同社は、国際総合フレイトフォワーダーを目指している。従来の単体を主体とした輸出混載・フルコンテナ、輸入混載・フルコンテナのサービスは、主として輸出港から輸入港間の海上輸送サービス(Port to Port Service)である。それに対して、国際総合フレイトフォワーダーは、送り手荷主の工場や倉庫等から顧客の指定場所までの間を、海運に加えて空運、陸運、倉庫、通関、梱包等を総合的に組合わせて輸送する複合一貫サービス(Door to Door Service)を行うものである。
同社の特徴は輸出混載(輸出LCL:Less than Container Load)を主力ビジネスとすることである。2021年12月期において、輸出LCLの売上高は7,623百万円(前期比86.8%増)と連結売上高に占める構成比は21.6%(前期は18.4%)であった(同社資料をもとにSRが計算)。輸出LCLは同社の事業のなかで最も利益率が高く、売上総利益率は40%前後で推移している。SR社では、2021年12月期において、同事業の売上総利益が連結売上総利益に占める構成比は30%超であったと推測している。
同社は、港から港まで海上輸送を担うNVOCC(Non-Vessel Operating Common Carrierの略。自ら船舶は所有せず、船会社のスペースを借り、顧客の貨物を運送する海上輸送事業者)として輸出入混載およびフルコンテナサービスを主軸にし、総合的なフレイトフォワーダー(仲介人として荷主から貨物を預かり、他の業者の運送手段を利用してドアツードア輸送を行なう代理業者)へ事業拡大を図るとコメントしている。
主要経営指標の推移
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*同社は2012年12月期および2015年12月期において、それぞれ普通株式1株につき普通株式2株の割合で株式分割を行っている。
直近更新内容
2022年12月期第2四半期累計期間・通期の業績予想および中間配当予想修正に関して発表
内外トランスライン株式会社は2022年12月期第2四半期累計期間・通期の業績予想および中間配当予想の修正に関して発表した。
(リリース文へのリンクはこちら)
2022年12月期第2四半期累計期間業績予想の修正
2022年12月期通期業績予想の修正
修正の理由
海上コンテナスペース不足ならびに輸送需要が継続したことにより、日本セグメント、海外セグメントが同社の想定を上回って推移し、連結での売上高および各利益が前回予想を上回る見込みとなった。
日本セグメントにおいては、船会社との交渉によるコンテナスペースの確保に注力し、単体での主力の海上混載やフルコンテナの単価が同社の想定を上回って推移した。また株式会社ユーシーアイエアフレイトジャパンは航空貨物の需要を取込むことができた。フライングフィッシュ株式会社は、食品輸入の取扱いが順調に推移した。
海外セグメントにおいては、同社海外子会社の多くは日本からの貨物に基因する収入を主な売上高としており、各現地法人における貨物取扱量が増加した。また、フォワーディング案件も順調に推移した。
修正後の会社予想では、海上コンテナスペースの逼迫について、2022年12月期末までに落着きを取戻す可能性があるものの、今後数ヵ月以上は前回予想を上回る業績動向が継続すると想定している。
配当予想の修正
同社は、2022年4月に2022年12月期の業績予想を増額修正したことを勘案し、2022年12月期の中間配当金を30.0円(前回予想は25.0円)とすることを決定した。これにより、年間配当金は55.0円(前回予想は50.0円)となる予定である。
業績動向
四半期実績推移
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*ドル円レートは、ドル・円 スポット 中心相場/月中平均の平均値。
2022年12月期第1四半期実績
売上高は前年同期比3,715百万円(51.6%)の増収となった。これは、日本事業および海外事業が増収となったことによる。
営業利益は同562百万円の増益(73.8%)となった。これは、日本事業および海外事業が増益となったことによる。
売上高の変化率は、前期第4四半期(2021年10-12月)において前年同期比71.5%増であったが、2022年12月期第1四半期においては同51.6%増となり、増収幅が縮小した。
営業利益は、前期第4四半期(2021年10-12月)において前年同期比120.4%増であったが、2022年12月期第1四半期においては同73.8%増となり、増益幅が縮小した。
同社は、当第1四半期決算発表と同時に、2022年12月期通期会社予想の修正を発表した。修正内容については後述する。
当第1四半期実績における修正後の会社予想に対する進捗率は、売上高で25.3%(前年同期における前期実績に対する進捗率は20.4%)、営業利益で28.1%(同20.0%)、経常利益で28.9%(同20.9%)、親会社株主に帰属する当期純利益で28.9%(同19.8%)となった。
日本
単体業績は、海上コンテナスぺ―スの確保に注力した結果、相対的に利益率の高い輸出混載貨物や売単価の高い地域へのフルコンテナの取扱数量が増加し、増収増益となった。
国内子会社について、株式会社ユーシーアイエアフレイトジャパンは、引き続き海上のコンテナスペースのひっ迫により航空輸送の案件を増やし新規取引を獲得したことで、増収増益となった。フライングフィッシュ株式会社は、食品輸入のみならず、フルコンテナによる食品輸出を増やしたことにより増収増益となった。
海外
売上高およびセグメント利益が前年同期を上回った。日本からの貨物が増加し、フォワーディング案件や航空貨物案件も順調に取り込んだ。
今期会社予想
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
2022年4月、同社は2022年12月期会社予想の修正を発表した。修正後の会社予想は売上高43,200百万円(前期比22.5%増)、営業利益4,710百万円(同23.7%増)、経常利益4,780百万円(同21.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益3,260百万円(同17.1%増)を見込む。
前回予想との比較では、売上高で7,000百万円、営業利益で660百万円、経常利益で670百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で470百万円増額修正であった。
修正の理由
海上コンテナスペース不足ならびに輸送需要が継続したことにより、日本セグメント、海外セグメントが同社の想定を上回って推移し、連結での売上高および各利益が前回予想を上回る見込みとなった。
日本セグメントにおいては、船会社との交渉によるコンテナスペースの確保に注力し、単体での主力の海上混載やフルコンテナの単価が同社の想定を上回って推移した。また株式会社ユーシーアイエアフレイトジャパンは航空貨物の需要を取込むことができた。フライングフィッシュ株式会社は、食品輸入の取扱いが順調に推移した。
海外セグメントにおいては、同社海外子会社の多くは日本からの貨物に基因する収入を主な売上高としており、各現地法人における貨物取扱量が増加した。また、フォワーディング案件も順調に推移した。
修正後の会社予想では、海上コンテナスペースの逼迫について、2022年12月期末までに落着きを取戻す可能性があるものの、今後数ヵ月以上は前回予想を上回る業績動向が継続すると想定している。
配当予想の修正
同社は、2022年4月に2022年12月期の業績予想を増額修正したことを勘案し、2022年12月期の中間配当金を30.0円(前回予想は25.0円)とすることを決定した。これにより、年間配当金は55.0円(前回予想は50.0円)となる予定である。
以下の内容は、前回予想に基づく説明である。
2022年12月期会社予想では、2021年12月期下期のコンテナ船運賃が継続する前提としている。北米航路のコンテナ船運賃は2020年12月期から継続的に上昇し、2021年12月において2020年1月比で7倍超になった。同社は運賃が下落する可能性は低いとみている。コンテナ船需要が旺盛であり、コンテナ船の新造船の竣工予定が2023年以降であることによる。これに加え、2022年12月期には5年に1度実施する米国港湾組合の契約更改の年に当たる。港湾組合の契約更改の際には運賃が上昇する傾向があるという。
2022年12月期において、上期は前年同期比で増収増益予想、下期は前年同期比で減収減益予想とした。2022年12月期上期は海上運賃の高止まりによる売上増を見込んだ。一方、2022年12月期下期については運賃下落やスペースひっ迫の可能性を会社予想に織り込んだという。下期については、蓋然性の高い経営環境の予測が困難であり、同社は2022年12月期会社予想を保守的な予想であるとしている。
2020年に策定した第4次中期経営計画については、2021年12月期において目標としていた経営指標(2022年12月期において30,000百万円、営業利益率7%、ROE14%)を達成した。2022年2月時点で、同社は計数目標について検討中であり、方針が決まり次第開示する方針である。
2022年12月期の取り組み
2022年12月期は運賃高止まりによる増収増益が可能であると同社は予想しているが、2023年12月期以降の成長を見据え、非接触型営業の強化・推進、事業領域の拡大を図るとしている。
営業スタイルの多様化(非接触型営業の強化・推進)
同社では、従来、営業担当社員による顧客企業への訪問営業を新規顧客獲得のための手段としていた。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の中、そのような訪問営業の機会が限られたことから、2020年12月期下期以降、従来は注力していなかったWEBマーケティングによる営業の強化に取り組んだ。具体的には、危険品混載輸送、特殊貨物輸送などのサービス情報に関してのデジタルパンフレットを作成し、見込み客に送信、オンラインで商談し、見積もりを作成するといった手順で非接触型営業を推進している。見込み客は、顧客情報や顧客のニーズを集約したデータベースをもとに抽出してメール送信し、成約率向上、成約件数の増加を図っている。
その他、同社のホームページから24時間アクセス可能な予約・見積もり機能などの拡充も図っている。
その結果、2021年12月期第4四半期において、新規ユーザーの同社ホームページへのアクセス数は、2019年12月期第2四半期比で3.5倍超に増加した。リピートユーザー数、ホームページセッション数、WEB見積依頼・問い合わせも増加した。
事業領域の拡大
同社は同社は輸出混載を軸としながら、国際フレイトフォワーダー事業への転換を図っており、以下のような事業領域の拡大に取り組んでいる。
日本でフォワーディングチームを設置:従来、同社の営業は輸出混載の取引獲得を主要業務としていた。2020年12月期に日本の東京営業部にフォワーディングチームを設置し、既存顧客を対象として、新規フォワーディング案件の獲得を図っている。ファワーディングの内容としては、国内の集荷、日本から輸出して現地の配送などの案件を獲得しているという。
日本で酒類販売免許を取得:同社は毎年秋に行われる日本からの食品輸出フェアに出展し、食品の輸出増量を目指している。2021年12月期は酒類の販売許可も取得し、日本酒の酒蔵の海外への輸出の手助けを行っている。
アメリカ、香港、シンガポールでの食料関連のフォワーディング:日本から輸出した食品について、アメリカ、香港、シンガポールの現地法人で配送している。
韓国・インドの倉庫事業:韓国・インドでは、それぞれ倉庫拠点を持つ。韓国では釜山に2ヵ所、仁川に1ヵ所、計3カ所に倉庫を持ち、主に食材、機械類を扱っている。インドではデリー、ムンバイ、バンガロールなどに12カ所に倉庫があり、インド国内の通信販売の商品の保管と配送を手掛けている。
中国での商品保管、配送:中国国内において、日系企業の商品の保管・配送を手掛けている。生活雑貨、機械類も一部保管している。
タイ・インドネシアにおけるフルコンテナ輸出:タイ・インドネシアでは、自動車、二輪車、機械製品などの工業製品について、欧米向けフルコンテナ輸出を手掛けている。
中長期業績見通し
第3次中期経営計画の総括
同社は第3次中期経営計画(2017年1月~2019年12月)を策定し、「数年内に売上30,000百万円を達成する」ことを目標としたが、第3次中期経営計画の期間中では未達となり、次期中期経営計画に引き継ぐこととなった。また、7%を目標にしていた営業利益は6.7%、14%を目標にしていたROEは13.0%となった。
第3次中計の期間中の取り組みとしては、輸出入混載輸送事業を通じて培った信用と貨物輸送のスキルとリソースを活かし、国内外で新たな事業に取り組むことで国際フレイトフォワーダーとしての事業領域を拡げた。
国内では、2018年4月には東京税関長よりAEO通関業者の認定を受け、通関配送等の輸送付帯業務を増やした。国内グループ会社も食品の輸入や、航空貨物の取り扱いを増やすなど、得意分野の拡大に努めた。
海外グループ会社では、混載貨物以外の取り組みを増やす中、韓国において2016年11月に営業を開始した内外銀山ロジスティクス株式会社の倉庫事業が2017年12月期以降の業績に寄与した。2018年7月には、インド現地法人が倉庫を拡張し配送を増やした。また、2019年4月には、韓国で新たに内外釜山物流センター株式会社を子会社化し、海外での倉庫事業を拡げた。
海外代理店との取組みでは、ブラジル代理店との取引を本格化した。
(2011年12月期-2013年12月期)
・2011年1月 インド現地法人を子会社化
・2012年4月 ユーシーアイエアフレイトジャパン社を子会社化
・2013年2月 フライングフィッシュ社を設立
(2014年12月期-2016年12月期)
・2015年11月 中国深圳に現地法人設立
・2016年11月 内外銀山ロジスティクスの釜山倉庫営業開始
(2017年12月期-2019年12月期)
・2017年8月 ミャンマーに現地法人設立
・2018年4月 AEO通関業者認定
・2018年7月 インドの倉庫拡張
・2019年4月 内外釜山物流センター子会社化
第4次中期経営計画の定量目標
同社は、2019年12月期通期決算発表と同時に、第4次中期経営計画(2020年12月期~2022年12月期)を発表した。2022年12月期は、売上高30,000百万円(2019年12月期から2022年12月期で年平均9.5%増)、営業利益率7.0%(2019年12月期は6.7%)、ROE14.0%(同13.0%)をめざしている。
2020年に策定した第4次中期経営計画については、2021年12月期において目標としていた経営指標(2022年12月期において30,000百万円、営業利益率7%、ROE14%)を達成した。2022年2月時点で、同社は計数目標について検討中であり、方針が決まり次第開示する方針である。
2022年2月に公表した2022年12月期会社予想は、売上高36,200百万円(前期比2.6%増)、営業利益4,050百万円(同6.3%増)、営業利益率11.2%(同0.4ポイント上昇)である。
第4次中期経営計画の概要
第4次中計の初年度にあたる2020年12月期に同社は創立40周年を迎えた。これまでに蓄積した事業ノウハウを活かし、国際総合フレイトフォワーダーとして、2022年12月期には売上高30,000百万円を達成することを目標としている。
同社の主力事業は輸出混載(LCL)事業であり、2019年12月期において、輸出LCLの売上高は4,482百万円(前期比2.5%減)と連結売上高に占める構成比は19.6%(前期は19.8%)であった。輸出LCLは同社の事業のなかで最も利益率が高く、売上総利益率は40%前後で推移しており、2019年12月期において、同事業の売上総利益が連結売上総利益に占める構成比は30%程度であったと推測している。
輸出LCLは国内企業の現地生産比率の向上などに伴い、長期的に取扱数量が緩やかな減少傾向にある。第4次中計においても、同社は輸出LCLの取扱数量が減少すると想定している。
主力事業の数量減少に対応するために同社は第1次中計(2011年12月期-2013年12月期)から、従来の輸出LCL主体に加えて、フォワーディングサービス事業の確立と拡大を進めている。第4次中計でも、輸出LCLの売上高減少を見込む中で、輸出FCLや輸入の取扱数量の増加、海外拠点の売上高増加、M&Aによって売上高の増加を図る。
第4次中計では2022年12月期の営業利益率7.0%(2019年12月期は6.7%)を目標としている。上述の通り、売上総利益率が40%前後と同社の事業の中で最も利益率が高い輸出LCLの取扱数量が減少し、輸出FCL、輸入サービス、および海外拠点の売上高増加を目指すことから、利益率が低下する影響があるとしている。これに対して、輸出LCLの業務効率化、輸出FCLでも相対的に利益率が高い米国向けの取扱数量増加を図ることなどによって、営業利益率の確保を図る。
国内事業
既存事業
成熟分野かつ基幹事業である混載事業については同社単体を中心に業界地位を堅持するとともに、業務の効率化を図り利益の向上をめざす。AIやITを駆使することによって業務を工夫して、市場が減少したとしても利益を出せる体制の構築を図る。
同社の成長分野であるフォワーディング事業については、グループのもう一つの収益の柱と捉え、投資を行い、売上高と利益の増加をめざす。
成熟・成長2つの分野で安定的な収益確保を実現する。
営業面において、フォワーディング事業の売上・利益の拡大には、顧客のニーズを把握し、輸送に加え、倉庫、通関、梱包等のサービスも総合的に組合わせて提案する必要があると考えているという。そのため、従来の輸出混載を主体とした海上輸送サービスの既成サービスの営業とフォワーディングサービスなどの提案型サービスの営業で部署を分けることを検討する。提案型サービスの営業では、従来は行っていなかった、大企業向け輸出FCLサービスの営業活動も行う予定である。
新規事業
フォワーディング事業領域の進化、拡大を図り、新たな分野に挑戦する。後述の通り、海外においてフォワーディングサービスを得意とする代理店を開拓し、日本での倉庫、通関、梱包、3PL等も組合わせたサービスの要求に対応するため、日本国内の倉庫業者、国内配送業者などとの提携も検討するとしている。
海外において着手した倉庫事業、3PL事業等の国内事業化に向け投資を行う。
海外事業
経営効率を高めるため、海外を5つのブロック(ASEAN(シンガポール、タイ、インドネシア、ミャンマー)、中国、韓国、米国、インド)に分け、各ブロックの地域性、優位性を活かした施策により営業を展開する。また、アセアン、中国、韓国は2019年12月期時点での売上高2,000~3,000百万円を長期的にはそれぞれ5,000百万円規模に、米国およびインドは同売上高1,000百万円程度を長期的にそれぞれ5,000百万円に増加させ、海外合計で25,000百万円とする意向である。
既存代理店との関係強化を図る。同時に、グループ各社・各部門の業態に最適な新規代理店開拓も推進する。具体的には、同社は輸出混載サービスを主要事業とする海外の代理店ネットワークを持っている。ただし、それらの代理店はフォワーディングサービスの展開力に乏しいという。海外において、新規にフォワーディングサービスを得意とする代理店網を構築していく意向である。海外の新規代理店との取引開始によって、日本に現地法人を持たない海外のフォワーダーなどに対し、日本での輸入貨物の荷受け、倉庫作業、国内配送などのサービスを行う。上述のフォワーディングの事業領域の進化、拡大とあわせて、営業面と体制面で取り組む。2019年12月期において、海外の新規代理店1社との取引によって年150百万円程度の売上高が増加したが、第4次中計ではこのような事例の積み上げを図る。
人材育成
グループ各社社員の働き甲斐を高めるために人事制度を改定し、同時に各職務に応じた教育・研修および能力開発を徹底する。
グループ間人材交流を実施し、グループ総合力の向上をめざす。
経営の現地化を促進し、ナショナルスタッフの育成強化と幹部への登用をめざす。
投資戦略
上記基本方針を達成するため、第4次中期経営計画における投資総額を3年間5,000百万円規模とし、おもな投資対象は以下のとおりとする。
M&Aおよび資本提携、業務提携等
営業支援、業務効率化、顧客サービス充実を目的とするIT/DIGITAL化
海外および国内倉庫等のアセット取得
新規事業向け専門人材の積極採用、海外拠点の営業スタッフ拡充等の人材投資および総合力向上のための教育研修投資
事業内容
ビジネス
ビジネスモデル
国際総合フレイトフォワーダーを目指している
同社は、国際総合フレイトフォワーダーを目指している。従来の単体を主体とした輸出混載・フルコンテナ、輸入混載・フルコンテナのサービスは、主として輸出港から輸入港間の海上輸送サービス(Port to Port Service)である。それに対して、国際総合フレイトフォワーダーは、送り手荷主の工場や倉庫等から顧客の指定場所までの間を、海運に加えて空運、陸運、倉庫、通関、梱包等を総合的に組合わせて輸送する複合一貫サービス(Door to Door Service)を行うものである。
フォワーダーとは、自社で輸送手段(船舶、航空、鉄道、貨物自動車など)を所有せず、仲介人として荷主から貨物を預かり、他の業者の運送手段を利用してドアツードア輸送を行なう代理業者のことである。
輸出混載輸送(LCL:Less than Container Load)を主力ビジネスとする
同社の特徴は輸出混載(輸出LCL:Less than Container Load)を主力ビジネスとすることである。2021年12月期において、輸出LCLの売上高は7,623百万円(前期比86.8%増)と連結売上高に占める構成比は21.6%(前期は18.4%)であった(同社資料をもとにSRが計算)。輸出LCLは同社の事業のなかで最も利益率が高く、売上総利益率は40%前後で推移している。SR社では、2021年12月期において、同事業の売上総利益が連結売上総利益に占める構成比は30%超であったと推測している。
同社では、リーマンショック以降のM&Aにより、それ以前の単体における輸出LCL一辺倒の収益構造から脱却し、リスク分散を図り、連結売上高および連結売上総利益に占める輸出LCLの売上高および売上総利益の構成比は低下傾向にある。
仕入先は船会社および倉庫会社
同社の主要仕入れ先は海上輸送を委託する大手船会社とコンテナに貨物を詰める倉庫会社に分かれる。
大手船会社では邦船3社がコンテナ船事業を統合してできた会社であるオーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)株式会社の他、主要な外国船社と契約を結んでいる。倉庫会社は、山九株式会社、株式会社東海運輸、株式会社辰巳商會などである。
顧客は商社、メーカーなど
同社の顧客は商社、メーカーなど、大手から中小まで様々であり、委託される貨物も機械、自動車部品、化学品、繊維製品など通常輸出される貨物の種類が全てあると言える。また、同社は独立系業者であるために同業者からコーロード(混載業者が自社でコンテナ一個分の貨物を集められないために同社に持ち込むこと)の割合が高く50%程度を占めている。同社としては直荷主の割合をより高めたいとしている。
輸出LCLサービス
輸出LCLは、複数の顧客の小口輸出貨物を同じ仕向地毎に1本のコンテナに詰め合わせて(混載して)輸送する事業である。輸出LCLでは、顧客の貨物量に応じた料金が同社の売上高となり、コンテナの輸送費用(海上運賃)と倉庫作業料金が主な売上原価となる。同社が負担する1コンテナあたりの輸送費用(海上運賃)は、積載する貨物量が変わっても変わらないため、1コンテナに多くの貨物を詰めることができれば、同社の利益率が上昇する。顧客にとって、コンテナ1本に満たない少量の貨物を輸送する場合に、輸出LCLを利用すれば低コストで輸送できる。
同社によれば、輸出LCLの売上総利益率は40%程度と相対的に高い(コンテナ一個単位で輸送するFCL(Full Container Load)の売上総利益率は15%程度である)という。輸出LCLの損益分岐点は平均して45%程度の模様であるが、同社の積載率平均は限界積載率の60%強とのことである。
同事業において、同社が取り扱う貨物は小口であるため、顧客一社当たりの売上高は小さく、最大の顧客でも月間売上高が5百万円、通常取引している顧客数は6千社程度である。特定の業種や顧客への業績依存度が低いことは同社の強みであるが、同社資料にあるように同社の業績は日本の輸出貿易総額との相関関係が強く、マクロ経済の影響を受ける傾向がある。
顧客との関係は、ほとんどが恒常的な顧客であり(スポットビジネスの割合は少ない)、サービスに安心感があることから同社を指名してくることが多いようだ。同社によれば、運航スケジュールの豊富さ、船会社のスペース確保力、信頼できる作業会社の利用など総合的な力が優れているという。その結果、同社の運賃は同業他社に比べて1~2割程度高く設定されている。また、世界主要港への自社混載直行便サービスを数多く提供し、コーロード(他社サービス利用)と比較して、迅速な情報提供、コスト面のメリットを提供できているとしている。
輸出LCLサービスについて、同社は日本の港から世界23カ国47都市向けに直行便の海上混載サービスを行っており、直行便がない国々へも、海外現地法人のあるシンガポール、香港、釜山等をハブ港として、中近東や中南米等の諸国に向け同様のサービスを提供している。アメリカ向け貨物に関しては、ロスアンゼルスをハブとして全米の主な都市まで鉄道やトラックによる混載輸送を行い、特に貨物量の多いシカゴとニューヨークへはそれぞれ日本から直行便サービスを提供している。ヨーロッパにおいては各国の有力代理店と契約しており、ロッテルダム、ハンブルグを主要なハブ港として各地への海上混載サービスを提供している。
セグメント
同社の報告セグメントは日本と海外で構成される。2021年12月期において、日本セグメントが連結売上高の70.3%、連結営業利益の67.3%、海外セグメントが連結売上高の29.7%、連結営業利益の32.7%を占めた(セグメント利益の単純合算ベース)。
過去の業績推移では、売上高、営業利益ともに日本セグメントの構成比が低下傾向に、海外セグメントの構成比が上昇傾向にある。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
日本セグメント
日本セグメントは、同社単体、株式会社ユーシーアイエアフレイトジャパン(以下、ユーシーアイエアフレイト社)およびフライングフィッシュ株式会社(以下、フライングフィッシュ社)からなる。2021年12月期において、同社単体は連結日本セグメント売上高の70.4%(前期は66.5%)、同営業利益の79.2%(同60.7%)を占めた(同社資料をもとにSR社計算)。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
単体サービス別業績
同社単体のサービス別売上高は、輸出混載(LCL)、輸出フルコンテナ(FCL)、輸入混載(LCL)、輸入フルコンテナ(FCL)に分けられる。2020年12月期では、輸出が69.8%(前期は71.2%)、輸入が30.2%(前期は28.8%)を占めた。過去の業績推移では、輸出混載の売上高構成比が低下傾向に、輸出その他(大型貨物等の特殊貨物輸送など)や輸入の売上高構成比が上昇傾向にある。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
同社は、港から港まで海上輸送を担うNVOCC(Non-Vessel Operating Common Carrierの略。自ら船舶は所有せず、船会社のスペースを借り、顧客の貨物を運送する海上輸送事業者)として輸出入混載およびフルコンテナサービスを主軸にし、総合的なフレイトフォワーダー(仲介人として荷主から貨物を預かり、他の業者の運送手段を利用してドアツードア輸送を行なう代理業者)へ事業拡大を図るとコメントしている。
輸入に関しては売上高構成比が上昇してはいるものの、輸入の営業は海上輸送や通関の知識に加えて、輸入される商品や業界に対する知識が必要で難しい面もあり、2013年2月に国際複合一貫輸送を行う子会社フライングフィッシュ社を設立した。
国内子会社
国内子会社は、以下のユーシーアイエアフレイトジャパン社およびフライングフィッシュ社である。
ユーシーアイエアフレイトジャパン社:国際航空貨物輸送・国際海上貨物輸送を行う。航空フォワーダー業に進出するため、2012年4月に買収。2020年12月期の実績は売上高2,808百万円(前期比4.6%増)、経常利益153百万円(同10.8%増)であった。
フライングフィッシュ社:国際複合一貫輸送を行う。国際海上輸送、国際航空輸送、輸出入通関、倉庫保管、温度管理輸送、特殊貨物輸送の6つのサービスを提供している。2013年2月設立、2013年6月にフライング・フィッシュ・サービス株式会社より国際複合一貫輸送事業を譲受し事業開始。3PLサービスプロバイダーとしての物流のプランニング・実行、欧州からの食品輸入を主力事業の一つとしていることなどが特長である。2020年12月期の実績は売上高3,012百万円(前期比16.7%増)、経常利益190百万円(同57.7%増)であった。
海外セグメント
海外セグメントは、中国(同社現地法人及びフライングフィッシュ社子会社の2社)、韓国、香港、シンガポール、タイ、インドネシア、インド、ミャンマー、北米の海外現地法人の業績で構成される。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*連結営業利益構成比は調整額控除前に対する比率。
2020年12月期において、海外セグメントの売上高内訳は、中国が2,426百万円、韓国が2,335百万円、アセアン(シンガポール、タイ、インドネシア)が1537百万円、米国が992百万円、インドが644百万円であった。
*内外特浪速国際貨運代理(深圳)有限公司は内外特浪速運輸代理(香港)有限公司の100%子会社。
同社の海外連結子会社のうち9社は、いずれもグループ会社から発送した主にLCL・FCL貨物を海外の港において取り扱う輸入代理店としての役割を担い、また海外の顧客から預かった貨物を日本やその他諸外国へ輸送する業務を行っている。
インドにおいては、国内輸送を含む海運、空運、陸運、倉庫を総合的に運営するフレイトフォワーダー事業を営んでいる。また、韓国の内外銀山ロジスティクス社および内外釜山物流センター社は倉庫業、貨物運送業等を行う。
収益性・財務指標
同社の収益性の特徴は、景気拡大時にはコンテナ船の仕入れ価格が上昇することにより、売上総利益率は低下し、景気後退時にはコンテナ船の仕入れ価格が低下し、売上総利益率は上昇する傾向がある。一方、景気拡大時には、売上総利益率は低下しても、売上高の増加により売上総利益額が伸びるため、固定費を吸収し、営業利益率は改善する。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
SW(Strengths, Weaknesses)分析
強み(Strengths)
サービスレベルの高さ:フォワーダー業界は、前述のようにサービス業であるため、差別化要因となるのはサービスレベルである。サービスとは、豊富な運行スケジュール、正確性、迅速な書類発行、トラブルのフォローなどである。特に運行スケジュールに関しては、同社は多くの顧客を抱え、多くの貨物を集荷しているためにそれだけ多くの仕向地へ、他社より多くの運行頻度の輸送を提供することが出来る。このためさらに多くの顧客を呼び込むことが可能となり、多頻度の混載サービスを提供できるという、好循環を作り上げているといえる。
堅強なバランスシート:2021年12月期末において、純資産12,700百万円(前期末は9,865百万円)に対して、現預金は8,678百万円(同6,808百万円)と、同社のキャッシュ比率は68.3%(同69.0%)と高く、有利子負債は無い。こうしたバランスシートの健全性は、今後の新規投資やM&A実施などの際に有利に働くうえ、外部環境の悪化への耐久性の高さを示すだろう。
成長意欲:同社では主力の輸出混載サービスが長期的に減少傾向にあるものの、高いバイタリティを持った社員がグローバル企業を目指すという、コーポレートカルチャーが醸成されているとSR社は認識している。
弱み(Weaknesses)
国内事業の成長ポテンシャルが小さい:同社の国内における成長は、潜在経済成長力が限られていることもあり、大きくはないとSR社は認識している。特に、同社が得意としてきた輸出に関しては、顧客メーカーが国内生産・輸出から海外現地生産へのシフトを進めており、空洞化が進んでいる。ただし、2010年代以降、同社は輸出混載を軸としながら、国際フレイトフォワーダー事業への転換を図っている。そのために、国際航空貨物輸送を行うユーシーアイエアフレイトジャパン社の買収、国際複合一貫輸送を行うフライングフィッシュ社の設立、海外拠点の拡充を進めている。
ポストM&A(海外)のための経営者層:同社の成長はM&Aに依拠しているともいえる。被買収企業を立て直すにはマネジメントの刷新が必要であり、高い経営能力が求められる。海外企業と日本企業はマネジメントスタイルが異なるが、海外企業の経営を担うことが出来るスタッフが少ないことは同社も認めている。
人材補強が容易な業界ではない:多くの成長企業と同様、同社にとっても人材の確保が課題となっている。運輸業界は保守的な業界であり、人材の流動化があまり図られていないため、人材補強が容易でない。全国平均の入職率および離職率に対して、運輸業の入職率および離職率は下回って推移していることが多い。厚生労働省「雇用動向調査」によれば、2020年の全国平均の入職率、離職率は各々13.9%(前年は16.7%)、14.2%(同15.6%)であった。それに対して、運輸業においては、各々14.5%(前年は14.3%)、13.3%(同12.5%)であった(入職率=入職による増加労働者数/年初の全労働者数×100、離職率=離職労働者数/年初の全労働者数x100)。
市場とバリューチェーン
マーケット概略