたり料金を付加した金額など、様々な料金体系があるが、概ね賃料の1%程度である模様。
2021年7月現在、プロパティマネジメントの管理物件数は234物件(前期比2.1%減)、管理面積は1,260千坪(同9.5%増)である。
同社によれば、プロパティマネジメント業務では、収益性の追求だけでなく、管理を受託することによって、リーシング業務や、建設工事業務の収益獲得につなげる狙いがあるという。
プロパティマネジメント業務の費用
プロパティマネジメント業務の営業費用は販管費が主体であり、人件費中心の構造となっている。リモートコントロール(非常勤)による管理が同社の特色であり、管理面積の拡大に比例して人員が増加しない。
リーシング
リーシングは空き物件にテナント誘致を行うことである。同社は顧客ニーズに応じた提案や物件紹介を行い、賃貸借契約を締結する。
リーシングのビジネスモデル
同社は管理物件、開発物件ならびに管理外物件に、テナント誘致をすることにより、仲介手数料または業務委託手数料を受領する。
テナントに物件を提供し、マスターリース業務の管理物件の場合には、マスターリース業務から費用を、開発物件であれば、物流投資事業から費用を配分する。同社の管理外物件についてリーシングを行った場合には不動産仲介手数料を徴収する。当該手数料は賃料1ヵ月程度であるという。
リーシングの特徴
同社は、コマーシャル・アールイーと天幸総建から引き継いだ独自のデータベースを持っており、物件の基礎データ、賃料推移、物件の引き合い状況、顧客データ、顧客候補などを管理しているという。また、同社管理物件の他に、所有者が管理している空き物件や他社管理物件の情報を加え、整備することで、テナントの要望に応じた提案によるマッチングを実施している。
さらに、新規顧客向けに法人向け物流施設サイト「ロジスクエア(LogiSquare)」を運営している。インターネットで、顧客の物件検索、物件情報のリクエストなど、賃貸物件の情報を提供している。
建設工事
マスターリース業務において賃借している物流施設の修営繕、改造、原状回復工事、不動産オーナーの土地の有効活用などを請け負っている。同事業は主要事業とは位置付けられていない。
物流投資事業
(2021年7月期売上高構成比率46.8%、同営業利益構成比率(調整額消去前)62.7%)
同社は2014年7月期に物流投資事業を開始した。同事業において、同社は物流に特化した施設を開発し、売却する。具体的には、用地を取得し、1物件4,000~35,000坪の物流施設を建築、テナントを誘致したうえで不動産ファンド等に当該物流施設を売却する。同社は市場調査、用地情報入手、プランニング、用地取得、建設工事、テナント誘致、売却までを一貫して行っている。
物流施設開発における差別化要素
同社の事業の母体となっているコマーシャル・アールイーおよび天幸総建はそれぞれ、1980年、1964年から物流施設の運営・管理を行っている。その経験をもとに、同社は物流施設利用者の目線に立った物流施設開発が可能であり、用地情報にも長けているという。そのため、同社はどこに物流施設建設可能用地があり、その土地にどのような建物を作れば、誰が利用したいであろうといった開発計画を立案することができるという。また、先行開発型の物流施設ではテナント誘致が必要となるが、その際には、同社が不動産管理事業で培ったリーシング力が活きてくる。
加えて、市街化調整区域と土壌汚染地の開発ノウハウを活かした開発用地仕入れ能力に強みがあるという。
市街化調整区域の開発における強みと実績:市街化調整区域は市街化を抑制する区域であり、建物の建築が厳しく制限されているため、相対的に安い価格で土地を仕入れることが可能であるという。原則として、市街化調整区域で建物を建築することは禁止されているが、各市町村の条例によっては、条件付で倉庫を建築することが許可されている場合がある。同社は各市町村の条例を詳細に調査し、市街化調整区域での賃貸物件開発を進めている。同社の市街化調整区域における開発実績としては「ロジスクエア羽生」、「ロジスクエア日高」、「ロジスクエア新座」があげられる。開発エリアとしては圏央道と外環の間が対象となるという。
土壌汚染地の開発における強みと実績:工場跡地などの土壌汚染地は、土地の価格は安いが、汚染対策のために結果として、開発費用が高くなる傾向がある。それに対して、同社では、土壌汚染地を購入し、資本業務提携関係にあるエンバイオ・ホールディングス社の土地汚染対策技術によって低コストでの土地汚染対策を施すことで、開発地を安く仕入れるノウハウがあるという。土壌対策工事は、通常は汚染地の土壌を掘り出し、処分場に搬出する掘削除去の手法による処理が用いられる。それに対して、エンバイオ・ホールディングス社は、汚染地の土壌に、薬剤を注入して浄化を行う原位置浄化技術に長けており、低コストでの土壌汚染を可能としている。同社における土壌汚染地の開発実績としては「ロジスクエア新座」、「ロジスクエア浦和美園」があげられる。
開発物件の実績
同事業の実績としては、2014年7月期に1物件、9,097坪の開発・売却で開始したが、年間の開発・売却の物件数は増加傾向にあり、2017年7月期には4物件、37,635坪の開発を行い、3物件、27,283坪を売却した。2021年7月期までの累計で20物件、186,517坪の開発を行い、18物件、141,048坪を売却した。
2021年9月時点では、約2,000億円に相当するプロジェクトを手当て済みである。2022年7月期の開発予定はないが、2023年7月期以降は公表・契約済物件が10物件・開発面積138,123坪、未公表だが契約済物件が3物件・開発面積105,704坪の計243,827坪を積み上げている。
物流施設の開発の方針
第2次中期経営計画では、2026年7月期までに2,000億円以上、プロジェクトIRR15%以上の開発を行っていくとしている。物流投資事業の施策として、投資エリアの拡大、中長期的用地開発、共同開発、土壌汚染地の開発が軸になるとSR社は理解している。同社では、物流投資事業における開発を成長ドライバーにコアストックを着実に成長させていきたいとしている。
投資エリアの拡大:物流投資事業の開発地域は2017年7月期までは首都圏のみであったが、2018年7月期以降は投資エリアの拡大を図っている。同社は2018年2月に物流施設特化型J-REITの上場を果たしたが、その地域分散も視野に入れ、スポンサーとして首都圏以外の物件供給を行う予定である。2018年7月期には北海道の「ロジスクエア千歳」や佐賀県の「ロジスクエア鳥栖」が竣工、2020年7月期には兵庫県の「ロジスクエア神戸西」が竣工、2021年7月期に大阪府の「ロジスクエア大阪交野」が竣工、2023年夏には福岡県の「ロジスクエア福岡小郡」が竣工予定である。
中長期的視点での用地開発:中長期の視点で土地を仕入れる仕組みを構築し、物流投資事業の売上高が安定する方法を検討する。
共同開発:物流不動産の開発に参入する企業等に対して、同社の開発ノウハウを提供し、共同開発による利益配分を獲得することを検討する。それによって開発物件数の増加とプロパティマネジメント業務の管理面積拡大を図ることが可能となる。
土壌汚染地の開発:2017年7月期において、「ロジスクエア浦和美園」、「ロジスクエア新座」は重篤な土壌汚染があったが、持分法適用会社であるエンバイオ・ホールディングス社(同社持分比率18.6%)の技術を活用して、同社はそれらの物流施設の開発を進めることができ、高い利益率を確保したという。
土地汚染地の開発については、エンバイオ・ホールディングスと共同出資で株式会社土地再生投資を2017年11月に設立、第1号案件として横浜市の汚染地を取得(約600百万円)した(2020年5月に売却)。2020年6月には、第2号案件として厚木市の汚染地(約1,500百万円)を取得した。中期的には、土地汚染浄化工事を行い、物流用地として売却する予定である。
物流投資事業のビジネスモデル
物流投資事業の売上高は開発物件の売却額
同事業では開発物件の売却価額が売上高となる。売却価額は面積、賃料、NOI(Net Operating Income:営業純利益)、キャップレート(Capitalization Rate)が決定要因である。単純化すれば、売却価格は以下の式で決まる。
売却価額=NOI÷キャップレート
理論的には、キャップレートは「リスクフリーレート+リスクプレミアム」によって決まる。よって、投資リスクが高い不動産ではキャップレートが高くなる。また、キャップレートは、主に地域別、アセットタイプ別にその水準が異なる。一般的には都心に近づくほど低く、アセットタイプでいえば相対的にキャッシュフローが安定的なオフィス、賃貸住宅が低い。また、キャップレートは景気動向の影響を受けて変動する。物流施設の賃料は大きく変動しないが、キャップレートの変動によって売却価額は変動する。
物流投資事業の原価は土地代と建築費、売上総利益率の目標は10%内外
同事業の主な原価項目は土地代、建築費であり、内訳は土地代が原価の20~30%、建築費が同70~80%である。同社は、同事業において売上総利益率10%内外をターゲットとしている。
物流投資事業のIRRは30%程度
物流施設の建築期間は1年程度で、同社によれば、施設に占める土地代の比率が低いため、売上総利益率10%程度でもIRRは30%程度になるという。物流施設の開発は自己資金20%程度、借入金80%程度で行い、建築費は契約時に10%程度、中間時に20%程度、引渡し時に70%程度を支払う。引渡し時に支払う建築費の70%程度に関しては、物流施設を竣工後に短期間で物流不動産ファンド等に売却すれば、建築費支払い後に早期に資金を回収できる。建築費が原価の70%とすれば、完工時の支払いは総原価の49%で、そのキャッシュアウトは一時的で済む。その結果、計算上はIRRが上昇する。物件開発開始時に開発費用の全額を現金で準備する必要はない。
モデルケースとして、売却価格を100百万円、原価を90百万円、原価に占める土地代の比率を30%、同建築費の比率を70%、原価の支払いに対する自己資金の比率を25%、同借入金の比率を75%、借入金利息を1.5%と想定し、用地取得から建築契約までの期間を1年、建築期間を1年、引渡しから売却までの期間を2~3ヵ月とすると、キャッシュフローは下表の通りになる。また、その場合のIRRは33.6%となる。
物件売却先
同事業における開発物件の売却先は主にCREロジスティクスファンド投資法人である。
住商リアリティ・マネジメントが組成した物流私募ファンドへの売却
同社は2014年2月、公共建物株式会社、住友商事株式会社(東証1部8053)、公共投資顧問株主会社、住商リアルティ・マネジメント株式会社と物流不動産開発事業に関する基本合意書を締結した。同合意書に基づき、同社他4社は共同での新規私募ファンド組成および運営等に関する事業、物流施設の共同開発に関する事業を行うとした。具体的には、住商リアルティ・マネジメントが組成し、国内の物流施設に投資を行う物流私募ファンドに対し、同社は2014年7月期に「ロジスクエア草加」を、2015年7月期には「ロジスクエア八潮」を売却した。
CREロジスティクスファンド投資法人設立と同投資法人への物流施設の売却
同社は、自社で不動産ファンドを組成し、アセットマネジメント事業を行うために、2014年8月にストラテジック・パートナーズ株式会社(現CREリートアドバイザーズ株式会社)を子会社化した。2016年7月期には物流特化型REIT上場に向けCREロジスティクスファンド投資法人を設立し、私募運用を開始。2018年2月に東京証券取引所不動産投資信託証券市場へ上場した。CREロジスティクスファンド投資法人は同社の開発物件を中心に、2021年7月現在、19物件、取得価格合計112,316百万円を保有している。
アセットマネジメント事業
(2021年7月期売上高構成比率2.2%、同営業利益構成比(調整額消去前)7.7%)
同事業では不動産ファンドの企画・組成、投資家の募集、金融機関からの借入、物件の購入、運用・管理、売却、リファイナンスまでを一貫して手掛け、アクイジションフィー、アセットマネジメントフィー、ディスポジションフィー等の収入を得る。
同事業は主に2014年8月に子会社化したCREリートアドバイザーズ株式会社(旧ストラテジック・パートナーズ株式会社)と2016年9月に子会社化したストラテジック・パートナーズ株式会社 (旧NCF不動産投資顧問株式会社)が担っている。
CREリートアドバイザーズ社は同社グループ内で公募ファンドの運営を担っている。同社グループ入り以前において、国内外の不動産ファンドをクライアントとし、商業施設およびオフィスの不動産の証券化、証券化した不動産ファンドの運用、リファイナンスを手掛けていた。
ストラテジック・パートナーズ社は、同社グループ内で私募ファンドの運営を担っている。2016年9月に同社の子会社となり、2017年2月に、旧ストラテジック・パートナーズの私募ファンドのアセットマネジメント業務を承継した。
CREロジスティクスファンド投資法人
同事業では、2016年7月期に物流関連施設を主たる投資対象として運用するCREロジスティクスファンド投資法人を設立し、自社開発物流施設2物件を取得、私募運用を開始した。CREロジスティクスファンド投資法人は2018年2月に東証不動産投資信託証券市場に上場している。
同社によれば、CREロジスティクスファンド投資法人は、物流不動産に特化した国内系開発事業者がスポンサー(資産運用会社の株主で、REITの立ち上げを主導する企業)である初のREITであるという。施設開発事業者がスポンサーとして物件を供給することから外部成長力に優れ、国内系事業者がサポートを行うために撤退リスクが低くなるという。
同社では、物流不動産を中心とした循環型の事業展開を行っている。具体的には、物流施設を建設し、テナントを誘致、プロパティマネジメントを受託する。当該物流施設を自社で組成した不動産投資ファンドに売却し、売却益を獲得し、不動産投資ファンドのアセットマネジメント報酬を受領するというビジネスの循環である。
CREリートアドバイザーズ社の子会社化以前は物流投資事業で開発した物流施設を外部の不動産ファンド等に売却し、プロパティマネジメントは受託しても、アセットマネジメント報酬を得る手段がなかった。しかし、CREリートアドバイザーズ社の子会社化、CREロジスティクスファンド投資法人の組成によって、自社で物流投資、プロパティマネジメント、アセットマネジメントを展開できる体制が整った。
アセットマネジメント事業のビジネスモデル
同事業の売上高は、主に不動産投資ファンドの資産取得に関わるアクイジション報酬、受託資産に対するアセットマネジメント報酬、不動産の転売等による収入で構成される。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*CREロジスティクスファンド投資法人の受託資産は6月末時点の金額。
同事業における主力ファンドは、物流関連施設に投資を行うCREロジスティクスファンド投資法人である。同ファンドは2016年5月に設立、私募運用を開始し、2018年2月に東証不動産投資信託証券市場に上場した。同ファンドの運用は連結子会社であるCREリートアドバイザーズ株式会社が担っている。CREリートアドバイザーズ社は、同ファンドの資産取得時に取得価額の0.5%を上限とする取得時報酬(アクイジションフィー)を受領する。また、同ファンドの純資産額の0.4%を上限とする運用報酬(アセットマネジメントフィー)を受領することとなっている。
不動産の転売等による収入は、不動産を転売目的で一時的に保有し、短期で売却することによって収益を得る業務である。リスクを限定しているため、売上規模の割に利益貢献は低いとSR社は推測している。
セルフストレージファンドの組成
2018年9月には、同社はセルフストレージ特化型ファンドの組成に着手した。同社と株式会社パルマ(東証マザーズ3461)は「Keep it」ブランドのセルフストレージを開発し、ファンド組成を行っている。
ファンド組成までは、同社およびパルマ社は開発後のセルフストレージをリース会社に売却し、資金循環を進めながら新規開発を行い、ポートフォリオを拡大する。将来的にはセルフストレージ特化型リートの組成も目指しているという。
同社は、2017年1月にパルマ社等と共同でセルフストレージのプロパティマネジメントを行う日本パーソナルストレージ株式会社(出資比率はパルマ社56%、同社34%等)を設立しており、セルフストレージ特化型ファンドのマスターリース業務またはプロパティマネジメント業務は日本パーソナルストレージ社が行う。また、同社の子会社であるストラテジック・パートナーズ株式会社は当該ファンドとアセットマネジメント契約を締結し運用を担う。
中小型倉庫特化型私募ファンドの組成
中小型倉庫特化型私募ファンドの組成については、同社が所有もしくは取得した小型の倉庫をファンドに組み入れ、保有・運用する私募ファンドを組成する試みである。ファンドの組み入れ資産の小型倉庫については、同社がマスターリース業務を締結することで高稼働維持、高い家賃収入を目指す。当該私募ファンドの運用は、同社の子会社であるストラテジック・パートナーズ株式会社が担っている。
2019年4月、同社は1号ファンドとなるCREマスターリースファンドを組成し、主に延床面積5,000㎡未満の中小型倉庫4物件(田名倉庫・土浦倉庫・日高倉庫・東糀谷倉庫)を同ファンドに売却した。2020年9月には2号ファンドを、2021年9月には3号ファンドを組成した。
海外事業および物流インフラプラットフォーム
海外事業
海外事業ではベトナムにおける物流施設の賃貸・開発事業の推進、タイにおけるトランクルーム事業の推進をあげている。
ベトナムにおける物流施設の賃貸・開発事業の推進:Sembcorp Infra Services Pte. Ltd.への出資(発行済株式総数の30%)
2018年6月に同社子会社であるCRE Asiaは、Sembcorp Infra Services Pte. Ltd.(以下「SIS SG」)が第三者割当により発行した普通株式を引き受けた(取得株式数:6,152,952株(発行済株式総数の30%))。SIS SGは、シンガポール政府系企業であるSembcorp Development Ltd(以下「セムコープ」)の子会社である。セムコープ社はシンガポール政府系企業であり、アジアにおける大規模都市開発のための基本計画策定や造成、インフラ開発分野において25年以上の経験を持っている。
CRE AsiaとSIS SGはSIS SG傘下のSembcorp Infra Services Hai Phong(以下「SIS HP」)を通じ、共同でベトナムのVSIP(Vietnam Singapore Industrial Park:ベトナム・シンガポール工業団地事業) ハイフォン複合都市・工業団地内において、物流施設の開発計画を進めている。2020年7月、同開発計画に阪急阪神不動産株式会社が参画した。建築済みの2棟の物流施設(約30,000㎡)の賃貸運営に加え、2020年4月に3棟目が竣工、2021年年末には4棟目の物流施設が竣工予定である。
タイにおけるセルフストレージ事業
同社子会社であるCRE(Thailand)Co., Ltd.は2018年6月よりセルフストレージ事業を開始し、2018年7月に7階建て、180ユニット(ユニット当たり平均レンタル料5,400バーツ/月)のセルフストレージをオープンした。同社によれば、3年以内にバンコク首都圏を中心に建物賃借または土地、建物を購入し、リノベーションした上で3店舗を出店する予定であるという。
物流インフラプラットフォーム
物流インフラプラットフォーム(LIP)については、空きスペース・空き労力を活用した受注獲得の機会の提供(はぴロジ(旧ブレインウェーブ)社の子会社化)、配送マッチングプラットフォームの提供(CBcloud社との資本業務提携)があげられる。また、はぴロジ社とCBcloud社は業務提携によって、はぴロジ社の顧客(EC事業者等の荷主)に対して、配送ドライバーをマッチングする新サービスの展開を開始している。同社ではこのように単なる出資にとどまらず、出資先企業の連携によるシナジー効果の創出を図る方針である。
株式会社はぴロジ(旧ブレインウェーブ)社への出資
2018年5月に同社は、はぴロジ社が実施する第三者割当増資により発行する株式3,820株(議決権所有割合51%)を引受け、子会社化した。
はぴロジ社は、EC事業者に対して物流代行・物流アウトソーシングを提供する物流プラットフォーム「はぴロジ」の運営を主たる事業としている。物流会社・倉庫会社に対しては、倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)によって在庫把握と作業支援に対する解決策を提供することで、空きスペース・空き労力を活用したECの物流代行を可能とする。
同社は、管理物件に入居している物流会社や倉庫会社に対して「はぴロジ」への参加を促し、「はぴロジ」に流入する荷主を新規顧客として獲得する機会を提供することで、空きスペース・空き労力を活用する機会を提供する。また、同社がはぴロジ社の顧客(EC事業者等の荷主)に対して物流施設や物流施設情報を提供することにより、はぴロジ社の事業拡大スピード向上を図る。
2017年3月期におけるはぴロジ社の売上高は658百万円(前期比3.7%減)、営業利益は4百万円(同81.5%減)であった。子会社化によって、同社は2018年7月期第4四半期以降にはぴロジ社の業績を連結化した。さらに2020年6月、同社ははぴロジの株式を追加取得し完全子会社化した。
CBcloud株式会社との資本業務提携
2017年9月に同社はCBcloud社と資本業務提携した。CBcloud社は荷主企業や物流企業と個人ドライバーのマッチングプラットフォーム「PickGo」を提供している。当該マッチングプラットフォームは、個人ドライバーに対しては個々の業務スケジュールを鑑み選択出来る配送業務の機会を、荷主企業や物流企業に対しては日々の物量波動に対応可能な配送サービスを提供している。
はぴロジ社とCBcloud社の業務提携
2018年9月に、はぴロジ社とCBcloud社は業務提携した。最初の取り組みとして、はぴロジ社が行うクラウド型の流通プラットフォーム「はぴロジ」と、CBcloud社が行う貨物を運んで欲しい荷主と荷物を運びたい配送ドライバーを直接つなげるマッチングプラットフォーム「PickGo」の連携「即日はぴロジ便」を実現した。「即日はぴロジ便」では、はぴロジ管理画面からシングルサインオンで「PickGo」の管理画面へ移行し、WEB上で集荷地点、配送先などを入力することができる。
株式会社APTの株式取得
同社は2018年8月にAPTと資本提携を結び、2020年12月にAPTを持分法適用関連会社とした。APTは物流施設における大型設備システムのオープン化・汎用化によるリニューアルの独自ソリューションを開発・提供してきたが、昨今では、物流センターの新設事案も手がけるようになっている。同社では、これまでの協業により両社の事業に高いシナジー効果が期待できることも確認している。また、電子商取引(EC)の普及による物流量の増加や物流業界における人手不足などもあり、APTの手掛けるサービスに注目が集まっている。同社グループの物流インフラプラットフォーム上での重要性も高まっていることから、一層の関係強化とAPTのコーポレートガバナンス強化を図るべく連結子会社化が妥当と判断した。
A-TRUCK
2019年9月、同社は株式会社A-TRUCKと資本業務提携を行なった。低温物流市場ではEC市場における生鮮品の取扱いの増加などもあり、低温車の需要が増加傾向にある。A-TRUCK社は、冷凍・冷蔵車や、常温車の中でも高額な大型車やウイング車のリース・レンタル業を中心に展開し、顧客のニーズに合わせて車両をカスタマイズし、リース・レンタルおよびそのアフターサービスまでワンストップで提供している。物流インフラプラットフォームの新たなサービス・ラインアップとして「リース」「低温機能」を、同社の顧客基盤に提供できる。
LIPを構成する中核企業群の収益化
第2次中期経営計画で同社は、LIPを構成する中核企業であるはぴロジ・APT・A-TRUCKの収益化を加速させていきたいとしている。