1950年9月設立、電気計測器の販売でトップシェアを握る独立系専門商社の老舗。電気計測器の市場規模(国内売上+輸出+海外拠点売上、2016年度実績)約7,500億円のうち、グループ内消費、メーカー直販を除いた同社を含むディーラー経由の割合は約40%(残り60%がメーカー直販等)。ディーラー経由の売上げで、同社は全国で30%弱、関東近県で約50%のシェアを誇る。営業拠点は国内39拠点、海外11カ国39拠点で展開中。特定メーカーに依存しない独立系の強みを生かし、ユーザーニーズを重視した販売網形成が功を奏している。
Electronic Equipment, Instruments & Components
要約
事業概要
日本電計株式会社(以下、同社)は、1950年9月設立、電気計測器の販売でトップシェアを握る独立系専門商社の老舗。一般社団法人日本電気計測工業会によれば、電気計測器の市場規模(国内売上+輸出+海外拠点売上、2019年度実績)約790,000百万円のうち、グループ内消費、メーカー直販を除いた同社を含むディーラー経由の割合は約40%(残り60%がメーカー直販等)。ディーラー経由の売上げで、同社は全国で30%弱、関東近県で約50%のシェアを誇る。営業拠点は国内45拠点、海外12の国と地域47拠点で展開中。特定メーカーに依存しない独立系の強みを生かし、ユーザーニーズを重視した販売網の形成が功を奏している。
同社の販売先の業種分野では自動車関連が拡大している。2005年3月期には家電が20%弱、自動車関連が6%強を占めたが、2021年3月期には自動車関連が18%、次いで産業機器16%となっている。電気計測機器の市場規模は横ばいか縮小傾向を示している。かつて国内顧客の製造ラインでも電気計測器が頻繁に使われたが、現在では測定対象製品のモジュール化が進み、製造現場での電気計測の頻度が格段に減っているからである。同社によれば、現在の電気計測器の活躍の場は研究開発の現場と評価試験の現場へと2極化が進んでいる。
同社は成長を確保するために、電気計測器に加えて環境試験や理化学分析といったサービスにも商流を広げ、中国・アジアを中心とする海外展開により業界の伸びを上回る成長を続けている。同社はメーカーではカバーしきれない広範な業種と商品知識を武器に、豊富な品揃え(数万種におよぶ商品アイテム、5,000社超の仕入先)でユーザーニーズに合致した商品を提供し、かつ迅速なサービス体制を整えていることが強みとなっている。
顧客サイドの取引口座数が絞り込まれる中で、多品種を取扱う同社の取引口座への集約化や一本化が進んだ結果、同社は上場企業を筆頭に多数の大口納入先を抱えることになった(上位30社合計で売上の50%強を占める)。
同社は重点分野市場への深耕のために、ソリューション事業推進部とオートモーティブ市場推進部を強化している。重点分野は、先進運転支援市場、次世代通信5G市場、IoT市場、新エネルギー市場の4分野である。国内では研究開発投資、海外では評価試験の需要増が同社の成長ドライバーである。
業績動向
2022年3月期通期実績は、売上高91,857百万円(前期比11.1%増)、営業利益2,665百万円(同40.8%増)、経常利益3,031百万円(同42.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,252百万円(同53.5%増)となった。報告セグメント別売上高は、日本75,329百万円(同9.9%増、外部顧客への売上高、以下同様)、中国12,845百万円(同15.5%増)、その他3,683百万円(同21.7%増)となった。セグメント利益は、日本3,658百万円(同28.9%増)、中国223百万円(同122.2%増)、その他115百万円(前年度実績は30百万円の利益)となった。個別業績でみると、売上高78,054百万円(前年比11.6%増)となり売上総利益は増加した。経費面では人件費の増加やデジタルトランスフォーメーション化に伴うシステム投資や経営基盤強化を目的にコンサル費用を計上したが、営業利益は2,212百万円(同29.6%増)となった。経常利益は、連結子会社からの配当金は減少したものの、円安進行により為替差益が増加したことで、経常利益は同22.7%増となった。海外子会社では、新型コロナウイルス感染症の影響で、米国、インドの販売子会社や中国の受託試験場運営子会社が苦戦したが、それ以外の販売子会社は総じて堅調で増収増益となった。
2023年3月期通期業績見通しは、売上高100,000百万円(同8.9%増)、営業利益3,400百万円(同27.6%増)、経常利益3,500百万円(同15.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,500百万円(同11.0%増)である。自動車業界における、新エネルギー自動車開発、ADAS自動運転の技術開発、環境試験関連での積極的な設備投資や、電子・電機業界における5G関連投資の増加などについて、同社は、引き続き需要の押上要因となる、と想定している。また同社では、デジタルトランスフォーメーションの実現に向けた電子化、デジタル化の進展を想定しており、これも同社にとっては新たな需要につながると想定している。
同社は、2020年6月24日付けで中期経営計画「INNOVATION 2030」の骨子について発表している。この計画は新型コロナウイルス感染症拡大の中での発表されたこともあり、数値目標を伴う中期経営計画となっていない。この計画の骨子は、同社がトレーディングカンパニーからテクニカル商社への転換を図り、より収益性の高い事業運営を進める、というものである。ここで同社は、新エネルギー自動車市場、ADAS・自動運転市場、IoT市場、次世代通信5G市場を成長分野として位置付けている。
同社の強みと弱み
SR社では同社の強みとしては、1)独立系の強みを生かして、ユーザーニーズに合致した商品を提供し、国内トップシェアを獲得、2)海外取引比率の増大、および海外での受託試験事業の伸長、3)顧客サイドの取引口座絞り込みの動きが、同社の大口納入先獲得に寄与していること、を考えている。
一方、同社の弱みとしては、1)メーカーの裏方に徹することによる知名度不足、2)売上依存度が高い電気計測器市場の伸びが鈍化、3)卸売り商売主体により上昇が見込めない利益率と従業員の生産性、を考えている。
主要経営指標の推移
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**2022年3月期の年間配当(一株当たり)については、株式分割の実施により単純合計ができないため表示なし。配当金総額は706百万円。
直近更新内容
ストックオプション(新株予約権)の発行、株主提案に対する当社取締役会意見
日本電計株式会社は、ストックオプション(新株予約権)の発行に関して発表した。
(リリースへのリンクはこちら)
同社は、同日開催の取締役会において、既に第72回定時株主総会にて承認された金銭報酬とは別枠で、同社の取締役(監査等委員である取締役を除く)、監査等委員である取締役および執行役員に対して、ストックオプションとしての新株予約権の発行に関する議案を、2022年6月24日開催予定の第77回定時株主総会に付議することを決議した、と発表した。
新株予約権の発行の目的は、対象となる同社の取締役、監査等委員である取締役および執行役員の業績向上に対する意欲、士気を一層高め、更なる企業価値の向上を図るため。詳細についてはリリース参照。
日本電計株式会社は、株主提案に対する当社取締役会意見に関して発表した。
(リリースへのリンクはこちら)
同社は、同日開催の取締役会において、株主のNippon Active Value Fund plc社より受領した、2022年6月24日開催予定の第77回定時株主総会における議案に関する株主提案について反対することを決議した、と発表した。
株主提案の内容、および同社の反対意見等を含む詳細については、リリース参照。
代表取締役の異動および役員の異動
日本電計株式会社は、代表取締役の異動および役員の異動に関して発表した。
(リリースへのリンクはこちら)
同社は、同日開催の取締役会決議により、2023年3月期の新体制に伴う代表取締役と役員の異動を決議した、と発表した。
代表取締役の異動については下記の通り。異動の理由は、2021年6月に発表した中期経営計画「INNOVATION 2030 Ver.1.0」で掲げた具体的な施策や数値目標を、新たな経営トップのもとで完遂し、長期成長戦略「INNOVATION 2030」で示した同社のあるべき姿の実現を目指すため。詳細はリリース参照。
柳 丹峰(やなぎ たんほう) (新)代表取締役会長 (旧)代表取締役社長
森田 幸哉(もりた ゆきや) (新)代表取締役社長 (旧) 代表取締役副社長
業績動向
四半期実績推移
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
2022年3月期通期実績(2022年5月13日発表)
業績概要
2022年3月期通期累計(2021年4月~2022年3月)実績(連結)
事業環境
同社の主要ユーザーである自動車業界では、半導体不足の影響で減産や工場休止など生産調整が続いている。その一方で、世界的な脱炭素化の流れを受け、電気自動車など新エネルギー自動車の開発や、ADAS・自動運転の技術開発、環境試験関連には引き続き積極的な設備投資が行われている。また、電子・電機業界では、デジタルトランスフォーメーションに代表される電子化・デジタル化の流れが加速しているほか、5Gに関連する社会インフラの整備やIoTなどの投資が増加している。
同社の対応
同社グループでは、既に公表した中期経営計画に基づき、テクニカル商社への転換を図り収益性を高めるため、成長市場への積極的な取り組みやシステム提案力の強化を図った。
個別業績でみると、売上高78,054百万円(前年比11.6%増)となり売上総利益は増加した。経費面では人件費の増加やデジタルトランスフォーメーション化に伴うシステム投資や経営基盤強化を目的にコンサル費用を計上したが、営業利益は2,212百万円(同29.6%増)となった。経常利益は、連結子会社からの配当金は減少したものの、円安進行により為替差益が増加したことで、経常利益は同22.7%増となった。海外子会社では、新型コロナウイルス感染症の影響で、米国、インドの販売子会社や中国の受託試験場運営子会社が苦戦したが、それ以外の販売子会社は総じて堅調で増収増益となった。
セグメント別動向
日本
日本においては、同社個別業績が好調に推移し、売上高は70,854百万円(同11.6%増)、営業利益2,212百万円(同29.6%増)と同セグメントをけん引した。国内の連結子会社では、旅行業の未来B計画株式会社が新型コロナウイルス感染症拡大の影響で業績が低調であったものの、校正サービスを請負うユウアイ電子株式会社や各種試験機器の製造を担うアイコーエンジニアリング株式会社が堅調な業績を確保した。
中国
中国では、新型コロナウイルス対策により経済活動の正常化が進展した。受託試験場を運営する電計科技研発(上海)股份有限公司の業績は苦戦したものの、その他の販売子会社は堅調に推移し、増収増益となった。
その他
その他の地域には、タイ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、韓国、台湾、インドネシア、フィリピン、インド、米国などの国、地域が含まれる。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、米国、インドの販売子会社が苦戦したものの、その他の地域の販売子会社は堅調に推移し、増収赤字解消となった。
2023年3月期通期見通し
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
2023年3月期会社業績見通し
業績見通しの背景
業績見通しについては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響や、米中貿易摩擦、ロシアによるウクライナ侵攻など不透明な状況は依然続くものの、世界的には経済活動が回復すると、同社は想定した。
自動車業界における、新エネルギー自動車開発、ADAS自動運転の技術開発、環境試験関連での積極的な設備投資や、電子・電機業界における5G関連投資の増加などについて、同社は、引き続き需要の押上要因となる、と想定している。また同社では、デジタルトランスフォーメーションの実現に向けた電子化、デジタル化の進展を想定しており、これも同社にとっては新たな需要につながると想定している。
同社グループでは、2022年4月1日より事業推進統括部を新設し、その傘下にモビリティ市場推進部、ソリューション推進部に加え、施工管理部、クロスエンジニアリング部、NI事業開発部を新たに組織化し、顧客の幅広いニーズに対応可能なシステム提案型営業に注力する方針である。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
中期経営計画
INNOVATION 2030(2020年6月24日)
同社は、2020年3月期までの中期経営計画「ND1000」に続き、新しい中期経営計画として「INNOVATION 2030」を発表している。この計画は新型コロナウイルス感染症拡大の中での発表であったこともあり、数値目標を伴う中期経営計画となっていない。同社は、合理的に先行きの見通しを判断できた段階で、改めて数値目標を伴った新中期経営計画「INNOVATION 2030」を公表する、としている。
新計画の骨子は、トレーディングカンパニーからテクニカル商社への転換を図り、より収益性の高い事業運営を進める、というものである。具体策としては、前中期経営計画「ND1000」でも掲げた、以下の4つの市場をターゲット分野として継続して取り組む。
このための組織体制としては、本社内にオートモーティブ市場推進部(A)、ソリューション事業推進部(B)、マーケティング部(C)を設置、子会社(グループ会社)(D)が新たな商材やビジネスモデルを構築し、テクニカル商社への転身を目指す。具体的な事業内容への取り組みは以下の通り。
M&Aによる事業拡大に関しては、既存領域のみならず、新たな商材や技術力を獲得できるようなソリューション領域へも拡大する意向である。海外市場に関しては、自らの海外拠点を生かし拡大しつつ、営業拠点としてのみならず、顧客の海外展開をサポートする拠点としても活用する。またEコマースへの取り組みを強化する方針などが示されている。
参考:「中期経営計画ND1000」(2017年9月25日発表)
同社は2020年3月期までの3年間の計画として「中期経営計画ND1000」を策定した。最終年度目標値は、連結売上高100,000百万円、経常利益3,400百万円、当期純利益2,200百万円。同社は2018年3月期に当該計画の初年度目標値を上回り、2019年3月期には、連結売上高100,000百万円の1年前倒しでの目標達成となった。しかしながら、中期経営計画最終年度となる2020年3月期は、中国経済の減速、米中貿易摩擦の長期化、第4四半期の新型コロナウイルス感染症拡大の影響が重なり、前年比で減収減益となった。なお同社は、2020年9月には創業70周年を迎えた。
海外取引の拡大
同社は海外取引(全海外現地法人の売上高と国内営業所の海外向け売上高を合算した数値)の拡大を図り、海外取引の連結売上高に占める比率が2018年3月期の21%から2020年3月期には25%(25,000百万円)へ拡大する計画であった。納入先顧客がさらに海外に商品を移転するケースをカウント(+5%程度と推察)すると、2020年3月期目標は実質30%となる。柳社長は長期的なありたい姿として、同社の海外ビジネスを50%程度まで伸ばしたいと考えている。国内でもまだ同社がカバーしていない地域もありシェア拡大の余地はあるが、SR社では、グローバル市場が同社にとって成長領域である、と考えている。しかしながら、中期経営計画最終年度の2020年3月期の海外売上高の実績は20,900百万円と、市場環境の悪化などの影響で計画を下回った。
経営指標
同社は経営指標としてROEと自己資本比率の充実を掲げている。ROEは定常的に10%以上の目標に対し、2019年3月期実績13.3%を始めとして過去6期の実績は全て目標をクリアしている。2020年3月期は、中国経済の減速や米中貿易摩擦の長期化などにより2桁減益となり、ROEは9.0%に下落した。自己資本比率に関しては、2019年3月期実績が33.1%と目標値39.2%を下回ったが、2020年3月期も、同37.3%と上昇したものの、計画値42.9%を下回った。
*海外取引は、全海外現地法人の売上高と国内営業所の海外向け売上高を合算した数値
次期計画に向けた事業戦略
同社は、中期経営計画「ND1000」で、電気計測器の基盤ビジネスおよび自動車の電子化や次世代通信技術などの成長ビジネスに対して、付加価値創出によりグローバルに事業の拡大を目指してきた。同社は、重点分野市場への深耕のために、ソリューション事業推進部とオートモーティブ市場推進部の強化を継続している。重点分野として、次の4市場:①先進運転支援市場、②次世代通信5G市場、③IoT市場、④新エネルギー市場を掲げた。また、国内では研究開発投資、海外では評価試験の需要増を取込み、同社の成長ドライバーとする計画であった。
SR社は、上記の事業戦略は同社にとっては依然として重要な成長分野基本的に大きく変わらないとみている。同社は、新型コロナウイルス感染症拡大による経済活動の混乱に収束の目途が立たない状況では、次期計画を策定できないとしている。「ND1000」で達成できなかった指標や今後の市場環境を見極めてから次期計画を公表する、としている。
事業内容
ビジネスモデルの概要
電気計測器の販売でトップシェアを握る独立系専門商社
同社は、1950年9月設立、電気計測器の販売で国内トップシェアを握る独立系専門商社の老舗である。電気計測器の市場規模(国内売上+輸出+海外拠点売上、2019年度実績)約790,000百万円のうち、グループ内消費、メーカー直販を除いた同社を含むディーラー経由の割合は約40%(残り60%がメーカー直販等)。ディーラー経由の売上げで、同社は全国で約30%、関東近県で約50%のシェアを誇る。
独立系専門商社の存在意義は、顧客ニーズに細かく柔軟に対応し、多様なメーカーから最適の商品を選び、組み合わせて提案できる、いわばコーディネーターまたはコンシェルジュとしての役割である。今後、ネット販売や人工知能カタログ、購買代行などが普及しても、顧客ニーズ開拓型の独立系専門商社の役割はなくなることはないとSR社は考える。但し、従来の卸売り商売主体で生き残るのは難しく、今後はトップシェア企業を中心に合従連衡が進む可能性が高いと思われる。
同社の単体売上は、商品売上+修繕加工収入(売上の5%前後)で構成されている。連結売上は単体売上に連結対象子会社(国内5社、海外11社、2021年3月期)が加わる。同社の取扱商品は電子計測器はじめ商品アイテムが数万種におよび、5,000社超の仕入先を抱えている。
ユーザーニーズを重視した拠点展開
同社は設立当初からユーザーサイドのニーズを重視して営業活動を行っており、顧客の傍に営業サービス拠点を設置することで、営業範囲を関東から全国、そして海外へと拡張してきた。営業拠点は国内45拠点、海外12の国と地域47拠点。
同社は、独立系の強みを生かして、広範なユーザーニーズを細かくフォローした販売網を形成している。同社は、電気計測器の機器販売だけではなく、ソフトウェアなどを組み合わせたシステム販売に注力している。また、電気計測器だけでなく、環境試験サービスや、理化学分析など電気計測器以外の分野にも領域を拡大している。地域別では、国内だけでなく、中国や東南アジアを中心に海外取引の拡大にも注力している。
海外事業および環境試験事業に注力
同社のビジネスモデルは他の商社同様に商材の拡大と海外での新規顧客開拓による売上増である。かつて同社は電子部品専門の販売会社「デンケイ」を設立し吸収合併した経緯があるが、現在では電子部品の取扱いを止めている。電子部品は電気計測器他と比べて取扱い点数が細かく複雑で同社の商流に馴染まなかったからである。現在では、環境試験機器や耐久試験機器などを伸ばしている。
同社の中国子会社である電計科技研発は第三者認証機関として顧客の受託試験を請け負っており、ここ数年著しい収益増を遂げている。同社によるとフォルクスワーゲンの認定工場に指定されているとのことである。また、同社の国内子会社のアイコーエンジニアリングは荷重測定器を製造販売しており、数年前にタッチボタンの圧力測定用に大手スマートフォンメーカーから認定を受けたことで特需が発生し収益が大幅に改善した経緯がある。
電気計測器の需要先の変遷①:製造ラインから研究開発と評価試験へ
電気計測器自体は家電製品と同様に性能向上と価格低下が同時に進んでいる。かつては国内顧客の製造ラインでも電気計測器が頻繁に使われたが、現在では測定対象製品のモジュール化が進み、製造現場での電気計測の頻度が格段に減っている。現在の電気計測器の活躍の場は研究開発の現場と評価試験の現場へと2極化が進んでいるとのことである。
電気計測器の需要先の変遷②:家電から自動車関連へ
販売先の業種分野も自動車関連の比率が大きくなっている。2005年3月期には家電が20%弱、自動車関連が6%強を占めたが、2021年3月期には自動車関連が18%、次いで産業機器16%、半導体関連10%等となっている。自動車関連の取引先が増加しているのは、車の電装化が進み電気計測や耐久試験などの需要が急増していることを反映している。
経産省「生産動態統計調査」よりSR社作成
事業概要
取扱い製品・サービス
同社の主な取扱い製品は、電子計測機器(40.2%、2021年3月期連結ベース、以下同様)、 電子部品・機構部品(同14.2%)、製造・加工・検査装置(同11.8%)、PC及び関連製品(同7.8%)、環境・評価・試験機器(同7.4%)、画像測定・表面観察(同6.6%)、理化学機器(4.0%)、その他(同8.0%)である。電子計測器に分類されるのは、電圧・電流・電力測定器、周波数・時間測定器・オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、ネットワークアナライザ、発信機・信号発生器、電波測定器、通信用測定器など多岐に渡る商品群である。
仕入先
同社の主な仕入先は、Keysight Technologies Inc(NYSE、KEYS)、株式会社TFFテクトロニクス(非上場)、菊水電子工業株式会社(JASDAQ、6912)、日置電機株式会社(東証1部、6866)はじめ5,000社超と多岐に渡っており、仕入額上位30社で総仕入額の約3割を占める。商品アイテムは数万種にのぼり、同社営業マンには、広範な業種と商品知識が必要とされる。
対象事業領域
電子計測機器や電源装置は研究開発・生産・品質管理・保守・メンテナンスなど川上から川下までの全てが対象事業領域である。基本的には、大学・研究所他、製造業のほぼ全工程に使用されるのが特徴である。PC及び関連製品は、主に研究開発・工場ライン構築において、計測データに基づき、自動化・省力化目的で使用される。電子部品・機構部品は研究・開発・試作に使用する部品や機構部品、コスト削減目的の多機能化モジュール、修理用鋼管部品などである。その他として、様々なユーザーニーズに応じたオーダーメードの各種特注案件と、理化学機器・物理計測機器・光学機器・治具・機械工具・備品など、規定の分類項目に入らないものがある。
国内子会社5社と海外子会社
同社国内子会社のアイコーエンジニアリング株式会社は荷重測定器を製造販売、ユウアイ電子株式会社は計測器の校正、株式会社エイリイ・エンジニアリングは防衛省向けの取引、未来B計画株式会社は服飾品等の製造販売、旅行代理店業務、新栄電子計測器株式会社は監視システム・電子計測機器の製造販売を行っている。
同社最大の海外販売子会社である中国子会社の電計貿易(上海)有限公司をはじめ、同じ中国子会社の電計科技研発(上海)股份有限公司は顧客の受託試験を請け負っている。また、東南アジア地域(タイ、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア)、インド、韓国、台湾、北米にも販売拠点を有する。2018年11月、同社は、一般社団法人日本品質保証機構(JQA)、日本電計ベトナム有限会社と共同で出資し、ベトナムにおける校正サービスの提供を狙いとして、合弁会社JQA Calibration Vietnam Co., Ltd.(現・持分法適用関連会社)を設立した。
顧客分野別では自動車関連がトップ
顧客分野別売上構成比では、自動車関連(2021年3月期の修繕加工収入他を除く単体売上に占める構成比18%)、産業機器(同16%)、半導体関連(同10%)、電子部品(7%)、通信機器(7%)、ディスプレイ(同2%)、その他(同40%)である。自動車業界では自動運転の実用化に向けての開発が積極的に進められており、安全性試験、環境試験等の設備投資も旺盛である。電子・電機業界では新型スマートフォン・タブレット端末や有機ELテレビ等の販売で、関連する半導体・電子部品メーカーの業績が好調である。
文教・官公庁での強固な事業基盤
同社は産業技術総合研究所、理化学研究所、鉄道総合技術研究所、高エネルギー加速器研究機構、日本原子力研究開発機構、日本放送協会、防衛省など国および公的な研究機関に納入している。また、全国の主要大学の理工系学部や研究所も同社が昔から深く食い込んでいる納入先である。全売上に占める文教・官公庁向け売上比率は3%程度だが、日本の基礎研究を担うユーザーと信頼関係を構築することで、民間企業への事業展開もスムーズになっている、と同社は説明している。
(2021年3月期、69,813百万円)
(2021年3月期、69,813百万円)
(2013年3月期~2017年3月期、連結ベース)
(2018年3月期以降、連結ベース)
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意
セグメント別事業概要
同社は、セグメント別開示について、日本・中国・その他地域の3つの地域別セグメントによる開示をしている。