同社は、祖業のエネルギー(LPガスおよび都市ガス)事業と、情報通信事業及びCATV事業を両軸とするユニークな企業である。年度ごとに変動するが、エネルギーと情報通信及びCATVが売上高全体の8割超占めており事業の柱を確立している。静岡の他、関東などに、3.1百万件(2021年3月期末)の顧客(一般消費者)を有する。TLCビジョン(Total Life Concierge)の下、顧客の求める商品・サービス(ガス、情報通信・CATV、建築設備不動産、宅配水など)をワンストップで提供するTLC化を推進している。2011年4月1日に株式会社TOKAI(登記名称は株式会社ザ・トーカイ)と株式会社TOKAIコミュニケーションズ(旧社名株式会社ビック東海、2011年10月1日に商号変更)が経営統合し、株式移転により共同持株会社として設立された。
エネルギー事業(2021年3月期売上高構成比39.3%、同営業利益構成比40.2%)と情報通信事業・CATV事業(同43.0%、同51.3%)の2つの柱が、シナジー効果を発揮していることが、同社の競争力ならびに成長力の源泉となっている。第一のシナジーは、人的資源の活用である。同社のBtoC事業の営業は、総勢1,600名の地域担当者がFace to Faceで顧客を訪問し提案するスタイルである。顧客の求めるニーズに対応し、その顧客にあったサービスを提案している。同社は、新規顧客の獲得活動を同業他社のように外注委託せずに同社従業員が担っている。一人の営業担当者が扱う商材はエネルギーから通信サービスにわたり多様であり、このような営業体制を構築している企業は他にはない。営業担当者の生産性を武器として、新規顧客の持続的拡大や効果的なM&A、事業エリアの拡大を実現している。
中期経営計画:同社は、2021年5月11日、2022年3月期から2025年3月期までの4ヵ年を対象とする「TOKAIグループ中期経営計画「IP24」(Innovation Plan 2024 “Design the Future Life”)」を発表した。2025年3月期に、売上高245,000百万円(2021年3月期実績は196,726百万円)、営業利益18,600百万円(同15,226百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益11,000百万円(同8,815百万円)、営業CF*26,000百万円(同22,400百万円)、ROE13%以上(同12.7%)、ROIC9.9%以上(同9.2%)、配当性向40%~50%(同44.6%)、自己資本比率40%程度(同41.6%)、顧客件数3.56百万件(同3.10百万件)を目標とする。(*営業CF=営業利益+減価償却費―リース料支払―税金支払)
同社は、中期経営計画「IP24」(Innovation Plan 2024 “Design the Future Life”)を進める2022年3月期から2025年3月期の4ヵ年を、「Life Designの実現に向けた基盤を造るステージ」と位置付けている。
中期経営計画「IP24」における5つのキーメッセージ
中期経営計画「IP24」(Innovation Plan 2024 “Design the Future Life”)のキーメッセージは5つである。具体的には、1)LNG戦略(Local、National、Global:事業エリアの拡大)の推進、2)TLCの進化、3)DX戦略の本格化により、さらに顧客基盤の強化・拡大を推し進めるとともに、4)経営資源の最適配分や 5)SDGsに向けた取り組み強化にも努める。
ISP(Internet Service Provider、インターネット接続事業者)として、関東地域を中心に全国をエリアとする「@T COM(アットティーコム)」、静岡県においては「TOKAIネットワーククラブ(TNC)」、「webしずおか」の計3つのブランドで直販を行っている。ISPの営業体制としては、2012年に新たに東北地域にも進出した。また、静岡県および関東地域において通信キャリア事業者としての光回線・ADSL回線の卸売を行っている。
関東および静岡県を中心に3,099千件(前期比95千件増)に上る顧客基盤を有している。この顧客基盤に対して、各事業が様々な商品・サービスを提供している。従来は、「単品売り」がメインのビジネスモデルであったが、2011年5月の中期経営計画策定を機に事業ポートフォリオの視点を導入すると同時に、顧客の求める商品・サービスをワンストップで提供する「TLC(Total Life Concierge)」の実現を目指している。2021年3月末で、TLC会員は979千件(前期比83千件増)。
要約
同社は、祖業のエネルギー(LPガスおよび都市ガス)事業と、情報通信事業及びCATV事業を両軸とするユニークな企業である。年度ごとに変動するが、エネルギーと情報通信及びCATVが売上高全体の8割超占めており事業の柱を確立している。静岡の他、関東などに、3.1百万件(2021年3月期末)の顧客(一般消費者)を有する。TLCビジョン(Total Life Concierge)の下、顧客の求める商品・サービス(ガス、情報通信・CATV、建築設備不動産、宅配水など)をワンストップで提供するTLC化を推進している。2011年4月1日に株式会社TOKAI(登記名称は株式会社ザ・トーカイ)と株式会社TOKAIコミュニケーションズ(旧社名株式会社ビック東海、2011年10月1日に商号変更)が経営統合し、株式移転により共同持株会社として設立された。
エネルギー事業(2021年3月期売上高構成比39.3%、同営業利益構成比40.2%)と情報通信事業・CATV事業(同43.0%、同51.3%)の2つの柱が、シナジー効果を発揮していることが、同社の競争力ならびに成長力の源泉となっている。第一のシナジーは、人的資源の活用である。同社のBtoC事業の営業は、総勢1,600名の地域担当者がFace to Faceで顧客を訪問し提案するスタイルである。顧客の求めるニーズに対応し、その顧客にあったサービスを提案している。同社は、新規顧客の獲得活動を同業他社のように外注委託せずに同社従業員が担っている。一人の営業担当者が扱う商材はエネルギーから通信サービスにわたり多様であり、このような営業体制を構築している企業は他にはない。営業担当者の生産性を武器として、新規顧客の持続的拡大や効果的なM&A、事業エリアの拡大を実現している。
第二のシナジーは、資金力である。同社の過去10年の営業キャッシュフローは、毎年度20,000百万円~25,000百万円程度で推移している。一方、同業他社の日本瓦斯(東証PRM 8174)が同15,000百万円程度、ミツウロコグループホールディングス(東証PRM 8131)が同5,000百万円~10,000百万円、シナネンホールディングス(東証PRM 8132)が同5,000百万円程度で推移している。これらと比較すると、同社のキャッシュフローの創出能力は群を抜いており、同社はキャッシュフローを成長投資や株主還元に活用できている。
こうした競争力を背景に、最近の同社は、M&Aやアライアンスに注力し、営業エリアを拡大している。上述した営業担当者の汎用性により、被買収会社の業態を選ばない。M&Aにより統合したガス会社やCATV事業者においてTLCを展開し、複数商材を販売するというビジネスモデルである。
近年の買収事例では、仙台CATV(仙台市、2020年3月)、シオヤ(静岡県東部・CATV事業者、2019年10月)、テレビ津山(岡山県・CATV事業者、2018年2月)、東京ベイネットワーク(東京都・CATV事業者、2017年7月)、下仁田ガス(群馬県・都市ガス、2019年4月)、にかほ市ガス(秋田県・都市ガス、2020年4月)などの実績をあげている。
同社は以前より住宅事業を手掛けてきたが、近年では建設事業の拡大を目指して積極的にM&Aを実行している。2019年9月には、土木工事を主力とする総合建設事業者の日産工業(岐阜県)を買収し、2020年8月には、電気工事を主力とする中央電機工事(愛知県)を買収した。M&Aの狙いとしては、1)岐阜県や愛知県という未進出エリアへの参入や、2)異業種へ展開することで、エネルギーや通信・メディアの顧客層を拡大するシナジー効果が期待できることに加え、3)「インフラ総合企業化」とも言うべき事業分野の戦略的な拡大を目指したものと考えられる。
業績動向
2022年3月期実績:売上高210,691百万円(前期比7.1%増)、営業利益15,794百万円(同3.7%増)、経常利益15,907百万円(同3.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益8,969百万円(同1.7%増)。売上高・利益ともに過去最高を更新した。「収益認識に関する会計基準」等の適用による売上高減少の影響があったものの、エネルギー・CATVなどの顧客件数増加などによる増収、エネルギーの仕入価格に連動した販売価格の上昇、情報通信法人向けストックビジネスの拡大に加え、建築設備不動産のM&A効果などにより増収となった。LPガスおよびアクアにおいて前年同期を上回るペースで顧客獲得を進めたことに伴う顧客獲得費用の増加があるも、顧客件数増加に伴う月次課金件数増加による増益や、法人向け情報通信事業の増益などで補い増益となった。売上総利益率が前年同期比1.7%ポイント低下の40.4%、売上高販管費比率は同1.5%ポイント低下の32.9%となり、営業利益率は同0.2%ポイント低下の7.5%となった。2022年3月期が期初会社予想を上回り過去最高を更新したため、期末配当金を前回予想の15円から2円増配し17円とし、中間配当金15円と合わせて年間配当金を32円(前期は30円)とする。
2023年3月期連結業績同社計画は、売上高223,000百万円(前期比5.8%増)、営業利益14,500百万円(同8.2%減)、経常利益14,300百万円(同10.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益8,300百万円(同7.5%減)、年間配当金は1株当たり32円(前期比横ばい)としている。売上高は引続き顧客件数や受注案件の増加により増収を計画している。利益面については、原油高と円安の進行によるガス仕入価格の高騰が懸念されるが、価格競争力を維持した料金施策などにより引き続き顧客獲得を積極的に推進する。
中期経営計画:同社は、2021年5月11日、2022年3月期から2025年3月期までの4ヵ年を対象とする「TOKAIグループ中期経営計画「IP24」(Innovation Plan 2024 “Design the Future Life”)」を発表した。2025年3月期に、売上高245,000百万円(2021年3月期実績は196,726百万円)、営業利益18,600百万円(同15,226百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益11,000百万円(同8,815百万円)、営業CF*26,000百万円(同22,400百万円)、ROE13%以上(同12.7%)、ROIC9.9%以上(同9.2%)、配当性向40%~50%(同44.6%)、自己資本比率40%程度(同41.6%)、顧客件数3.56百万件(同3.10百万件)を目標とする。(*営業CF=営業利益+減価償却費―リース料支払―税金支払)
基本コンセプトは、同社グループが掲げるTLC構想の実現に向け、10年後にはLife Design Groupという姿を目指しサービスの充実に取り組む。Life Design Groupとは、顧客の過ごしたいライフスタイルのデザイン・提案を通じ、社会課題の解決に貢献していく姿勢である。「IP24」は、その基盤造りのステージと位置づけている。「IP24」のキーメッセージは5つ:1)LNG戦略(Local、National、Global:事業エリアの拡大)、2)TLCの進化、3)DX戦略の本格化により、さらに顧客基盤の強化・拡大を推し進めるとともに、4)経営資源の最適配分や 5)SDGsに向けた取り組み強化にも努める。
同社の強みと弱み
SR社では、同社の強みを、地域的な高シェアとそれを起点とした各種事業の成長、大手公益企業と比較してコンパクトな組織と柔軟性、LPガス業界の淘汰・再編の恩恵を享受しうるポジショニング、の3点だと考えている。一方、弱みは、クロスセルという課題、LPガス市場の縮小傾向、CATV事業における競合激化、にあると考えている。(後述の「SW(Strengths, Weaknesses)分析」の項参照)
主要経営指標の推移
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**2011年3月期以前はTOKAI社実績。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**セグメント別営業利益は、間接費用等配賦後ベース。
直近更新内容
中国・四国エリアにおける法人向け情報通信事業の体制強化 - 岡山オフィスの開設
株式会社TOKAIホールディングスは、同社グループで情報通信事業担う株式会社TOKAIコミュニケーションズが、法人向け事業において静岡・東京・大阪・名古屋に続く、国内5拠点目となる岡山オフィスを2022年4月1日に開設すると発表した。
(リリース分へのリンクはこちら)
TOKAIコミュニケーションズ社は、近年、中国・四国エリアの企業とのビジネスが拡大していることから、同エリアの顧客やパートナーのより身近な場所からきめ細やかなコミュニケーションが図れるように、新たに岡山オフィスを開設することとした。
IP 網による地上放送のバックアップシステム構築及び運用開始
株式会社TOKAIホールディングスは、同社子会社である株式会社TOKAIケーブルネットワークが、IP網による地上放送のバックアップシステムを構築し、その運用を開始したと発表した。
(リリース分へのリンクはこちら)
本バックアップシステムは、同社CATVネットワーク内における地上放送の伝送にIPを利用することで、高品質な地上放送を減衰させることなく長距離伝送できることが特長である。
このシステムを構築したことにより、万が一落雷等の影響によって電波塔などの送信所から地上放送波が送信されなくなった場合にも、静岡県内の他の地域の電波塔から同放送波を受信して、同社のCATVネットワークを経由して広域に伝送することが可能となった。このため同社ケーブルテレビサービスに加入の顧客は、前述のようなケースでも地上放送を継続して視聴することができる。
2018年1月に石川県において、観測史上最大級の落雷によって民放局2社の放送停止事故が発生したことが本件の背景となっている。同社はこのような送信不良などの重大事故発生時における放送サービスの継続提供をケーブルテレビ事業者の責務と考え、静岡県内の放送局各社との協議を重ねながら、非常時のバックアップシステム構築の検討を進めてきた。今後は本システムを運用することで、同社サービスエリア内の住民に対して、今まで以上に強靭な放送視聴環境を提供していくとしている。
業績動向
四半期業績動向
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**セグメント別営業利益は、間接費用等配賦前ベース。
***2021年3月期第1四半期より、報告セグメントの名称を「ガス及び石油」から「エネルギー」、「建築及び不動産」から「建築設備不動産」、「情報及び通信サービス」から「情報通信」に変更している。セグメント名称変更による各セグメント業績への影響はない。
2022年3月期通期実績(2022年5月10日発表)
ポイント
売上高210,691百万円(前期比7.1%増)、営業利益15,794百万円(同3.7%増)、経常利益15,907百万円(同3.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益8,969百万円(同1.7%増)。売上高・利益ともに過去最高を更新した。
2022年3月期通期会社計画に対する達成率は売上高101.8%、営業利益103.6%、経常利益103.8%、当期純利益101.6%と、売上高・各利益が会社予想を上回っての着地となった。
前期比7.1%増収: 「収益認識に関する会計基準」等の適用による売上高減少の影響があったものの、エネルギー・CATVなどの顧客件数増加などによる増収、エネルギーの仕入価格に連動した販売価格の上昇、情報通信法人向けストックビジネスの拡大に加え、建築設備不動産のM&A効果などにより増収となった。
同3.7%営業増益:LPガスおよびアクアにおいて前年同期を上回るペースで顧客獲得を進めたことに伴う顧客獲得費用の増加があるも、顧客件数増加に伴う月次課金件数増加による増益や、法人向け情報通信事業の増益などで補い増益となった。売上総利益率が前年同期比1.7%ポイント低下の40.4%、売上高販管費比率は同1.5%ポイント低下の32.9%となり、営業利益率は同0.2%ポイント低下の7.5%となった。
増配:2022年3月期が期初会社予想を上回り過去最高を更新したため、期末配当金を前回予想の15円から2円増配し17円とし、中間配当金15円と合わせて年間配当金を32円(前期は30円)とする。
継続取引顧客件数:前期(2021年3月期)末比95千件増の3,194千件、TLC会員サービス会員数は同107千件増の1,086千件となった。
トピックス:2021年4月に株式会社TOKAIベンチャーキャピタル&インキュベーションを設立した。既存事業とのシナジーや新たな生活関連サービスの創出など、TLCの進化を実現していく。同月に建築設備不動産事業においてマンションなどの大規模修繕工事を営む株式会社マルコオ・ポーロ化工、情報通信事業においてシステム開発事業を営む株式会社クエリ、それぞれの株式を取得し連結子会社化した。また、同年10月には熊本県熊本市へ、2022年1月には広島県福山市へ、新たなLPガス販売の営業拠点を開設した。
顧客件数の動向
グループの継続取引顧客数は、前期(2021年3月期)末から95千件増加の3,194千件となった。サービス別の顧客件数は、ガス(LP・都市ガス)顧客が前期末比41千件の純増、CATVが同33千件の純増(M&A関連8千件を含む)、アクアが3千件の純増となった。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意
**情報通信とCATVで通信サービス件数が重複した表示であるが、総数からは除いている。
セグメント別業績
同社によれば、セグメント別の業績は以下の通りであった(セグメント別営業利益は間接費用等を調整額から配賦した後のベース)。なお、当第1四半期より、報告セグメントの名称を「ガス及び石油」から「エネルギー」、「建設及び不動産」から「建設設備不動産」、「情報及び通信サービス」から「情報通信」に変更している。セグメント名称変更による各セグメント業績への影響はない。
エネルギー事業:
売上高は86,770百万円(前期比12.1%増)、営業利益は6,059百万円(同0.9%減)となった。
LPガス事業の売上高は73,769百万円(同12.4%増)となった。引き続き顧客獲得を推進し結果、需要家件数は前期末比34千件増加し715千件となった。
都市ガス事業の売上高は13,000百万円(同10.7%増)となった。需要家件数は、前期末比7千件増加の70千件となったが、産業用ガス販売量の増加や原料費調整制度の影響などにより増収となった。
営業利益は顧客獲得費用の増加などにより微減益となった。
情報通信事業:
売上高は51,398百万円(同1.3%増)、営業利益は3,355万円(同8.7%増)となった。
情報通信事業のうち、コンシューマー向け事業の売上高は24,400百万円(前年同期比7.2%減)となった。ISP事業は大手携帯キャリアとの提携によるメニューの拡充、モバイル事業はサービスメニューの適宜見直しや固定回線とのセットプランなどにより顧客獲得を推進した。これら施策の効果により、ブロードバンド顧客は前期末比2千件減少に抑え654千件、LIBMO顧客は2千件増加の55千件となった。
情報通信事業のうち、法人向け事業の売上高は26,997百万円(同10.5%増)となった。クラウドサービスが順調な進捗、活況である受託開発案件の増加などにより増収となった。
CATV事業:
売上高は32,572百万円(同3.5%減)、営業利益は5,189百万円(同10.0%増)となった。
地域密着の事業者として、地元の情報発信や番組制作に注力するとともに、大手動画配信事業者と提携するなど、コロナ禍を家庭で快適に過ごせるようコンテンツの充実に努めた。また、新規獲得については各エリアの実情に応じて慎重かつ着実に営業活動を持続させたことで、放送サービスの顧客件数は前期末から12千件増加し887千件、通信サービスの顧客件数は同22千件増加し344千件となった。
建設設備不動産事業:
売上高27,780百万円(同19.9%増)、営業利益は1,706百万円(同35.7%増)となった。
連結子会社化した株式会社マルコオ・ポーロ加工社が寄与した他、既存の建築設備工事や土木工事の受注も順調に推移し、増収増益となった。
アクア事業:
売上高は7,629百万円(同0.1%増)、営業利益46百万円(同82.1%減)となった。
大型商業施設などでの催事営業が順調に推移したほか、テレマーケティングなどの非対面営業も実施し増収となった。顧客件数が前期末比3千件増加し165千件となった。利益については、顧客獲得費用の増加により減益となった。
その他事業:
売上高4,540百万円(同11.7%増)、営業損失103百万円(前年同期は営業損失244百万円)となった。
介護事業では、利用者数が増加し、売上高は1,353百万円(同2.9%増)となった。
造船事業では、船舶修繕の隻数が増加したことにより、売上高1,673百万円(同11.1%増)となった。
婚礼催事事業では、若干の回復がみられ、売上高は646百万円(同54.9%増)となった。
過去の四半期実績と通期実績は、過去の業績へ
今期会社計画
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
概要
2023年3月期連結業績同社計画は、売上高223,000百万円(前期比5.8%増)、営業利益14,500百万円(同8.2%減)、経常利益14,300百万円(同10.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益8,300百万円(同7.5%減)、年間配当金は1株当たり32円(前期比横ばい)としている。
2022年3月期から2025年3月期までの4ヵ年を対象とする「TOKAIグループ中期経営計画「IP24」(Innovation Plan 2024 “Design the Future Life”)」で掲げた5つのキーメッセージに基づき、持続的な成長・発展に向けた取り組みを進めている。
「IP24」のキーメッセージは5つ:1)LNG戦略(Local、National、Global:事業エリアの拡大)、2)TLCの進化、3)DX戦略の本格化により、さらに顧客基盤の強化・拡大を推し進めるとともに、4)経営資源の最適配分や 5)SDGsに向けた取り組み強化にも努める(後段で詳述)。
2023年3月期は、売上高は引続き顧客件数や受注案件の増加により増収を計画している。利益面については、原油高と円安の進行によるガス仕入価格の高騰が懸念されるが、価格競争力を維持した料金施策などにより引き続き顧客獲得を積極的に推進する。
中長期展望および経営戦略
中長期計画
中期経営計画「IP24」(Innovation Plan 2024 “Design the Future Life”)
概要
中期経営計画「IP24」(Innovation Plan 2024 “Design the Future Life”)の発表
同社は、2021年5月11日、2022年3月期から2025年3月期までの4ヵ年を対象とする「TOKAIグループ中期経営計画「IP24」(Innovation Plan 2024 “Design the Future Life”)」を発表した。
経営目標値
最終年度2025年3月期の目標値は、売上高245,000百万円(2021年3月期実績比124.5%)、営業利益18,600百万円(同122.2%)、親会社株主に帰属する当期純利益11,000百万円(同124.8%)、営業キャッシュフロー26,000百万円(同116.1%)。顧客件数3.56百万件(同114.9%)。2022年3月期の営業利益は、LPガス顧客獲得の強化やワークスタイル改革実施により、前期比横這いを見込むものの、中期経営計画の年間を通じて持続的な増収・増益を目指すとしている。
株式市場の期待に応える資本効率の水準を維持する(ROE13%以上、ROIC9.9%以上)。自己資本比率40%程度を目標とする。
*営業CF=営業利益+減価償却費ーリース料支払ー税金支払
資本政策
同社グループの成長、利益水準の向上に応じた積極的な株主還元を実施していく。2021年3月期に前期比2.0円/株引き上げた年間30円/株を基に、配当性向40~50%の範囲内で配当を行うとともに、自己株取得についても機動的に実施していく方針。
次の10年に向けた基本コンセプト
基本コンセプト
同社は、同社グループが掲げるTLC構想の実現に向け、10年後にはLife Design Groupという姿を目指しサービスの充実に取り組む。Life Design Groupとは、顧客の過ごしたいライフスタイルのデザイン・提案を通じ、社会課題の解決に貢献していく姿勢である。中期経営計画「IP24」(Innovation Plan 2024 “Design the Future Life”)は、その基盤造りのステージと位置づけている。
今後の市場環境についての同社の⾒⽴て
コロナ禍をきっかけに、顧客の生活の変化、SDGs等の社会変化の加速といった、これまでの生活に関する環境変化がもたらされていると同社は考えている。コロナ禍における生活の変化としては、例えば、消費⾏動のオンライン化、テレワークや時差出勤などの推進、健康意識の⾼まり、地域課題の顕在化、宅内型サービスの充実、体験型サービスの進展などがある。また、企業を取り巻く社会変化の進展としては、例えば、クリーンエネルギーの潮流、エネルギーの自由化、デジタル化、働き方改革、人口減少・少子高齢化などである。
同社グループが目指す将来像
同社グループは時代の求める方向性に応え、「サステナブルに成⻑し続け、人々の生活を創る企業グループ」を目指すとしている。「顧客の暮らしのために、地域とともに、地球とともに、成長し続ける」という変わらない価値とともに、時代の求める価値を顧客に提供していく。
10年後の同社グループが目指す姿
10年後の同社グループが目指す姿は、顧客の過ごしたいライフスタイルのデザイン・提案を通じ、社会課題の解決に貢献していく「Life Design Group」である。「生活インフラの提供」(Service Supply:従来の10年間)から、「暮らしのサポート」(当中期経営計画「IP24」の4年間)、更には「ライフスタイルのデザイン・提案」(その後の6年間)への発展を目指す。複数のサービスを掛け合わせ、体験価値を提案する取り組みを検討していく。例えば、以下のイメージである。
家庭⽤エネルギーソリューション:ガスや電気、再生可能エネルギーと蓄電池・エネファームを組合わせたエネルギーのベストミックスによる環境配慮型の生活を提案。
オンラインを活⽤した暮らしの総合サポート:家庭に居ながら仕事ができる、あるいは医療や教育など暮らしに関わる様々なサービスが享受できる快適さを提案。
宅配サービス:アクア(宅配水)に加え、レシピ提案や食材デリバリーをベースに、SNSや動画配信、ショールーム料理教室での体験など、利便性や「食」の楽しみ方を提案。
地域活性化サービス:葵舟就航事業などの観光、スポーツを通じた健康促進、 アウトドア施設や温浴施設の運営など、それぞれの地域の特⻑を活かした屋外体験型サービスを提案。
同社は、中期経営計画「IP24」(Innovation Plan 2024 “Design the Future Life”)を進める2022年3月期から2025年3月期の4ヵ年を、「Life Designの実現に向けた基盤を造るステージ」と位置付けている。
中期経営計画「IP24」における5つのキーメッセージ
中期経営計画「IP24」(Innovation Plan 2024 “Design the Future Life”)のキーメッセージは5つである。具体的には、1)LNG戦略(Local、National、Global:事業エリアの拡大)の推進、2)TLCの進化、3)DX戦略の本格化により、さらに顧客基盤の強化・拡大を推し進めるとともに、4)経営資源の最適配分や 5)SDGsに向けた取り組み強化にも努める。
LNG戦略の推進
既存エリアのシェア拡大をローカル(L)、国内の戦略的エリア拡大をナショナル (N)、海外展開をグローバル(G)として、事業エリアを拡げ顧客件数の増加(2021年3月期末実績3.1百万人⇒2025年3月期目標3.56百万人)とともに、成長を支えていく。
Local:既存エリアにおけるシェア拡大を目指す。
Nationalへの拡大:エネルギー事業は四国・西日本への展開を、建築設備不動産事業では関東および中京圏への展開を、情報通信では九州・北陸への展開を図る。
Globalへの拡大:エネルギー事業はベトナムを始めとする東南アジアへの展開を、情報通信事業は中国、インドネシアへの展開を図る。
TLCの進化
顧客ニーズを的確に捉える「デジタルマーケティングの高度化」とコーポレートベンチャーキャピタルを核とする「オープンイノベーション」、これら2つの戦略をエンジンとして、TLCのさらなる推進を図っていく。顧客の過ごしたいライフスタイルをデザイン・対案するための布石として2つの戦略(「デジタルマーケティング」による顕在ニーズおよび潜在ニーズの分析、「オープンイノベーション」による新サービスの拡充および創出)をエンジンとして推進する。
DX戦略の本格化
アブサーズ(ABCIR+S*)を活用したDX戦略に取り組み、上記のLNG戦略、TLCの進化について、横断的に牽引していく。同社が保有する全国3百万超の顧客データを一元化し、同社のデータ分析基盤である「D-sapiens」を活⽤して、顧客ニーズに訴求するデジタルマーケティングの⾼度化を図る。株式会社TOKAIベンチャーキャピタル&インキュベーション(2021年4月1日に設立した同社のコーポレートベンチャーキャピタル)を拠点に、スタートアップ企業への出資を通じて、新たな技術やアイデア、人材を獲得する新たな事業の探索と構築を開始している。
経営資源の最適配分
営業キャッシュフローにより創出された経営資源について、事業の将来成長に向けた設備投資などの成長投資と、株主価値の向上に向けた株主還元の充実を図りながら、最適と考える配分に努める。具体的な経営数値目標は、以下の通り。
SDGsに向けた取り組み強化
Green戦略:2031年3月期には、同社グループの事業活動におけるCO2排出量を2021年3月期比70%(13,000トン)削減する。営業活動面では、高効率ガス機器の普及や太陽光発電の設置などにより、家庭向けガスのCO2排出量を2021年3月期360,000トン比50%に相当する量(170,000トン)の削減を目指し、達成に向けて取り組む。2050年までに同社グループが販売するガスを脱炭素化し、カーボンニュートラルの達成を目指す。
ワークスタイル改革:2021年4月より、同社は、出社率50%、オフィス床面積40%削減を目指し、テレワークを導入した。2025年3月期には、全社員(エッセンシャルワーカーを除く)がリモートワークの対象となるよう進めていく。2030年までに女性管理職数を現在の10倍、介護離職率0%を目標に掲げ、多様な人財の活躍推進を図っていく。
ガバナンスの強化:同社は、取締役の指名・報酬等に係る評価、決定プロセスの透明性および客観性を担保することなどを目的として、2021年2月に指名・報酬委員会を設置した。取締役の構成についても見直しを進めるなど、今後もコーポレート・ガバナンスの有効性・透明性の向上に努めていく。
(参考)前中期経営計画「Innovation Plan 2020“JUMP”」
第3弾となる中期経営計画の成果
設立70周年をターゲットとする4ヵ年計画
同社は、2017年5月9日、2021年3月期を最終年度とする中期経営計画(4ヵ年計画)「Innovation Plan2020 “JUMP”」を発表した。当計画は、2012年3月期~2014年3月期を対象とした「Innovation Plan2013」(第1次計画)、2015年3月期~2017年3月期を対象とした「Innovation Plan2016 “Growing”」(第2次計画)に続く、第3弾となる中期計画であった。過去2回の中期経営計画が3ヵ年計画であったのに対し、当「Innovation Plan2020 “JUMP”」は設立70周年となる2020年をターゲットとする4ヵ年計画(2018年3月期~2021年3月期)となっていた。当中期経営計画は戦略的M&Aやアライアンス投資を積極的に行い、トップライン成長を狙うという点で、「攻め」の色が濃かった。
数値目標と実績
2021年3月期の売上高および営業利益の数値目標(当初)は、売上高339,300百万円(2017年3月期実績比1.9倍)、営業利益22,500百万円(同1.8倍)であった。2020年5月時点での修正値は、売上高205,300百万円、営業利益15,000百万円であった。同実績は、売上高196,726百万円(2017年3月期実績比同1.1倍)、営業利益15,226百万円(同1.2倍)に止まった。M&A計1,000億円を実行する予定であったが、投資規律を持って取り組んだ結果16,700百万円に止まったことが、当初計画が未達となった主因。
また、資本効率を重視した経営により、有利子負債/EBITDA倍率2.6倍、自己資本比率31.6%、ROE13.0%を計画していたのに対して、2021年3月期実績は、有利子負債/EBITDA倍率1.4倍、自己資本比率41.6%、ROE12.7%となった。
概要
M&Aによる顧客拡大とサービス拡充
ガス・電力の自由化の流れを機会として捉え、今後4年間で合計1,000億円の戦略的M&Aやアライアンス投資を積極的に行った。対象企業は、ガス、CATV、情報通信など既存事業の拡大につながる企業のほか、生活関連サービス周辺の新事業領域のサービスや顧客を持つ企業。同社グループの既存事業のオーガニック成長に加え、収益基盤を持つ企業とのM&Aにより連結業績の上積みを図った。また、同社グループのビジネスモデルの強みが活かせる月次課金型の生活関連サービスなどを外部から獲得し、クロスセルによるシナジー創出を狙った。
顧客基盤拡大と1顧客当たりライフタイムバリューの上昇
2021年3月期末までに顧客基盤を2017年3月期末の256万件から432万件以上に拡大させると同時に、グループ全体で2017年3月期末7%程度の複数サービス取引率を2021年3月期末までに20%へ上昇させることを目標とした(2021年3月期実績は継続取引顧客件数3,099千件、TLC会員数979千件)。ユーザーとの直接の接点を持っている(グループ従業員約4,000名のうち、約2割がリテール顧客との接点を持っている)同社の強みを活かし、同社の生活インフラサービスを顧客に重畳してもらうことにより1顧客から上がる収入(ARPU)の上昇と同時に解約率低下を図った。即ち、1顧客当たりライフタイムバリューの上昇を図った。
前中期経営計画「Innovation Plan 2020“JUMP”」のポイント
前中期経営計画(「Innovation Plan2020“JUMP”」)の基本方針は、以下の4点であった。
今後4年間で1,000億円のM&Aやアライアンス投資を積極的に行い、レバレッジを効かせた成長戦略を遂行する
M&Aやアライアンス投資の対象は、第1にガス、CATV、情報通信といった中核事業の顧客基盤拡大につながる企業、第2に、グループのビジネスモデルの強みを活かせる新しい生活関連サービス(月次課金型)を保有する企業
売上高とともに営業利益(2021年3月期に2017年3月期比それぞれ約2倍が目標)やROE(2021年3月期目標13.0%)を重視する
継続的かつ安定的な還元方針で株主に報いていく
経営戦略
同社の手掛ける商品・サービスは多岐にわたるため、現時点のみを瞬間的に捉えて判断しようとするとその意図するところが一見わかりにくく映るかもしれない。しかし、実際、同社の歴史を紐解いていくと、顧客の潜在的ニーズに合致し、同社の将来における成長に寄与する商品・サービスであれば、積極的に手掛けていくという比較的シンプルな方針に則って経営がなされてきたことがわかる。
創業来、LPガスなどのエネルギー分野やFTTH・CATVといった通信・放送分野において、主に社会インフラに関わるプロダクト(商品・サービス)をその営業力でもって広げてきた。しかし、中核事業をとりまく環境は、市場成長の鈍化が見え始めている中で、更なる成長を遂げるため、同社は「グループ単体事業の価値(単品売り)」ではなく、「グループ統合的な価値」提供を推進している。
ただし、同社の顧客における、複数商品・サービス利用顧客はまだごく一部に留まる。同社は複数契約の獲得に向けて様々な施策を打ち出し始めている。これらの施策により、複数契約化に進展が見られれば、解約率の低下や営業効率の向上などの事業間シナジーが創出されることとなろう。
事業内容
ビジネスの概要
静岡および関東などで、2021年3月末現在、3,099千件の顧客に多彩な商品・サービスを提供している企業であり、LPガスなどの「エネルギー・住生活関連」とインターネット接続サービスやCATVなどの「情報通信」が柱である。
2011年4月1日に株式会社TOKAI(登記名称は株式会社ザ・トーカイ)と株式会社TOKAIコミュニケーションズ(旧社名株式会社ビック東海、2011年10月1日に商号変更)が経営統合し、株式移転により共同持株会社として設立された(注)。
主要事業
リテール顧客等を対象とした多岐にわたるサービスを提供している。セグメントは「エネルギー事業」、「情報通信事業」、「CATV事業」、「アクア事業」、「建築設備不動産事業」、「その他事業」の6つに区分されている。
主力は「エネルギー事業」、「情報通信事業」、「CATV事業」の3事業であり、下図の通り顧客件数も多く、売上高および営業利益の大半を占めている。
*情報通信とCATVで通信サービスが重複。合計値からは除外。
*情報通信(従来型ISP)には、21年3月期よりISP付加サービスの契約を含めている。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*2011年3月期以前はTOKAI社実績。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**2009年3月期以前はCATV事業が情報通信事業に含まれている。
***2012年3月期以前はアクア事業がエネルギー事業に含まれている。
****2011年3月期以前はTOKAI社実績。2012年3月期は2011年3月期のTOKAI社と比較。
*****セグメント別営業利益は、間接費用等を調整額から配賦する前のベース。
エネルギー事業
同社の中核となる事業セグメントであり、2021年3月期の実績は売上高77,380百万円(全社に占める構成比は39.3%)、間接費用配賦前のセグメント利益8,988百万円(同42%)であった。
同事業は、下記4つの事業部門(サブセグメント)より構成されている。ただし、同事業の収益の大半をLPガス事業が占めている。2021年3月期実績でいえば、液化石油ガス・石油事業部門(以下、LPガス事業部門)が売上高65,638百万円、都市ガス事業部門が売上高11,741百万円であった。
液化石油ガス・石油事業部門(LPガス事業部門)
LPガス・液化天然ガス(LNG)・石油製品及びこれらに関連する機器工事の販売等が主たる事業内容である。LPガスは東海地方、関東地方を中心に1都16県で681千件(うち、静岡約182千件、関東約450千件)の顧客に利用されている(2021年3月末時点)。静岡県内シェアは21%でトップ、関東圏シェアは7%で第2位、全国ベースでは業界3位のLPガス事業者である(出所:株式会社石油化学新聞社「LPガス資料年報 VOL56 2021年度版」)。
都市ガス事業部門
静岡県中部の焼津市・藤枝市・島田市において都市ガスを供給している。都市ガスは63千件の顧客に利用されている(2021年3月末時点)。販売量は1.3億㎥(大口需要家1.2億㎥、小口需要家0.2億㎥:2021年3月期)。2018年4月、群馬県下仁田町が運営するガス事業の譲受に関する契約を締結。同年10月に関東経済産業局より事業譲受の認可を取得。2019年4月より事業を承継した。また、2019年3月には、秋田県にかほ市が運営するガス事業の譲受に関しての優先交渉権を獲得し、2020年4月より事業を承継している。2019年4月には、群馬県伊勢崎市で都市ガス事業を営む伊勢崎ガスの株式を取得して持分法適用会社とした。更に、2019年10月には、東京電力エナジーパートナー株式会社(東電EP)と共同で「T&Tエナジー株式会社を設立。東電EPの「ガス調達力をはじめとした都市ガス小売業のノウハウ」と同社の「東海エリアの販売ネットワーク」とを活用し、東海エリアにおいて都市ガス事業を展開するほか、東海3県以外への販売エリア拡大についても検討していく。同社の都市ガス事業の広域展開が着実に進展している。
高圧ガス事業部門
酸素、窒素等の高圧ガス及び関連機材の販売、高圧ガスの製造を行っている。
セキュリティ事業部門
セキュリティ(機械警備業務)サービスと他のセキュリティ事業者向けのセキュリティシステムの卸売を行っている。
情報通信事業
同事業の2021年3月期の実績は売上高50,375百万円(全社に占める構成比は約26%)、間接費用配賦前のセグメント利益4,344百万円(同21%)であった。同事業は4事業部門で構成される。ADSL・FTTH事業部門とモバイル事業部門が個人を対象にしたビジネス、SIS事業部門(システムイノベーションサービス事業部門)および企業向け通信事業部門が企業を対象にしたビジネスである。
2021年3月末の顧客件数は991千件(前期は973千件)である。総務省情報通信統計データベースによれば、静岡県で21万件のトップシェア(17.8%)、関東エリア36万件(シェア2.2%)(いずれも2020年12月末現在)。
2020年3月期実績でいえば、ADSL・FTTH事業部門が売上高24,843百万円、営業利益2,342百万円、モバイル事業部門が売上高4,720百万円、営業損失488百万円、SIS事業部門が売上高14,374百万円、営業利益1,620百万円、企業向け通信事業部門が売上高7,815百万円、営業利益1,957百万円であった。
2021年3月期実績でいえば、コンシューマー向け事業が売上高26,304百万円、法人向け事業は24,430百万円であった。
ADSL・FTTH事業部門
ISP(Internet Service Provider、インターネット接続事業者)として、関東地域を中心に全国をエリアとする「@T COM(アットティーコム)」、静岡県においては「TOKAIネットワーククラブ(TNC)」、「webしずおか」の計3つのブランドで直販を行っている。ISPの営業体制としては、2012年に新たに東北地域にも進出した。また、静岡県および関東地域において通信キャリア事業者としての光回線・ADSL回線の卸売を行っている。
モバイル事業部門
ソフトバンクモバイル株式会社(ソフトバンク株式会社(東証PRM 9984)子会社)の代理店事業を営んでおり、静岡県、埼玉県でモバイルショップを合計14店舗運営している。
SIS事業部門
SIS事業部門は、さらに「EA事業」(ソフトウェア受託開発)と、「SI・DCS事業」(SIは情報システム販売・保守・運用など、DCSはデータセンター)に区分される。2015年3月期実績でいえば、売上高構成比は、EA事業が49%、SI・DCS事業が51%であった。また、営業利益構成比(間接費除く)は、EA事業が41%、SI・DCS事業が59%となっている。
データーセンター(DCS)については、静岡県焼津市内の2つのデータセンター(同社によれば震度7の地震まで耐えられる設計になっている)を拠点にコロケーション、メールシステム、バックアップ、クラウドプラットフォーム(仮想サーバ環境)などのアウトソーシングサービスを提供している。また、岡山県に第3データセンターを株式会社両備システムズと共同で構築、2013年4月にサービスを開始した。3つのデータセンターで合計約1,000ラック規模を誇る。日本各地のデータセンター事業者(全21社*)で連携を図りつつ、BCP対策・DR(Disaster Recovery、災害復旧)サービスを提供している。また、2013年3月に台湾(台北市)に設立した「雲碼股份有限公司」(Cloud Master Co., Ltd.)との連携を最大限に活用した安価でセキュアなホステッドプライベートクラウドサービスにより、ストックビジネスの強化を図る方針としている。
EA事業、SI事業においては、約700名(2021年3月末現在)の技術者を擁し、外食産業や医療、公共事業といった業種、及び会計・人事系システムを中心にさまざまな業種・分野に対して、コンサルティングから構築・運用・保守、さらにはAWSソリューションによるクラウドへの移行・クラウド活用支援に至るまでトータルソリューションを提供している。
企業向け通信事業部門
自社で有する北関東から大阪に至るエリア、敷設総距離約10,000kmに及ぶ光ファイバーネットワークを基盤に、インターネット接続や拠点間通信サービスを提供している。同部門の売上の約9割は拠点間通信サービスを提供する「専用線サービス」であり、それ以外に光ファイバーそのものを賃貸する「芯線貸し」なども行っている。
また、2013年4月1日からの岡山データセンターの稼働にあわせ、光ファイバーネットワークを岡山県まで延伸し、西日本エリアの事業用通信設備を増強している。
CATV事業
同事業の2021年3月期の実績は売上高33,745百万円(全社に占める構成比は約17%)、間接費用配賦前のセグメント利益5,205百万円(同25%)であった。同事業では、静岡県、東京都、神奈川県、千葉県、長野県、岡山県、宮城県の1都6県で放送サービス・通信サービス(インターネット接続サービス)を行っている。2020年3月期実績における売上構成比は、放送サービスが47%、通信サービスが53%であった。2021年3月期末加入者数は、放送サービスが875千件、通信サービスが322千件で総数1,198千件(前期末1,154千件)。
放送サービスでは、コミュニティチャンネルによる地域情報や、160チャンネルにのぼるデジタル多チャンネル放送を通して、情報を配信している。
通信サービスでは、従来のCATVインターネットに加え、幹線網から各家庭までのアクセス回線まで自社で保有・敷設することによって実現した光ファイバーインターネットサービス及び光電話サービスを提供している。契約件数は322千件である(2021年3月末)。
同社が放送・通信サービスを張り巡らせているサービス提供可能世帯数(ホームパス)は1,621千世帯であり、うち放送視聴の顧客は875千世帯、放送加入率(視聴顧客数÷提供可能世帯数)は約54%となっている(2021年3月末時点)。利用形態の割合は、放送のみが61%、放送・通信の両方が28%、通信のみが11%となっている(2021年3月末時点)。
建築設備不動産事業
同事業の2021年3月期の実績は売上高23,177百万円(全社に占める構成比は約12%)、間接費用配賦前のセグメント利益2,065百万円(同10%)であった。同事業では、住宅・店舗等の建築・設計、リフォーム、設備機器の販売、不動産の開発・売買・賃貸及び仲介等の事業を行っている。収益に占める寄与度が高いのは店舗・オフィスの賃貸事業である。売上高構成比では、リフォームが約22%、設備機器が約15%、設備工事が約13%となっている。(2021年3月期)。
1970年より住宅設備事業に参入し、戸建住宅・賃貸住宅・リフォームの施工からマンション・オフィスビル等の大型建築までを幅広く手掛けるとともに、優良宅地の開発を促進し、街づくりを推進している。また、ハウスメーカー・工務店向け住宅設備機器の販売や空調設備工事・給排水衛生工事等の設備工事も行っている。さらには、2010年4月よりJR静岡駅前に開業した「葵タワー」の延床面積の61%を取得し、店舗・オフィスの賃貸事業を行っている。
総合リフォーム事業(「TOKAI WILLリフォーム」)に本格参入したのは2012年4月である。同社は地域密着型のガス事業の展開により培ってきた豊富な水回りリフォーム実績を有するとのことだが、そうした技術の蓄積とガス事業を通じた60万件以上の顧客を有する点を活用し、当該事業を伸ばしていくつもりだとしている。また、特徴として、女性プランナーを積極的に採用し、女性目線・主婦目線での設計・提案を行っているもようだ。
2019年9月には総合建設事業者の日産工業(岐阜県)を連結子会社化した。CATV事業者や都市ガス事業者と比較すると、同社の得意とする商材を販売するシナジー効果は薄いとも考えられるが、土木事業のノウハウ(従来は未保有)と拠点を入手できる。「未進出エリアにおいて営業拠点を確保し複数商材を展開する」という販売力への自信が買収を決断した背景となっているとも考えられる。2020年8月には愛知県の中央電機⼯事を⼦会社化し、⼟⽊⼯事、電気⼯事を新たな事業に加えることで、 総合建築事業者として、建設業における主要⼯事の受注体制を構築してきた。同年11月には、ビルメンテナンス事業を営むイノウエテクニカ社を連結子会社化し、イノウエテクニカ社が⻑年培ってきた管財事業のノウハウを継承し、同事業の拡⼤を図っている。
アクア事業
同事業の2021年3月期の実績は売上高7,622百万円(全社に占める構成比は約4%)、間接費用配賦前のセグメント利益573百万円であった。同事業では、天然水等を利用した飲料水の製造、宅配・販売を行っている。同社は同事業を成長分野と位置付けている。
2007年11月より静岡県でリターナブルボトルサービス(ボトルを回収し、洗浄・殺菌後に再利用する)を、また2011年3月より全国向けにワンウェイボトルサービス(ボトルを宅配便で送り、使用後はペットボトルと同様に廃棄してもらう)を開始し、162千件の顧客を有する。そのうち静岡県内のリターナブルサービスは71千件の顧客を有し、普及率では約5%、静岡県内トップシェアを誇っている。一方、全国向けのワンウェイサービスは、2013年5月より潜在ニーズが高いと推測される関東圏での販売を強化し、91千件の顧客を有する(いずれも2021年3月末時点)。
ブランド名称は、リターナブルボトルサービスがサービス開始以来「おいしい水の宅配便」で親しまれている。一方、ワンウェイボトルサービスは2013年5月より「おいしい水の贈り物 うるのん」にリブランドし、飲料水に高い関心を示す子育て主婦層を重点ターゲットとした営業戦略を立て、関東エリアを中心に展開している。
商品の特徴としては、地元富士山の「天然水」を主な商品群としている。同社は富士山麓の朝霧高原(静岡県富士宮市)に水源を確保しており、そこから汲み上げた水を使用している。朝霧高原は名水の採取地として知られ、富士山を形成する玄武岩層で濾過された有用なミネラルを含んだ天然の清水が流れているという。
生産体制としては、2008年4月より静岡県焼津市の自社工場「TOKAIアクア焼津プラント」でリターナブルボトルの生産を行っている(生産能力年間1.85百万本;約70千件相当)。今後のワンウェイサービスの需要増加やBCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)対策などの観点から、2013年3月より富士山南陵工業団地(静岡県富士宮市)に2つ目の工場「アクア富士山プラント」を稼働させている(生産能力年間3百万本;同約110千件相当)。
静岡から日本全国へとエリア展開してきたが、2012年4月には中国・上海に現地法人「拓開(上海)商貿有限公司」を設立した。「富士思源」という商品名で2012年6月より富裕層をターゲットに販売を開始している。
ARPU(Average Revenue Per User、加入者1件あたりの月間収入)は4,600円程度、1件当たり平均約2本の購入(「朝霧のしずく」では1本12ℓ1,391円(税込);別途サーバー代金が必要)となっている(2021年3月末時点)。
その他事業
その他事業の2021年3月期の実績は売上高4,065百万円(全社に占める構成比は約2%)であった。その他の事業については、以下3事業部門で構成されている。
婚礼催事・ホテル事業部門
静岡駅前「葵タワー」内で運営する「グランディエール ブケトーカイ」を始めとする婚礼催事場の運営、ホテル事業を行っている。
船舶修繕事業部門
遠洋・近海漁業船舶等の修繕工事を行っている。
その他サービス事業部門
生命保険代理店・損害保険代理店、旅行代理店や介護施設の運営等を行っている。
介護施設の運営は、同社が新規事業として強化している取組みの一つである。高齢化社会という社会情勢に鑑み、2011年4月に事業を開始しており、2021年3月末時点で静岡県内にデイサービス施設6ヶ所、ショートステイ施設、介護付有料老人ホームを各1ヶ所運営しているほか、ケアプランセンター2ヶ所を開設している。同社は、今後もニーズに鑑みながら、デイケア、ショートステイ、介護付有料老人ホームの施設を拡充し、地域貢献を果たしながら事業の拡大を図っていく方針としている。
ビジネスモデル
関東および静岡県を中心に3,099千件(前期比95千件増)に上る顧客基盤を有している。この顧客基盤に対して、各事業が様々な商品・サービスを提供している。従来は、「単品売り」がメインのビジネスモデルであったが、2011年5月の中期経営計画策定を機に事業ポートフォリオの視点を導入すると同時に、顧客の求める商品・サービスをワンストップで提供する「TLC(Total Life Concierge)」の実現を目指している。2021年3月末で、TLC会員は979千件(前期比83千件増)。
ただし、「TLC」化は未だ道半ばにあるとSR社はみており、当面は「事業ポートフォリオ」ないしは「個々の事業評価の積み上げ」的視点から同社を評価・分析していくのが望ましいのではないかと捉えている。同社3,099千件の顧客に占める複数サービス利用顧客は全体の20.0%(2021年3月末時点;2021年3月期末会社計画は20%以上であった)。
ちなみに、同社は、2012年12月より、イオン株式会社(東証PRM 8267)の電子マネー「WAON」を搭載した「TLC WAON」カードを発行し、グループ横断の総合会員サービス「TLC会員サービス」をスタートさせた。同社のサービスをたくさん利用するほど共通ポイントが貯まる仕組みとなっており、貯まったポイントは支払いの他、電子マネーWAONポイント、エムアイポイント等、計17のメニューから選択して交換できる。こうした試みは興味深いとSR社では認識しており、同サービスの状況、及び同様の施策展開があれば注視していく必要があると考える。
事業ポートフォリオ
多彩な事業を有する中で経営効率を高めるため、事業ポートフォリオに基づく事業の「選択と集中」を進めている。具体的には、エネルギー事業は主力事業だが、縮小傾向にある市場環境を鑑みて、効率性を重視したうえで、他事業に対して安定的にキャッシュや顧客基盤(営業力)を提供していく役割を担っている。これまで同社の成長を担ってきたガス事業は、LPガスでは東海地方、関東地方を中心に1都16県で681千件、天然ガスを原料とする都市ガスでは静岡県焼津市・藤枝市・島田市で63千件の顧客を有する。約500名の営業要員を擁し、グループの地域密着事業の中核を担っている。また、「安定収益分野」として全社営業利益の38%を占めている(以上、2021年3月期)。CATV事業も同様にキャッシュ創出源としての位置づけである。
2019年4月、群馬県伊勢崎市で都市ガス事業を営む伊勢崎ガスの株式を取得して持分法適用会社とした。相互の経営資源やノウハウを共有することで、都市ガス事業とLPガスにおける協業や相互サービスの促進を図る。2019年10月、東京電力エナジーパートナー株式会社と共同で「T&Tエナジー株式会社」を設立し、東海エリアにおいて都市ガス小売業を展開するほか、東海3県以外への販売エリア拡大についても検討していく。更に、秋田県にかほ市が運営していたガス事業を譲受し、2020年4月に、グループとして初めて秋田県に進出する。このように、都市ガス事業の拡大を図るとともに、TLCによる他事業の業容拡大を目指す。
一方、情報及び通信サービス事業、アクア事業は今後の成長分野と位置付けられており、積極投資を行い、更に成長を目指すとされている。情報及び通信サービス事業においては、SIS事業部門と企業向け通信事業部門がその軸として掲げられている。
エリア展開
2021年3月期末の同社グループの事業エリアは、主に関東一円と静岡県で2.6百万件、全国で3.1百万件である。
各エリアの概要は以下の通りである。
関東エリア
同社は、同社エリアで着実に顧客数を伸ばしており、LPガス事業および情報通信事業などを中心として2021年3月期末で約1.38百万件の顧客基盤を構築している。同エリアは、競争が厳しいマーケットではあるが国内最大の消費地である。同社では、まだ顧客開拓の余地が大きいとみている。
静岡エリア
同エリアにおける、2021年3月期末のグループの契約世帯数は0.94百万世帯で、静岡県の全世帯数の約63%を占めている。同エリアでは、LPガス事業は郊外を中心に、CATV事業および都市ガス事業は都市部を中心に展開している。また、インターネット事業と、アクア事業は県内全域でサービスを提供している。同社によれば、同エリアの人口減少率(20年後予想)は国内の中で高いが、県民所得は東京に次いで全国2位であるとのこと。このため、同社では、関連サービスの複合化により、収益拡大余地は大きいとしている。
その他の主要地域
その他の地域合計では、2021年3月末で約0.6百万件の顧客基盤を有している。長野(諏訪)エリアでは、CATV顧客89千件のホームパスに対する加入率が圧倒的(94%)である。岡山(倉敷)エリアでは、CATV顧客97千件に加え、2013年4月にグループ第3のデータセンターを開設している。西日本エリアは、2012年4月に参入したが、情報通信業が2015年度より黒字に転じた。福岡エリアは、2014年4月に参入した。リセプションサービスを機に九州エリアの機器販売およびLPガス新規開拓に参入している。
顧客拡大に向けた営業エリア拡張
同社では、今後も、既存エリアでの規模拡大に加えて、LPガス事業およびアクア事業を中心として、周辺エリアへのエリア拡大を本格的に推進する意向である。LPガス事業では、関東一円および、静岡エリアを起点として、2015年以降は南東北エリア、中部・東海エリアにも進出している。また、アクア事業は、関西エリアを中心として、北陸エリアや中国エリアへの拡大を進めるとしている。
同社の歴史に関しては、「沿革」の項に記載した通りである。1950年に静岡県焼津市にて都市ガスの販売を目的として創立されたが、その後販売エリア拡大を目的にLPガス事業を1959年にスタート。LPガス事業で静岡県内トップシェアになると、1979年には関東圏へと進出している。また、LPガス事業のエリア拡大と同時に、CATV事業、ISP事業など、静岡県内を地盤に多角化を進めてきた。
アクア事業
同社はアクア事業に取り組む意義として、以下の点を指摘している。
LPガス事業で培った顧客接点や物流ノウハウをアクア事業にも展開できる
夏冬の業務平準化(アクア事業の繁忙期は夏、一方、LPガス事業の繁忙期は冬)による業務効率化
同社初の製造事業だが、水源を確保しており、安定的かつ安価に原水が調達できるため、LPガスのように仕入価格に左右されにくい事業として成長が目指せる
アクア事業において、新規開拓を牽引しているのはアクア事業専門の営業部隊だが、静岡県内など一定の顧客基盤を築いた地域においてはLPガス事業部門の営業部隊がアクア事業の営業も兼ねている。また、LPガス事業部門で既に構築している物流ノウハウをアクア事業に活用している。
宅配水市場については、「市場概況」に記載した通り拡大を続けており、今後も「のびしろ」が大きいものとみられる。そうした中、「富士山ブランド」と「営業力」を武器に静岡県内でまずは普及を図り、徐々に販売エリアの拡大を行っている。同社は複数の水源を有しており、今後の需要増加には十分対応可能であると述べている。
SR社の認識として、アクア事業は先行投資期間が必要だが、一度損益分岐点を超えれば高い利益率が享受可能なビジネスである(現状の損益に関しては、「収益性分析」の項参照)。水1本あたりの売上利益率は高い。主な売上原価は、サーバー原価と水原価だが、後者の比率は少なく、サーバー原価の占める比率が高い。ビジネスをスタートして間もなくは顧客獲得費用がかかってしまうため、営業利益は赤字となる。もっとも、顧客数が積みあがっていけば、獲得費用は低減していくため、売上総利益率と営業利益率の間の乖離は徐々に少なくなっていくものと推測される。また、売上原価率に関しても、規模拡大による低減余地があるものと思われる。2017年3月期には黒字化を果たした。
情報通信事業
SIS事業部門及び企業向け通信事業部門における同社の特徴は、データセンター運営、システム受託開発、自社保有の光ファイバーネットワーク基盤を活用した企業の拠点間通信サービスを三位一体で推進している点にある。
つまり、フロー型のビジネスであるシステム受託開発のみならず、ストック型のビジネスである企業の拠点間通信サービス、データセンター運営も行い、かつ一気通貫でサービスを提供できる体制が整っているといえる。今後における課題は、低水準に留まっているデータセンター稼働率(稼働率がSIS事業部門の利益率に連動するものと推測)を高めるべく、中堅企業に対し、クラウドサービスの拡販を行っていくことにある。
CATV事業
CATV事業の売上高は、ARPU×加入世帯数×月数によって求められる。ARPUは付加価値サービスの利用、あるいは複数サービスの加入度合いに応じて変わりうる。世帯数は、加入率とサービスエリアの変数といえる。ARPUが高まれば、利益率改善に直結する。また、加入世帯数は、多ければ多いほど、ハードウェア、番組を購入する際にサプライヤーとの交渉が有利に働くという意味においても重要である。一方、費用に関していえば、装置産業的色彩が強いため、売上原価に占める減価償却費の比率が高い。
同社、あるいは株式会社ジュピターテレコムに共通しているのは、成長戦略として、1)地域密着型の営業展開、2)サービス内容の充実化、3)M&A、等を採用してきたことといえよう。さらに、同社の場合は、CATV事業における1)地域密着型の営業展開が、「TLC」の追求、すなわち他事業の商品・サービスを提供するに際しての武器にもなりうるとみている。
参考:LPガスについて
LPガスは、Liquefied Petroleum Gas(液化石油ガス)の略であり、圧縮すると常温で液化しやすいブタンやプロパンを主成分としたガス燃料のことである。常温でも8気圧と比較的低い圧力で液化するので、ボンベに充填して運搬がしやすい。そのため都市ガスのインフラが行き渡っていない郊外や、地方都市などで現在も広く家庭用の熱源として利用されている。
一方、「都市ガス」は、張り巡らされたガス導管を通じて供給されるガスを指すもので、天然ガス(メタン)を主成分とするガス燃料である。ブタンやプロパンと違って、液化するには圧縮するだけでなく、マイナス16℃以下まで冷やす必要がある。そのためボンベなどでの運搬には適さず、地中に張りめぐらせたガス管を使って気体のまま家庭に供給される。
LPガスの主な用途は、以下のように分けられる。