エン・ジャパン株式会社は、新中期経営計画の概要に関して発表した。
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同社は、2022年3月期通期決算開示時に、新たに2023年3月期を初年度とする5ヵ年の新中期経営計画を発表した。
保有資金は成長投資(M&A)を優先しつつ、状況により自己株式取得等の還元を検討する。新中計における先行投資強化の3年間は、前期(2022年3月期)水準の配当を維持(70.1 円)し、その後、配当性向50%へ戻す。
同日、同社は剰余金の配当に関して発表した。
2022年3月期の純利益額は、会社予想を下回る結果となった。これにより、1株あたりの年間配当額を従来の配当予想から2.4円減額し、70.1円に修正した。
エン・ジャパン株式会社は、代表取締役の異動に関して発表した。
異動の内容
2022年3月31日
同社は当第1四半期の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用した。これにより、2022年3月期において、従来基準と比較し売上高が2,046百万円増、販管費が2,543百万円増となり、営業利益以下の各利益はそれぞれ496百万円減少した。前期比は、従来基準での実績値と比較した増減率である。
売上高は、主に国内求人サイト及び海外事業が順調に回復し前期比で増収となった。
営業利益以下の各利益は、費用の増加はあったが増収効果によって増益となった。費用は、インドのIT派遣事業の増収に伴い売上原価が増加したこと、求人需要の回復に連動した国内求人サイトへの広告宣伝強化およびengageやAMBIなど注力事業へ広告宣伝費を先行投資したことなどから増加した。
同社は当第1四半期において、国内その他事業・子会社セグメントのサービスをHR-Techを中心に各セグメントへ組み換えた。以下の前期比は、組み換え前の前期実績に対する増減率である。
国内その他事業・子会社のATS・テスト事業(ゼクウ社(採用・応募管理システム)、オンライン適性テスト等)、入社後フォロー・組織活性化事業(オンライン研修サービス、リテンション対策ツール等)を、HR-Techへ組み替えた。
国内その他事業・子会社のブロカント社(フリーランス向けサイト)、アイタンクジャパン社(インターンシップサイト)を国内求人サイトへ組み替えた。
新卒向けサービス、アウルス(UI、UX)、新規事業開発は組み替えず、国内その他事業・子会社のままとした。
主要事業の概況は、以下の通りであった。
国内求人サイトは、コロナ禍により減少した採用需要が、緩やかに回復した。採用市場全体の需給バランスが徐々に逼迫する中、同社は広告宣伝費を投資することで求職者の獲得を強化し、売上高が増加した。
正社員領域では、採用予算の大きい顧客企業が中心となって掲載単価が上昇、採用再開する顧客企業の増加により求人数が増加した。
専門職・管理職などのハイクラス層の採用需要はコロナ前を超える水準まで高まった。
ハイクラス層の採用需要が底堅く推移し、売上高は堅調に増加した。若手・ポテンシャル層は、採用需要の高まりを背景に、業種・職種問わず未経験者の採用ニーズが回復した。同社は営業生産性を高めることで、コロナ前より少ない人員数ながらも、売上高は前期を上回った。
海外事業は、3ヵ月遅れて業績を取り込む。2022年3月期において、注力国であるベトナム、インドの状況は以下の通りであった。インド、ベトナムにおいては、新型コロナウイルス感染症の影響は前期第2四半期(現地の4-6月)以降に受けた。
インドは、IT派遣事業を中心に事業を展開している。コロナ禍の影響も少なく、また世界的なIT需要の高まりもあり、売上高は新型コロナウイルス感染症の拡大前の水準を超えて増加した。
ベトナムは求人サイト・人材紹介を中心に事業を展開している。同国の採用需要は緩やかに回復し、売上高も増加した。第3四半期(現地2021年7-9月)はロックダウンにより一時的な売上高の減少があったが、その後は回復した。
HR-Techにおいては、募集・採用事業(engage)の他、ATS・テスト事業(ゼクウ社(採用・応募管理システム)、オンライン適性テスト等)、入社後フォロー・組織活性化事業(オンライン研修サービス、リテンション対策ツール等)を展開している。
募集・採用事業(engage):売上高1,945百万円(前期比60.1%増)、営業損失444百万円(前期は937百万円の営業損失)となった。利用社数は417千社(2022年3月現在、前年同月は337千社)となった。「engage」で作成された求人数(有料・無料合計)が拡大し、顧客企業による活用が進んだ。この状況を踏まえ、当第4四半期(2022年1-3月)において求職者獲得の強化を目的とした広告宣伝費の先行投資を行い、売上高の成長が加速をはかった。
ATS・テスト事業:当第3四半期累計期間において、売上高1,580百万円となった。企業側の採用人数増加に伴い利用が増加し、売上高が増加した。
入社後フォロー・組織活性化事業:当第3四半期累計期間において売上高394百万円となった。
2023年3月期通期会社予想は、売上高62,000百万円(前期比13.7%増)、営業利益3,085百万円(同68.0%減)、経常利益3,087百万円(同69.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,118百万円(同68.0%減)を見込む。
2022年5月に発表した中期経営計画において、2023年3月期は先行投資期間の位置付けである。注力事業である「engage」「人財プラットフォーム(AMIBI等)」の広告宣伝費の増加などにより、減益を見込む。
2023年3月期においては、1株あたりの年間配当予想を70.1円としている。
以下の説明は、前回計画に基づく説明である。SR社は同社への取材後に説明を見直す方針である。
2020年5月、同社は2019年5月に公表した中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)を取り下げることとした。
新型コロナウイルスによる経済活動の停止、顧客企業の業績悪化、景気後退および採用活動の停滞等により、短期的には同社の業績に大きな影響があると見込んでいる。構造的な人手不足要因等により、コロナ終息後は徐々に採用需要が回復すると同社は想定しているが、新型コロナウイルスの収束時期を予想することは困難であり、現時点で中期経営計画を合理的に算定することも困難である。
この状況を踏まえ、2022年3月期を最終年度とする中期経営計画数値に関しては取り下げる。基本戦略方針に大きな変更はないが、数値算定は困難な状況であり、2022年3月期中に改めて公表するとしている。
2019年5月に発表した中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)では、国内求人サイトにおいては安定的な利益の計上を図りつつ、国内人材紹介でのコンサルタントの増員やHR-Techでの広告宣伝費の投下によって業績成長を図るとしていた。
以下、2019年5月に発表した中期経営計画でのセグメントごとの方針について説明する。
同社は従来、国内求人サイトにおいては売上高成長を重視し、求人サイト市場でのシェア向上を図ってきた。中期経営計画においては、AMBI(年収500万円以上の20代をユーザーとした人材紹介会社向けサイト)を除いて利益成長を重視する。
主力のエン転職では、ネット転職情報サービスの市場が年7-8%成長という前提の下、東京、名古屋、大阪などの都市圏を中心に、年間採用人数が相対的に多い企業に対する営業に注力する。1企業の採用予算に占めるシェア拡大によって、市場の成長を上回る成長を目指し、利益率の向上も図る。同社は2019年3月期に営業体制の再編成を行った。従来の営業体制では、地域別の担当者を配置し、大口顧客に対しては別途担当者を割り当てていた。再編成後は大口以外の顧客を年間広告出稿数によって分類し、出稿数が相対的に多い企業に対しては営業担当を割り当て、出稿数が少ない企業に対しては電話での営業活動を行うなど、効率を重視している。
AMBIにおいては、2018年3月期のサービス開始以来、同社の想定を上回って成長を続けており、2020年3月期において広告宣伝費の投下と人員体制の強化を実施した。これに伴い、2020年3月期において費用の増加があったが、中期的には利益率が上昇する見通しである。
同社の人材紹介の体制は、求職者に対するコンサルタントと企業に対するコンサルタントからなる。中期経営期間においては、企業に対するコンサルタントを増員し、求人案件の獲得を図る。求職者については、同社が有する正社員領域での800万人以上の求職者のデータベースを活用し、効率的な獲得を図る。
売上高は、2020年3月期に実施したコンサルタントの増員とその戦力化によって増収を計画しており、手数料率の変更等は見込んでいない。2020年3月期においては年収の30-35%を手数料として受領する。同社によれば、コンサルタントは、採用後に実際の案件を獲得するまで半年程度を要し、その後約2年間は生産性の向上が続くという。利益面では、コンサルタントの生産性向上により中期的には利益率の向上が続くと同社はみている。
人口増加と経済成長が期待できるベトナムおよびインドでの業績成長に注力する。
ベトナムおよびインドでの事業の成長によって、中期的に二桁の増収を目指す。利益面では、売上高の増加に伴って増益を見込んでいる。
同社は、ベトナムにおいて求人サイトはシェア約80%、人材紹介は売上高で業界1位である。ブランド認知と求職者データベース、取引企業などの顧客基盤を構築済みであり、新拠点の開設によるエリアの拡充やビジネスマン向けの英語やテクノロジーについてのラーニング事業など、サービスを拡充することで、業績成長を目指す。
2019年3月、同社はFFI社を買収した。FFI社は、IT派遣事業において20年の実績を有し、インド国内の代表的なIT企業を顧客に持つほか、3,200人程度のエンジニアを有している。FFI社所属のエンジニアに対し先端テクノロジー技術に関する教育を施し、高単価派遣を行うことで利益率の向上を図る他、同社子会社でインドで人材紹介を行うNEW ERAと連携し、紹介予定派遣(派遣期間の後に派遣先の企業と直接雇用を結ぶことを前提にした派遣)を行う。
HR-Techには、engageおよび関連サービス販売が含まれる。engageでは顧客企業に対して採用ページのフォーマットを提供する。同社のフォーマットで作成された採用ページは、求人広告として求人専門の検索エンジンの「Indeed」、「Google しごと検索」などのクローリングサイト(プログラムがインターネット上のリンクを辿ってWebサイトを巡回し、Webページ上の情報を収集するサイト)に自動掲載される。この他、求人広告に対する応募者の選考状況管理等を無料で行うことが出来る。また、入社後の早期離職を防ぐフォローツール「HR OnBoard」やオンライン適性検査「Talent Analytics(タレントアナリティクス)」の利用が可能である。今後、engageに採用関連サービスを中心に、入社・労務管理、社員教育などの周辺領域のサービスを付加する方針である。
同社は、engageの主要顧客について、相対的に年間採用人数の少ない地方の中小企業をターゲットとしている。同社の社員による訪問営業は行うことなく、新聞広告等により会員企業の獲得を図ることで、営業活動に人手を要する国内求人サイトでは収益化が困難な顧客層への展開が可能となる。「engage」の利用社数は、2020年3月末時点で270千社(前期末比80千社増)であった。
2019年4月以降は、同社は、「エン転職」や「エンバイト」などの求人サイトのPR欄等に掲載することで応募者数の増加を見込める有料プランの提供を行い、収益化を図っている。有料プランでは、求職者からの応募毎に課金が発生し、1応募当たりの料金は職種などにより異なるが、平均で10千円程度である。
中期的に、主に有料プランの利用増による売上高の増加を図る。engageの売上高の構成要素は、有料利用社数、1社当たり応募数、1応募当たり単価であり、前期は有料利用社数の母数となる利用社数の増加に注力し広告宣伝を実施した結果、2020年3月末時点で利用社数が270千社(前期末比80千社増)となった。2021年3月期以降は、engageの介して得られる顧客企業の採用動向を踏まえ、無料で利用する企業に対して有料オプションの販売活動を実施し、有料オプションの販売拡大を図るとしている。
費用については、大半が広告宣伝費であるが、一部コールセンターの運営費もある。引き続き、広告宣伝費、コールセンターの運営費を計上する他、入社・労務管理、社員教育などの周辺領域での新サービスの付加に伴い費用が発生する。
2021年3月期においては、大規模リニューアルの実施、営業体制の見直し、求人サイト「エンゲージ」の開設を実施し、engageのサービス利用の推進、機能強化を図った。
2020年9月において、同社はengageの大規模なリニューアルを実施し、有料版engageの他社サイトでの露出の増加と課金方法の変更を行った。このリニューアルによって、有利用社数の増加のペースの加速と1社あたり応募数の増加を図り、求職者の応募の増加に繋げることで業績成長を目指すとしている。
有料版engageの他社サイトでの露出の増加:有料版のengageを利用すると同社求人サイトへの求人掲載に加えて、LINEキャリアなどの他社求人サイトやIndeedをはじめとしたアグリゲーションサイトの有料枠にも掲載され、露出を増加させることが可能となった。この結果、無料版engageと比較した有料版engageのPV数は約23倍となった。
課金方法の変更:従来の課金方法では、有料版の申し込み時に顧客企業からの入金等は無く、求人への応募があった月に、顧客が同社に料金を支払うこととなっていた。新しい課金方法では、顧客企業は最低5万円の有料利用前のチャージが必要で、求人への応募発生時には当該チャージ金額から同社に料金が引き落とされる仕組みとした。同社によれば、新しい課金方法では毎月の支払がなくなることから、顧客は採用予算の管理が容易になるという。同社は、課金方法の変更によって1社当たりの応募数の引き上げを図る。
同社は当第4四半期においてengageの有料利用の促進のための営業体制を見直し、中小企業に対する架電を中心とした営業活動から、企業からの問い合わせ対応を中心とした営業活動に切り替えた。これと同時に、問い合わせ増加のための施策として、オンラインセミナーやメールによるマーケティング活動に注力する。同社は営業体制の見直しにより人員数を抑制しつつ、有料利用社数の増加させる営業体制の構築ができたとしている。
2021年3月には「engage」で作成された求人を集約した求人サイト「エンゲージ」をオープンした。正社員だけではなく、アルバイト・パート求人やインターンなどの求人を掲載し、国内最大級となる約10万社の求人を掲載する求人サイトとして、スタートした。
2020年5月に取り下げた中期経営計画において、同社は20,000百万円規模のM&A・出資枠を設定していた。国内においては、テクノロジー関連企業とのM&A・出資により、HR-Techを中心に成長を加速を目指す。海外においては、ベトナム・インドの強化につながるM&Aを行う他、国を問わず、同社のテクノロジー強化につながるM&Aを実施する。
2019年4月以降、2021年3月までに、総額3,150百万円のM&Aおよび出資を実施した。内訳は、M&Aによる投資が1,170百万円、出資が1,980百万円であった。
同社は、インターネット上での各種求人広告サイトの運営を主力事業として展開している他、人材紹介を行っている。インターネット求人広告のパイオニア的存在である。
セグメントは国内求人サイト、国内人材紹介、海外事業、HR-Techから構成されている。国内求人サイトを安定収益源としつつ、国内人材紹介、海外事業、HR-Techでの業績成長を図る。
同社の顧客は、一般企業と人材関連企業(人材紹介会社、人材派遣会社)に大別される。また、同社の提供サービスはインターネット上の求人サイトと人材紹介に分けられる。
一般企業が同社のインターネットサイト(「エン転職」)を利用する際は、同社のサイトを通じて直接求職者を募集する格好となる。同社は企業に対して求人広告を企画・提案し、取材に基づいた詳細原稿を作成した上で、同社サイトに企業の求人情報を掲載し、掲載料を得ている。一方、求職者には無料で求人情報を提供している。
人材関連企業に対して、同社はインターネット上にある同社情報サイト(「ミドルの転職」、「AMBI」、「エン派遣」、「エンバイト」、「ウィメンズワーク」)の広告枠を販売し、会員である求職者には無料で人材関連会社と人材関連会社の有する求人情報を提供している。
一般企業の求人広告は同社が作成している。一方、人材関連企業の情報、人材関連企業が有する求人情報は人材関連企業が作成している。主力の「エン転職」の広告は1クール=4週間掲載である。プランにより広告掲載料は異なるものの、求人広告はすべて同社が作成する。各サイトの広告掲載料の平均単価は、プランの販売構成比によって変動する。
2010年8月より、グローバル企業向けにバイリンガル人材の紹介を行うEWJ社を子会社化、EWJ社は国内で活動するグローバル企業を中心に人材紹介サービスを展開している。2013年4月からはエン・ジャパン株式会社も人材紹介サービス「エン エージェント」を開始、同社の人材紹介事業における注力商品となっている。
主要経営指標の推移
注:表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意
注:(*)2012年3月期は2011年1月1日から2012年3月31日まで15ヵ月の変則決算
注:2013年10月1日に1:100の株式分割を、2016年4月1日付けで1:2の株式分割を行っている
注:配当性向の算定に用いる1株当たり当期純利益について、自己株式を除く株数で親会社株主に帰属する当期純利益を除しているが、自己株式には株式給付信託(J-ESOP)分を含めて算定している(2,397千株)。実際には株式給付信託分についても配当を行うため、これを加味した配当性向は、2018年3月期は35.0%、2019年3月期は37.0%、2020年3月期は50.0%となる。
直近更新内容
新中期経営計画および剰余金の配当に関して発表
エン・ジャパン株式会社は、新中期経営計画の概要に関して発表した。
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同社は、2022年3月期通期決算開示時に、新たに2023年3月期を初年度とする5ヵ年の新中期経営計画を発表した。
基本方針
財務基本方針
保有資金は成長投資(M&A)を優先しつつ、状況により自己株式取得等の還元を検討する。新中計における先行投資強化の3年間は、前期(2022年3月期)水準の配当を維持(70.1 円)し、その後、配当性向50%へ戻す。
同日、同社は剰余金の配当に関して発表した。
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2022年3月期の純利益額は、会社予想を下回る結果となった。これにより、1株あたりの年間配当額を従来の配当予想から2.4円減額し、70.1円に修正した。
代表取締役の異動に関して発表
エン・ジャパン株式会社は、代表取締役の異動に関して発表した。
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異動の内容
異動予定日
2022年3月31日
業績動向
四半期業績動向
*同社は2022年3月期において、国内その他事業・子会社セグメントのサービスをHR-Techを中心に各セグメントへ組み換えた。上表の2022年3月期の前年同期比は、組み換え前の前年同期実績に対する増減率である。
2022年3月期通期実績(2022年5月12日発表)
売上高は、主に国内求人サイト及び海外事業が順調に回復し前期比で増収となった。
営業利益以下の各利益は、費用の増加はあったが増収効果によって増益となった。費用は、インドのIT派遣事業の増収に伴い売上原価が増加したこと、求人需要の回復に連動した国内求人サイトへの広告宣伝強化およびengageやAMBIなど注力事業へ広告宣伝費を先行投資したことなどから増加した。
同社は当第1四半期において、国内その他事業・子会社セグメントのサービスをHR-Techを中心に各セグメントへ組み換えた。以下の前期比は、組み換え前の前期実績に対する増減率である。
国内その他事業・子会社のATS・テスト事業(ゼクウ社(採用・応募管理システム)、オンライン適性テスト等)、入社後フォロー・組織活性化事業(オンライン研修サービス、リテンション対策ツール等)を、HR-Techへ組み替えた。
国内その他事業・子会社のブロカント社(フリーランス向けサイト)、アイタンクジャパン社(インターンシップサイト)を国内求人サイトへ組み替えた。
新卒向けサービス、アウルス(UI、UX)、新規事業開発は組み替えず、国内その他事業・子会社のままとした。
主要事業の概況は、以下の通りであった。
国内求人サイト
国内求人サイトは、コロナ禍により減少した採用需要が、緩やかに回復した。採用市場全体の需給バランスが徐々に逼迫する中、同社は広告宣伝費を投資することで求職者の獲得を強化し、売上高が増加した。
正社員領域では、採用予算の大きい顧客企業が中心となって掲載単価が上昇、採用再開する顧客企業の増加により求人数が増加した。
専門職・管理職などのハイクラス層の採用需要はコロナ前を超える水準まで高まった。
国内人材紹介
ハイクラス層の採用需要が底堅く推移し、売上高は堅調に増加した。若手・ポテンシャル層は、採用需要の高まりを背景に、業種・職種問わず未経験者の採用ニーズが回復した。同社は営業生産性を高めることで、コロナ前より少ない人員数ながらも、売上高は前期を上回った。
海外事業
海外事業は、3ヵ月遅れて業績を取り込む。2022年3月期において、注力国であるベトナム、インドの状況は以下の通りであった。インド、ベトナムにおいては、新型コロナウイルス感染症の影響は前期第2四半期(現地の4-6月)以降に受けた。
インドは、IT派遣事業を中心に事業を展開している。コロナ禍の影響も少なく、また世界的なIT需要の高まりもあり、売上高は新型コロナウイルス感染症の拡大前の水準を超えて増加した。
ベトナムは求人サイト・人材紹介を中心に事業を展開している。同国の採用需要は緩やかに回復し、売上高も増加した。第3四半期(現地2021年7-9月)はロックダウンにより一時的な売上高の減少があったが、その後は回復した。
HR-Tech
HR-Techにおいては、募集・採用事業(engage)の他、ATS・テスト事業(ゼクウ社(採用・応募管理システム)、オンライン適性テスト等)、入社後フォロー・組織活性化事業(オンライン研修サービス、リテンション対策ツール等)を展開している。
募集・採用事業(engage):売上高1,945百万円(前期比60.1%増)、営業損失444百万円(前期は937百万円の営業損失)となった。利用社数は417千社(2022年3月現在、前年同月は337千社)となった。「engage」で作成された求人数(有料・無料合計)が拡大し、顧客企業による活用が進んだ。この状況を踏まえ、当第4四半期(2022年1-3月)において求職者獲得の強化を目的とした広告宣伝費の先行投資を行い、売上高の成長が加速をはかった。
ATS・テスト事業:当第3四半期累計期間において、売上高1,580百万円となった。企業側の採用人数増加に伴い利用が増加し、売上高が増加した。
入社後フォロー・組織活性化事業:当第3四半期累計期間において売上高394百万円となった。
今期会社予想
注:表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意
注:表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意
2023年3月期通期会社予想は、売上高62,000百万円(前期比13.7%増)、営業利益3,085百万円(同68.0%減)、経常利益3,087百万円(同69.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益2,118百万円(同68.0%減)を見込む。
2022年5月に発表した中期経営計画において、2023年3月期は先行投資期間の位置付けである。注力事業である「engage」「人財プラットフォーム(AMIBI等)」の広告宣伝費の増加などにより、減益を見込む。
配当予想
2023年3月期においては、1株あたりの年間配当予想を70.1円としている。
中期経営計画
同社は、2022年3月期通期決算開示時に、新たに2023年3月期を初年度とする5ヵ年の新中期経営計画を発表した。
基本方針
財務基本方針
保有資金は成長投資(M&A)を優先しつつ、状況により自己株式取得等の還元を検討する。新中計における先行投資強化の3年間は、前期(2022年3月期)水準の配当を維持(70.1 円)し、その後、配当性向50%へ戻す。
以下の説明は、前回計画に基づく説明である。SR社は同社への取材後に説明を見直す方針である。
2020年5月、同社は2019年5月に公表した中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)を取り下げることとした。
新型コロナウイルスによる経済活動の停止、顧客企業の業績悪化、景気後退および採用活動の停滞等により、短期的には同社の業績に大きな影響があると見込んでいる。構造的な人手不足要因等により、コロナ終息後は徐々に採用需要が回復すると同社は想定しているが、新型コロナウイルスの収束時期を予想することは困難であり、現時点で中期経営計画を合理的に算定することも困難である。
この状況を踏まえ、2022年3月期を最終年度とする中期経営計画数値に関しては取り下げる。基本戦略方針に大きな変更はないが、数値算定は困難な状況であり、2022年3月期中に改めて公表するとしている。
2019年5月に発表した中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)では、国内求人サイトにおいては安定的な利益の計上を図りつつ、国内人材紹介でのコンサルタントの増員やHR-Techでの広告宣伝費の投下によって業績成長を図るとしていた。
以下、2019年5月に発表した中期経営計画でのセグメントごとの方針について説明する。
国内求人サイト
同社は従来、国内求人サイトにおいては売上高成長を重視し、求人サイト市場でのシェア向上を図ってきた。中期経営計画においては、AMBI(年収500万円以上の20代をユーザーとした人材紹介会社向けサイト)を除いて利益成長を重視する。
主力のエン転職では、ネット転職情報サービスの市場が年7-8%成長という前提の下、東京、名古屋、大阪などの都市圏を中心に、年間採用人数が相対的に多い企業に対する営業に注力する。1企業の採用予算に占めるシェア拡大によって、市場の成長を上回る成長を目指し、利益率の向上も図る。同社は2019年3月期に営業体制の再編成を行った。従来の営業体制では、地域別の担当者を配置し、大口顧客に対しては別途担当者を割り当てていた。再編成後は大口以外の顧客を年間広告出稿数によって分類し、出稿数が相対的に多い企業に対しては営業担当を割り当て、出稿数が少ない企業に対しては電話での営業活動を行うなど、効率を重視している。
AMBIにおいては、2018年3月期のサービス開始以来、同社の想定を上回って成長を続けており、2020年3月期において広告宣伝費の投下と人員体制の強化を実施した。これに伴い、2020年3月期において費用の増加があったが、中期的には利益率が上昇する見通しである。
国内人材紹介
同社の人材紹介の体制は、求職者に対するコンサルタントと企業に対するコンサルタントからなる。中期経営期間においては、企業に対するコンサルタントを増員し、求人案件の獲得を図る。求職者については、同社が有する正社員領域での800万人以上の求職者のデータベースを活用し、効率的な獲得を図る。
売上高は、2020年3月期に実施したコンサルタントの増員とその戦力化によって増収を計画しており、手数料率の変更等は見込んでいない。2020年3月期においては年収の30-35%を手数料として受領する。同社によれば、コンサルタントは、採用後に実際の案件を獲得するまで半年程度を要し、その後約2年間は生産性の向上が続くという。利益面では、コンサルタントの生産性向上により中期的には利益率の向上が続くと同社はみている。
海外事業
人口増加と経済成長が期待できるベトナムおよびインドでの業績成長に注力する。
ベトナムおよびインドでの事業の成長によって、中期的に二桁の増収を目指す。利益面では、売上高の増加に伴って増益を見込んでいる。
ベトナム
同社は、ベトナムにおいて求人サイトはシェア約80%、人材紹介は売上高で業界1位である。ブランド認知と求職者データベース、取引企業などの顧客基盤を構築済みであり、新拠点の開設によるエリアの拡充やビジネスマン向けの英語やテクノロジーについてのラーニング事業など、サービスを拡充することで、業績成長を目指す。
インド
2019年3月、同社はFFI社を買収した。FFI社は、IT派遣事業において20年の実績を有し、インド国内の代表的なIT企業を顧客に持つほか、3,200人程度のエンジニアを有している。FFI社所属のエンジニアに対し先端テクノロジー技術に関する教育を施し、高単価派遣を行うことで利益率の向上を図る他、同社子会社でインドで人材紹介を行うNEW ERAと連携し、紹介予定派遣(派遣期間の後に派遣先の企業と直接雇用を結ぶことを前提にした派遣)を行う。
HR-Tech
HR-Techには、engageおよび関連サービス販売が含まれる。engageでは顧客企業に対して採用ページのフォーマットを提供する。同社のフォーマットで作成された採用ページは、求人広告として求人専門の検索エンジンの「Indeed」、「Google しごと検索」などのクローリングサイト(プログラムがインターネット上のリンクを辿ってWebサイトを巡回し、Webページ上の情報を収集するサイト)に自動掲載される。この他、求人広告に対する応募者の選考状況管理等を無料で行うことが出来る。また、入社後の早期離職を防ぐフォローツール「HR OnBoard」やオンライン適性検査「Talent Analytics(タレントアナリティクス)」の利用が可能である。今後、engageに採用関連サービスを中心に、入社・労務管理、社員教育などの周辺領域のサービスを付加する方針である。
同社は、engageの主要顧客について、相対的に年間採用人数の少ない地方の中小企業をターゲットとしている。同社の社員による訪問営業は行うことなく、新聞広告等により会員企業の獲得を図ることで、営業活動に人手を要する国内求人サイトでは収益化が困難な顧客層への展開が可能となる。「engage」の利用社数は、2020年3月末時点で270千社(前期末比80千社増)であった。
2019年4月以降は、同社は、「エン転職」や「エンバイト」などの求人サイトのPR欄等に掲載することで応募者数の増加を見込める有料プランの提供を行い、収益化を図っている。有料プランでは、求職者からの応募毎に課金が発生し、1応募当たりの料金は職種などにより異なるが、平均で10千円程度である。
中期的に、主に有料プランの利用増による売上高の増加を図る。engageの売上高の構成要素は、有料利用社数、1社当たり応募数、1応募当たり単価であり、前期は有料利用社数の母数となる利用社数の増加に注力し広告宣伝を実施した結果、2020年3月末時点で利用社数が270千社(前期末比80千社増)となった。2021年3月期以降は、engageの介して得られる顧客企業の採用動向を踏まえ、無料で利用する企業に対して有料オプションの販売活動を実施し、有料オプションの販売拡大を図るとしている。
費用については、大半が広告宣伝費であるが、一部コールセンターの運営費もある。引き続き、広告宣伝費、コールセンターの運営費を計上する他、入社・労務管理、社員教育などの周辺領域での新サービスの付加に伴い費用が発生する。
2021年3月期においては、大規模リニューアルの実施、営業体制の見直し、求人サイト「エンゲージ」の開設を実施し、engageのサービス利用の推進、機能強化を図った。
大規模リニューアルの実施
2020年9月において、同社はengageの大規模なリニューアルを実施し、有料版engageの他社サイトでの露出の増加と課金方法の変更を行った。このリニューアルによって、有利用社数の増加のペースの加速と1社あたり応募数の増加を図り、求職者の応募の増加に繋げることで業績成長を目指すとしている。
有料版engageの他社サイトでの露出の増加:有料版のengageを利用すると同社求人サイトへの求人掲載に加えて、LINEキャリアなどの他社求人サイトやIndeedをはじめとしたアグリゲーションサイトの有料枠にも掲載され、露出を増加させることが可能となった。この結果、無料版engageと比較した有料版engageのPV数は約23倍となった。
課金方法の変更:従来の課金方法では、有料版の申し込み時に顧客企業からの入金等は無く、求人への応募があった月に、顧客が同社に料金を支払うこととなっていた。新しい課金方法では、顧客企業は最低5万円の有料利用前のチャージが必要で、求人への応募発生時には当該チャージ金額から同社に料金が引き落とされる仕組みとした。同社によれば、新しい課金方法では毎月の支払がなくなることから、顧客は採用予算の管理が容易になるという。同社は、課金方法の変更によって1社当たりの応募数の引き上げを図る。
営業体制の見直し
同社は当第4四半期においてengageの有料利用の促進のための営業体制を見直し、中小企業に対する架電を中心とした営業活動から、企業からの問い合わせ対応を中心とした営業活動に切り替えた。これと同時に、問い合わせ増加のための施策として、オンラインセミナーやメールによるマーケティング活動に注力する。同社は営業体制の見直しにより人員数を抑制しつつ、有料利用社数の増加させる営業体制の構築ができたとしている。
求人サイト「エンゲージ」の開設
2021年3月には「engage」で作成された求人を集約した求人サイト「エンゲージ」をオープンした。正社員だけではなく、アルバイト・パート求人やインターンなどの求人を掲載し、国内最大級となる約10万社の求人を掲載する求人サイトとして、スタートした。
その他:M&A・出資方針
2020年5月に取り下げた中期経営計画において、同社は20,000百万円規模のM&A・出資枠を設定していた。国内においては、テクノロジー関連企業とのM&A・出資により、HR-Techを中心に成長を加速を目指す。海外においては、ベトナム・インドの強化につながるM&Aを行う他、国を問わず、同社のテクノロジー強化につながるM&Aを実施する。
2019年4月以降、2021年3月までに、総額3,150百万円のM&Aおよび出資を実施した。内訳は、M&Aによる投資が1,170百万円、出資が1,980百万円であった。
事業内容
ビジネスの概要
同社は、インターネット上での各種求人広告サイトの運営を主力事業として展開している他、人材紹介を行っている。インターネット求人広告のパイオニア的存在である。
セグメントは国内求人サイト、国内人材紹介、海外事業、HR-Techから構成されている。国内求人サイトを安定収益源としつつ、国内人材紹介、海外事業、HR-Techでの業績成長を図る。
ビジネスモデル
同社の顧客は、一般企業と人材関連企業(人材紹介会社、人材派遣会社)に大別される。また、同社の提供サービスはインターネット上の求人サイトと人材紹介に分けられる。
求人サイト
一般企業が同社のインターネットサイト(「エン転職」)を利用する際は、同社のサイトを通じて直接求職者を募集する格好となる。同社は企業に対して求人広告を企画・提案し、取材に基づいた詳細原稿を作成した上で、同社サイトに企業の求人情報を掲載し、掲載料を得ている。一方、求職者には無料で求人情報を提供している。
人材関連企業に対して、同社はインターネット上にある同社情報サイト(「ミドルの転職」、「AMBI」、「エン派遣」、「エンバイト」、「ウィメンズワーク」)の広告枠を販売し、会員である求職者には無料で人材関連会社と人材関連会社の有する求人情報を提供している。
一般企業の求人広告は同社が作成している。一方、人材関連企業の情報、人材関連企業が有する求人情報は人材関連企業が作成している。主力の「エン転職」の広告は1クール=4週間掲載である。プランにより広告掲載料は異なるものの、求人広告はすべて同社が作成する。各サイトの広告掲載料の平均単価は、プランの販売構成比によって変動する。
人材紹介
2010年8月より、グローバル企業向けにバイリンガル人材の紹介を行うEWJ社を子会社化、EWJ社は国内で活動するグローバル企業を中心に人材紹介サービスを展開している。2013年4月からはエン・ジャパン株式会社も人材紹介サービス「エン エージェント」を開始、同社の人材紹介事業における注力商品となっている。