同社は、主に自社開発パッケージ製品を主体としたソフトウェアソリューションを販売している。金融機関の顧客が多く、中核製品はクレジットカード取引処理、ローレイテンシー(レイテンシーとは配信データを処理するための遅延時間のこと)のネットワークセキュリティおよびデータ保護に焦点を当てている。大日本印刷株式会社(東証PRM 7912)が同社株式の50%強を保有する。
主に金融業界の顧客を対象として、ソフトウェア開発を中心にハードウェアやソフトウェアを統合、付加価値をつけたシステムを納入し、保守サービスを行う。同社の情報処理技術は、主にクレジットカード決済のオンラインシステムに使われており、24時間365日、リアルタイムで確実なカード取引の処理に利用されている。以下の3つの中核製品を持つ。まず、クレジットカードの決済処理分野において国内トップシェアを誇る自社製パッケージソフトウェア「NET+1」である。同製品は日本の主なクレジットカード会社のオーソリゼーション(加盟店からクレジットカード会社への利用者信用照会・承認)システムの約70%に関与している。また、クレジットカードの不正利用を検知・防止するソフトウェアシステム「ACEPlus」、Net+1の機能を搭載し、スマートフォン決済のネットワーク接続機能などを提供する「OnCore」などの自社製品を保有している。
また、特定の業界、業種の顧客に限らず、情報セキュリティ対策の自社開発パッケージソフトウェアと、サイバーセキュリティ対策の他社製(仕入)パッケージソフトウェアを中心に付加価値の高いシステムを納入し、保守サービスを行う。情報セキュリティ対策の自社製品「CWAT」、サイバーセキュリティ対策他社製品「Traps」他、多数の製品を保有している。
同社は、2021年6月期より、開示セグメントを従来の2セグメント(売上高の約9割および営業利益のほぼ全てを稼ぎ出す主力事業の「金融システムソリューション事業」と、もう1つの柱である「プロダクトソリューション事業」)から単一セグメントに変更した。事業セグメントに分散していた人的資源と知的資源を統合的に運用することにより営業活動を活性化させることと、新製品・サービスの開発を促進することを目的として、組織改正を行い、経営管理体制を変更したことが、セグメント変更の背景。
2021年6月期実績:売上高11,188万円(前期比2.4%増)、営業利益1,131百万円(同9.1%増)、経常利益1,171百万円(同9.0%増)、当期純利益841百万円(同10.4%増)。カテゴリ別売上高は、システム開発5,272百万(同9.0%減)、保守1,357百万円(同8.9%増)、同社製品335百万円(同37.3%増)、クラウドサービス942百万円(同13.8%増)、ハードウェア1,638百万円(同7.3%増)、他社製品509百万円(同131.4%増)、セキュリティ対策製品1,131百万円(同6.4%増)。
2022年6月期の会社計画:売上高12,000百万円(前年比7.3%増)、営業利益1,320百万円(同16.8%増)、経常利益1,360百万円(同16.1%増)、当期純利益940百万円(同11.8%増)である。2021年8月4日、同社は、中期事業計画を見直し新計画として開示した(詳細は経営戦略と中期見通しの項を参照)。2021年6月期は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けず、同社のシステム開発業務やシステム運用業務の継続性に対する大きな影響ない。2021年8月時点においては同社の生産活動は順調に推移している。
新中期事業計画:同社は、2020年8月5日に開示した中期事業計画(旧計画)を見直し、2022年6月期から2024年6月期に至る中期事業計画(新計画)を策定した。 最終年度となる2024年6月期の目標値は、売上高15,000百万円(2021年6月期実績比34.1%増)、営業利益2,250百万円(同99.1%増)、営業利益率15.0%(2021年6月期は10.1%)である。同社は、従来の「フロー型」を中心とした収益形態だけでなく、持続的な収益性が期待できる「ストック型」のビジネスを加えることで、安定的な収益基盤の拡大を進めている。金融業界以外の事業会社が、商圏拡大のために顧客向けに新規に決済サービスや金融サービスを提供する動きがある。また、同社の顧客企業が、新規事業の迅速な起ち上げのためにクラウドサービスを利用する等の動きも見られる。同社は、これまで、クレジットカードの業務のひとつであるアクワイアリング(加盟店管理)業務のシステムを中心に、クレジットカードの不正検知業務など、従来オンプレミス型で提供していたシステムをクラウド利用型へ展開してきた。顧客は、同社のサービスを利用することで、大規模な初期投資を必要とせずに事業を迅速に起ち上げることができる。そのため、金融業界以外の事業会社や、従来カード事業を行っていなかった企業のカード事業への新規参入を促している。
クラウドサービス事業は、同社にとっては、新規顧客獲得と事業規模拡大の重要な事業に成長している。同社は同事業について、2022年6月期の収益黒字化の見込み、2024年6月期までに同社の主要な収益源としての成長が期待している。また、同社は、これまで金融業界の開発業務で培った知識と経験を利用して、金融業界以外の企業向けに新製品を開発、新市場の開拓にも挑戦している。大量データのリアルタイム、高速処理を基盤にする同社の技術で、異業種の業務における潜在的な課題を発見し、解決することで新市場を開拓し、新しい収益の柱として育成するとしている。
従来のオンプレミスでのプロダクト提供に加えて、クラウドを積極活用したITサービスや業務サービスの提供により、『クレジット決済システムの開発会社』から、『決済、金融、セキュリティ分野を含む、企業のビジネスリライアビリティを支えるITサービス会社』となることを目指している。ここで、ビジネスリライアビリティとは、顧客事業の信頼性および同社事業の信頼性を高め続けることを言う。
SR社では、同社の強みを、フロントエンドクレジットカード市場での圧倒的なポジションと、大日本印刷社との協力、の2点だと考えている。一方、弱みは、スケールメリットが働く市場での規模の小ささと、比較的弱い販売チャネル、にあると考えている。(後述の「SW(Strengths, Weaknesses)分析」の項参照)
株式会社インテリジェント ウェイブは、MSSP 型セキュリティインテリジェンスレポートサービス「IWI Security Intelligence Alert (ISIA)」の提供開始に関して発表した。(リリース文へのリンクはこちら)
サイバーセキュリティ対策を取巻く状況は刻々と変化しており、特にサイバー攻撃の手法は常に進化を続けている。企業は攻撃者による情報搾取など事業上の脅威に対策するために、セキュリティに関する脅威情報をリアルタイムに調査・収集・分析するべく、セキュリティインテリジェンス情報源の活用が急務となっている。しかしながら、セキュリティインテリジェンスの活用は、幅広い業務の知識や実務経験、対策の検討および実行といった、高いスキルや大きなワークロードを必要とする。
「IWI Security Intelligence Alert」は、このような状況に対し、通常は企業の組織内で実施する人材確保や育成、体制づくりにかかる負担を軽減する。顧客に代わり、特定のセキュリティ対策に必要となる脅威検知に特化した調査を実施し、検出した脅威情報のみを顧客に提供するため、対策のために要するワークロードも低減可能である。脅威発生を検出した際の対策・対応をシンプルかつリーズナブルに実現する。
セキュリティインテリジェンスを積極活用したアクティブディフェンスの運用実現を検討中の企業や、そういった体制を実現する事は現状困難でも、何らかの対策を必要と感じている企業など、特にスモールスタートで対策を実施したい企業での活用に向いているとしている。
「IWI Security Intelligence Alert」は脅威検知能力の源泉として、レコ―デッド・フューチャー・ジャパン株式会社が提供するセキュリティインテリジェンスを調査に活用している。
本サービスでは、2つのユースケースに対応した調査代行サービスを提供する。
クレデンシャル情報漏洩報告サービス
ダークウェブなどへ漏洩したクレデンシャル情報を悪用した不正アクセスを防止するために、インターネット上に漏洩しているドメインに紐づくクレデンシャル情報を調査・報告。
フィッシングドメイン報告サービス
正規のサービスドメインの類似ドメインを悪用し、顧客情報やマルウェア配布などを行うフィッシングサイトを検知し報告。追加オプションとしてフィッシングサイトのテイクダウン支援サービスもご提供。
2022年6月期第3四半期累計実績:売上高7,835万円(前年同期比2.9%減)、営業利益944百万円(同39.1%増)、経常利益965百万円(同38.5%増)、四半期純利益659百万円(同39.9%増)。
進捗率:2022年6月期通期会社計画に対する進捗率は売上高65.3%(2021年6月期通期実績に対する前年同期実績72.1%)、営業利益71.5%(同60.0%)、経常利益70.9%(同59.5%)、四半期純利益70.1%(同56.0%)。2022年6月期通期会社計画に変更はない。
前年同期比2.9%減収:カテゴリ別売上高は、システム開発3,859百万(同4.0%増)、保守1,111百万円(同12.0%増)、同社製品319百万円(同19.5%増)、クラウドサービス793百万円(同13.0%増)、ハードウェア829百万円(同38.1%減)、他社製品237百万円(同45.0%減)、セキュリティ対策製品683百万円(同9.8%増)。システム開発、保守、クラウドサービスなどは前年同期比増収となったが、ハードウェアと他社製品が同減収となった。ハードウエアは、前年同期と比較して当第3四半期まではサーバーなどの販売案件数が少なく減収となった。しかし、当第4四半期には大型案件の売上計上を予定しており、通期では増収となる見込みとのこと。システム開発業務の売上高は、既存顧客と新規顧客向けの案件によって増収となった。開発業務は順調に推移しており、品質向上の取組みが収益力の向上に寄与した。クラウドサービス事業は、新規顧客向けのサービス開始によって売上高も増加し好調に推移した。
同39.1%営業増益:システム開発業務や保守業務、クラウドサービス事業の収益性向上、ハードウェア販売に利益率の高い案件があったことなどが寄与した。売上総利益率は前年同期比5.4%ポイント改善の32.1%、販管費率は同1.7%ポイント上昇の20.0%となり、営業利益率は同3.6%ポイント改善の12.0%となった。当第3四半期(3か月)では同70.3%の増益となった。
2022年6月期は現中期経営計画の初年度となる。最終年度2024年6月期の目標値は、売上高15,000百万円(2021年6月期実績比34.1%増)、営業利益2,250百万円(同99.1%増)、営業利益率15.0%(2021年6月期は10.1%)である。売上高15,000百万円と営業利益率15.0%の目標を目指すことを、同社は「15ALL(フィフティーンオール)」と称している。15ALLを通過点として、長期的には更なる成長を目指すとしている。
中期計画の主要な推進力であるクラウドサービス事業は、売上高の拡大と業務効率化の推進により、順調に利益を伸ばしている。同社のクラウドサービスは、既存の金融事業会社だけでなく、新規にカード事業や決済事業を起ち上げる事業会社にとって有力な選択肢のひとつになっているとのこと。当第1四半期に約1,000百万円を計上した新規受注は、第2四半期は1,876百万円、第3四半期は273百万円となった。上半期は、複数の大型案件の受注が重なったため受注高が大きく伸びた。これにより、当第3四半期累計期間のクラウドサービス事業の受注高は3,150百万円、受注残高は4,210百万円となった。これらの受注の売上寄与は2023年6月期以降の予定であり、2023年6月期の売上高は約2,000百万円、2024年6月期の売上高は2,500百万円を計画している。
同社の主要な事業領域であるクレジットカード業界においては、大手カード会社のカードショッピング取扱高は前年同期実績を上回って推移しており、新型コロナウイルス感染症の影響から着実に回復しつつあると同社はみている。また、大手の金融機関やカード会社だけでなく、個人や中小企業向けの金融、決済サービスを展開する事業会社や、そうした企業にサービスを提供する事業会社など、いわゆるFintechサービスの普及も始まっている。こうした環境変化が、同社の事業機会となっている。
2022年6月期より、カテゴリ分類を細分化し、売上カテゴリを再定義して運用している。ストック/フローの類型による売上高の分類を従来より詳細に表示するために、売上カテゴリを見直した。契約の形態や業務の実態等から判断して、定常的に一定規模の売上高を計上できる案件をストック、そうではないものをフローとして分類した。ストック型売上として典型的なものは、クラウドサービス事業に係るシステムの利用料やシステム運用の対価、同社製品や他社製品の保守業務の対価である。クラウドサービスの利用料は、「サービス自社」に分類される。フロー型売上として典型的なものは、受託開発業務の対価や、自社製品、他社製品の販売対価である。
過去の四半期実績と通期実績は、過去の業績と財務諸表へ
新中期経営計画(2022年6月期~2024年6月期)の1年目となる2022年6月期の会社計画は、売上高12,000百万円(前年比7.3%増)、営業利益1,320百万円(同16.8%増)、経常利益1,360百万円(同16.1%増)、当期純利益940百万円(同11.8%増)である。営業利益率11.0%(前期比0.9%ポイント上昇)を目指す。
2021年8月4日、同社は、中期事業計画を見直し新計画として開示した(詳細は経営戦略と中期見通しの項を参照)。2021年6月期は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けず、同社のシステム開発業務やシステム運用業務の継続性に対する大きな影響ない。2021年8月時点においては同社の生産活動は順調に推移している。
クラウドサービスは、当第2四半期に四半期売上総利益が黒字化した。2022年6月期通期でも黒字化すると同社は見込んでいる。クラウドサービスは中期の成長ドライバーと同社は位置付けている。
売上高会社予想1,130百万円:第1四半期会社予想240百万円(前年同期比7.1%増)、第2四半期会社248百万円(同0.8%増)に対して、実績はそれぞれ243百万円(同8.5%増)、250百万円(同1.6%増)で着地した。第3四半期会社予想は296百万円(同27.6%増)、第4四半期会社予想は343百万円(同43.5%増)。
売上総利益会社予想80百万円:第1四半期会社予想△18百万円(前年同期は△37百万円)、第2四半期会社予想18百万円(同△12百万円)に対して、実績はそれぞれ△19百万円、31百万円で着地した。第3四半期会社予想は46百万円(同△28百万円)、第4四半期会社予想は33百万円(同3百万円)。
新収益認識基準の適用により、従来完成基準により収益計上していた案件のうち、一定の契約単位を超える案件については進行基準の適用となる。2022年6月期においては、基準を超える大型開発案件がなく、売上高および利益に与える影響は軽微とのこと。
同社は、2020年8月5日に開示した中期事業計画(旧計画)を見直し、2022年6月期から2024年6月期に至る中期事業計画(新計画)「を策定した。
2021年6月期は、ほぼ旧中期事業計画どおりの業績を達成した。同社は、さらなる事業規模の拡大と収益力の強化を目指し、経営環境を総合的に検討した上で旧計画を見直し、新計画を策定した。
最終年度となる2024年6月期の目標値は、売上高15,000百万円(2021年6月期実績比34.1%増)、営業利益2,250百万円(同99.1%増)、営業利益率15.0%(2021年6月期は10.1%)である。売上高15,000百万円と営業利益率15.0%の目標を目指すことを、同社は「15ALL(フィフティーンオール)」と称している。15ALLを通過点として、長期的には更なる成長を目指すとしている。
同社は、従来の「フロー型」を中心とした収益形態だけでなく、持続的な収益性が期待できる「ストック型」のビジネスを加えることで、安定的な収益基盤の拡大を進めている。金融業界以外の事業会社が、商圏拡大のために顧客向けに新規に決済サービスや金融サービスを提供する動きがある。また、同社の顧客企業が、新規事業の迅速な立ち上げのためにクラウドサービスを利用するなどの動きも見られる。
同社は、これまで、クレジットカードの業務のひとつであるアクワイアリング(加盟店管理)業務のシステムを中心に、クレジットカードの不正検知業務など、従来オンプレミス型で提供していたシステムをクラウド利用型へ展開してきた。顧客は、同社のサービスを利用することで、大規模な初期投資を必要とせずに事業を迅速に起ち上げることができる。そのため、金融業界以外の事業会社や、従来カード事業を行っていなかった企業のカード事業への新規参入を促している。
クラウドサービス事業(「ストック型」ビジネス)は、同社にとって、新規顧客獲得と事業規模拡大の重要な事業に成長している。同社は同事業について、2022年6月期に収益黒字化を見込み、2024年6月期までに同社の主要な収益源としての成長を期待している。
2024年6月期売上高会社計画15,000百万円のうち約28%を占める4,180百万円を、定常的に一定規模の売上高を計上する「ストック売上高」が占めると同社は想定している。2021年6月期売上高実績11,188百万円のうち、「ストック売上高」は2,299百万円(構成比20.6%)であった。
同社は、次なる成長を目指すため、新中期事業計画策定にあたりミッションの再定義を行った。同社は、これまで金融業界の開発業務で培った知識と経験を利用して、金融業界以外の企業向けに新製品を開発、新市場の開拓にも挑戦している。大量データのリアルタイム、高速処理を基盤にする同社の技術で、異業種の業務における潜在的な課題を発見し、解決することで新市場を開拓し、新しい収益の柱として育成するとしている。
従来のオンプレミスでのプロダクト提供に加えて、クラウドを積極活用したITサービスや業務サービスの提供により、『クレジット決済システムの開発会社』から、『決済、金融、セキュリティ分野を含む、企業のビジネスリライアビリティを支えるITサービス会社』となることを目指している。ここで、ビジネスリライアビリティ(同社の造語)とは、顧客事業の信頼性および同社事業の信頼性を高め続けることを言う。
急速に変革する市場に対して、①決済市場のハイブリッドIT基盤、②決済、金融、セキュリティ分野以外の領域拡大、③DNPグループシナジーの3戦略により、15ALLの達成を目指す。
クラウドサービス:2021年6月期売上高実績942百万円から2024年6月期会社予想2,500百万円(年率38.5%成長)を目指す。同社は2022年6月期に複数年の大型案件の受注を2件見込んでおり(1件は2021年7月に受注を獲得)、2022年6月期下半期以降に徐々に収益に貢献する予定。
新規事業:2024年6月期に新規事業による売上高寄与1,500百万円を同社は想定している。既に放送事業者向けソリューションEoMが成果を出し始めているほか、EoMに続く新たな挑戦(新規事業開拓)を同社は既に開始しており、新たな成長の柱となる事業の創出を目指す。
「オンプレミスとクラウド」ハイブリッドに対応し、同時に拡大を目指す。
キャッシュレス社会の推進や決済手段の多様化に伴い、同社の事業機会はますます拡大している。一方、クレジットカード会社における加盟店手数料の引き下げなどのコスト削減の動きがあるため、低コストで実現できるクラウドサービスのニーズが高まっている。先行して取り組んでいるクラウドサービスの拡大とともに、クラウドファーストを推進し、生活者や企業を支える新たなサービス開発を進める。
同社が従前から得意とするオンプレミスと中期的な成長ドライバーとなるクラウドのハイブリッドなIT基盤を提供していく。既に提供している不正検知夜間モニタリングなどについても、サービスの充実を図り、ワンストップでのサービス提供を目指していく。新しい技術と同社の技術を活用した次世代のBPOサービスを開発していきたいとしている。
金融業界で培った『アクセラレーション・分析』技術により、生活者や企業の『 DXを支えるIT基盤を創出』し、ビジネス領域の拡大を進める
DX推進などにより、あらゆる業界で大量データのリアルタイム処理が求められるという変化が世界中で起きている。同社が金融業界で培ったアクセラレーション(高速処理)、リアルタイム分析技術により、ミッションクリティカルな放送・交通・電力など、社会インフラのDXを支えるIT基盤を創出し、ビジネス領域の拡大を進めていく。
先行して取り組んでいる放送業界向けソリューションであるEoM(IP Flow Monitoring)はYle(フィンランド公共放送)で採用され、同社の技術がグローバルで通用することが証明された。テレビ朝日、JDS、QVCジャパンなど国内ユーザーの開拓を図ると同時に、米国、EU圏での販売を強化するなど、引き続きEoMの海外戦略を推進していく。EoMに続く新たな放送業界向けソリューションを2022年6月期に発表する予定。海外ベンダーと協力しながら、新たな業界参入に向けた研究開発を進行中である。
*EoM:放送業界向けに開発した、4K・8K放送時代に不可欠である放送システムのIP化に対応した「IPフローモニタリングソリューション(EoM)」。IP化が進む海外の放送事業者向けを中心にマーケティング活動中である。情報配信の高速化が要求される金融業界で同社がこれまで培ってきた技術を応用。同社独自のCEP(Complex Event Processing:複合イベント処理;時々刻々と発生するデータのリアルタイム処理)エンジンである「FES:Fast Event Streamer」を活用して、データ種別の選別や、高速なデータ分析を行い、全体的な傾向分析が可能なデータへと加工する。また、受信したストリーム毎のビットレートやパケットドロップのほか、受信したストリーム毎のレイテンシー(遅延)やジッタ(ゆらぎ:一定時間内の遅延における変動)も可視化できる。
『DNPのアセット×IWIの技術』で、特定領域に閉じない活動へ変革を図る。
キャッシュレス化のトレンドもあり、従来のグループシナジーは決済領域での活動が主体となっていたが、今後は『DNPのアセット×IWIの技術』で、特定領域に閉じない活動へ変革していく。新たな取組みの一手目としては、DNPグループとして保有する工場などに焦点を絞り、スマートファクトリーを意識したOT(Operational Technology:生産ラインやシステムの制御・運用技術)領域でのグループシナジー戦略を進める。スマートファクトリー化を進めるにはネットワークへの接続が必要となり、セキュリティ対策が不可欠となる。既にDNPの工場には同社が提供している最先端のセキュリティ製品が導入されており、今後はDNPの顧客への展開を進めていく。セキュリティ環境の強化とともに、同社が得意とするアクセラレーションとリアルタイム分析技術を活用し、スマートファクトリーを支える基盤を提供していく。
同社のビジネスモデルにとって人的資本への取組みは重要な要素となる。多様な働き方と多様な人財を尊重することで、従来からのIT基盤の安定的な稼働に加え、新たな事業の創造へと繋げていきたいと同社は考えている。
Value:社員全員がともに成長する友達;ミッションとビジョンに共感し、新たな挑戦をしながら、ともに成長するチームの仲間
同社は引き続きプライム市場を選択する方針を表明し、中期事業計画の遂行と株主還元の強化による企業価値向上を目指す。「15ALL」計画を追求することで、営業利益倍増を目指す(2021年6月期実績1,131百万円に対して、2024年6月期会社目標は2,250百万円)。
従来は配当性向概ね30%程度を緩やかな基準としてきたが、今後は40%程度を基準とする方針に変更(2021年6月期配当は前期比3.0円増配の13.0円を予定、配当性向40.6%;2022年6月期配当予想は同1.0円増配の14.0円、予想配当性向39.8%)
同社は、新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえ、2019年8月7日に開示した中期事業計画(旧計画)を見直し、2021年6月期から2023年6月期に至る中期事業計画を策定した。クラウドサービスを中心としたサブスクリプション型へのビジネスモデルの転換を図り、新規事業への投資についても加速していくとした。
最終年度となる2023年6月期の目標値は、売上高13,500百万円(2020年6月期実績比23.6%増)、営業利益1,500百万円(同44.8%増)、営業利益率11.1%であった。安定的に10%以上の営業利益率を達成し、長期的に営業利益15%の達成を目指すとした。
システム開発業務やシステム運用業務に感染症の影響は及んでおらず、同社の生産活動は順調に推移している。一方、営業活動については、顧客と直接接触の減少や、顧客都合で新規案件の商談に一部停滞がある。
今後の影響の規模について正確に予想することは難しいが、新規案件の受注の遅延などにより、売上高の成長速度が抑制される可能性があると同社は想定した。
事業環境については、長期的にクレジットカード決済の取扱高が伸びる基調に大きな変化はなく、事業機会の拡大は続くと想定した。 2021年6月期の売上高は前期比ほぼ横ばいの予想であるが、2022年6月期から2023年6月期にかけては、大手カード会社向けの開発案件や、新規にカード事業を開始する顧客向けの開発案件、クラウドサービスの新規案件などにより、売上高の成長が回復すると同社は予想。営業利益については、利益率10%以上を継続的に確保しつつ、2023年6月期に1,500百万円、利益率約11%を計画した。
より長期的には営業利益率15%の達成を目標とするとした。同社の収益源であるシステムの受託開発事業に、リカーリングやサブスクリプションの収益形態の事業を追加し、より長期的に安定的な売上高の成長と利益率向上の実現を目指すとした。
クラウドサービス:2021年6月期売上高は新計画が940百万円(旧計画1,100百万円)、2022年6月期売上高は新計画が1,300百万円(同1,400百万円)。
その他システム開発:2021年6月期売上高は新計画が8,960百万円(旧計画8,800百万円)、2022年6月期売上高は新計画が9,500百万円(同9,200百万円)。
セキュリティ対策製品(旧プロダクトソリューション):2021年6月期売上高は新計画が1,100百万円(旧計画1,300百万円)、2022年6月期売上高は新計画が1,200百万円(同1,400百万円)。
同社は、事業規模の拡大、人材育成、風土改革を進めており、それらは着実に進捗している。
事業規模の拡大については、請負の開発から、中期的にはクラウドサービスを中心としたサブスクリプション(ストックビジネス)の比率を高め、長期的には営業利益率15%を目指し、企業価値を高めていきたいとのこと。
2021年6月期以降の新カテゴリは、以下の通り。
システム開発:システムの受託開発業務に係る収益が計上される
保守:同社が開発したシステムの保守業務に係る収益が計上される
同社製品:同社製品の販売業務に係る収益が計上される
クラウドサービス:同社製システムの期間貸し業務に係る収益が計上される
ハードウェア:サーバーなどのハードウェアの販売業務に係る収益が計上される
他社製品:他社製品の販売業務に係る収益が計上される
セキュリティ対策製品:同社製、他社製のセキュリティ対策製品の販売業務に係る収益が計上される
同社の事業は、システム開発とシステム製品(ハードウェア、ソフトウェア)販売によって構成される。主に自社開発パッケージ製品を主体としたソフトウェアソリューションを販売している。
金融機関の顧客が多く、中核製品はクレジットカード取引処理、ローレイテンシー(レイテンシーとは配信データを処理するための遅延時間のこと:ローレイテンシー≒応答速度が速い)のネットワークセキュリティおよびデータ保護に焦点を当てている。
大日本印刷株式会社(東証PRM 7912)が同社株式の50%強を保有する。
同社は、2021年6月期より、開示セグメントを従来の2セグメント(「金融システムソリューション事業」と「プロダクトソリューション事業」)から単一セグメントに変更した。背景は、以下の通り。
同社はこれまで、金融システムソリューション事業とプロダクトソリューション事業の二つの報告セグメントによって経営管理を行ってきたが、両事業の営業活動および製品開発の推進体制を強化し、成長を促進する方針とした。
両事業で個別に管理していた顧客の情報を共有し営業活動を強化するほか、セキュリティ対策技術の開発体制を強化し、新製品・新サービスの開発を促進する。
2020年7月1日付けで組織体制を変更し、経営管理体制を変更したことに伴い、報告セグメントを変更した。
組織改正、経営管理体制の変更については、以下の通り。
旧「金融システムソリューション事業」の営業部門と、旧「プロダクトソリューション事業」のセキュリティ部門の営業部隊を、「営業部門」として統合
旧「金融システムソリューション事業」の開発部門と、旧「プロダクトソリューション事業」のセキュリティ部門の開発部隊を、「開発部門」として統合
2020年6月期までの開示セグメントは、事業活動と組織体制の実態を考慮して、「金融システムソリューション事業」と「プロダクトソリューション事業」の2つに区分されていた。それ以前の区分は、「カードビジネスのフロント業務」、「システムソリューション業務」、「セキュリティシステム業務」からなる3つのセグメントであった。
同社は、主にクレジットカード会社を中心とした顧客に対して、主にクレジットカードの決済処理を完遂するために必要なネットワーク接続やカードの使用認証等の機能をもつ FEP(Front End Processing)システムの開発業務を行っている。
例えば、FEPシステムの新規開発に際しては、以下の売上高が計上される。
システムの中核を構成する NET+1(ネットプラスワン)の販売による売上高(同社製品)
技術者がそのパッケージをカスタマイズして顧客の機能要件に合わせる開発業務による売上高(システム開発)
開発したソフトウェアを搭載するサーバーの販売による売上高(ハードウェア)
ソフトウェアとハードウェアで構成されたシステムの保守業務による売上高(保守)
また、企業組織の内部情報漏えいを防ぐ同社製品と、サイバーセキュリティ対策のための他社製品の販売業務も行っている。
システム開発事業では、主に金融業界の顧客を対象として、ソフトウェア開発を中心にハードウェアやソフトウェアを統合、付加価値をつけたシステムを納入している。システムの受託開発業務に係る収益が計上される。売上高は契約の規模や成立時期が定常的でないフローの形態となる。
現在の同セグメントの売上高はカード系(セグメント売上の約80%)と証券系(同20%)に大別される。カード系では、カードネットワークの接続認証や、カードの不正利用検知などのシステム開発を行う。一方、証券系は、情報配信基盤や業務システム、ネットワーク監視などの開発を行う。
同事業の売上高は請負型のソフト開発が中心であり売上の波がある。このため、同社では事業エリアの拡充に注力している。カード系では、既存製品の更新需要に加えて、カードブランド統合、ブランドプリペイドカード対応、ブランドデビットカード対応、ICカード化対応、ATM海外カード対応など決済にまつわる様々な開発案件の受注を目指している。一方、証券系では、従来は情報配信システムが中心であったが、業務システムへの事業領域拡⼤を目指している。
システム開発事業で同社が開発したシステムの保守サービスを行っている。ソフトウェアとハードウェアで構成されたシステムの保守業務による売上高からなる。定常的に一定規模の売上高を計上できる契約に基づく、ストック売上高の形態となる。
同社では、クレジットカードの決済処理システムの分野においては、国内トップのシェアをもつ自社製パッケージソフトウェア「NET+1」を有している。また、金融業界以外の業界・業種への展開を目的として、の簡略版である新製品OnCore(オンコア。後述)を2015年より発売している。売上高は契約の規模や成立時期が定常的でないフローの形態となる。
クレジットカードのアクワイアリング業務の協同利用型サービスをクラウド上で提供するサービスを2016年秋より開始している。同社製システムの期間貸し業務に係る収益が計上される。クラウドサービス(プラットフォーム、インフラ、アプリケーションを顧客に提供し、月次収入を得る;ストック型サービス)の展開が進み、2021年6月期のクラウドサービス収入は942百万円(前期は828百万円)となった。2021年6月期末において、同社クラウドサービスの導入社数は、加盟店契約システム(アクワイアリング業務の共同利用型サービス)5社、カード不正検知3社、ネットワーク接続4社、ポイントシステム1社となり、今後も導入社数が増加する見込みである。
開発したソフトウェアを搭載するサーバーの販売による売上高を、ハードウェア売上高として計上している。売上高は契約の規模や成立時期が定常的でないフローの形態となる。
他社製品の販売業務に係る収益が計上される。売上高は契約の規模や成立時期が定常的でないフローの形態となる。
売上高は企業組織の内部情報漏えいを防ぐ同社製品と、サイバーセキュリティ対策のための他社製品の販売からなる。売上高は契約の規模や成立時期が定常的でないフローの形態となる。
特定の業界、業種の顧客に限らず、情報セキュリティ分野やその他の分野に利用される自社開発パッケージソフトウェアと、他社製(仕入)パッケージソフトウェアを中心に付加価値の高いシステムを納入し、保守サービスを行っている。販売される自社製パッケージの主力製品はCWAT(社内情報漏洩検知システム)である。他社製パッケージではTraps(サイバー攻撃対策:Palo Alto Networks社製)、Deceptions Everywhere(標的型攻撃対策ソリューション:illusive networks社製)、SecBI(独自の機械学習エンジンにより、長期におよぶ 膨大なログからサイバー攻撃を検出:SecBI社製)、Ayehu NG(IT運用自動化ソリューション:ayehu社製)などがある。
同社では、セキュリティ需要の高まりに対応するため、自社製品に拘らず、優れた製品の販売と更なる規模拡⼤を進めるとしている。この一環として、同社ではサイバーセキュリティ対策が旺盛なイスラエルにおいて3ヶ月ごとに新たな製品の調査を行っている。
大日本印刷社との製品協業の可能性を考えた場合、セキュリティシステム業務は同社にとって高い成長ポテンシャルを秘めたセグメントである。両社は既に株式会社クレディセゾン(東証PRM 8253)向けセキュリティシステムで、大日本印刷社のICカードと同社のセキュリティネットワーク技術を組み合わせる共同開発を実施している。新製品開発に加え、同社は大日本印刷社の既存顧客(CWATシステムの潜在的ユーザー)にアクセスすることもできる。
同セグメントの中核製品は、クレジットカードの決済処理システムの分野では、国内トップのシェアをもつ自社製パッケージソフトウェア「NET+1」である。NET+1はクレジットカード会社が取引のオーソリゼーション(カード加盟店がクレジットカード会社に対して、カード利用者の信用照会をすること)やその他のフロントエンド処理に使用するソリューションであり、主要顧客はクレジットカード会社やその他金融機関である。
同社の推定では、NET+1は日本の主なクレジットカード会社のオーソリゼーションシステムの約70%に関与している。NET+1が解決する業務要件とは、クレジットカード会社が加盟店(POS端末単体との接続または大規模クレジットカード処理センターとの接続)およびクレジットカード取引に関係する信用情報センターとの接続に要する特別なネットワークの構築・保守である。
一般的に、クレジットカード取引システムはフロントエンドシステム(加盟店端末からクレジットカード会社に送られる情報処理)とバックエンドシステム(決済、情報検索、顧客情報管理など、クレジットカード会社内での情報処理)に分けられる。同社の「カードビジネスのフロント業務」はフロントエンドシステムに焦点をあてている。バックエンドシステムは大規模システムが必要なため、開発プロジェクトは範囲が広く期間も数年にわたり、通常は最上層の大手システムインテグレーターが扱える案件である。フロントエンドソリューションは重要ではありつつも、通常はバックエンド側のソリューションが選定された後に決定される。
NET+1はハードウェアと自社開発のパッケージソフトで構成されている。システムは通常大幅な改修なく4、5年(時にはそれ以上)は使用されるため、同社は導入済システムの使用期間中の保守サポートでも売上を得ている。
その他の主要製品としては、データ通信関連(自社開発の「市況情報配信システム」)とクレジットカード不正検知システム(「ACEPlus」)などがある。2012年6月期より大日本印刷社のグループ会社向けのシステム開発受託にも積極的に取り組んでいる。
当セグメントの事業を拡大するには、既存および新規顧客へのサーバーライセンス売上を増やすか、新機能を付加して既存顧客に販売する必要がある。(国内証券会社が事業を海外展開していることから)海外販売も事業拡大の潜在領域として考えられる。また、国内でも中小証券会社など顧客数を増やすことを試みている。価格情報のフィードと他のサービス(売買注文処理、アルゴリズム型トレーディングエンジン)を統合し、単一の総合ソリューションとして販売するなどの手段によって、売上増加が図れるかもしれない。ほかに売上を増大させる策として、海外でオフショア開発したパッケージを国内の顧客に販売するなどして、現行製品ラインアップを拡充することも考えられる。
ACEPlusはクレジットカードの不正利用を検知・防止するソフトウェアシステムである。システムは「スコア」ベースのシステム、もしくはあらかじめ定義した「ルール」を使用して取引が不正かどうかを判断する。スコア算出アルゴリズムは柔軟性の高いソリューションであり、スコア生成のロジックは同社が提供している。システムの利用者がデータを更新することにより、最新の(関連性の高い)取引データに基づいてスコアが算出される。
同社によれば、ACEPlusは通常パッケージ(ソフトウェア、ハードウェアおよびインストール)で、約150百万円で販売している。保守料金は年間6百万~10百万円の範囲である。パッケージ製品の売上総利益は50%を超えており、パッケージソフト製品の典型として購入顧客数が増えれば通常粗利率も向上する。同時にインストールやカスタマイズに関連した変動費がかかることから、純粋な市販パッケージ製品(理論上は100%の売上総利益率を達成できる)よりは売上総利益率は低い。
取引の不正を判断するにあたって、ACEPlusシステムのロジックは「ルール」を使用するか、もしくは「スコア」を使用するかを設定で変更できる。「ルール」システムは単純明快である。取引が一連の設定基準を満たした場合(短時間で買付操作を連続するなど)は、その買付を遅延させ検証する、または拒絶する等のアクションがとられる。「ルール」システムは数万件のルールに対応している。対して「スコア」システムは、より複雑である。内部ロジックが、特定の買付が以前の買付行動に一致しているかを判断し、取引に対し承認/確認/拒絶の判断を下す。買付行動履歴モデルは過去の買付情報の累積を基盤にしている(システムは特定の消費者の典型的買付パターンを「学習」する)。
スコアリングシステムの学習能力が実用面でどのような意味を持つかというと、ある特定の消費者の取引量が増えれば、その消費者の買付に関しデータベースはさらに「賢く」なるということだ。この特徴は競争優位性と捉えることができる。SR社の理解では、競合製品の中にはソフトメーカーによるデータ更新をベースにしているものがあるが、ACEPlusに比べてかなり割高となる傾向がある。
独自開発したソリューションを好む企業もあるようだが、同社の推定では国内市場の約50%はACEPlusを使用しているとのことである。同社は海外市場(主にアジア)に成長の可能性を見出しており、二つのプラス要因があると述べている。一つには、アジア諸国におけるクレジットカード利用が増えてきていること、そして海外の競合製品に比べてACEPlusはカスタマイズのしやすさで柔軟性が高いことである。
同時に、同社はカスタマイズの必要性がより低いパッケージ製品を開発し、高い利益率を確保する必要性を感じている。カスタマイズを実施するということは追加の労務費がかかるからだ。対して1パッケージソフト製品を追加する費用はさほど高くないため、高い売上総利益率を確保できる。
企業のウェブサイトやモバイルサイト上の情報検索を改善し、利用者のナビゲーションを的確に行うことでサイトの付加価値を高めるツール「Faceコンシェル」を2012年6月期に開発、販売を開始した。「Faceコンシェル」は、企業のウェブサイトやスマートフォンサイトを訪問、利用する顧客に対して適切なページへ誘導したり、顧客からの質問に対し的確な応答をしたりすることで、サイトの使い勝手と付加価値を高めるツールであり、あらゆる業種業態のウェブサイト等へ導入できるシステム製品となる。画面上に登場したコンシェルジュ(人物画)に、口語入力で話しかけ、相談し、質問することで、欲しい情報、商品へと誘導する。2014年6月期より販売活動を本格化させている。
業種的には、FAQの多いサイトを運営する、BtoCビジネスに展開しやすいとしている。当初の想定では、初期開発として1社あたり2,000~3,000万円程度の売上、その後、保守サービス等で、200~300万円/年程度の売上を見込んでいた。しかしながら、拡販に難航していることもあり、初期コストを抑えた新たな販売モデルの展開も模索している。
OnCoreは、同社が証券取引関連の業務で培った技術を基に、NET+1やACEPlus等の機能を搭載した、様々なシステム開発におけるプラットフォームの基盤となる製品である。ハードウェアをセットにしたパッケージ型の製品として、金融業界以外の様々な業界、業種のへも販売することを企画しており、2016年6月期には既に第一弾の受注を獲得している。また、国内だけでなく東南アジアでの販売も視野に入れており、開発と並行して、アジアにおけるマーケティングリサーチも実施している。
同社では、新サービス創出の一環として、クラウド上でアクワイアリング業務(加盟店契約業務)を共同利用できるシステムを提供している。同社によれば、金融機関は共同利用型システムの導入により初期投資負担が軽くなりアクワイアリング業務に参入しやすくなる。また、同社は事業機会の拡大が期待できるとしている。地方銀行を含む複数の金融機関からアクワイアリング業務のシステム開発の引き合いを受けているとのこと。クラウドを共同で利用するシステムであるため、従来のように顧客ごとにオーダーメイドのシステム開発をする部分は少ない(オーダーメイドに相当する部分については、きちんと開発費を徴収する)。
同サービスは、2016年秋から3社に対して提供を開始し、2020年6月期末ではアクワイアリング業務(加盟店システム)のクラウド導入社数は5社となっている。また、その他に、クラウド導入社数は不正検知で3社、ネットワーク接続で2社となっている。クラウドサービスとして、より多くの金融機関からの受注獲得へ向けた営業展開を行っている。
CWATは企業のITインフラ内の情報を保護し、リアルタイムで脅威を検知し無効にするための製品として2004年に開発された。システムは社内ネットワークを保護し(不正コンピュータのネットワーク接続阻止)データのセキュリティを確保する(機密情報ファイルの不正使用やアクセスの検知と防止)。CWATはクライアント/サーバーアーキテクチャを採用しているため、システムは社員のPCとシステム全域の情報を収集し監視・コントロールを行うサーバーにインストールされている。
CWATは侵出(エクストゥルージョン)検知システムである。比較的新しいコンピュータセキュリティ分野で1990年後半に注目を集めだした。それ以前は、セキュリティコミュニティは侵入(イントゥルージョン)検知と防止で「外部から入ってくる脅威」を阻止することに焦点を当てていた。対して侵出(エクストゥルージョン)検知とは、コンピューターネットワーク上またはシステム内部で発生するセキュリティの問題に対応するものである。情報の侵出の例として、社員が機密文書を外部者にEメール送信する、ウイルス感染したワークステーションが専有情報を外部の攻撃者にアップロードするなどがある。
CWATシステムはローカルネットワーク(単一施設内)に適しており、オプションで会社拠点間の保護を行うように設定することもできる。同社から提供されたデータによると、ソフトウェアは英語、日本語、中国語、韓国語と多言語に対応しており、混合言語環境での中央管理が可能である。
侵出検知システム開発における課題は、脅威が存在するか否かを検知するために社内外のネットワークトラフィックを解析しなければならない点である。これに対して侵入検知はネットワーク上のルーターまたは他のゲートウェイの外部トラフィックを遮断するという単純な方法もあり得る。侵出検知システムが最大の効果を出すには、ネットワークから外に配信されるデータと受信データを審査し、ネットワーク上で交換される情報の種類を判断できるロジックを備えていなければならない。侵出検知システムが解決しなければならない問題の例として、Eメールに添付された会社の専有情報のメモや、友人に送信された私用レターなどがある。
CWATは包括的情報セキュリティシステムである。社員による情報アクセスの監視とコントロールを実施し、情報の持ち出しを検知し防止することができる。
通常、顧客はCWATシステムと保守をパッケージで購入する。ソフトウェアは1ユーザー(PC1台)当たりの価格をベースにしており、1台当たり約19,800円である。
同社では、(同社が)技術的に優位性が高いとみなした他社製システムやパッケージ販売を2012年6月期より本格的に開始した。同社の役割としては、単なる他社製品の販売に留まらず、他社製品をユーザーサイドにコーディネートするコンサルティング的対応も含まれる。米国パルアルトネットワーク社の製品の「Traps」をはじめ、様々な製品の販売を行っている。「Traps」は、マルウェアなどによるサイバー攻撃への対策製品である。
また、同社が2016年より販売している「Deceptions Everywhere」はイスラエルillusive networks社製の標的型攻撃対策ソリューションである。高度な技術を持った攻撃者によるマニュアル(手動)攻撃に対抗するため、組織内のエンドポイント上に膨大な罠(Deceptions)を張り巡らせることによって、侵入・潜伏した攻撃者を過検知なし・エージェントレスで検知する欺瞞技術を用いたソリューションである。
米ayehu(アエフ)社製Ayehu NGは、ベンダーフリーの中立的な自動化・オーケストレーターとして機能し、ITおよびセキュリティ業務の効率化を促進するIT運用自動化ソリューションである。
2018年7月には標的型攻撃をAIで検出する「Sec BI」(自律解析エンジンでプロキシ通信ログを分析し、隠れた脅威を発見する)について、同社はイスラエルSecBI社と国内独占販売契約を提携した(2018年7月)。PCに実装するのではなく、企業において必ず通過するプロキシに溜まっているログをAIで分析し、悪質なソフトウェアを見つけるとのこと。
同社では、今後も同社製品と他社製品によりセキュリティソリューション関連のラインナップを拡充し、市場で高まりつつあるセキュリティ対策のニーズに応えるとしている。
要約
カード決済システムの開発に強み
同社は、主に自社開発パッケージ製品を主体としたソフトウェアソリューションを販売している。金融機関の顧客が多く、中核製品はクレジットカード取引処理、ローレイテンシー(レイテンシーとは配信データを処理するための遅延時間のこと)のネットワークセキュリティおよびデータ保護に焦点を当てている。大日本印刷株式会社(東証PRM 7912)が同社株式の50%強を保有する。
主に金融業界の顧客を対象として、ソフトウェア開発を中心にハードウェアやソフトウェアを統合、付加価値をつけたシステムを納入し、保守サービスを行う。同社の情報処理技術は、主にクレジットカード決済のオンラインシステムに使われており、24時間365日、リアルタイムで確実なカード取引の処理に利用されている。以下の3つの中核製品を持つ。まず、クレジットカードの決済処理分野において国内トップシェアを誇る自社製パッケージソフトウェア「NET+1」である。同製品は日本の主なクレジットカード会社のオーソリゼーション(加盟店からクレジットカード会社への利用者信用照会・承認)システムの約70%に関与している。また、クレジットカードの不正利用を検知・防止するソフトウェアシステム「ACEPlus」、Net+1の機能を搭載し、スマートフォン決済のネットワーク接続機能などを提供する「OnCore」などの自社製品を保有している。
また、特定の業界、業種の顧客に限らず、情報セキュリティ対策の自社開発パッケージソフトウェアと、サイバーセキュリティ対策の他社製(仕入)パッケージソフトウェアを中心に付加価値の高いシステムを納入し、保守サービスを行う。情報セキュリティ対策の自社製品「CWAT」、サイバーセキュリティ対策他社製品「Traps」他、多数の製品を保有している。
同社は、2021年6月期より、開示セグメントを従来の2セグメント(売上高の約9割および営業利益のほぼ全てを稼ぎ出す主力事業の「金融システムソリューション事業」と、もう1つの柱である「プロダクトソリューション事業」)から単一セグメントに変更した。事業セグメントに分散していた人的資源と知的資源を統合的に運用することにより営業活動を活性化させることと、新製品・サービスの開発を促進することを目的として、組織改正を行い、経営管理体制を変更したことが、セグメント変更の背景。
業績動向
2021年6月期実績:売上高11,188万円(前期比2.4%増)、営業利益1,131百万円(同9.1%増)、経常利益1,171百万円(同9.0%増)、当期純利益841百万円(同10.4%増)。カテゴリ別売上高は、システム開発5,272百万(同9.0%減)、保守1,357百万円(同8.9%増)、同社製品335百万円(同37.3%増)、クラウドサービス942百万円(同13.8%増)、ハードウェア1,638百万円(同7.3%増)、他社製品509百万円(同131.4%増)、セキュリティ対策製品1,131百万円(同6.4%増)。
2022年6月期の会社計画:売上高12,000百万円(前年比7.3%増)、営業利益1,320百万円(同16.8%増)、経常利益1,360百万円(同16.1%増)、当期純利益940百万円(同11.8%増)である。2021年8月4日、同社は、中期事業計画を見直し新計画として開示した(詳細は経営戦略と中期見通しの項を参照)。2021年6月期は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けず、同社のシステム開発業務やシステム運用業務の継続性に対する大きな影響ない。2021年8月時点においては同社の生産活動は順調に推移している。
新中期事業計画:同社は、2020年8月5日に開示した中期事業計画(旧計画)を見直し、2022年6月期から2024年6月期に至る中期事業計画(新計画)を策定した。 最終年度となる2024年6月期の目標値は、売上高15,000百万円(2021年6月期実績比34.1%増)、営業利益2,250百万円(同99.1%増)、営業利益率15.0%(2021年6月期は10.1%)である。
同社は、従来の「フロー型」を中心とした収益形態だけでなく、持続的な収益性が期待できる「ストック型」のビジネスを加えることで、安定的な収益基盤の拡大を進めている。金融業界以外の事業会社が、商圏拡大のために顧客向けに新規に決済サービスや金融サービスを提供する動きがある。また、同社の顧客企業が、新規事業の迅速な起ち上げのためにクラウドサービスを利用する等の動きも見られる。同社は、これまで、クレジットカードの業務のひとつであるアクワイアリング(加盟店管理)業務のシステムを中心に、クレジットカードの不正検知業務など、従来オンプレミス型で提供していたシステムをクラウド利用型へ展開してきた。顧客は、同社のサービスを利用することで、大規模な初期投資を必要とせずに事業を迅速に起ち上げることができる。そのため、金融業界以外の事業会社や、従来カード事業を行っていなかった企業のカード事業への新規参入を促している。
クラウドサービス事業は、同社にとっては、新規顧客獲得と事業規模拡大の重要な事業に成長している。同社は同事業について、2022年6月期の収益黒字化の見込み、2024年6月期までに同社の主要な収益源としての成長が期待している。また、同社は、これまで金融業界の開発業務で培った知識と経験を利用して、金融業界以外の企業向けに新製品を開発、新市場の開拓にも挑戦している。大量データのリアルタイム、高速処理を基盤にする同社の技術で、異業種の業務における潜在的な課題を発見し、解決することで新市場を開拓し、新しい収益の柱として育成するとしている。
従来のオンプレミスでのプロダクト提供に加えて、クラウドを積極活用したITサービスや業務サービスの提供により、『クレジット決済システムの開発会社』から、『決済、金融、セキュリティ分野を含む、企業のビジネスリライアビリティを支えるITサービス会社』となることを目指している。ここで、ビジネスリライアビリティとは、顧客事業の信頼性および同社事業の信頼性を高め続けることを言う。
同社の強みと弱み
SR社では、同社の強みを、フロントエンドクレジットカード市場での圧倒的なポジションと、大日本印刷社との協力、の2点だと考えている。一方、弱みは、スケールメリットが働く市場での規模の小ささと、比較的弱い販売チャネル、にあると考えている。(後述の「SW(Strengths, Weaknesses)分析」の項参照)
主要経営指標の推移
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*同社は、2014年1月1日付で、1対100の株式分割を実施している。
*2016年6月28日に連結子会社 Intelligent Wave Korea Inc.が清算結了したため2017年6月期は非連結となり会社予想は単体業績予想となる(2017年6月期における前年比伸び率は参考値)。
直近更新内容
IWI Security Intelligence Alert (ISIA) のサービス提供開始
株式会社インテリジェント ウェイブは、MSSP 型セキュリティインテリジェンスレポートサービス「IWI Security Intelligence Alert (ISIA)」の提供開始に関して発表した。
(リリース文へのリンクはこちら)
サイバーセキュリティ対策を取巻く状況は刻々と変化しており、特にサイバー攻撃の手法は常に進化を続けている。企業は攻撃者による情報搾取など事業上の脅威に対策するために、セキュリティに関する脅威情報をリアルタイムに調査・収集・分析するべく、セキュリティインテリジェンス情報源の活用が急務となっている。しかしながら、セキュリティインテリジェンスの活用は、幅広い業務の知識や実務経験、対策の検討および実行といった、高いスキルや大きなワークロードを必要とする。
「IWI Security Intelligence Alert」は、このような状況に対し、通常は企業の組織内で実施する人材確保や育成、体制づくりにかかる負担を軽減する。顧客に代わり、特定のセキュリティ対策に必要となる脅威検知に特化した調査を実施し、検出した脅威情報のみを顧客に提供するため、対策のために要するワークロードも低減可能である。脅威発生を検出した際の対策・対応をシンプルかつリーズナブルに実現する。
セキュリティインテリジェンスを積極活用したアクティブディフェンスの運用実現を検討中の企業や、そういった体制を実現する事は現状困難でも、何らかの対策を必要と感じている企業など、特にスモールスタートで対策を実施したい企業での活用に向いているとしている。
「IWI Security Intelligence Alert」は脅威検知能力の源泉として、レコ―デッド・フューチャー・ジャパン株式会社が提供するセキュリティインテリジェンスを調査に活用している。
本サービスでは、2つのユースケースに対応した調査代行サービスを提供する。
クレデンシャル情報漏洩報告サービス
ダークウェブなどへ漏洩したクレデンシャル情報を悪用した不正アクセスを防止するために、インターネット上に漏洩しているドメインに紐づくクレデンシャル情報を調査・報告。
フィッシングドメイン報告サービス
正規のサービスドメインの類似ドメインを悪用し、顧客情報やマルウェア配布などを行うフィッシングサイトを検知し報告。追加オプションとしてフィッシングサイトのテイクダウン支援サービスもご提供。
業績動向
四半期業績動向
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**会社予想は直近の数値。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**2021年6月期より、同社は、従来の「金融システムソリューション事業」と「プロダクトソリューション事業」の2区分であった事業セグメントを集約し、単一のセグメントとした。
***カテゴリにおいて、定常的に一定規模の売上高を計上できる契約形態から上がる売上高をストック収入としている。一方、契約の規模や成立時期が定常的でないないカテゴリの売上高(上記表の新カテゴリ区分においてストックと表示していないもの)はフロー収入としている。2022年6月期第1四半期より、ストック/フローの累計による売上高の分類を従来より詳細に表示するために、ストック/フローの売上高カテゴリを見直している(2021年6月期までと連続性がない)。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**2021年6月期より、同社は、従来の「金融システムソリューション事業」と「プロダクトソリューション事業」の2区分であった事業セグメントを集約し、単一のセグメントとした。
***カテゴリにおいて、定常的に一定規模の売上高を計上できる契約形態から上がる売上高をストック収入としている。一方、契約の規模や成立時期が定常的でないないカテゴリの売上高(上記表の新カテゴリ区分においてストックと表示していないもの)はフロー収入としている。2022年6月期第1四半期より、ストック/フローの累計による売上高の分類を従来より詳細に表示するために、ストック/フローの売上高カテゴリを見直している(2021年6月期までと連続性がない)。
2022年6月期第3四半期累計実績(2022年5月6日発表)
決算概要
2022年6月期第3四半期累計実績:売上高7,835万円(前年同期比2.9%減)、営業利益944百万円(同39.1%増)、経常利益965百万円(同38.5%増)、四半期純利益659百万円(同39.9%増)。
進捗率:2022年6月期通期会社計画に対する進捗率は売上高65.3%(2021年6月期通期実績に対する前年同期実績72.1%)、営業利益71.5%(同60.0%)、経常利益70.9%(同59.5%)、四半期純利益70.1%(同56.0%)。2022年6月期通期会社計画に変更はない。
前年同期比2.9%減収:カテゴリ別売上高は、システム開発3,859百万(同4.0%増)、保守1,111百万円(同12.0%増)、同社製品319百万円(同19.5%増)、クラウドサービス793百万円(同13.0%増)、ハードウェア829百万円(同38.1%減)、他社製品237百万円(同45.0%減)、セキュリティ対策製品683百万円(同9.8%増)。
システム開発、保守、クラウドサービスなどは前年同期比増収となったが、ハードウェアと他社製品が同減収となった。ハードウエアは、前年同期と比較して当第3四半期まではサーバーなどの販売案件数が少なく減収となった。しかし、当第4四半期には大型案件の売上計上を予定しており、通期では増収となる見込みとのこと。システム開発業務の売上高は、既存顧客と新規顧客向けの案件によって増収となった。開発業務は順調に推移しており、品質向上の取組みが収益力の向上に寄与した。クラウドサービス事業は、新規顧客向けのサービス開始によって売上高も増加し好調に推移した。
同39.1%営業増益:システム開発業務や保守業務、クラウドサービス事業の収益性向上、ハードウェア販売に利益率の高い案件があったことなどが寄与した。売上総利益率は前年同期比5.4%ポイント改善の32.1%、販管費率は同1.7%ポイント上昇の20.0%となり、営業利益率は同3.6%ポイント改善の12.0%となった。当第3四半期(3か月)では同70.3%の増益となった。
2022年6月期は現中期経営計画の初年度となる。最終年度2024年6月期の目標値は、売上高15,000百万円(2021年6月期実績比34.1%増)、営業利益2,250百万円(同99.1%増)、営業利益率15.0%(2021年6月期は10.1%)である。売上高15,000百万円と営業利益率15.0%の目標を目指すことを、同社は「15ALL(フィフティーンオール)」と称している。15ALLを通過点として、長期的には更なる成長を目指すとしている。
中期計画の主要な推進力であるクラウドサービス事業は、売上高の拡大と業務効率化の推進により、順調に利益を伸ばしている。同社のクラウドサービスは、既存の金融事業会社だけでなく、新規にカード事業や決済事業を起ち上げる事業会社にとって有力な選択肢のひとつになっているとのこと。当第1四半期に約1,000百万円を計上した新規受注は、第2四半期は1,876百万円、第3四半期は273百万円となった。上半期は、複数の大型案件の受注が重なったため受注高が大きく伸びた。これにより、当第3四半期累計期間のクラウドサービス事業の受注高は3,150百万円、受注残高は4,210百万円となった。これらの受注の売上寄与は2023年6月期以降の予定であり、2023年6月期の売上高は約2,000百万円、2024年6月期の売上高は2,500百万円を計画している。
事業環境
同社の主要な事業領域であるクレジットカード業界においては、大手カード会社のカードショッピング取扱高は前年同期実績を上回って推移しており、新型コロナウイルス感染症の影響から着実に回復しつつあると同社はみている。また、大手の金融機関やカード会社だけでなく、個人や中小企業向けの金融、決済サービスを展開する事業会社や、そうした企業にサービスを提供する事業会社など、いわゆるFintechサービスの普及も始まっている。こうした環境変化が、同社の事業機会となっている。
ストック/フロー別売上高
2022年6月期より、カテゴリ分類を細分化し、売上カテゴリを再定義して運用している。ストック/フローの類型による売上高の分類を従来より詳細に表示するために、売上カテゴリを見直した。契約の形態や業務の実態等から判断して、定常的に一定規模の売上高を計上できる案件をストック、そうではないものをフローとして分類した。ストック型売上として典型的なものは、クラウドサービス事業に係るシステムの利用料やシステム運用の対価、同社製品や他社製品の保守業務の対価である。クラウドサービスの利用料は、「サービス自社」に分類される。フロー型売上として典型的なものは、受託開発業務の対価や、自社製品、他社製品の販売対価である。
第1四半期
第2四半期累計
第3四半期累計
過去の四半期実績と通期実績は、過去の業績と財務諸表へ
今期会社計画
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**予想は直近の値。
2016年6月28日に連結子会社 Intelligent Wave Korea Inc.が清算結了したため2017年6月期は非連結となり会社予想は単体業績予想となる(2017年6月期における前年比伸び率は参考値)。
2022年6月期会社計画(2021年8月4日発表)
会社計画の概要
新中期経営計画(2022年6月期~2024年6月期)の1年目となる2022年6月期の会社計画は、売上高12,000百万円(前年比7.3%増)、営業利益1,320百万円(同16.8%増)、経常利益1,360百万円(同16.1%増)、当期純利益940百万円(同11.8%増)である。営業利益率11.0%(前期比0.9%ポイント上昇)を目指す。
2021年8月4日、同社は、中期事業計画を見直し新計画として開示した(詳細は経営戦略と中期見通しの項を参照)。2021年6月期は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けず、同社のシステム開発業務やシステム運用業務の継続性に対する大きな影響ない。2021年8月時点においては同社の生産活動は順調に推移している。
カテゴリー別売上高会社計画
クラウドサービスの黒字化
クラウドサービスは、当第2四半期に四半期売上総利益が黒字化した。2022年6月期通期でも黒字化すると同社は見込んでいる。クラウドサービスは中期の成長ドライバーと同社は位置付けている。
売上高会社予想1,130百万円:第1四半期会社予想240百万円(前年同期比7.1%増)、第2四半期会社248百万円(同0.8%増)に対して、実績はそれぞれ243百万円(同8.5%増)、250百万円(同1.6%増)で着地した。第3四半期会社予想は296百万円(同27.6%増)、第4四半期会社予想は343百万円(同43.5%増)。
売上総利益会社予想80百万円:第1四半期会社予想△18百万円(前年同期は△37百万円)、第2四半期会社予想18百万円(同△12百万円)に対して、実績はそれぞれ△19百万円、31百万円で着地した。第3四半期会社予想は46百万円(同△28百万円)、第4四半期会社予想は33百万円(同3百万円)。
新収益認識基準
新収益認識基準の適用により、従来完成基準により収益計上していた案件のうち、一定の契約単位を超える案件については進行基準の適用となる。2022年6月期においては、基準を超える大型開発案件がなく、売上高および利益に与える影響は軽微とのこと。
経営戦略と中長期見通し
新中期事業計画(2022年6月期~2024年6月期):2021年8月4日発表
概要
同社は、2020年8月5日に開示した中期事業計画(旧計画)を見直し、2022年6月期から2024年6月期に至る中期事業計画(新計画)「を策定した。
見直しの理由
2021年6月期は、ほぼ旧中期事業計画どおりの業績を達成した。同社は、さらなる事業規模の拡大と収益力の強化を目指し、経営環境を総合的に検討した上で旧計画を見直し、新計画を策定した。
2024年6月期目標
最終年度となる2024年6月期の目標値は、売上高15,000百万円(2021年6月期実績比34.1%増)、営業利益2,250百万円(同99.1%増)、営業利益率15.0%(2021年6月期は10.1%)である。売上高15,000百万円と営業利益率15.0%の目標を目指すことを、同社は「15ALL(フィフティーンオール)」と称している。15ALLを通過点として、長期的には更なる成長を目指すとしている。
安定収益源の拡大
同社は、従来の「フロー型」を中心とした収益形態だけでなく、持続的な収益性が期待できる「ストック型」のビジネスを加えることで、安定的な収益基盤の拡大を進めている。金融業界以外の事業会社が、商圏拡大のために顧客向けに新規に決済サービスや金融サービスを提供する動きがある。また、同社の顧客企業が、新規事業の迅速な立ち上げのためにクラウドサービスを利用するなどの動きも見られる。
同社は、これまで、クレジットカードの業務のひとつであるアクワイアリング(加盟店管理)業務のシステムを中心に、クレジットカードの不正検知業務など、従来オンプレミス型で提供していたシステムをクラウド利用型へ展開してきた。顧客は、同社のサービスを利用することで、大規模な初期投資を必要とせずに事業を迅速に起ち上げることができる。そのため、金融業界以外の事業会社や、従来カード事業を行っていなかった企業のカード事業への新規参入を促している。
クラウドサービス事業(「ストック型」ビジネス)は、同社にとって、新規顧客獲得と事業規模拡大の重要な事業に成長している。同社は同事業について、2022年6月期に収益黒字化を見込み、2024年6月期までに同社の主要な収益源としての成長を期待している。
2024年6月期売上高会社計画15,000百万円のうち約28%を占める4,180百万円を、定常的に一定規模の売上高を計上する「ストック売上高」が占めると同社は想定している。2021年6月期売上高実績11,188百万円のうち、「ストック売上高」は2,299百万円(構成比20.6%)であった。
ミッションの再定義
同社は、次なる成長を目指すため、新中期事業計画策定にあたりミッションの再定義を行った。同社は、これまで金融業界の開発業務で培った知識と経験を利用して、金融業界以外の企業向けに新製品を開発、新市場の開拓にも挑戦している。大量データのリアルタイム、高速処理を基盤にする同社の技術で、異業種の業務における潜在的な課題を発見し、解決することで新市場を開拓し、新しい収益の柱として育成するとしている。
従来のオンプレミスでのプロダクト提供に加えて、クラウドを積極活用したITサービスや業務サービスの提供により、『クレジット決済システムの開発会社』から、『決済、金融、セキュリティ分野を含む、企業のビジネスリライアビリティを支えるITサービス会社』となることを目指している。ここで、ビジネスリライアビリティ(同社の造語)とは、顧客事業の信頼性および同社事業の信頼性を高め続けることを言う。
15ALLに向けたロードマップ
急速に変革する市場に対して、①決済市場のハイブリッドIT基盤、②決済、金融、セキュリティ分野以外の領域拡大、③DNPグループシナジーの3戦略により、15ALLの達成を目指す。
クラウドサービス:2021年6月期売上高実績942百万円から2024年6月期会社予想2,500百万円(年率38.5%成長)を目指す。同社は2022年6月期に複数年の大型案件の受注を2件見込んでおり(1件は2021年7月に受注を獲得)、2022年6月期下半期以降に徐々に収益に貢献する予定。
新規事業:2024年6月期に新規事業による売上高寄与1,500百万円を同社は想定している。既に放送事業者向けソリューションEoMが成果を出し始めているほか、EoMに続く新たな挑戦(新規事業開拓)を同社は既に開始しており、新たな成長の柱となる事業の創出を目指す。
決済市場のハイブリッドIT基盤
「オンプレミスとクラウド」ハイブリッドに対応し、同時に拡大を目指す。
キャッシュレス社会の推進や決済手段の多様化に伴い、同社の事業機会はますます拡大している。一方、クレジットカード会社における加盟店手数料の引き下げなどのコスト削減の動きがあるため、低コストで実現できるクラウドサービスのニーズが高まっている。先行して取り組んでいるクラウドサービスの拡大とともに、クラウドファーストを推進し、生活者や企業を支える新たなサービス開発を進める。
同社が従前から得意とするオンプレミスと中期的な成長ドライバーとなるクラウドのハイブリッドなIT基盤を提供していく。既に提供している不正検知夜間モニタリングなどについても、サービスの充実を図り、ワンストップでのサービス提供を目指していく。新しい技術と同社の技術を活用した次世代のBPOサービスを開発していきたいとしている。
新分野への領域拡大
金融業界で培った『アクセラレーション・分析』技術により、生活者や企業の『 DXを支えるIT基盤を創出』し、ビジネス領域の拡大を進める
DX推進などにより、あらゆる業界で大量データのリアルタイム処理が求められるという変化が世界中で起きている。同社が金融業界で培ったアクセラレーション(高速処理)、リアルタイム分析技術により、ミッションクリティカルな放送・交通・電力など、社会インフラのDXを支えるIT基盤を創出し、ビジネス領域の拡大を進めていく。
先行して取り組んでいる放送業界向けソリューションであるEoM(IP Flow Monitoring)はYle(フィンランド公共放送)で採用され、同社の技術がグローバルで通用することが証明された。テレビ朝日、JDS、QVCジャパンなど国内ユーザーの開拓を図ると同時に、米国、EU圏での販売を強化するなど、引き続きEoMの海外戦略を推進していく。EoMに続く新たな放送業界向けソリューションを2022年6月期に発表する予定。海外ベンダーと協力しながら、新たな業界参入に向けた研究開発を進行中である。
DNPグループシナジー
『DNPのアセット×IWIの技術』で、特定領域に閉じない活動へ変革を図る。
キャッシュレス化のトレンドもあり、従来のグループシナジーは決済領域での活動が主体となっていたが、今後は『DNPのアセット×IWIの技術』で、特定領域に閉じない活動へ変革していく。新たな取組みの一手目としては、DNPグループとして保有する工場などに焦点を絞り、スマートファクトリーを意識したOT(Operational Technology:生産ラインやシステムの制御・運用技術)領域でのグループシナジー戦略を進める。スマートファクトリー化を進めるにはネットワークへの接続が必要となり、セキュリティ対策が不可欠となる。既にDNPの工場には同社が提供している最先端のセキュリティ製品が導入されており、今後はDNPの顧客への展開を進めていく。セキュリティ環境の強化とともに、同社が得意とするアクセラレーションとリアルタイム分析技術を活用し、スマートファクトリーを支える基盤を提供していく。
組織変革
同社のビジネスモデルにとって人的資本への取組みは重要な要素となる。多様な働き方と多様な人財を尊重することで、従来からのIT基盤の安定的な稼働に加え、新たな事業の創造へと繋げていきたいと同社は考えている。
Value:社員全員がともに成長する友達;ミッションとビジョンに共感し、新たな挑戦をしながら、ともに成長するチームの仲間
プライム市場に向けた同社の考え方
中期事業計画の遂行による企業価値向上
同社は引き続きプライム市場を選択する方針を表明し、中期事業計画の遂行と株主還元の強化による企業価値向上を目指す。「15ALL」計画を追求することで、営業利益倍増を目指す(2021年6月期実績1,131百万円に対して、2024年6月期会社目標は2,250百万円)。
株主還元の強化
従来は配当性向概ね30%程度を緩やかな基準としてきたが、今後は40%程度を基準とする方針に変更(2021年6月期配当は前期比3.0円増配の13.0円を予定、配当性向40.6%;2022年6月期配当予想は同1.0円増配の14.0円、予想配当性向39.8%)
(参考)旧中期事業計画(2021年6月期~2023年6月期):2020年8月5日発表
概要
同社は、新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえ、2019年8月7日に開示した中期事業計画(旧計画)を見直し、2021年6月期から2023年6月期に至る中期事業計画を策定した。クラウドサービスを中心としたサブスクリプション型へのビジネスモデルの転換を図り、新規事業への投資についても加速していくとした。
最終年度となる2023年6月期の目標値は、売上高13,500百万円(2020年6月期実績比23.6%増)、営業利益1,500百万円(同44.8%増)、営業利益率11.1%であった。安定的に10%以上の営業利益率を達成し、長期的に営業利益15%の達成を目指すとした。
見直しの理由と同社の目標
システム開発業務やシステム運用業務に感染症の影響は及んでおらず、同社の生産活動は順調に推移している。一方、営業活動については、顧客と直接接触の減少や、顧客都合で新規案件の商談に一部停滞がある。
今後の影響の規模について正確に予想することは難しいが、新規案件の受注の遅延などにより、売上高の成長速度が抑制される可能性があると同社は想定した。
事業環境については、長期的にクレジットカード決済の取扱高が伸びる基調に大きな変化はなく、事業機会の拡大は続くと想定した。 2021年6月期の売上高は前期比ほぼ横ばいの予想であるが、2022年6月期から2023年6月期にかけては、大手カード会社向けの開発案件や、新規にカード事業を開始する顧客向けの開発案件、クラウドサービスの新規案件などにより、売上高の成長が回復すると同社は予想。営業利益については、利益率10%以上を継続的に確保しつつ、2023年6月期に1,500百万円、利益率約11%を計画した。
より長期的には営業利益率15%の達成を目標とするとした。同社の収益源であるシステムの受託開発事業に、リカーリングやサブスクリプションの収益形態の事業を追加し、より長期的に安定的な売上高の成長と利益率向上の実現を目指すとした。
新中期事業計画と旧事業計画での2021年6月期および2022年6月期売上高計画の前提の相違
クラウドサービス:2021年6月期売上高は新計画が940百万円(旧計画1,100百万円)、2022年6月期売上高は新計画が1,300百万円(同1,400百万円)。
その他システム開発:2021年6月期売上高は新計画が8,960百万円(旧計画8,800百万円)、2022年6月期売上高は新計画が9,500百万円(同9,200百万円)。
セキュリティ対策製品(旧プロダクトソリューション):2021年6月期売上高は新計画が1,100百万円(旧計画1,300百万円)、2022年6月期売上高は新計画が1,200百万円(同1,400百万円)。
「3 Ways for the Vision」
同社は、事業規模の拡大、人材育成、風土改革を進めており、それらは着実に進捗している。
事業規模の拡大については、請負の開発から、中期的にはクラウドサービスを中心としたサブスクリプション(ストックビジネス)の比率を高め、長期的には営業利益率15%を目指し、企業価値を高めていきたいとのこと。
新カテゴリ
2021年6月期以降の新カテゴリは、以下の通り。
システム開発:システムの受託開発業務に係る収益が計上される
保守:同社が開発したシステムの保守業務に係る収益が計上される
同社製品:同社製品の販売業務に係る収益が計上される
クラウドサービス:同社製システムの期間貸し業務に係る収益が計上される
ハードウェア:サーバーなどのハードウェアの販売業務に係る収益が計上される
他社製品:他社製品の販売業務に係る収益が計上される
セキュリティ対策製品:同社製、他社製のセキュリティ対策製品の販売業務に係る収益が計上される
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
事業内容
ビジネスの概要
大日本印刷系列のソフト開発会社。カード決済システムの開発に強み
同社の事業は、システム開発とシステム製品(ハードウェア、ソフトウェア)販売によって構成される。主に自社開発パッケージ製品を主体としたソフトウェアソリューションを販売している。
金融機関の顧客が多く、中核製品はクレジットカード取引処理、ローレイテンシー(レイテンシーとは配信データを処理するための遅延時間のこと:ローレイテンシー≒応答速度が速い)のネットワークセキュリティおよびデータ保護に焦点を当てている。
大日本印刷株式会社(東証PRM 7912)が同社株式の50%強を保有する。
主要事業セグメント
同社は、2021年6月期より、開示セグメントを従来の2セグメント(「金融システムソリューション事業」と「プロダクトソリューション事業」)から単一セグメントに変更した。背景は、以下の通り。
同社はこれまで、金融システムソリューション事業とプロダクトソリューション事業の二つの報告セグメントによって経営管理を行ってきたが、両事業の営業活動および製品開発の推進体制を強化し、成長を促進する方針とした。
両事業で個別に管理していた顧客の情報を共有し営業活動を強化するほか、セキュリティ対策技術の開発体制を強化し、新製品・新サービスの開発を促進する。
2020年7月1日付けで組織体制を変更し、経営管理体制を変更したことに伴い、報告セグメントを変更した。
組織改正、経営管理体制の変更については、以下の通り。
旧「金融システムソリューション事業」の営業部門と、旧「プロダクトソリューション事業」のセキュリティ部門の営業部隊を、「営業部門」として統合
旧「金融システムソリューション事業」の開発部門と、旧「プロダクトソリューション事業」のセキュリティ部門の開発部隊を、「開発部門」として統合
2020年6月期までの開示セグメントは、事業活動と組織体制の実態を考慮して、「金融システムソリューション事業」と「プロダクトソリューション事業」の2つに区分されていた。それ以前の区分は、「カードビジネスのフロント業務」、「システムソリューション業務」、「セキュリティシステム業務」からなる3つのセグメントであった。
新カテゴリ
2021年6月期以降の新カテゴリは、以下の通り。
システム開発:システムの受託開発業務に係る収益が計上される
保守:同社が開発したシステムの保守業務に係る収益が計上される
同社製品:同社製品の販売業務に係る収益が計上される
クラウドサービス:同社製システムの期間貸し業務に係る収益が計上される
ハードウェア:サーバーなどのハードウェアの販売業務に係る収益が計上される
他社製品:他社製品の販売業務に係る収益が計上される
セキュリティ対策製品:同社製、他社製のセキュリティ対策製品の販売業務に係る収益が計上される
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
カテゴリ別売上高
同社は、主にクレジットカード会社を中心とした顧客に対して、主にクレジットカードの決済処理を完遂するために必要なネットワーク接続やカードの使用認証等の機能をもつ FEP(Front End Processing)システムの開発業務を行っている。
例えば、FEPシステムの新規開発に際しては、以下の売上高が計上される。
システムの中核を構成する NET+1(ネットプラスワン)の販売による売上高(同社製品)
技術者がそのパッケージをカスタマイズして顧客の機能要件に合わせる開発業務による売上高(システム開発)
開発したソフトウェアを搭載するサーバーの販売による売上高(ハードウェア)
ソフトウェアとハードウェアで構成されたシステムの保守業務による売上高(保守)
また、企業組織の内部情報漏えいを防ぐ同社製品と、サイバーセキュリティ対策のための他社製品の販売業務も行っている。
システム開発事業(2021年6月期売上高5,272百万円:売上高構成比47.1%)
システム開発事業では、主に金融業界の顧客を対象として、ソフトウェア開発を中心にハードウェアやソフトウェアを統合、付加価値をつけたシステムを納入している。システムの受託開発業務に係る収益が計上される。売上高は契約の規模や成立時期が定常的でないフローの形態となる。
現在の同セグメントの売上高はカード系(セグメント売上の約80%)と証券系(同20%)に大別される。カード系では、カードネットワークの接続認証や、カードの不正利用検知などのシステム開発を行う。一方、証券系は、情報配信基盤や業務システム、ネットワーク監視などの開発を行う。
同事業の売上高は請負型のソフト開発が中心であり売上の波がある。このため、同社では事業エリアの拡充に注力している。カード系では、既存製品の更新需要に加えて、カードブランド統合、ブランドプリペイドカード対応、ブランドデビットカード対応、ICカード化対応、ATM海外カード対応など決済にまつわる様々な開発案件の受注を目指している。一方、証券系では、従来は情報配信システムが中心であったが、業務システムへの事業領域拡⼤を目指している。
保守(同1,357百万円:同12.1%)
システム開発事業で同社が開発したシステムの保守サービスを行っている。ソフトウェアとハードウェアで構成されたシステムの保守業務による売上高からなる。定常的に一定規模の売上高を計上できる契約に基づく、ストック売上高の形態となる。
同社製品(同335百万円:同3.0%)
同社では、クレジットカードの決済処理システムの分野においては、国内トップのシェアをもつ自社製パッケージソフトウェア「NET+1」を有している。また、金融業界以外の業界・業種への展開を目的として、の簡略版である新製品OnCore(オンコア。後述)を2015年より発売している。売上高は契約の規模や成立時期が定常的でないフローの形態となる。
クラウドサービス(同942百万円:同8.4%)
クレジットカードのアクワイアリング業務の協同利用型サービスをクラウド上で提供するサービスを2016年秋より開始している。同社製システムの期間貸し業務に係る収益が計上される。クラウドサービス(プラットフォーム、インフラ、アプリケーションを顧客に提供し、月次収入を得る;ストック型サービス)の展開が進み、2021年6月期のクラウドサービス収入は942百万円(前期は828百万円)となった。2021年6月期末において、同社クラウドサービスの導入社数は、加盟店契約システム(アクワイアリング業務の共同利用型サービス)5社、カード不正検知3社、ネットワーク接続4社、ポイントシステム1社となり、今後も導入社数が増加する見込みである。
ハードウェア(同1,638百万円:同14.6%)
開発したソフトウェアを搭載するサーバーの販売による売上高を、ハードウェア売上高として計上している。売上高は契約の規模や成立時期が定常的でないフローの形態となる。
他社製品(同509百万円:同4.5%)
他社製品の販売業務に係る収益が計上される。売上高は契約の規模や成立時期が定常的でないフローの形態となる。
セキュリティ対策製品(同1,131百万円:同10.1%)
売上高は企業組織の内部情報漏えいを防ぐ同社製品と、サイバーセキュリティ対策のための他社製品の販売からなる。売上高は契約の規模や成立時期が定常的でないフローの形態となる。
特定の業界、業種の顧客に限らず、情報セキュリティ分野やその他の分野に利用される自社開発パッケージソフトウェアと、他社製(仕入)パッケージソフトウェアを中心に付加価値の高いシステムを納入し、保守サービスを行っている。販売される自社製パッケージの主力製品はCWAT(社内情報漏洩検知システム)である。他社製パッケージではTraps(サイバー攻撃対策:Palo Alto Networks社製)、Deceptions Everywhere(標的型攻撃対策ソリューション:illusive networks社製)、SecBI(独自の機械学習エンジンにより、長期におよぶ 膨大なログからサイバー攻撃を検出:SecBI社製)、Ayehu NG(IT運用自動化ソリューション:ayehu社製)などがある。
同社では、セキュリティ需要の高まりに対応するため、自社製品に拘らず、優れた製品の販売と更なる規模拡⼤を進めるとしている。この一環として、同社ではサイバーセキュリティ対策が旺盛なイスラエルにおいて3ヶ月ごとに新たな製品の調査を行っている。
大日本印刷社との製品協業の可能性を考えた場合、セキュリティシステム業務は同社にとって高い成長ポテンシャルを秘めたセグメントである。両社は既に株式会社クレディセゾン(東証PRM 8253)向けセキュリティシステムで、大日本印刷社のICカードと同社のセキュリティネットワーク技術を組み合わせる共同開発を実施している。新製品開発に加え、同社は大日本印刷社の既存顧客(CWATシステムの潜在的ユーザー)にアクセスすることもできる。
主な製品・サービスの概要
NET+1
同セグメントの中核製品は、クレジットカードの決済処理システムの分野では、国内トップのシェアをもつ自社製パッケージソフトウェア「NET+1」である。NET+1はクレジットカード会社が取引のオーソリゼーション(カード加盟店がクレジットカード会社に対して、カード利用者の信用照会をすること)やその他のフロントエンド処理に使用するソリューションであり、主要顧客はクレジットカード会社やその他金融機関である。
同社の推定では、NET+1は日本の主なクレジットカード会社のオーソリゼーションシステムの約70%に関与している。NET+1が解決する業務要件とは、クレジットカード会社が加盟店(POS端末単体との接続または大規模クレジットカード処理センターとの接続)およびクレジットカード取引に関係する信用情報センターとの接続に要する特別なネットワークの構築・保守である。
一般的に、クレジットカード取引システムはフロントエンドシステム(加盟店端末からクレジットカード会社に送られる情報処理)とバックエンドシステム(決済、情報検索、顧客情報管理など、クレジットカード会社内での情報処理)に分けられる。同社の「カードビジネスのフロント業務」はフロントエンドシステムに焦点をあてている。バックエンドシステムは大規模システムが必要なため、開発プロジェクトは範囲が広く期間も数年にわたり、通常は最上層の大手システムインテグレーターが扱える案件である。フロントエンドソリューションは重要ではありつつも、通常はバックエンド側のソリューションが選定された後に決定される。
NET+1はハードウェアと自社開発のパッケージソフトで構成されている。システムは通常大幅な改修なく4、5年(時にはそれ以上)は使用されるため、同社は導入済システムの使用期間中の保守サポートでも売上を得ている。
その他の主要製品としては、データ通信関連(自社開発の「市況情報配信システム」)とクレジットカード不正検知システム(「ACEPlus」)などがある。2012年6月期より大日本印刷社のグループ会社向けのシステム開発受託にも積極的に取り組んでいる。
当セグメントの事業を拡大するには、既存および新規顧客へのサーバーライセンス売上を増やすか、新機能を付加して既存顧客に販売する必要がある。(国内証券会社が事業を海外展開していることから)海外販売も事業拡大の潜在領域として考えられる。また、国内でも中小証券会社など顧客数を増やすことを試みている。価格情報のフィードと他のサービス(売買注文処理、アルゴリズム型トレーディングエンジン)を統合し、単一の総合ソリューションとして販売するなどの手段によって、売上増加が図れるかもしれない。ほかに売上を増大させる策として、海外でオフショア開発したパッケージを国内の顧客に販売するなどして、現行製品ラインアップを拡充することも考えられる。
ACEPlus
ACEPlusはクレジットカードの不正利用を検知・防止するソフトウェアシステムである。システムは「スコア」ベースのシステム、もしくはあらかじめ定義した「ルール」を使用して取引が不正かどうかを判断する。スコア算出アルゴリズムは柔軟性の高いソリューションであり、スコア生成のロジックは同社が提供している。システムの利用者がデータを更新することにより、最新の(関連性の高い)取引データに基づいてスコアが算出される。
同社によれば、ACEPlusは通常パッケージ(ソフトウェア、ハードウェアおよびインストール)で、約150百万円で販売している。保守料金は年間6百万~10百万円の範囲である。パッケージ製品の売上総利益は50%を超えており、パッケージソフト製品の典型として購入顧客数が増えれば通常粗利率も向上する。同時にインストールやカスタマイズに関連した変動費がかかることから、純粋な市販パッケージ製品(理論上は100%の売上総利益率を達成できる)よりは売上総利益率は低い。
技術的コメント
取引の不正を判断するにあたって、ACEPlusシステムのロジックは「ルール」を使用するか、もしくは「スコア」を使用するかを設定で変更できる。「ルール」システムは単純明快である。取引が一連の設定基準を満たした場合(短時間で買付操作を連続するなど)は、その買付を遅延させ検証する、または拒絶する等のアクションがとられる。「ルール」システムは数万件のルールに対応している。対して「スコア」システムは、より複雑である。内部ロジックが、特定の買付が以前の買付行動に一致しているかを判断し、取引に対し承認/確認/拒絶の判断を下す。買付行動履歴モデルは過去の買付情報の累積を基盤にしている(システムは特定の消費者の典型的買付パターンを「学習」する)。
スコアリングシステムの学習能力が実用面でどのような意味を持つかというと、ある特定の消費者の取引量が増えれば、その消費者の買付に関しデータベースはさらに「賢く」なるということだ。この特徴は競争優位性と捉えることができる。SR社の理解では、競合製品の中にはソフトメーカーによるデータ更新をベースにしているものがあるが、ACEPlusに比べてかなり割高となる傾向がある。
独自開発したソリューションを好む企業もあるようだが、同社の推定では国内市場の約50%はACEPlusを使用しているとのことである。同社は海外市場(主にアジア)に成長の可能性を見出しており、二つのプラス要因があると述べている。一つには、アジア諸国におけるクレジットカード利用が増えてきていること、そして海外の競合製品に比べてACEPlusはカスタマイズのしやすさで柔軟性が高いことである。
同時に、同社はカスタマイズの必要性がより低いパッケージ製品を開発し、高い利益率を確保する必要性を感じている。カスタマイズを実施するということは追加の労務費がかかるからだ。対して1パッケージソフト製品を追加する費用はさほど高くないため、高い売上総利益率を確保できる。
Faceコンシェル
企業のウェブサイトやモバイルサイト上の情報検索を改善し、利用者のナビゲーションを的確に行うことでサイトの付加価値を高めるツール「Faceコンシェル」を2012年6月期に開発、販売を開始した。「Faceコンシェル」は、企業のウェブサイトやスマートフォンサイトを訪問、利用する顧客に対して適切なページへ誘導したり、顧客からの質問に対し的確な応答をしたりすることで、サイトの使い勝手と付加価値を高めるツールであり、あらゆる業種業態のウェブサイト等へ導入できるシステム製品となる。画面上に登場したコンシェルジュ(人物画)に、口語入力で話しかけ、相談し、質問することで、欲しい情報、商品へと誘導する。2014年6月期より販売活動を本格化させている。
業種的には、FAQの多いサイトを運営する、BtoCビジネスに展開しやすいとしている。当初の想定では、初期開発として1社あたり2,000~3,000万円程度の売上、その後、保守サービス等で、200~300万円/年程度の売上を見込んでいた。しかしながら、拡販に難航していることもあり、初期コストを抑えた新たな販売モデルの展開も模索している。
OnCore(オンコア)
OnCoreは、同社が証券取引関連の業務で培った技術を基に、NET+1やACEPlus等の機能を搭載した、様々なシステム開発におけるプラットフォームの基盤となる製品である。ハードウェアをセットにしたパッケージ型の製品として、金融業界以外の様々な業界、業種のへも販売することを企画しており、2016年6月期には既に第一弾の受注を獲得している。また、国内だけでなく東南アジアでの販売も視野に入れており、開発と並行して、アジアにおけるマーケティングリサーチも実施している。
クラウドサービス(アクワイアリング業務共同利⽤型サービスなど)
同社では、新サービス創出の一環として、クラウド上でアクワイアリング業務(加盟店契約業務)を共同利用できるシステムを提供している。同社によれば、金融機関は共同利用型システムの導入により初期投資負担が軽くなりアクワイアリング業務に参入しやすくなる。また、同社は事業機会の拡大が期待できるとしている。地方銀行を含む複数の金融機関からアクワイアリング業務のシステム開発の引き合いを受けているとのこと。クラウドを共同で利用するシステムであるため、従来のように顧客ごとにオーダーメイドのシステム開発をする部分は少ない(オーダーメイドに相当する部分については、きちんと開発費を徴収する)。
同サービスは、2016年秋から3社に対して提供を開始し、2020年6月期末ではアクワイアリング業務(加盟店システム)のクラウド導入社数は5社となっている。また、その他に、クラウド導入社数は不正検知で3社、ネットワーク接続で2社となっている。クラウドサービスとして、より多くの金融機関からの受注獲得へ向けた営業展開を行っている。
CWAT
CWATは企業のITインフラ内の情報を保護し、リアルタイムで脅威を検知し無効にするための製品として2004年に開発された。システムは社内ネットワークを保護し(不正コンピュータのネットワーク接続阻止)データのセキュリティを確保する(機密情報ファイルの不正使用やアクセスの検知と防止)。CWATはクライアント/サーバーアーキテクチャを採用しているため、システムは社員のPCとシステム全域の情報を収集し監視・コントロールを行うサーバーにインストールされている。
技術的コメント
CWATは侵出(エクストゥルージョン)検知システムである。比較的新しいコンピュータセキュリティ分野で1990年後半に注目を集めだした。それ以前は、セキュリティコミュニティは侵入(イントゥルージョン)検知と防止で「外部から入ってくる脅威」を阻止することに焦点を当てていた。対して侵出(エクストゥルージョン)検知とは、コンピューターネットワーク上またはシステム内部で発生するセキュリティの問題に対応するものである。情報の侵出の例として、社員が機密文書を外部者にEメール送信する、ウイルス感染したワークステーションが専有情報を外部の攻撃者にアップロードするなどがある。
CWATシステムはローカルネットワーク(単一施設内)に適しており、オプションで会社拠点間の保護を行うように設定することもできる。同社から提供されたデータによると、ソフトウェアは英語、日本語、中国語、韓国語と多言語に対応しており、混合言語環境での中央管理が可能である。
侵出検知システム開発における課題は、脅威が存在するか否かを検知するために社内外のネットワークトラフィックを解析しなければならない点である。これに対して侵入検知はネットワーク上のルーターまたは他のゲートウェイの外部トラフィックを遮断するという単純な方法もあり得る。侵出検知システムが最大の効果を出すには、ネットワークから外に配信されるデータと受信データを審査し、ネットワーク上で交換される情報の種類を判断できるロジックを備えていなければならない。侵出検知システムが解決しなければならない問題の例として、Eメールに添付された会社の専有情報のメモや、友人に送信された私用レターなどがある。
CWATは包括的情報セキュリティシステムである。社員による情報アクセスの監視とコントロールを実施し、情報の持ち出しを検知し防止することができる。
通常、顧客はCWATシステムと保守をパッケージで購入する。ソフトウェアは1ユーザー(PC1台)当たりの価格をベースにしており、1台当たり約19,800円である。
その他セキュリティ対策製品
同社では、(同社が)技術的に優位性が高いとみなした他社製システムやパッケージ販売を2012年6月期より本格的に開始した。同社の役割としては、単なる他社製品の販売に留まらず、他社製品をユーザーサイドにコーディネートするコンサルティング的対応も含まれる。米国パルアルトネットワーク社の製品の「Traps」をはじめ、様々な製品の販売を行っている。「Traps」は、マルウェアなどによるサイバー攻撃への対策製品である。
また、同社が2016年より販売している「Deceptions Everywhere」はイスラエルillusive networks社製の標的型攻撃対策ソリューションである。高度な技術を持った攻撃者によるマニュアル(手動)攻撃に対抗するため、組織内のエンドポイント上に膨大な罠(Deceptions)を張り巡らせることによって、侵入・潜伏した攻撃者を過検知なし・エージェントレスで検知する欺瞞技術を用いたソリューションである。
米ayehu(アエフ)社製Ayehu NGは、ベンダーフリーの中立的な自動化・オーケストレーターとして機能し、ITおよびセキュリティ業務の効率化を促進するIT運用自動化ソリューションである。
2018年7月には標的型攻撃をAIで検出する「Sec BI」(自律解析エンジンでプロキシ通信ログを分析し、隠れた脅威を発見する)について、同社はイスラエルSecBI社と国内独占販売契約を提携した(2018年7月)。PCに実装するのではなく、企業において必ず通過するプロキシに溜まっているログをAIで分析し、悪質なソフトウェアを見つけるとのこと。
同社では、今後も同社製品と他社製品によりセキュリティソリューション関連のラインナップを拡充し、市場で高まりつつあるセキュリティ対策のニーズに応えるとしている。