同社は、2022年9月期通期会社予想を据え置いた。2022年9月期通期会社予想(期初予想)に対する進捗率は、売上収益33.5%、営業利益94.1%、税引前利益96.3%、親会社の所有者に帰属する当期利益102.4%となった。期初予想は、Go To Travelキャンペーン等による国内旅行回復による収益寄与、海外旅行の回復、訪日観光客の回復、投資事業の貢献等のアップサイド要因は織り込まない保守的な業績予想になっていると同社は述べている。
同社は、2022年9月期通期会社予想として、売上収益13,000百万円(前年同期比25.8%減)、営業利益1,000百万円(同68.2%減)、税引前利益940百万円(同69.1%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益700百万円(同70.5%減)、基本的1株当たり当期利益31.66円を提示した。配当予想額は未定とした。依然として不確実な社会経済情勢に鑑み、Go To Travelキャンペーン等による国内旅行回復による収益寄与、海外旅行の回復、訪日観光客の回復、投資事業の貢献等のアップサイド要因は織り込まない保守的な業績予想になっていると同社は述べている。同社が期初予想を発表した時点は、新型コロナウイルスのオミクロン株の流行前であったが、結果としてオミクロン株のような予見困難な事象による不確実性を織り込んだ予想となっている。
新型コロナウイルス感染症の拡大の間、マーケティングを減らしたことで認知度が低下したことから、2022年9月期はマーケティングを増加させる方針である。しかしながら、期初予想で見込んだマーケティングコスト約500百万円を積極的に投下し始める時期、規模、仕様媒体などについては、Go To Travelキャンペーンの再開時期、国内旅行需要の回復の見込み、オミクロン株の影響などの状況に応じて変更する可能性があるとしている。
Go To Travelキャンペーン 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受けている観光事業に対して、日本政府が実施している補助事業である。2020年7月に開始されたものの、新型コロナウイルス感染症の拡大が深刻化したことで2020年12月をもって一時中断している。2021年12月9日時点では、オミクロン株の発生など不確実性が高まっていることから、2022年1月末以降の再開予定と報道されている。再開時には、ワクチン接種や検査陰性の証明を活用する方針であり、中断前の制度設計で批判があった点を見直し、中小ホテルや旅館への宿泊、平日の利用を促進する方向で議論されていると報道されている。また、補助の上限も引き下げられる見込みである。加えて、春休みシーズンは補助の必要性が低いものとして、補助対象期間から除外される見込みである。
同社の期初予想にはGo To Travelキャンペーンの効果は反映されていないが、オミクロン株の流行の影響として、再開時期が後ろ倒しとなるリスクがある。年末年始の帰省に関する国内航空券需要については、Go To Travelキャンペーンが年末年始には再開されないことが明確になったことで、11月後半の予約は好調となった。しかし、オミクロン株に関する報道を受けて、その後の予約のスピードは鈍化している。2021年12月上旬時点の状況としては、年末年始の国内航空券需要は、新型コロナウイルス感染症の拡大前との比較で50%程度と同社は見込んでいる。
国内旅行領域は、第1四半期は需要回復傾向、第2四半期・第3四半期はGo To トラベル活用による収益拡大、第4四半期は夏の旅行需要増を見込む。各四半期で収益が増加していくことを見込むが、特に第2四半期で大きく回復することを見込む。年間を通じて戦略的なマスマーケティング投資により、収益拡大を目指すとしている。
Go To Travelキャンペーンは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた国内観光業に対する経済対策である。2020年度第1次補正予算で約1.7兆円の予算が計上された。2020年7月22日から2021年春にかけて実施される計画となっていたが、新型コロナウイルス感染症の再拡大の影響により2020年12月28日で一時停止された。2022年3月9日時点でも一時停止中である。
一時中断前のGo To Travelキャンペーン 観光庁の発表によれば、キャンペーンの基本的な内容は以下のとおりである。国内旅行を対象に宿泊・日帰り旅行代金の1/2相当額を支援する。一人一泊当たり20千円が上限となる(日帰り旅行については、10千円が上限)。連泊制限や利用回数の制限はなく、支援額のうち7割程度は旅行代金の割引に、3割程度は旅行先で使える地域共通クーポンとして付与される。宿泊旅行の場合、宿泊+交通機関のセットプランであれば、交通機関も割引対象となる。日帰り旅行の場合、往復の交通に加えて旅行先での消費となる食事や観光体験等のセットプランが割引対象となる。 このような仕組みから、相対的に高価格帯のプランでメリットが高く、低価格帯のプランではメリットが小さい。また、宿泊事業者にはキャンペーンの対象となるための申請手続が必要となるが、旅行代理店経由の予約であれば個別の申請手続が不要となるため、旅行代理店や大規模事業者に有利な制度であるとの意見もあった。 同社のエアトリプラスは航空券と宿泊がセットであり、Go To Travelキャンペーンの対象である。 キャンセルが生じてキャンセル料が発生する場合には、キャンセル料が帰着日よりも前に発生することから、トータルでの収入は減りつつも、キャンセル料収入が前倒しで計上されることになる。しかしながら、航空券単品と異なり、宿泊セット商品では旅行日の1.5ヶ月前程度まで近くならないとキャンセル料が発生しない場合が多いことから、急速に新型コロナウイルス感染症が拡大するような深刻な事態にならない限り、キャンセル料の影響は小さいものとみている。
ITオフショア開発事業では、ベトナムにある連結子会社株式会社Evolable Asia Co., Ltd.が中心となって、同社で自社利用するオンライン旅行システムの開発と、日系企業へ専属エンジニアと事務所を合わせて提供するサービスを行っている*。人月単価×人員数によって顧客に請求を行うビジネスモデルであり、顧客に提供するエンジニア数と人月単価が売上高に影響を与える。オフショア開発とは、IT企業がソフトウェア開発やWebシステム開発を、海外の企業や子会社に委託することをいう。
*システム開発は、株式会社Evolable Asia Co., Ltd.と、株式会社エボラブルアジアソリューションズが担当している。ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)をEVOLABLE ASIA SOLUTION & BUSINESS CONSULTANCY COMPANY LIMITEDが行っている。ゲーム開発をPunch Entertainment (Vietnam) Company Limited(Evolvable Asia Co., Ltd.の子会社)、GREVO Co., Ltd.(Evolvable Asia Co., Ltd.とグリー株式会社<東証3632>とのジョイントベンチャー)、KAYAC HANOI CO., LTDが担当している。EVOLABLE ASIA AGENTが人材エージェントを担当している
要約
事業概要
主要事業:株式会社エアトリ(以下、同社)は、総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を中心とした旅行コンテンツを提供するOTA(インターネット専業旅行代理店)である。2021年9月期におけるセグメントはオンライン旅行事業(エアトリ旅行事業、訪日旅行事業・Wi-Fi事業、メディア事業)、ITオフショア開発事業、投資事業の3つである。オンライン旅行事業が中核であり、国内では第1位のOTAである。エアトリ旅行事業では、同社は航空券・宿泊を単独またはセット(エアトリプラス)で販売する。主要販路は、自社ブランドで消費者に直接販売するBtoC、旅行会社など他社ブランドを利用して販売するBtoBtoCである。
セグメント:2021年9月期通期実績は、取扱高33,622百万円、売上収益17,524百万円(前年同期比17.5%減。継続事業のみで比較。以下同様)、営業利益3,142百万円(前年同期は8,994百万円の損失)、税引前利益3,043百万円(同9,190百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益2,372百万円(同8,692百万円の損失)となった。オンライン旅行事業の売上収益は15,518百万円(前年同期比17.4%減)、セグメント利益は2,680百万円(前年同期は7,544百万円の損失)となった。ITオフショア開発事業の売上収益は1,262百万円(前年同期比33.2%減)、セグメント利益は572百万円(前年同期は0百万円の利益)となった。投資事業の売上収益は738百万円(前年同期比32.3%増)、セグメント利益は731百万円(前年同期は247百万円の損失)となった。
収益構造:オンライン旅行事業の一部であるエアトリ旅行事業は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、2020年9月期以降、取扱高が大幅に減少する影響を受けている。しかしながら、OTAである同社は実店舗を有しておらず、また新型コロナウイルス感染症の拡大初期に旅行オペレーション業務の外部移管による固定費の変動費化を図ったことで、低い固定費を実現している。また、PCR検査(オンライン旅行事業に含まれる)を事業化するなど、収益源の多角化も推進している。また、同社が新型コロナウイルス感染症の拡大前から取り組んできた投資事業も収穫期を迎えている。これらの対応により、2021年9月期末時点では、国内旅行領域の粗利益は月間300~400百万円前後、海外旅行領域の粗利益はほぼゼロ、その他事業領域の粗利益は230百万円前後で推移しており、販管費における月間固定費は250~300百万円弱、月間変動費は220~270百万円強の水準となっている(ただし、戦略的に投下するマーケティングコストは含まれていない)。
ファイナンス:2020年8月27日、同社は、第三者割当による無担保転換社債型新株予約権付社債(転換価額修正条項付。以下CB)及び新株予約権(行使価額修正条項及び行使許可条項付。以下ワラント)の発行について発表した。これにより、早期の資金調達と、将来の株価回復局面を捉えた資金調達(即時の希薄化抑制)を実現できると同社は説明している。CBについては、償還期限前に転換を促進する仕組みとなっていることから、基本的には株式に転換していくことを企図した設計となっている。ワラントについては、業績回復局面で機動的な資金調達を行うことを可能とすることを主たる目的としている。有利子負債の圧縮規模(2,004百万円)と、業績回復局面での成長資金の必要性(4,123百万円)から、今回のファイナンス総額6,127百万円(手取概算額)を決定したとのことである。なお、CBについては、2021年2月19日に行使が完了した。ワラントについては、同社側に行使許可の権利が付与されていることから、株価水準と資金の必要性を考慮しつつ、行使許可を行っていくとしている。
業績動向
2021年9月期実績:2021年9月期通期実績は、取扱高33,622百万円、売上収益17,524百万円(前年同期比17.5%減。継続事業のみで比較。以下同様)、営業利益3,142百万円(前年同期は8,994百万円の損失)、税引前利益3,043百万円(同9,190百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益2,372百万円(同8,692百万円の損失)となった。2021年9月6日修正後の通期会社予想に対する達成率は、売上収益100.1%、営業利益78.6%、税引前利益77.0%、親会社の所有者に帰属する当期利益98.6%となった。営業利益の業績予想との乖離は主に減損損失(約900百万円)によるものである。新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で需要見通しが不透明であることを反映した。繰延税金資産の計上により、親会社の所有者に帰属する当期利益は概ね計画水準となった。
2022年9月期会社予想:2022年3月15日、同社は2022年9月期通期会社予想を上方修正した。修正後の2022年9月期通期会社予想の売上収益は14,000百万円(前回予想は13,000百万円)、営業利益は2,000百万円(同1,000百万円)、税引前利益は1,900百万円(同940百万円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,400百万円(同700百万円)、1株当たり当期純利益は63円29銭(同31円66銭)である。2022年9月期第1四半期はエアトリ旅行事業の国内旅行領域が好調に推移し、それ以外の既存事業(ITオフショア開発事業、訪日旅行事業・Wi-Fiレンタル事業、メディア事業、投資事業)も好調・堅調に推移した。第1四半期での営業利益は941百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は717百万円と過去最高水準となり、期首想定を上回るスタートとなった。その結果、売上収益及び各段階損益の増加が見込まれることから、同社は前回公表した業績予想を上方修正した。
中期成長戦略:2019年11月14日、同社は、中期成長戦略「エアトリ5000」を公表した。同社は、エアトリ旅行事業の徹底強化とM&Aによる新規事業での非連続的成長により、2024年9月期に取扱高500,000百万円(2019年9月期実績をベースとした平均成長率は約28%)を目指すとした。同社が中期成長戦略を公表した時点は新型コロナウイルス感染症の拡大前であったが、2020年9月期期末決算説明会において、同社は引き続き中期成長戦略「エアトリ5000」を目指すとした。
同社の強みと弱み
SR社では同社の強みを、1)エアトリ旅行事業の固定費を低下させたことで、新型コロナウイルス感染症の拡大によるダメージを低く抑えていること、2)収益源の多角化を行ったことで、海外旅行市場の喪失をカバーしていること、3)ダイナミックパッケージサービス(エアトリプラス)によるクロスセル、の3点と考えている。
一方、弱みに関しては、1)旅行事業が事業ポートフォリオの中核となっており、外部環境の影響を受けやすい構造にあること、2)国内航空券における航空会社の直販比率の高さ、3)海外OTAと比較して世界的な認知度・資本力で劣後すること、の3点と考えている。
主要経営指標の推移
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*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
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*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
直近更新内容
2022年9月期通期業績予想の修正について発表(リリース)
株式会社エアトリは、2022年9月期通期業績予想の修正を発表した。
(リリース文へのリンクはこちら)
通期会社予想の修正(2022年3月15日)
2022年3月15日、同社は2022年9月期通期会社予想を上方修正した。修正後の2022年9月期通期会社予想の売上収益は14,000百万円(前回予想は13,000百万円)、営業利益は2,000百万円(同1,000百万円)、税引前利益は1,900百万円(同940百万円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,400百万円(同700百万円)、1株当たり当期純利益は63円29銭(同31円66銭)である。
2022年9月期第1四半期はエアトリ旅行事業の国内旅行領域が好調に推移し、それ以外の既存事業(ITオフショア開発事業、訪日旅行事業・Wi-Fiレンタル事業、メディア事業、投資事業)も好調・堅調に推移した。第1四半期での営業利益は941百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は717百万円と過去最高水準となり、期首想定を上回るスタートとなった。その結果、売上収益及び各段階損益の増加が見込まれることから、同社は前回公表した業績予想を上方修正した。エアトリグループの“リ・スタート”により、前々期より取り組んできた各種施策およびコスト削減の成果が継続して実現し、グループ内の事業ポートフォリオの分散および再構築が進んでいるとのことである。
2022年1月に入り、新型コロナウィルスの感染拡大やまん延防止等重点措置等の発令等に伴う影響から、一部エアトリ旅行事業の落ち込みがあったものの、足元では需要が回復傾向にあると同社は述べている。また、エアトリ旅行事業以外の既存事業は引続き好調・堅調に推移しているとのことである。
業績動向
四半期実績推移
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*2021年9月期の四半期が開示されるごとに、2020年9月期の前年同期を非継続事業を除外した数値に置き換えた。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
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*2020年9月期の累計は第3四半期まで非継続事業を含む数値であり、第4四半期(取扱高除く)は非継続事業を除いた数値である。第4四半期(3ヶ月)の数値は累計の差額となっている。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
2022年9月期第2四半期実績
業績概要
2022年9月期第2四半期累計期間実績は、取扱高19,651百万円(前年同期比8.7%増)、売上収益6,870百万円(同38.7%減)、営業利益1,477百万円(同26.2%減)、税引前利益1,379百万円(同29.5%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益1,118百万円(同13.1%減)となった。
第2四半期の各月の粗利益は、国内旅行領域は1月250百万円、2月240百万円、3月440百万円、海外旅行領域は各1月10百万円、2月10百万円、3月20百万円、その他事業領域は1月210百万円、2月140百万円、3月140百万円であった。第2四半期の月間販管費は450~500百万円強に抑制した。
同社は、2022年3月15日修正後の2022年9月期通期会社予想を据え置いた。2022年9月期通期会社予想(2022年3月15日修正後)に対する進捗率は、売上収益49.1%、営業利益73.9%、税引前利益72.6%、親会社の所有者に帰属する当期利益79.9%となった。修正後業績予想に対して順調に推移していると同社は述べている。業績予想の前提条件等の詳細については、後述の「2022年9月期会社予想」の項を参照されたい。
同社は2022年9月期第3四半期の粗利益について、国内旅行領域は4月560百万円、5月520百万円、6月530百万円、海外旅行領域は各月20百万円、その他事業領域は4月150百万円、5月140百万円、6月140百万円を計画している。まん延防止措置の全面解除による国内旅行需要の回復を見込む。また、2022年4月以降の月間販管費は、旅行需要の増加に応じて、変動費200~300百万円、固定費250~300百万円程度を計画するとした。
セグメント別
オンライン旅行事業
第2四半期累計期間の売上収益は6,240百万円(前年同期比37.2%減)、セグメント利益は1,256百万円(同9.9%減)となった。新型コロナウイルス感染症の拡大と拡大防止策による影響を受けた。
ITオフショア開発事業
第2四半期累計期間の売上収益は290百万円(前年同期比68.6%減)、セグメント利益は368百万円(同40.0%減)となった。
2021年9月期第2四半期のセグメント利益のうち約600百万円は、第2四半期に行われたハイブリッドテクノロジーズ社の連結除外に伴う利益である。
投資事業
第2四半期累計期間の売上収益は336百万円(前年同期比2.6%減)、セグメント利益は308百万円(同29.2%減)となった。出資先の新規上場に伴って株式を譲渡した。
投資事業において、2022年5月現在、投資先は73社まで拡大した。総投資額累計は2022年5月現在で約3,100百万円となっている。
2022年9月期通期会社予想
第2四半期決算発表時点の補足(2022年5月13日)
同社は、2022年3月15日修正後の2022年9月期通期会社予想を据え置いた。2022年9月期通期会社予想(2022年3月15日修正後)に対する進捗率は、売上収益49.1%、営業利益73.9%、税引前利益72.6%、親会社の所有者に帰属する当期利益79.9%となった。エアトリ旅行事業の収益回復を見込む。ただし、不確実な社会経済情勢に鑑み、GoToトラベル等による国内旅行回復による収益寄与、海外旅行の回復、訪日観光客の回復、投資事業の貢献等のアップサイド要因は織り込まない保守的な業績予想になっていると同社は述べている。
同社は2022年9月期第3四半期の粗利益について、国内旅行領域は4月560百万円、5月520百万円、6月530百万円、海外旅行領域は各月20百万円、その他事業領域は4月150百万円、5月140百万円、6月140百万円を計画している。まん延防止措置の全面解除による国内旅行需要の回復を見込む。また、2022年4月以降の月間販管費は、旅行需要の増加に応じて、変動費200~300百万円、固定費250~300百万円程度を計画するとした。
通期会社予想の修正(2022年3月15日)
2022年3月15日、同社は2022年9月期通期会社予想を上方修正した。修正後の2022年9月期通期会社予想の売上収益は14,000百万円(前回予想は13,000百万円)、営業利益は2,000百万円(同1,000百万円)、税引前利益は1,900百万円(同940百万円)、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,400百万円(同700百万円)、1株当たり当期純利益は63円29銭(同31円66銭)である。
2022年9月期第1四半期はエアトリ旅行事業の国内旅行領域が好調に推移し、それ以外の既存事業(ITオフショア開発事業、訪日旅行事業・Wi-Fiレンタル事業、メディア事業、投資事業)も好調・堅調に推移した。第1四半期での営業利益は941百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は717百万円と過去最高水準となり、期首想定を上回るスタートとなった。その結果、売上収益及び各段階損益の増加が見込まれることから、同社は前回公表した業績予想を上方修正した。エアトリグループの“リ・スタート”により、前々期より取り組んできた各種施策およびコスト削減の成果が継続して実現し、グループ内の事業ポートフォリオの分散および再構築が進んでいるとのことである。
2022年1月に入り、新型コロナウィルスの感染拡大やまん延防止等重点措置等の発令等に伴う影響から、一部エアトリ旅行事業の落ち込みがあったものの、足元では需要が回復傾向にあると同社は述べている。また、エアトリ旅行事業以外の既存事業は引続き好調・堅調に推移しているとのことである。
第1四半期決算発表時点の補足(2022年2月14日)
同社は、2022年9月期通期会社予想を据え置いた。2022年9月期通期会社予想(期初予想)に対する進捗率は、売上収益33.5%、営業利益94.1%、税引前利益96.3%、親会社の所有者に帰属する当期利益102.4%となった。期初予想は、Go To Travelキャンペーン等による国内旅行回復による収益寄与、海外旅行の回復、訪日観光客の回復、投資事業の貢献等のアップサイド要因は織り込まない保守的な業績予想になっていると同社は述べている。
同社は2022年9月期第2四半期の粗利益について、国内旅行領域は1月250百万円、2月220百万円、3月290百万円、海外旅行領域は各月10百万円、その他事業領域は1月270百万円、2月260百万円、3月210百万円を計画している。国内旅行領域はオミクロン株の感染拡大の影響を受けているが、緩やかな旅行需要回復を想定するとしている。オミクロン株の感染拡大の影響が早期に収束する場合には、国内旅行領域の3月の粗利益として400百万円弱の水準を目指せる可能性があると同社は述べている。また、2022年1月以降の月間販管費は、取扱高の増加に応じて、変動費が210~260百万円、固定費が240~290百万円程度を計画するとした。
2022年1月の国内旅行領域の粗利益は250百万円と、2021年12月の420百万円から大幅低下する見込みである。要因としては、12月は年末年始の帰省需要が高まる季節性がある(通常でも1月は12月よりも2割程度利用が落ち込む)ことの反動と、年末年始後のオミクロン株の感染拡大の影響があったとのことである。
PCR検査については、第2四半期では単価の下落がみられているとのことである。これは、自治体から受託して実施するPCR検査(利用者負担なし)については、同社がオプションとして提供しているサービスを付与することができない設計となっているためである。また、デルタ株の流行の際と比較して、自宅待機で済ませる体調不良者が多かったとみられ、検査件数も伸び悩んだ。このため、第2四半期のその他事業領域の粗利益については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響が顕著であった2021年7月・8月ほどの水準には達しないと同社は見込んでいる。
第1四半期時点で各段階利益の通期業績予想をほぼ達成している状況となっているが、同社は期初予想を据え置いた。この背景として、同社は、①オミクロン株の流行の影響を受けている第2四半期の売上収益・利益は第1四半期と比較して弱い水準となることが見込まれること、②今後のマーケティング投資時期・規模の想定が難しいことを挙げている。第1四半期の営業利益941百万円のうち、コールセンター等オペレーション業務に関する事業譲渡益277百万円、および過年度減損処理済みの施設に関する受取保険金200百万円、持分変動利益60百万円前後については、一時利益であった。これらを除外した第1四半期の営業利益は400百万円程度であり、売上収益の低下が見込まれる第2四半期では損益均衡程度になることが想定されると同社は述べている。また、マーケティングを強化するタイミングで新型コロナウイルス感染症の再拡大が発生すると、費用対効果が低下し、短期的な投資効果が低下するリスクがあると同社は述べている。
期初予想(2021年11月12日)
同社は、2022年9月期通期会社予想として、売上収益13,000百万円(前年同期比25.8%減)、営業利益1,000百万円(同68.2%減)、税引前利益940百万円(同69.1%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益700百万円(同70.5%減)、基本的1株当たり当期利益31.66円を提示した。配当予想額は未定とした。依然として不確実な社会経済情勢に鑑み、Go To Travelキャンペーン等による国内旅行回復による収益寄与、海外旅行の回復、訪日観光客の回復、投資事業の貢献等のアップサイド要因は織り込まない保守的な業績予想になっていると同社は述べている。同社が期初予想を発表した時点は、新型コロナウイルスのオミクロン株の流行前であったが、結果としてオミクロン株のような予見困難な事象による不確実性を織り込んだ予想となっている。
期初予想では、足元の売上収益・粗利・販管費水準が1年間継続する前提とし、そのうえで追加的にマーケティングコスト約500百万円を見込んでいる。取扱高については予想数値としては開示しなかったものの、売上収益等と同様、足元の水準(月間取扱高2,500~3,000百万円程度)が1年間継続する想定としているとのことである。
同社は2022年9月期第1四半期の粗利益について、国内旅行領域は10月330百万円、11月370百万円、12月380百万円、海外旅行領域は各月10百万円、その他事業領域は10月230百万円、11月230百万円、12月230百万円を計画している。また、2021年10月以降の月間販管費(上記マーケティングコスト約500百万円は除く)については、取扱高の増加に応じて、変動費で220~270百万円、固定費で250~300百万円程度を計画するとした。
同社は、過去実績から考えて、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が2021年8・9月頃の水準まで増加したとしても、月次の粗利益300百万円前後を確保することができるとしている。感染不安が残るものの、新規感染者数自体は少ない足元のような状況であれば、月次粗利益400百万円に近い水準になるとしている。
新型コロナウイルス感染症の拡大の間、マーケティングを減らしたことで認知度が低下したことから、2022年9月期はマーケティングを増加させる方針である。しかしながら、期初予想で見込んだマーケティングコスト約500百万円を積極的に投下し始める時期、規模、仕様媒体などについては、Go To Travelキャンペーンの再開時期、国内旅行需要の回復の見込み、オミクロン株の影響などの状況に応じて変更する可能性があるとしている。
国内旅行領域
2021年9月末に国内の緊急事態宣言が全面解除となり、その後の新規感染者数も抑制されていることから、2021年11月以降の国内旅行需要は回復傾向にある。第1四半期の粗利益としては、国内旅行領域は10月330百万円、11月370百万円、12月380百万円が計画されている。同社は、2021年11月以降、マーケティング投下を増加し始めている。
同社の期初予想にはGo To Travelキャンペーンの効果は反映されていないが、オミクロン株の流行の影響として、再開時期が後ろ倒しとなるリスクがある。年末年始の帰省に関する国内航空券需要については、Go To Travelキャンペーンが年末年始には再開されないことが明確になったことで、11月後半の予約は好調となった。しかし、オミクロン株に関する報道を受けて、その後の予約のスピードは鈍化している。2021年12月上旬時点の状況としては、年末年始の国内航空券需要は、新型コロナウイルス感染症の拡大前との比較で50%程度と同社は見込んでいる。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大前には、国内旅行領域の月次粗利益は平均500百万円程度であった。
海外旅行領域
同社の期初予想には海外旅行の回復は反映されていない。海外旅行領域の回復には時間がかかるものと同社は考えている。なお、期初時点では粗利益貢献はほぼないが、新型コロナウイルス感染症の拡大前には、海外旅行領域の月次粗利益は平均400百万円程度であった。
その他事業領域
2022年9月期第1四半期におけるその他事業領域の月次粗利益は230百万円程度と、2021年7月第4四半期の290~380百万円の水準から低下する見込みとなっている。これは主として、2021年9月で国内で発せられていた緊急事態宣言がすべて解除され、その後も新型コロナウイルスの新規感染者数が落ち着きを見せていることから、不安心理によるPCR検査需要が低下する影響を見込んだものとのことである。PCR検査関連の粗利益については、足元では月間100百万円弱程度で推移していると同社は述べている。
メディア事業(まぐまぐ社)
メディア事業の株式会社まぐまぐ(東証JASDAQ、4059)の2022年9月期通期会社予想は、売上高710百万円(前年同期比6.7%増)、営業利益62百万円(同51.4%減)、経常利益62百万円(同51.1%減)、当期純利益42百万円(同50.8%減)と発表されている。
投資事業
投資事業の貢献についても期初予想には反映されていない。参考として、2021年9月期の売上収益は738百万円(前年同期比32.3%増)、セグメント利益は731百万円(前年同期は247百万円の損失)であった。投資事業では、期初予想公表後に投資先の株式会社ラストワンマイル(東証マザーズ、9252)がIPOしている。また、期初予想公表後にグループ会社の株式会社ハイブリッドテクノロジーズ(東証マザーズ、4260)が2021年12月23日上場予定と発表された。同社はハイブリッドテクノロジーズを持分法適用会社としており、同社はIPO時の売出しを行わないため、ハイブリッドテクノロジーズ社のIPOは損益に影響しない。将来的に売却する場合には売却損益が実現することになるが、同社には半年間のロックアップが存在するため、売却可能となるのは2022年6月下旬以降となる。このほか、進行期に関するパイプラインが複数存在するとのことである。
過去の会社予想と実績の差異
(日本基準)
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
2019年9月期については、同社は取扱高予想のみを提示していた。2020年9月期は2020年2月頃から新型コロナウイルス感染症の拡大の影響が生じ、売上収益が期初予想を大幅に下回るとともに、6,991百万円の減損損失(営業損失に含む)を計上した。
成長戦略「エアトリ2022」
2021年9月期期末決算説明会において、同社は成長戦略「エアトリ2022」を発表した。
エアトリ旅行事業
以下の成長戦略は、保守的となっている2022年9月期会社予想(期初予想)とは異なり、旅行需要が回復していく場合を想定したものとなっている。なお、この成長戦略は、期初時点に発表されたものであるため、オミクロン株の流行は想定されていないことを考慮する必要がある。
国内旅行領域は、第1四半期は需要回復傾向、第2四半期・第3四半期はGo To トラベル活用による収益拡大、第4四半期は夏の旅行需要増を見込む。各四半期で収益が増加していくことを見込むが、特に第2四半期で大きく回復することを見込む。年間を通じて戦略的なマスマーケティング投資により、収益拡大を目指すとしている。
海外旅行領域は、第1四半期・第2四半期は入国制限や隔離条件等により横ばい、第3四半期以降は規制緩和エリアから徐々に需要回復を見込む。各四半期で収益が増加していくことを見込むが、特に第3四半期・第4四半期で大きく回復することを見込む。但し、第4四半期でも、海外旅行領域の収益は国内旅行領域の半分に満たない想定である。海外渡航需要に対する商材の拡充とUI(User Interface)/UX(User Experience)改善により、早期収益回復を目指すとしている。
中期成長戦略「エアトリ5000」
2019年11月14日、同社は、中期成長戦略「エアトリ5000」を公表した。同社は、エアトリ旅行事業の徹底強化とM&Aによる新規事業での非連続的成長により、2024年9月期に取扱高500,000百万円(2019年9月期実績をベースとした平均成長率は約28%)を目指すとした。同社が中期成長戦略を公表した時点は新型コロナウイルス感染症の拡大前であったが、2020年9月期期末決算説明会において、同社は引き続き中期成長戦略「エアトリ5000」を目指すとした。
中期成長戦略発表後の業界構造の変化
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、同社が中期成長戦略を発表した2019年11月時点以降、業界構造自体が変化している。同社は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う出張需要の減少が見込まれる一方で、利用者のインターネットシフトの加速に伴う同社シェアの拡大もみられるとしている。
同社は旅行需要については新型コロナウイルス感染症の収束によって需要が回復するとみているが、出張需要(国内含む)については新型コロナウイルス感染症の拡大以前の水準には戻らないと考えている。一方で、利用者のインターネットシフトが加速しており、旅行需要が回復すれば、国内OTA第1位の同社には追い風となる。店舗型の旅行代理店は、旅行需要の低下に伴って固定費を削減する必要性があることから閉鎖が相次ぎ、新型コロナウイルス感染症の拡大を避ける観点から利用者がインターネット経由での利用にシフトしている。
中期成長戦略「エアトリ5000」(2019年11月14日公表)
2024年9月期の取扱高目標は500,000百万円と、2019年9月期をベースとした平均成長率で約28%の成長を目標として掲げた。この成長率は2020年9月期計画における成長率の約23%より高い目標であるが、同社は中長期ではM&Aによる成長も見込むことができるとしている。
オーガニックの成長
オーガニックの成長方針については、2020年9月期会社計画として示された方向性と基本的には変わらないとのことである。航空券単品中心のラインナップから、航空券+ホテル(エアトリプラス)中心へのシフトで次のステージへ飛躍的成長を目指す。
M&A戦略
商材力の高い企業を買収することにより商材の拡充を図り、顧客リーチ力の高い企業を買収することにより販路の拡大を図る。同社は、①人的リストラを伴わないコストリダクション、②オフショア開発力を生かした開発の強化、③マーケティングの強化の3点でターンアラウンドできる企業を積極的に買収していきたいとしている。同社は大規模なM&Aについても検討していくと述べている。
事業内容
企業概要
主要事業
同社は、総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を中心とした旅行コンテンツを提供するOTA(インターネット専業旅行代理店)である。2021年9月期におけるセグメントはオンライン旅行事業(エアトリ旅行事業、訪日旅行事業・Wi-Fi事業、メディア事業)、ITオフショア開発事業、投資事業の3つである。オンライン旅行事業が中核であり、国内では第1位のOTAである。エアトリ旅行事業では、同社は航空券・宿泊を単独またはセット(エアトリプラス)で販売する。主要販路は、自社ブランドで消費者に直接販売するBtoC、旅行会社など他社ブランドを利用して販売するBtoBtoCである。
セグメント
2021年9月期通期実績は、取扱高33,622百万円、売上収益17,524百万円(前年同期比17.5%減。継続事業のみで比較。以下同様)、営業利益3,142百万円(前年同期は8,994百万円の損失)、税引前利益3,043百万円(同9,190百万円の損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益2,372百万円(同8,692百万円の損失)となった。オンライン旅行事業の売上収益は15,518百万円(前年同期比17.4%減)、セグメント利益は2,680百万円(前年同期は7,544百万円の損失)となった。ITオフショア開発事業の売上収益は1,262百万円(前年同期比33.2%減)、セグメント利益は572百万円(前年同期は0百万円の利益)となった。投資事業の売上収益は738百万円(前年同期比32.3%増)、セグメント利益は731百万円(前年同期は247百万円の損失)となった。
収益構造
オンライン旅行事業の一部であるエアトリ旅行事業は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響を受け、2020年9月期以降、取扱高が大幅に減少する影響を受けている。しかしながら、OTAである同社は実店舗を有しておらず、また新型コロナウイルス感染症の拡大初期に旅行オペレーション業務の外部移管による固定費の変動費化を図ったことで、低い固定費を実現している。また、PCR検査(オンライン旅行事業に含まれる)を事業化するなど、収益源の多角化も推進している。また、同社が新型コロナウイルス感染症の拡大前から取り組んできた投資事業も収穫期を迎えている。これらの対応により、2021年9月期末時点では、国内旅行領域の粗利益は月間300~400百万円前後、海外旅行領域の粗利益はほぼゼロ、その他事業領域の粗利益は230百万円前後で推移しており、販管費における月間固定費は250~300百万円弱、月間変動費は220~270百万円強の水準となっている(ただし、戦略的に投下するマーケティングコストは含まれていない)。
ファイナンス
2020年8月27日、同社は、第三者割当による無担保転換社債型新株予約権付社債(転換価額修正条項付。以下CB)及び新株予約権(行使価額修正条項及び行使許可条項付。以下ワラント)の発行について発表した。これにより、早期の資金調達と、将来の株価回復局面を捉えた資金調達(即時の希薄化抑制)を実現できると同社は説明している。CBについては、償還期限前に転換を促進する仕組みとなっていることから、基本的には株式に転換していくことを企図した設計となっている。ワラントについては、業績回復局面で機動的な資金調達を行うことを可能とすることを主たる目的としている。有利子負債の圧縮規模(2,004百万円)と、業績回復局面での成長資金の必要性(4,123百万円)から、今回のファイナンス総額6,127百万円(手取概算額)を決定したとのことである。なお、CBについては、2021年2月19日に行使が完了した。ワラントについては、同社側に行使許可の権利が付与されていることから、株価水準と資金の必要性を考慮しつつ、行使許可を行っていくとしている。
(日本基準)
(日本基準)
(日本基準)
(日本基準)
(日本基準)
事業ドメイン
同社の事業ドメインは以下の5つである。開示セグメントでは、オンライン旅行事業の中に「エアトリ旅行事業」「訪日旅行事業・Wi-Fi事業」「メディア事業」が含まれている。
エアトリ旅行事業:総合旅行プラットフォーム「エアトリ」を中心とした旅行コンテンツを提供する
訪日旅行事業・Wi-Fi事業:インバウンド需要への旅行関連サービスや、Wi-Fiレンタルを行う
メディア事業:主として、メールマガジン最大手の株式会社まぐまぐ(東証JASDAQ、4059)で構成される
ITオフショア開発事業:オフショアでの高品質なITハイブリッド開発を提供する
投資事業:主にレイター投資によって、成長期企業への投資を行う
事業別概要
エアトリ旅行事業
ビジネスモデル
販売
エアトリ旅行事業では、同社は国内線航空券、海外航空券、ホテル、新幹線などを中心とした旅行商品*の予約・販売をインターネットを通じて行っており、主に航空会社から仕入れた航空券などを消費者と法人に販売している。また、同社は航空券を販売することによって、航空会社と消費者の両方から手数料を受け取る。2019年9月期時点では、国内関連と海外関連の比率は、概ね1対1となっていた。ただし、2020年9月期・2021年9月期においては、新型コロナウイルス感染症の拡大により、特に海外関連の販売が大きく低下した。2022年2月時点では海外旅行領域の取扱高は新型コロナウイルス感染症の拡大前の数パーセント程度まで落ち込んでいる。
主要販路
エアトリ旅行事業では、自社ブランドで消費者に直接販売するBtoC、旅行会社など他社ブランドを利用して販売するBtoBtoCという2つの主要販路を有する。
航空券の販売における同社の差別化要素
同社は、消費者向け直販のBtoCのみを行っている競合と違い、多様な販路で多様な需要に対応している。すなわち、消費者へ旅行手段の解決策を提供(BtoC)するだけでなく、ブランド力があっても旅行サービスを行っていない企業へのサービス提供(BtoBtoC)を行っている。特に、BtoBtoCは、競合が50社以上存在していた2005年のOTA業界において、当時吉村氏(現CGO)の経営していた会社がブランド力と資金力に乏しい中で考案し、開始したビジネスモデルである。同社のBtoBtoCの契約先は株式会社エイチ・アイ・エス(東証1部9603)、株式会社ナビタイムジャパン(非上場)、株式会社NTTドコモ(東証1部9437;dトラベル)など大手企業へと広がっている。
仕入れ
国内航空券
同社は、競合OTAと比較して有利な条件で航空券を直接仕入れている。具体的には、同社はOTA業界で唯一国内線全航空会社との直接契約によって、代理店手数料を支払うことなく航空券を調達している。また、航空券の大量販売に応じて、航空会社から支払われる販売報奨金を受け取ることなども可能となっている。このように有利な条件を可能にしているのは、大石会長が1995年に旅行代理店を起業して以来築き上げた、航空会社との取引実績によるものである。
海外航空券
原則として、グローバルの航空券仕入のシステムへ接続して仕入れているが、航空キャリアから有利なレートで直接仕入れているケースも存在する。同社はこれまで買収してきた会社から仕入ルートを引き継いでおり、特に近距離路線の仕入に強みを持つ。
宿泊
宿泊については、小規模な宿泊施設が多いことから、原則は他社システムに接続して仕入れている。但し、大手のホテルチェーンとは直接仕入の契約を締結している。
消費者は割安で商品を獲得できるとともにポイントも獲得
消費者が航空券やホテルなどを購入・予約すると、エアトリポイントを獲得することができる(ポイント率はメニューやキャンペーンによって異なる**)。エアトリポイントは次回利用時に割引使用できるだけでなく、交換サイト「Gポイント」を通じて他の様々なポイントへ交換することや、Amazonポイントに交換してショッピングを行うことも可能。
エアトリ旅行事業の収益構造
同社は、2005年に開始したBtoBtoCを中心に売上高を成長させ、2011年9月期に国内線取扱高No.1となった。これは、航空券の比較検索需要増加によるOTA市場拡大が主な理由である。これまで、航空券の比較検索需要はLCC(Low Cost Carrier:格安航空会社)参入がもたらした国内線就航社数増加(1990年の3社から2018年には14社)に伴い、消費者の選択肢が拡大したことなどによって増加してきた。2018年5月末、同社は、株式会社ディー・エヌ・エー(東証1部2432)から、総合旅行サイトを運営する株式会社DeNAトラベル(現エアトリインターナショナル)を買収し、取扱高は大きく増加することとなった。
収益認識
同社によれば、航空券については発券日に手数料部分をネットで収益認識し、宿泊については宿泊日(初日)に手数料部分をネットで収益認識するのに対し、エアトリプラスやツアーについては帰着日に商品代と手数料をグロスで収益認識する。このため、エアトリプラスやツアーの販売比率が高まると、売上原価率は高まり、粗利率は低下する。このため、同社の場合には、対売上高比率よりも対取扱高比率のほうが分析に適する。なお、キャンセルが発生した場合、キャンセル料(手数料)が純額で取扱高・売上高として認識される。
基本的な収益構造
同社の主力事業はOTAであるから、基本的には店舗・店舗人員を持たず、主要な固定費は人件費(販管費)と広告宣伝費である。したがって、取扱高を拡大することが将来の収益性・競争力を高めることにつながる、典型的な損益分岐点モデルと言える。
同社は代理店であるため、キャンセルが発生した場合でも、航空会社等から返金がなければ、同社からユーザーに返金しない。言い換えれば、同社はキャンセル返金額の未回収による財務リスクを負わない仕組みとなっている。
利益のコントロール
同社は3つのポイントから利益コントロールしている。粗利率は取扱高に対して10%前後となっている。
価格戦略:商材・販売チャネルごとに、価格と集客のバランスをコントロールする
仕入サプライヤーからのコミッション:国際線のほうがキャリア数が多いため、同社の価格競争力が高く、利益率を上げやすい
販管費:広告戦略の一部変更などをコントロールする
エアトリ旅行事業の販路別の概要
以下は、エアトリ旅行事業における販路別の概要である。
BtoC
BtoCでは、「エアトリ」など自社ブランドの比較・販売サイトで国内線航空券を中心とした旅行商材を消費者に直接販売している。BtoCの売上高は、消費者に対して旅行商材の比較検索・予約販売サービスを提供することによる手数料収入で構成される。手数料収入には消費者から受け取る手数料を含んでいる。消費者から受け取る手数料は、1件あたり手数料と、クレジットカードを利用することによる手数料などで構成されている。「エアトリ」の顧客は、20~40代の若い世代が中心であり、男女の偏りは大きくないとのことである。
エアトリプラス
同社は、2019年8月14日、国内海外400社以上の航空券と国内海外600千件以上のホテルの宿泊を自由に組み合わせて購入できるエアトリプラスを発表した。
航空券とホテルの宿泊を同時購入することで、セット割引が適用され、利用者はそれぞれを別に購入するよりも安く旅行できる。
エアトリプラスは、他社のダイナミックパッケージサービスと異なり、フルサービスキャリア(FSC)の航空券だけではなく、ローコストキャリア(LCC)の航空券等も取り扱っており、利用者の選択肢が多く、最低価格も安いのが特徴である。これは、航空券の検索システムを同社が保有しているために可能となっているとのことである。
エアトリプラスは航空券と宿泊の組み合わせ商品であるため、一定率を上乗せして販売する形の航空券単品より価格設定の自由度は高い。しかしながら、他社との競争もあるため、全体としての粗利率は航空券単体の粗利率とそれほど変わらず、10%程度となっている。
Go To Travelキャンペーンの概要と直近の状況
Go To Travelキャンペーンは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた国内観光業に対する経済対策である。2020年度第1次補正予算で約1.7兆円の予算が計上された。2020年7月22日から2021年春にかけて実施される計画となっていたが、新型コロナウイルス感染症の再拡大の影響により2020年12月28日で一時停止された。2022年3月9日時点でも一時停止中である。
再開時には、ワクチン接種や検査陰性の証明を活用する方針であり、中断前の制度設計で批判があった点を見直し、中小ホテルや旅館への宿泊、平日の利用を促進する方向で議論されていると報道されている。また、補助の上限も引き下げられる見込みである。加えて、春休みシーズンは補助の必要性が低いものとして、補助対象期間から除外される見込みである。
BtoBtoC
BtoBtoCでは、他社ブランドの比較・販売サイトで国内線航空券を中心とした旅行商品を消費者に販売している。BtoBtoCにおける売上高(手数料収入)の構成比は、BtoCと同様に約半分が消費者から受け取る手数料であり、約半分が航空会社から受け取る手数料となっている。BtoBtoCの取扱高および売上高は、他社Webサイトの広告戦略による集客の動向に左右される。
BtoBtoCの費用は、人件費などのオペレーション費用のほかに、他社ブランドを使用することによる支払手数料で構成されている。支払手数料は取扱高に対して約3%となっている。BtoCとは異なり、他社ブランドのWebサイト側で広告宣伝費が発生するため、同社で広告宣伝費を負担する必要がないというメリットがある。
BTM(Business Travel Management):連結外の株式会社ピカパカ経由で展開
BTMでは、出張に関する移動と宿泊を手配する必要がある顧客企業に対して、比較・販売を行う専用のシステム「旅Pro-BTM」を提供して旅行商品を販売している。BtoCと同様、航空会社と顧客からの手数料で構成されている。ピカパカ社で展開していたが、ピカパカ社は2021年8月末をもって連結範囲からは除外された。
訪日旅行事業・Wi-Fi事業
主に以下の事業を運営する。尚、セグメント上、訪日旅行事業・Wi-Fi事業は「オンライン旅行」に含まれている。
訪日旅行客向けキャンピングカーレンタル事業
訪日旅行客向け、海外・国内向けWi-Fiレンタル事業
訪日旅行客向けダイナミックパッケージ
民泊ホスト向けワンストップサービス(株式会社エアトリステイ。同社65%、Airbnb35%の合弁会社。単月黒字化済みとのことである。)
メディア事業
セグメント上、メディア事業は「オンライン旅行」に含まれている。
株式会社まぐまぐ(東証JASDAQ、4059)
業界最大手のメルマガプラットフォームを運営する。運営メディア合計のユニークユーザー数は2021年9月期で約97百万である。
まぐまぐ社は、2020年9月24日に新規上場した。まぐまぐ社は子会社であることから、まぐまぐ社株式の含み損益(取得価額約1,350百万円、2021年12月時点の時価総額約2,000百万円、同社の残存持分約72%)は連結決算上は反映されない。
メディア事業の株式会社まぐまぐ(東証JASDAQ、4059)の2021年9月期通期実績は、売上高666百万円(前年同期比2.5%減)、営業利益127百万円(同12.2%減)、経常利益127百万円(同0.2%増)、当期純利益86百万円(同6.0%減)であった。
ITオフショア開発事業
ビジネスモデル
ITオフショア開発事業では、ベトナムにある連結子会社株式会社Evolable Asia Co., Ltd.が中心となって、同社で自社利用するオンライン旅行システムの開発と、日系企業へ専属エンジニアと事務所を合わせて提供するサービスを行っている*。人月単価×人員数によって顧客に請求を行うビジネスモデルであり、顧客に提供するエンジニア数と人月単価が売上高に影響を与える。オフショア開発とは、IT企業がソフトウェア開発やWebシステム開発を、海外の企業や子会社に委託することをいう。
要件定義などの上流工程をベトナム人プロジェクトマネージャーが日本で行い、ベトナムの開発チームをマネジメントする。オフショア開発で起こりがちなミスコミュニケーションを最小限に抑えることが可能となる。顧客は自社のオフィスで、常駐のブリッジエンジニアに指示を出すだけでよい(日本語対応)。
投資事業
同社は従来から成長企業への投資を行っていたが、2017年9月期より、独立した新規事業として当該事業を開始している。2022年2月時点で投資先は69社、総投資額は約3,000百万円となっている。2021年12月に同社が公表したCVC・投資事業に関する資料では、投資先の約76%がいわゆるN-3期までに該当しており、今後毎期複数社のIPOを見込むとしている。
同社は、キャピタルゲインを重視し、バリュエーションが見合う範囲で投資する方針である。結果として、レイター投資が多いようである。IPO後はバリュエーションを鑑みながら順次売却をしていく方針である。
同社の投資先企業一覧(2022年3月9日現在)
AIを活用した取り組みにより、インサイドセールス事業の強化を行う。
多数の通貨や言語に対応し、利便性と安全性を備えたサービス提供を担う。
コスト構造
同社は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う取扱高減少に対応して、損益分岐点の改善をはかるべく、2020年9月期以降、旅行オペレーション業務の変動費化を図るなどコスト構造の変更に取り組んでおり、2019年9月期以前とコスト構造の連続性がなくなっている。2021年10月以降の月間販管費については、取扱高の増加に応じて、変動費が220~270百万円、固定費が250~300百万円程度を計画するとしている。2022年9月期計画ではこれに加えてマーケティングコスト500百万円が予定されている。
(日本基準)
(日本基準)
(日本基準)
(日本基準)
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
売上原価
売上原価率はセールスミックスによっても変化する。同社によれば、航空券については発券日に手数料部分をネットで収益認識し、ホテルについては宿泊日(初日)に手数料部分をネットで収益認識するのに対し、エアトリプラスやツアーについては帰着日に商品代と手数料をグロスで収益認識する。このため、エアトリプラスやツアーの販売比率が高まると、売上原価率は高まり、粗利率は低下する。このほか、売上原価にはITオフショア開発事業における人件費が含まれる。
従業員給付費用、業務委託費
同社は2020年6月24日に、投資先のアップセルテクノロジィーズ株式会社(未上場)との追加の資本業務提携を発表している。この資本業務提携に伴い、同社の旅行オペレーション業務に関して、アップセルテクノロジィーズ社へ譲渡・移管し、業務委託を行う。これにより、オペレーションコストは2020年7月以降、2021年9月期にかけて段階的に変動費化する。
広告宣伝費
広告宣伝費は集客コストであり、主にBtoCにおいてGoogleなどの検索エンジン大手に支払うリスティング広告費用や、YouTube広告費用である。また、2017年8月以降、新型コロナウイルス感染症の拡大までの間、「エアトリ」のブランディング強化のために、テレビCMを行っていた。新型コロナウイルス感染症の拡大前の広告宣伝費の目安は、売上総利益の30%弱とされていた。
支払手数料
支払手数料は、BtoCにおいてクレジットカード会社に支払う決済手数料と、BtoBtoCにおいて他社ブランドのWebサイトを使用することに対する手数料である。
その他の費用
減損損失が含まれる。2020年9月期には6,991百万円、2021年9月期には226百万円の減損損失を計上した。
市場とバリューチェーン
国内旅行市場
旅行業者のオンライン販売
2017年度の日本の旅行会社によるOTA取扱高は2.2兆円と36%増加となり、OTAの販売比率は旅行会社の総取扱高の27.1%に増加した。これに対し、TTAオンライン販売額のシェアはほとんど変わっておらず、TTAオフライン取扱高からOTAへシェアが移行していることが分かる。
国内オンライン旅行市場
日本の旅行市場における2017年度のオンライン旅行市場規模は、4.5兆円となった。前回調査2015年度の3.7兆円と比較して19.5%増加した。
海外旅行者数、訪日外国人旅行者数
2021年の海外旅行者数は前年比83.9%減の0.51百万人、訪日外国人旅行者数は前年比91.4%減の0.35百万人となった。なお、2022年3月時点で新型コロナウイルス感染症は収束していないことから、2022年についても引き続き低調な状況が継続するものと推定される。
類似企業・競合企業
同社の事業ポートフォリオは、エアトリ旅行事業(オンライン旅行事業)とITオフショア開発事業で構成されている。したがって、事業ごとに競合する企業は多数存在するが、同様のポートフォリオで事業を行っている企業は存在しないため、単純な企業間比較をすることは困難である。
同社のエアトリ旅行事業における類似企業・競合企業は、アドベンチャー社、株式会社アドツーリスト(非上場)、株式会社さくらトラベル(非上場)、エクスペディア(NASDAQ、EXPE)の日本法人などとなっている。
また、ITオフショア開発事業における競合企業は、コウェル社(非上場)などである。
以下は、各事業における主な類似企業・競合企業の概要である。
株式会社アドベンチャー(東証マザーズ6030)
2006年に設立され、国内OTA2位である。自社ブランドWebサイト「スカイチケット」において、比較検索・予約販売を行っている。旅行商品取扱高は2021年6月期約25,445百万円である。
株式会社オープンドア(東証1部3926)
1997年に設立され、旅行比較サイト「トラベルコ」「TRAVELKO」の運営を行っている。「トラベルコ」では、同社を含めた350以上にわたる予約サイトの旅行商品を一括検索できる旅行比較サイトを運営している。したがって、同社とは競合するというよりも、協業関係にある。
*アドベンチャーについては、子会社株式の譲渡を行ったことにより、2020年6月期と2019年6月期の数値との連続性が無くなっているため、20年6月期の収益のYoYを「-」としている。
SW(Strengths, Weaknesses)分析
強み(Strengths)
エアトリ旅行事業の固定費を低下させたことで、新型コロナウイルス感染症の拡大によるダメージを低く抑えていること
OTA(インターネット専業旅行代理店)である同社は実店舗を有しておらず、また新型コロナウイルス感染症の拡大初期に旅行オペレーション業務の外部移管による固定費の変動費化を図ったことで、低い固定費を実現している。2021年9月期末時点では、国内旅行領域の粗利益は月間300~400百万円前後、海外旅行領域の粗利益はほぼゼロ、その他事業領域の粗利益は230百万円前後で推移しており、販管費における月間固定費は250~300百万円弱、月間変動費は220~270百万円強の水準となっている(ただし、戦略的に投下するマーケティングコストは含まれていない)。
収益源の多角化を行ったことで、海外旅行市場の喪失をカバーしていること
2020年9月期以降、新型コロナウイルス感染症の拡大前には月間約400百万円あった粗利益は、ほぼゼロの状況が継続している。しかしながら、同社は、PCR検査(セグメント別としてはオンライン旅行事業に含まれ、粗利益としてはその他事業領域に含まれる)を事業化するなど、収益源の多角化も推進している。また、同社が新型コロナウイルス感染症の拡大前から取り組んできた投資事業も収穫期を迎えている。投資事業の2021年9月期の売上収益は738百万円(前年同期比32.3%増)、セグメント利益は731百万円(前年同期は247百万円の損失)となった。これらの旅行事業以外の収益源は、海外旅行市場を喪失した同社の収益を下支えしている。
ダイナミックパッケージサービス(エアトリプラス)によるクロスセル
同社は、航空券単品中心のラインナップから、航空券+ホテル(エアトリプラス)中心へのシフトによる成長を目指している。エアトリプラスは、他社のダイナミックパッケージサービスと異なり、ローコストキャリア(LCC)の航空券等も取り扱っており、利用者の選択肢が多く、最低価格も安いのが特徴である。これは、航空券の検索システムを同社が保有しているために可能となっている。国内航空会社である日本航空社(JALグループ)と全日本空輸社(ANAグループ)が旅行会社向け割引航空券を変動料金制(ダイナミックプライシング)に移行したこともエアトリプラスには追い風である。
弱み(Weaknesses)
旅行事業が事業ポートフォリオの中核を占めており、外部環境の影響を受けやすい構造にあること
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、旅行需要・出張需要が大幅に低下したことから、2020年2月以降の取扱高が大幅に低下し、2020年9月期には6,991百万円の減損損失(営業損失に含む)を計上した。国内旅行領域の取扱高については、2020年4月に発出された緊急事態宣言の解除後(2020年6月以降)回復傾向にあるが、海外旅行領域の取扱高については、新型コロナウイルス感染症拡大前の数パーセント程度に留まっている。今後、新型コロナウイルス感染症が収束すれば、段階的に旅行需要は回復していくと想定されるものの、旅行事業が事業ポートフォリオの中核を占める限り、外部環境の影響を受けやすい構造であることは否めない。
国内航空券における航空会社の直販比率の高さ
同社は国内線航空券のOTA市場においては1位だが、国内線航空券市場1.59兆円のなかでは、わずか5%程度の取扱高にとどまっている(すべて2018年)。これは、国内航空会社である日本航空社(JALグループ)と全日本空輸社(ANAグループ)が、自社ブランドを活かした直販サイトを運営しており、市場全体では依然として約70%のシェアを有することが背景にある。
海外OTAと比較して世界的な認知度・資本力で劣後すること
海外にはExpedia、Booking.com等、世界的な認知度・資本力で同社に勝るOTAが存在する。今後、同社の事業規模が拡大するにつれて、これらの企業(あるいこれらの企業と提携する国内企業)と競合しやすくなっていくことが想定される。OTAの収益構造は取扱高が大きいほうが有利な典型的な損益分岐点モデルであるから、海外OTAと競合しやすい分野への拡大は簡単ではない。
過去の業績と財務諸表
損益計算書
(日本基準)
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*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
日本会計基準とIFRSによる差異
同社は2018年9月期決算発表からIFRS(国際会計基準)を任意適用している。日本会計基準とIFRS採用時で生じる主な差異には、以下のようなものがある。
のれんの償却:日本会計基準では20年以内の効果が及ぶ期間に毎期償却するのに対して、IFRSではのれんの範囲が異なるほか、最低年1回「減損テスト」を行うが、のれん償却を行わない。
投資損益:IFRSでは(子会社株式・関係会社株式以外の)営業投資有価証券・投資有価証券の期末評価が非上場株式を含めて全て時価評価となることでの差異が発生する。
減損損失:IFRSでは減損損失を営業損益に含めている。2020年9月期には6,991百万円、2021年9月期には226百万円の減損損失を計上している。
(日本基準)
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