シップヘルスケアホールディングス株式会社は、株式譲渡契約書締結(子会社の取得)に関して発表した。
(リリースへのリンクはこちら)
同社は、同日開催の取締役会において、キングラン株式会社(東京都千代田区、非上場)の株式を追加取得する方針および同社を連結子会社化するための株式譲渡契約書を締結することを決議した、と発表した。
同社は、既に2022年3月4日開催の取締役会において、キングラン社の株式につき代表取締役社長の松原氏より一部取得すること、および松原氏を含む各株主からの段階的株式追加取得を検討する旨を決議し、公表している。その後、この追加取得に関する同社内および各株主との検討と交渉の結果、キングラン社の株主との間で同社との株式売却交渉が調った。そこで本日、キングラン社株式を追加取得する方針と、キングラン社を連結子会社化するための株式譲渡契約書を締結することを決議するに至った。
キングラン社については、本社所在地は東京都千代田区、主な事業内容は、医療・介護施設向けカーテンリース・販売事業、什器・備品・設備総合支援事業、清掃事業など。2021年5月期の連結総資産は21,357百万円(前年比33.0%増)、連結売上高26,203百万円(同21.0%増)、連結営業利益859百万円(同27.4%増)、連結経常利益1,040百万円(同47.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益656百万円(同60.0%増)。同社の取得株式数は673,536株(議決権所有割合83.1%)。株式譲渡実行日は2022年7月1日予定。本件による2023年3月期決算に与える影響は精査中。詳細はリリース参照。
シップヘルスケアホールディングス株式会社は、業績予想の修正に関して発表した。
修正の理由は以下の3点。(1)前年度下半期に顕著であった補助金関連の感染対策商品拡販と医療機器更新需要が当期は低調であること、(2)トータルパックプロデュース事業のメーカー系ビジネスにおいて、電子部品や樹脂ビニール系製品が入手困難な事態となり、新規契約を一時的に延期せざるを得ない事態となったこと。また、国内外問わず一部医療機器について納期遅延が生じていること、(3)ミャンマーにおける政変・コロナ禍・金融規制の影響等により、同社の現地子会社の業績が当初発表予想を下回る見通しとなったこと、など。詳細はリリース参照。
シップヘルスケアホールディングス株式会社は、キングラン株式会社の株式取得に関して発表した。
同社は、同日開催の取締役会において、キングラン株式会社(東京都、非公開、以下、キングラン社)の株式の一部を、キングラン社の代表取締役より取得することを決議した、と発表した。また今後、キングラン社代表取締役を含む各株主からの段階的株式追加取得を検討する旨の決議も行っている。
株式取得の目的は、キングラン社とその子会社がこれまで培ってきた製品力や広範な顧客基盤を活用することにより、同社のトータルパックプロデュース事業をはじめ、同社グループ全体へのシナジー効果が創出され、更なる企業価値の向上につながるため。今回の取得株式数は121千株(議決権割合14.9%)で、同社の2022年3月期業績への影響はない。取得金額は非開示。
キングラン社とその子会社は、医療・介護施設向けカーテンリース・販売事業のパイオニア企業であり、その他にも什器・備品・設備総合支援事業、清掃事業、リフォーム事業、福祉車両販売事業、介護施設運営事業、給食事業等を展開している。キングラン社は、総資産21,357百万円(2021年5月期)で、2021年5月期の連結売上高は26,303百万円(前年比21.0%増)、営業利益859百万円(同27.4%増)。詳細はリリース参照。
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化するなか、ワクチン接種が普及し経済活動回復への兆しがあった。しかし、2022年1月にはオミクロン変異株により感染が再拡大したほか、緊迫するウクライナ情勢を巡る地政学的リスク、原燃料価格や金利の上昇、電装部品不足、金融施策・為替相場の動向等により、依然として先行きは不透明な状況が続いている。医療業界でも、同感染症の影響が緩和されつつあるものの、引き続き診療制限が行われ手術が一部延期となる等、通常の医療提供が例年に比べ抑制気味で推移した。これに対し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した遠隔診断など、新しい取り組みも出始めている。
トータルパックプロデュース事業では、プロジェクト案件の小型化や、メーカー系で電子部品や樹脂ビニール系製品の入手困難による契約の一時的な延期の事態もあった。また、メディカルサプライ事業では、感染症対策商品需要の反動減の影響があった。これら主要2セグメントの減益が影響し、営業利益は同5.9%減となった。
セグメント売上高(外部顧客に対する売上高):99,539百万円(前年比4.6%減)
セグメント利益:9,265百万円(同5.3%減)
メーカー系において、電装品部品調達のひっ迫による受注調整の影響があったことや、プロジェクト案件において、大半の案件が中規模から小規模であったこと、新型コロナウイルス感染症対策補助金を活用する感染症対策商品需要の反動減などで業績が低調に推移した。一方、大阪コロナ大規模医療・療養センターの整備・運営業務を始めとした同感染症対策の各種サービスを新たに受託した。また、海外事業では、ミャンマー連邦共和国の子会社2社については、新型コロナウイルス感染症によるロックダウンや、政変・欧米による金融制裁の影響を受けながらも、概ね同社計画通りの実績となった。
セグメント売上高(外部顧客に対する売上高):360,635百万円(同5.7%増)
セグメント利益:6,209百万円(同10.8%減)
SPD(院内部品質管理)の受託が引き続き拡大した。また、業界初となる診療材料の自動倉庫「大阪ソリューションセンター」が本格的に稼働を開始した。しかしながら、感染症対策商品需要の反動減や一部製品の納品遅延等もあり、セグメント利益は減益となった。
セグメント売上高(外部顧客に対する売上高):25,247百万円(同2.8%増)
セグメント利益:2,407百万円(同7.6%増)
同社施設が、新型コロナウイルス感染症対策として入居者とその家族とをWEB環境で繋ぐなど、細やかな情報共有システムの活用を顧客から評価されたことから、引き続き高い入居率を維持した。また、M&A等により3施設増加したほか、給食事業における受託先の増加や障がい者就労支援事業である野菜の水耕栽培も軌道に乗り、増収増益となった。
セグメント売上高(外部顧客に対する売上高):28,930百万円(同6.9%増)
セグメント利益:3,200百万円(同11.0%増)
薬価改定の影響は受けたものの、前年度に比べて医療機関の受診回数が回復してきたことに加え、新規出店や小型店舗のM&Aなどを実施したことで、業績は堅調に推移した。
日本では、団塊の世代(日本における第一次ベビーブームが起きた時代に生まれた、1947年~1949年生まれの世代)の高齢化、および少子化が急速に進んでいることから、将来にわたり国の医療費・介護費の抑制・単価の引き下げが継続される、と同社では予測している。
また、医療介護総合確保推進法(正式名称「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備に関する法律」)の施行を受け、日本では、2025年に向けた医療提供体制の改革が進み、地域包括ケアシステムの構築が進められる計画である。
同社は引き続き事業成長を目指す方針である。同社グループは、「医療」「保健」「福祉」「介護」「サービス」の分野で最適なソリューションを一括で提供できる体制を強化する計画である。
同社は2017年11月に中期経営計画「SHIP VISION 2020」を発表した。計画期間は、2019年3月期から2021年3月期までの3か年で、計画最終年度の目標数値は2021年3月期売上高5,000億円、営業利益210億円(いずれも過去最高)としていた。長期的には売上高1兆円を目指す中で、1)具体的な目標年度・数値、それを達成するための具体的な施策が発表された点、2)第5の事業領域と位置付けるヘルスケアサービス(以下ヘルスケア)の収益計画が公表された。
2021年3月期実績は、売上高497,516百万円、営業利益21,800百万円と、計画を概ね達成した。中期経営計画の期間中は、1)コア事業の更なる成長、2)第5の事業領域ヘルスケア事業の本格立上げ、3)積極的なM&A、4)株主還元の強化、を重要施策として掲げてきた。
また、目指す姿として「売上高1兆円を目指す企業集団として更なる成長を図るため、連結50社がSHIP理念経営の下に連結連動し、各事業領域の高成長を持続するとともに、経営基盤の共有化やカイゼン活動の定着により経営体力の強化を図ることに加え、時代の変化に先駆けた新たな事業領域を確立し、将来を見据えた変化に強いヘルスケア企業集団作りを目指す」としている。
同社は、事業環境に関しては、少子高齢化による人口減少時代を迎え、地域医療構想による病院統廃合・機能集約の時代背景や恒常化した医療費抑制策により、ヘルスケアを取り巻く環境は今後更に厳しい状況が続く、と予見している。中期経営計画では、コア事業の各成長戦略の推進による高成長の持続を実現し、IT基盤の共有化や拠点等の集約、カイゼン活動の実践等による経営力強化を図り、安定成長を実現する、という点に注力する方針を示した。各事業における事業環境と具体的な事業戦略は以下のとおりである。
TPP事業では、2021年3月期の最終目標値に対して、実績は売上高で約20,000百万円、セグメント利益で約2,400百万円の未達となった。計画最終年度の2021年3月期には、新型コロナウイルス感染症拡大の影響があった。補助金などを背景にした感染対策用の医療機器・設備投資増加などプラス面はあったものの、感染対策以外の機器需要減、外来患者の受診抑制・手術件数減少による病院経営の悪化(重粒子線がん治療施設も含む)などマイナス面も多かった。
TPP事業に関しては、地域医療構想のもと病院の統廃合が進展し、且つ、高機能化・大規模化が進む政策が採られている。同社の主要ターゲットである高機能・専門病院は診療機能を高機能にするために診療部門の面積を確保する必要があり、一床あたりの建設面積も大型化している。
そうした需要に対し、1)商社系においては、統合・再編ノウハウの蓄積とプロジェクトの大型・長期化への対応力強化、グループシナジーの拡大・深化、海外案件の開拓を図り、2)メーカー系は「モノ」づくりから「コト」づくりへの転換を更に進めるとともに戦略的海外展開を進め、IT基盤の統合整備、拠点の見直し等による経営力強化を図った。
プロジェクト案件は受注活動から売上まで数年かかるが、既に確保している受注残を考慮しても中計目標値の達成可能性は高いとのこと。2017年3月期に5,000百万円超の大型案件2件を計上したが、2018年3月期以降の大型物件は、3,000百万円規模の案件がコアになっている。2019年3月期以降も都市部の大学病院案件などは継続的に大型案件を抱えており、2020年3月期は同社の想定通り、案件の大規模化の動きが業績にも表れた。しかしながら2021年3月期は、新型コロナウイルス感染症拡大といった想定外の事業環境となったことや、医療機関の大規模な投資の端境期にも当たったことから、プロジェクト案件数は減少し、中小規模なものが中心となった。
メディカルサプライ事業では、2021年3月期の最終目標値に対して、実績は売上高、セグメント利益ともに上回った。とりわけ利益率は計画を0.5ポイント上回る改善となった。メディカルサプライ事業は、積極的な戦略的M&Aに注力し全国への面展開を図るとともに、関西エリアでは商品マスタ・情報システムの統一による購買力の強化を図り、基幹物流センターの建設に向けた検討を開始。また、PBブランドなど同社独自の新商品の提案・開発を図った。
計画策定当初は、営業利益率についてはほぼ1.5%と横這いを見込でいた。SR社では、この背景として、a)合併した小西共和ホールディングスとの商品マスタ・情報システムの統合が2019年3月期までかかること、b)消費増税導入(2019年10月)、c) 機器の償還価格(2018年4月までは2年に1度、2019年から毎年、診療報酬と同時に改定)の影響を考えたもの、とみていた。しかし同社は、2021年3月期を中心に、傘下に加わった企業も含めたグループ全体の物流コストの改善を進め、利益率の改善に繋げている。同社では、将来的には営業利益率を3%へと改善させたいとの見方を示している。
事業環境としては業界の収斂が進みつつあり、ここ10年程度で売上高100,000百万円超のグループが6つ(同社含む)になったとみている。同社は引き続きM&Aに注力し、購買力の強化等を図っていく考えである。
ライフケア事業では、2021年3月期の最終目標値に対して、実績は売上高で約2,000百万円下回ったものの、セグメント利益は約400百万円上回り、セグメント利益率も計画の6.8%に対し、9.1%と2.3ポイント改善した。
同社は、計画策定当初より、全国施設の一体経営を更に強化し、地域交流の推進・入居プランの多角化等を通じ入居率98%以上を維持するとともに、教育研修の充実、外国人技能実習生の受入等による人材確保を図る計画であった。また施設運営に関しても、計画期間中の3ヵ年では施設を増やすことなく、既存施設の入居率改善に注力する方針を示した。
施設運営に関しては、入居者への利便性を高め、家族との面会のし易さ、新型コロナ感染症拡大期における衛生管理強化、メディカルケア体制強化などを進め、入居率は、計画通り98%以上を維持した。同社によれば、入居希望が多いことから、応募状況も踏まえ、2021年3月期には、目標を上回るほぼ100%近い入居率を目指していた。
調剤事業では、2021年3月期の最終目標値に対して、実績は売上高で約2,000百万円、セグメント利益は約100百万円下回った。
調剤事業では、地域ドミナント効果がある戦略的M&Aを通じ拠点の拡大を図るとともに、かかりつけ薬局の充実と地域包括システムをサポートする体制づくりを強化した。他セグメントと連携した戦略的な出店をM&Aで行った。
厚生労働省では、2025年における高齢者人口は人口の30%(内、75歳以上は18%)になると予想しており、医療費や介護費など社会保障費の急増が懸念されている(「市場とバリューチェーン」の項参照)。病院経営の観点からは、医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実に向けた診療報酬の見直しが実施され、消費税増税、電気料金の値上げ等の影響により、医療機関の経営を取り巻く環境は厳しくなっている。
その一方で、高度医療に対する診療報酬の配慮や、「地域医療構想」に基づく地域での機能分担の進展などにより、プロジェクト案件は引き続き増加基調にある。同社は、大学病院、超急性期病院、地域の中核病院を中心に医療機関は収斂が進むとみており、関連して出てくる需要を着実に捕捉していく方針にある。また、こうしたプロジェクト案件が仮に2025年以降に減少したとしても、収益成長を担保すべく、以下のように大阪重粒子線がん治療施設にも携わるなど、中長期的な取組みを進めている。
本中期経営計画では、国内外のヘルスケアサービス事業の確立と各事業拠点を起点とする更なるビジネスチャンスの拡大を図った(計画期間中は、当分野はTPP事業に含まれている)。国内においては、重粒子線施設経営(重粒子線)の2021年3月期単年度黒字化と昭島国際法務PFI事業(PFI)の安定経営の実現を目指した。海外においては、バングラデシュ病院事業の2021年3月期単年度黒字化とミャンマー事業の安定経営の実現を目指した。また、現在進行する各事業拠点を起点として、そのノウハウ・人脈を通じてTPP事業の事業機会の拡大を図る。
重粒子線がん治療は、独立行政法人放射線医学総合研究所(放医研)が世界に先駆けて実運用に成功した技術であり、経済産業省では、1)難治がんの克服、国民医療費削減への貢献、2)日本発中粒子線がん治療技術の戦略的な海外展開及び治療法の国際標準化を目指している。同社は佐賀県鳥栖の九州国際重粒子線がん治療センター開設にあたってコンサルティングを受託、大阪府立成人病センターの建替えに伴う重粒子線がん治療施設プロジェクトにおいても同社の参画が決定。大阪重粒子線がん治療施設は民間初の大規模な設備投資リスクを伴う事業であり、同社は施設整備運営事業会社を新設して施設運営に携わる。
投資規模は、新設会社「大阪重粒子線施設管理」への出資(同社100%)4,500百万円含めて総額13,466百万円。投資回収は2030年3月期(12年)を予定。施設は2015年8月着工、2018年3月完成。減価償却費は2018年3月期が400百万円弱、2019年3月期に約750百万円でピークを付けた後は、2020年3月期以降は8%前後の減少が続く計画となっている。
同社は2014年10月に新株式発行及び自己株式の処分並びに株式売出しについて発表、21,630百万円を調達した(公募増資700万株、自己株式処分100万株、オーバーアロットメントによる売出120万株)。資金使途は大阪重粒子線がん治療施設に14,817百万円(設備投資等で11,817百万円、新設会社の株式取得で3,000百万円)、海外案件に3,615百万円(バングラデシュ案件3,400百万円、ミャンマー案件215百万円)、他である。
今回の増資の背景は、売上高1兆円企業に向けた長期戦略の布石となるものであり、重粒子線施設を核とした第5の柱(セグメント)となり得るヘルスケアサービス事業への投資、海外事業の拡大、また、更なるM&Aを見越した手許資金の確保があるとSR社ではみている。
同社は当初、大阪重粒子線がん治療施設の年間治療件数、及び料金について、初年度120件、次年度600件、3年目800件、最大1,000~1,200件、料金は、保険適用される一部の腫瘍治療(切除非適応の骨軟部腫瘍)が237.5万円(自己負担3割)、他の腫瘍は先進医療部分314万円が自己負担と考えていた。この場合、仮に比率が1:1と仮定すると1件あたり約270万円、1,000件を乗じると年間27,000百万円、2023年3月期の売上計画と一致する。
重粒子線は3基設置され、九州の施設が2基設置し年間約640件の治療実績がある。九州圏と近畿圏の人口の差異も考慮すると更に稼働率が高まる期待もある。しかしながら、2019年3月には、前立せんがんに対しても重粒子線治療の保険適用が拡大されたため、同社は想定以上の治療希望者の増加に直面した。また、想定単価も保険適用拡大により低下しているため、中期経営計画策定時の想定より低単価での設備稼働率上昇により、収益化に関しては計画より時間がかかる見通しとなった。
需要については、大阪府の2012年8月の「最先端がん医療施設整備検討委員会」報告書によると、2006年の大阪府人口8,642千人に対してがん罹患者数は36,680名、うち重粒子線もしくは陽子線治療が必要な患者数の推計は2,361人であった。これを、2014年11月1日の大阪府推計人口8,852千人に置き換えると推計数は2,418人となる。また、これを近畿圏(大阪府、京都府、奈良県、兵庫県等2府4件)に拡大して試算すると年間約5,500人の需要が見込めることになる。
同社が大阪重粒子線がん治療施設で採用する重粒子線がん治療技術は、従来の4施設で用いられている「拡大ビーム照射技術(ワブラ法)」ではなくて、「高速スキャニング照射技術」というもの。
高速スキャニング照射技術は、従来法(拡大ビーム照射技術)と比較して高速、高精度で他臓器への負担軽減が可能であり、且つ、任意の3次元照射が可能で主要全体に均一な線量を与えることが可能になった技術である。また、従来法では必要であった重粒子線と対象物間のコリメータ他の部品(放射線廃棄物となる)が不必要であり、施設運用の効率化も図られる。そのため、九州国際重粒子線がん治療センターの新設(3室目)、神奈川県立がんセンターも同技術を採用した設備を導入した。
同社は設備導入にあたって日立製作所(東証1部、6501)の設備を導入したが、これは既に日立製作所が陽子線治療システムで高速スキャニング照射技術を採用して実績があることによるもの。なお、神奈川県立がんセンターは東芝(東証1部、6502)製(当時)、九州国際重粒子線がん治療センターは三菱電機(東証1部、6503)製とのことである。
海外事業では、ミャンマー・ヤンゴンにおける日本式医療拠点整備事業の経営を安定化させるとともに、バングラデシュ病院事業が2021年夏頃にグランドオープン予定。同事業は事業スキーム決定後、2016年2月に正式調印し2018年の稼働を予定していた。テロが発生した影響で着工が2017年4月に遅れた。その後、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて工事が一時中断し、2020年8月に工事再開している。病床数は600、当初の予定では、営業利益は、2022年3月期以降の本格稼働後に年間約300百万円、2025年3月期以降は診療科などの充実を図ることで700~800百万円、営業利益率20%超を目標としていた。総投資額は3,830百万円(1.5円/1ダッカ)、投資回収は12年(2031年3月期)を予定する。
PFI事業は、重粒子線がん治療施設、バングラデシュやミャンマー等の海外事業、ヘルスケアリートを通じた展開に次いで、国際法務総合センターの維持管理・運営事業(PFI方式)の入札案件を2016年10月に獲得したもの。
国際法務総合センターは法務省が新たに東京都昭島市に設置を計画している矯正研修所や医療刑務所等の統合施設で、2017年9月に事業を開始。維持管理・運営にあたってはPFI手法を活用して民間委託されており、2016年10月に同社グループ(同社子会社を筆頭株主としてSPCを組成)が23,841百万円で落札した。PFIによる事業期間は2017年9月から2027年3月までを予定しており、同社は受託業務のうち、医薬品・材料等の管理・輸送、医療器具の滅菌・消毒、理容・給食業務、職員食堂運営、そして医療機器等の整備、維持管理・更新業務を担う。
事業費23,841百万円が全て同社の収入となる訳ではないが、医療機器の購入及び更新費は含まれていることから、2018年3月期及び更新時期(2024年3月期)に厚く、また各年に安定した収益が得られる計画である。また、医薬品・診断材料、消耗品の購入費は国の負担となっている。
同社は創業来M&A投資を積極的に実施しており、中期経営計画期間中も以下のようなM&A投資を実施してきた。同社は、今後も医療機器ディーラー、調剤薬局を中心に、コア事業の面展開による収益力向上を図るため、積極的に戦略的M&Aを実践し、更なる売上・利益の成長を目指すとしている。
2019年3月期~2021年3月期の3期間で、最大約160億円の株主還元策を実施する計画である。このうち配当は3期間で約10,000百万円、自社株購入は毎期2,000百万円(3期間で6,000百万円)を上限に実施する予定である。
同社は、2021年3月期をもって中期経営計画の最終年度を迎えている。次の中期経営計画を発表するタイミングではあるが、事業環境は、前中期経営計画期間中に新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、同社がそれまで想定していたものとは大きく変容している。同社は、中長期的な視点で、売上高1兆円に向けて同社グループでの戦略強化・発展を目標としており、SR社では、同社はこうした経営方針の中で、新たな中期経営計画を策定するものと考えている。
同社グループの事業は、持株会社ならびにM&Aで買収してきた事業会社を中心とする連結子会社47社および関連会社(持分法適用会社)2社により構成されている(2020年3月末)。
これらの企業群は、いずれも医療・保健・介護・福祉の4分野を事業ドメインとして設定しており、連結セグメント情報では事業内容ごとに、1)トータルパックプロデュース、2)メディカルサプライ、3)ライフケア、4)調剤薬局、5)その他、に分類されている。営業利益に対する貢献度でみた際、最も寄与度の大きいセグメントは、同社のコア事業でもあり、医療機関等に対する(コンサルティングに重きが置かれた)プロジェクト案件が含まれるトータルパックプロデュースである。
主要経営指標
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意
直近更新内容
株式譲渡契約書締結(子会社の取得)
シップヘルスケアホールディングス株式会社は、株式譲渡契約書締結(子会社の取得)に関して発表した。
(リリースへのリンクはこちら)
同社は、同日開催の取締役会において、キングラン株式会社(東京都千代田区、非上場)の株式を追加取得する方針および同社を連結子会社化するための株式譲渡契約書を締結することを決議した、と発表した。
同社は、既に2022年3月4日開催の取締役会において、キングラン社の株式につき代表取締役社長の松原氏より一部取得すること、および松原氏を含む各株主からの段階的株式追加取得を検討する旨を決議し、公表している。その後、この追加取得に関する同社内および各株主との検討と交渉の結果、キングラン社の株主との間で同社との株式売却交渉が調った。そこで本日、キングラン社株式を追加取得する方針と、キングラン社を連結子会社化するための株式譲渡契約書を締結することを決議するに至った。
キングラン社については、本社所在地は東京都千代田区、主な事業内容は、医療・介護施設向けカーテンリース・販売事業、什器・備品・設備総合支援事業、清掃事業など。2021年5月期の連結総資産は21,357百万円(前年比33.0%増)、連結売上高26,203百万円(同21.0%増)、連結営業利益859百万円(同27.4%増)、連結経常利益1,040百万円(同47.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益656百万円(同60.0%増)。同社の取得株式数は673,536株(議決権所有割合83.1%)。株式譲渡実行日は2022年7月1日予定。本件による2023年3月期決算に与える影響は精査中。詳細はリリース参照。
業績予想の修正、キングラン株式会社の株式取得
シップヘルスケアホールディングス株式会社は、業績予想の修正に関して発表した。
(リリースへのリンクはこちら)
2022年3月期通期業績見通し修正(2022年3月4日付け)
修正の理由
修正の理由は以下の3点。(1)前年度下半期に顕著であった補助金関連の感染対策商品拡販と医療機器更新需要が当期は低調であること、(2)トータルパックプロデュース事業のメーカー系ビジネスにおいて、電子部品や樹脂ビニール系製品が入手困難な事態となり、新規契約を一時的に延期せざるを得ない事態となったこと。また、国内外問わず一部医療機器について納期遅延が生じていること、(3)ミャンマーにおける政変・コロナ禍・金融規制の影響等により、同社の現地子会社の業績が当初発表予想を下回る見通しとなったこと、など。詳細はリリース参照。
シップヘルスケアホールディングス株式会社は、キングラン株式会社の株式取得に関して発表した。
(リリースへのリンクはこちら)
キングラン株式会社の株式取得
同社は、同日開催の取締役会において、キングラン株式会社(東京都、非公開、以下、キングラン社)の株式の一部を、キングラン社の代表取締役より取得することを決議した、と発表した。また今後、キングラン社代表取締役を含む各株主からの段階的株式追加取得を検討する旨の決議も行っている。
株式取得の目的は、キングラン社とその子会社がこれまで培ってきた製品力や広範な顧客基盤を活用することにより、同社のトータルパックプロデュース事業をはじめ、同社グループ全体へのシナジー効果が創出され、更なる企業価値の向上につながるため。今回の取得株式数は121千株(議決権割合14.9%)で、同社の2022年3月期業績への影響はない。取得金額は非開示。
キングラン社とその子会社は、医療・介護施設向けカーテンリース・販売事業のパイオニア企業であり、その他にも什器・備品・設備総合支援事業、清掃事業、リフォーム事業、福祉車両販売事業、介護施設運営事業、給食事業等を展開している。キングラン社は、総資産21,357百万円(2021年5月期)で、2021年5月期の連結売上高は26,303百万円(前年比21.0%増)、営業利益859百万円(同27.4%増)。詳細はリリース参照。
業績動向
四半期業績動向
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意
2022年3月期通期決算(2022年5月10日発表)
2022年3月期通期(2021年4月~2022年3月)実績
事業環境
新型コロナウイルス感染症の影響が長期化するなか、ワクチン接種が普及し経済活動回復への兆しがあった。しかし、2022年1月にはオミクロン変異株により感染が再拡大したほか、緊迫するウクライナ情勢を巡る地政学的リスク、原燃料価格や金利の上昇、電装部品不足、金融施策・為替相場の動向等により、依然として先行きは不透明な状況が続いている。医療業界でも、同感染症の影響が緩和されつつあるものの、引き続き診療制限が行われ手術が一部延期となる等、通常の医療提供が例年に比べ抑制気味で推移した。これに対し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した遠隔診断など、新しい取り組みも出始めている。
同社概況
トータルパックプロデュース事業では、プロジェクト案件の小型化や、メーカー系で電子部品や樹脂ビニール系製品の入手困難による契約の一時的な延期の事態もあった。また、メディカルサプライ事業では、感染症対策商品需要の反動減の影響があった。これら主要2セグメントの減益が影響し、営業利益は同5.9%減となった。
2022年3月期通期セグメント別業績概要
トータルパックプロデュース事業
セグメント売上高(外部顧客に対する売上高):99,539百万円(前年比4.6%減)
セグメント利益:9,265百万円(同5.3%減)
概況
メーカー系において、電装品部品調達のひっ迫による受注調整の影響があったことや、プロジェクト案件において、大半の案件が中規模から小規模であったこと、新型コロナウイルス感染症対策補助金を活用する感染症対策商品需要の反動減などで業績が低調に推移した。一方、大阪コロナ大規模医療・療養センターの整備・運営業務を始めとした同感染症対策の各種サービスを新たに受託した。また、海外事業では、ミャンマー連邦共和国の子会社2社については、新型コロナウイルス感染症によるロックダウンや、政変・欧米による金融制裁の影響を受けながらも、概ね同社計画通りの実績となった。
メディカルサプライ事業
セグメント売上高(外部顧客に対する売上高):360,635百万円(同5.7%増)
セグメント利益:6,209百万円(同10.8%減)
概況
SPD(院内部品質管理)の受託が引き続き拡大した。また、業界初となる診療材料の自動倉庫「大阪ソリューションセンター」が本格的に稼働を開始した。しかしながら、感染症対策商品需要の反動減や一部製品の納品遅延等もあり、セグメント利益は減益となった。
ライフケア事業
セグメント売上高(外部顧客に対する売上高):25,247百万円(同2.8%増)
セグメント利益:2,407百万円(同7.6%増)
概況
同社施設が、新型コロナウイルス感染症対策として入居者とその家族とをWEB環境で繋ぐなど、細やかな情報共有システムの活用を顧客から評価されたことから、引き続き高い入居率を維持した。また、M&A等により3施設増加したほか、給食事業における受託先の増加や障がい者就労支援事業である野菜の水耕栽培も軌道に乗り、増収増益となった。
調剤薬局事業
セグメント売上高(外部顧客に対する売上高):28,930百万円(同6.9%増)
セグメント利益:3,200百万円(同11.0%増)
概況
薬価改定の影響は受けたものの、前年度に比べて医療機関の受診回数が回復してきたことに加え、新規出店や小型店舗のM&Aなどを実施したことで、業績は堅調に推移した。
2023年3月期会社業績見通し
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意
**営業利益率は未調整のセグメント利益で算出
2023年3月期業績見通し
日本では、団塊の世代(日本における第一次ベビーブームが起きた時代に生まれた、1947年~1949年生まれの世代)の高齢化、および少子化が急速に進んでいることから、将来にわたり国の医療費・介護費の抑制・単価の引き下げが継続される、と同社では予測している。
また、医療介護総合確保推進法(正式名称「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備に関する法律」)の施行を受け、日本では、2025年に向けた医療提供体制の改革が進み、地域包括ケアシステムの構築が進められる計画である。
同社は引き続き事業成長を目指す方針である。同社グループは、「医療」「保健」「福祉」「介護」「サービス」の分野で最適なソリューションを一括で提供できる体制を強化する計画である。
過去の会社予想と実績の差異
注:表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意
中期経営計画
中期経営計画「SHIP VISION 2020」振り返り
同社は2017年11月に中期経営計画「SHIP VISION 2020」を発表した。計画期間は、2019年3月期から2021年3月期までの3か年で、計画最終年度の目標数値は2021年3月期売上高5,000億円、営業利益210億円(いずれも過去最高)としていた。長期的には売上高1兆円を目指す中で、1)具体的な目標年度・数値、それを達成するための具体的な施策が発表された点、2)第5の事業領域と位置付けるヘルスケアサービス(以下ヘルスケア)の収益計画が公表された。
目標はほぼ達成
2021年3月期実績は、売上高497,516百万円、営業利益21,800百万円と、計画を概ね達成した。中期経営計画の期間中は、1)コア事業の更なる成長、2)第5の事業領域ヘルスケア事業の本格立上げ、3)積極的なM&A、4)株主還元の強化、を重要施策として掲げてきた。
また、目指す姿として「売上高1兆円を目指す企業集団として更なる成長を図るため、連結50社がSHIP理念経営の下に連結連動し、各事業領域の高成長を持続するとともに、経営基盤の共有化やカイゼン活動の定着により経営体力の強化を図ることに加え、時代の変化に先駆けた新たな事業領域を確立し、将来を見据えた変化に強いヘルスケア企業集団作りを目指す」としている。
コア事業の更なる成長
既存4事業を中心としたコア事業の成長持続
同社は、事業環境に関しては、少子高齢化による人口減少時代を迎え、地域医療構想による病院統廃合・機能集約の時代背景や恒常化した医療費抑制策により、ヘルスケアを取り巻く環境は今後更に厳しい状況が続く、と予見している。中期経営計画では、コア事業の各成長戦略の推進による高成長の持続を実現し、IT基盤の共有化や拠点等の集約、カイゼン活動の実践等による経営力強化を図り、安定成長を実現する、という点に注力する方針を示した。各事業における事業環境と具体的な事業戦略は以下のとおりである。
トータルパックプロデュース(TPP)事業
TPP事業では、2021年3月期の最終目標値に対して、実績は売上高で約20,000百万円、セグメント利益で約2,400百万円の未達となった。計画最終年度の2021年3月期には、新型コロナウイルス感染症拡大の影響があった。補助金などを背景にした感染対策用の医療機器・設備投資増加などプラス面はあったものの、感染対策以外の機器需要減、外来患者の受診抑制・手術件数減少による病院経営の悪化(重粒子線がん治療施設も含む)などマイナス面も多かった。
TPP事業に関しては、地域医療構想のもと病院の統廃合が進展し、且つ、高機能化・大規模化が進む政策が採られている。同社の主要ターゲットである高機能・専門病院は診療機能を高機能にするために診療部門の面積を確保する必要があり、一床あたりの建設面積も大型化している。
そうした需要に対し、1)商社系においては、統合・再編ノウハウの蓄積とプロジェクトの大型・長期化への対応力強化、グループシナジーの拡大・深化、海外案件の開拓を図り、2)メーカー系は「モノ」づくりから「コト」づくりへの転換を更に進めるとともに戦略的海外展開を進め、IT基盤の統合整備、拠点の見直し等による経営力強化を図った。
プロジェクト案件は受注活動から売上まで数年かかるが、既に確保している受注残を考慮しても中計目標値の達成可能性は高いとのこと。2017年3月期に5,000百万円超の大型案件2件を計上したが、2018年3月期以降の大型物件は、3,000百万円規模の案件がコアになっている。2019年3月期以降も都市部の大学病院案件などは継続的に大型案件を抱えており、2020年3月期は同社の想定通り、案件の大規模化の動きが業績にも表れた。しかしながら2021年3月期は、新型コロナウイルス感染症拡大といった想定外の事業環境となったことや、医療機関の大規模な投資の端境期にも当たったことから、プロジェクト案件数は減少し、中小規模なものが中心となった。
メディカルサプライ事業
メディカルサプライ事業では、2021年3月期の最終目標値に対して、実績は売上高、セグメント利益ともに上回った。とりわけ利益率は計画を0.5ポイント上回る改善となった。メディカルサプライ事業は、積極的な戦略的M&Aに注力し全国への面展開を図るとともに、関西エリアでは商品マスタ・情報システムの統一による購買力の強化を図り、基幹物流センターの建設に向けた検討を開始。また、PBブランドなど同社独自の新商品の提案・開発を図った。
計画策定当初は、営業利益率についてはほぼ1.5%と横這いを見込でいた。SR社では、この背景として、a)合併した小西共和ホールディングスとの商品マスタ・情報システムの統合が2019年3月期までかかること、b)消費増税導入(2019年10月)、c) 機器の償還価格(2018年4月までは2年に1度、2019年から毎年、診療報酬と同時に改定)の影響を考えたもの、とみていた。しかし同社は、2021年3月期を中心に、傘下に加わった企業も含めたグループ全体の物流コストの改善を進め、利益率の改善に繋げている。同社では、将来的には営業利益率を3%へと改善させたいとの見方を示している。
事業環境としては業界の収斂が進みつつあり、ここ10年程度で売上高100,000百万円超のグループが6つ(同社含む)になったとみている。同社は引き続きM&Aに注力し、購買力の強化等を図っていく考えである。
ライフケア事業
ライフケア事業では、2021年3月期の最終目標値に対して、実績は売上高で約2,000百万円下回ったものの、セグメント利益は約400百万円上回り、セグメント利益率も計画の6.8%に対し、9.1%と2.3ポイント改善した。
同社は、計画策定当初より、全国施設の一体経営を更に強化し、地域交流の推進・入居プランの多角化等を通じ入居率98%以上を維持するとともに、教育研修の充実、外国人技能実習生の受入等による人材確保を図る計画であった。また施設運営に関しても、計画期間中の3ヵ年では施設を増やすことなく、既存施設の入居率改善に注力する方針を示した。
施設運営に関しては、入居者への利便性を高め、家族との面会のし易さ、新型コロナ感染症拡大期における衛生管理強化、メディカルケア体制強化などを進め、入居率は、計画通り98%以上を維持した。同社によれば、入居希望が多いことから、応募状況も踏まえ、2021年3月期には、目標を上回るほぼ100%近い入居率を目指していた。
調剤薬局事業
調剤事業では、2021年3月期の最終目標値に対して、実績は売上高で約2,000百万円、セグメント利益は約100百万円下回った。
調剤事業では、地域ドミナント効果がある戦略的M&Aを通じ拠点の拡大を図るとともに、かかりつけ薬局の充実と地域包括システムをサポートする体制づくりを強化した。他セグメントと連携した戦略的な出店をM&Aで行った。
第5の事業領域であるヘルスケアサービス事業の確立
持続的成長のための第5の事業育成
厚生労働省では、2025年における高齢者人口は人口の30%(内、75歳以上は18%)になると予想しており、医療費や介護費など社会保障費の急増が懸念されている(「市場とバリューチェーン」の項参照)。病院経営の観点からは、医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実に向けた診療報酬の見直しが実施され、消費税増税、電気料金の値上げ等の影響により、医療機関の経営を取り巻く環境は厳しくなっている。
その一方で、高度医療に対する診療報酬の配慮や、「地域医療構想」に基づく地域での機能分担の進展などにより、プロジェクト案件は引き続き増加基調にある。同社は、大学病院、超急性期病院、地域の中核病院を中心に医療機関は収斂が進むとみており、関連して出てくる需要を着実に捕捉していく方針にある。また、こうしたプロジェクト案件が仮に2025年以降に減少したとしても、収益成長を担保すべく、以下のように大阪重粒子線がん治療施設にも携わるなど、中長期的な取組みを進めている。
本中期経営計画では、国内外のヘルスケアサービス事業の確立と各事業拠点を起点とする更なるビジネスチャンスの拡大を図った(計画期間中は、当分野はTPP事業に含まれている)。国内においては、重粒子線施設経営(重粒子線)の2021年3月期単年度黒字化と昭島国際法務PFI事業(PFI)の安定経営の実現を目指した。海外においては、バングラデシュ病院事業の2021年3月期単年度黒字化とミャンマー事業の安定経営の実現を目指した。また、現在進行する各事業拠点を起点として、そのノウハウ・人脈を通じてTPP事業の事業機会の拡大を図る。
重粒子線事業
重粒子線治療法の普及は国策。九州国際重粒子線がん治療センター開設にあたってコンサルティングを受託
重粒子線がん治療は、独立行政法人放射線医学総合研究所(放医研)が世界に先駆けて実運用に成功した技術であり、経済産業省では、1)難治がんの克服、国民医療費削減への貢献、2)日本発中粒子線がん治療技術の戦略的な海外展開及び治療法の国際標準化を目指している。同社は佐賀県鳥栖の九州国際重粒子線がん治療センター開設にあたってコンサルティングを受託、大阪府立成人病センターの建替えに伴う重粒子線がん治療施設プロジェクトにおいても同社の参画が決定。大阪重粒子線がん治療施設は民間初の大規模な設備投資リスクを伴う事業であり、同社は施設整備運営事業会社を新設して施設運営に携わる。
大阪重粒子線がん治療施設への投資額は13,500百万円、当初3年目に営業黒字化、12年での回収計画
投資規模は、新設会社「大阪重粒子線施設管理」への出資(同社100%)4,500百万円含めて総額13,466百万円。投資回収は2030年3月期(12年)を予定。施設は2015年8月着工、2018年3月完成。減価償却費は2018年3月期が400百万円弱、2019年3月期に約750百万円でピークを付けた後は、2020年3月期以降は8%前後の減少が続く計画となっている。
増資等により21,630百万円を調達
同社は2014年10月に新株式発行及び自己株式の処分並びに株式売出しについて発表、21,630百万円を調達した(公募増資700万株、自己株式処分100万株、オーバーアロットメントによる売出120万株)。資金使途は大阪重粒子線がん治療施設に14,817百万円(設備投資等で11,817百万円、新設会社の株式取得で3,000百万円)、海外案件に3,615百万円(バングラデシュ案件3,400百万円、ミャンマー案件215百万円)、他である。
今回の増資の背景は、売上高1兆円企業に向けた長期戦略の布石となるものであり、重粒子線施設を核とした第5の柱(セグメント)となり得るヘルスケアサービス事業への投資、海外事業の拡大、また、更なるM&Aを見越した手許資金の確保があるとSR社ではみている。
年間治療件数は1,000件で計画を設定
同社は当初、大阪重粒子線がん治療施設の年間治療件数、及び料金について、初年度120件、次年度600件、3年目800件、最大1,000~1,200件、料金は、保険適用される一部の腫瘍治療(切除非適応の骨軟部腫瘍)が237.5万円(自己負担3割)、他の腫瘍は先進医療部分314万円が自己負担と考えていた。この場合、仮に比率が1:1と仮定すると1件あたり約270万円、1,000件を乗じると年間27,000百万円、2023年3月期の売上計画と一致する。
重粒子線は3基設置され、九州の施設が2基設置し年間約640件の治療実績がある。九州圏と近畿圏の人口の差異も考慮すると更に稼働率が高まる期待もある。しかしながら、2019年3月には、前立せんがんに対しても重粒子線治療の保険適用が拡大されたため、同社は想定以上の治療希望者の増加に直面した。また、想定単価も保険適用拡大により低下しているため、中期経営計画策定時の想定より低単価での設備稼働率上昇により、収益化に関しては計画より時間がかかる見通しとなった。
大阪府試算では年間需要は約2,400人
需要については、大阪府の2012年8月の「最先端がん医療施設整備検討委員会」報告書によると、2006年の大阪府人口8,642千人に対してがん罹患者数は36,680名、うち重粒子線もしくは陽子線治療が必要な患者数の推計は2,361人であった。これを、2014年11月1日の大阪府推計人口8,852千人に置き換えると推計数は2,418人となる。また、これを近畿圏(大阪府、京都府、奈良県、兵庫県等2府4件)に拡大して試算すると年間約5,500人の需要が見込めることになる。
高速スキャニング照射技術を採用、施設運用の効率化も図られる見通し
同社が大阪重粒子線がん治療施設で採用する重粒子線がん治療技術は、従来の4施設で用いられている「拡大ビーム照射技術(ワブラ法)」ではなくて、「高速スキャニング照射技術」というもの。
高速スキャニング照射技術は、従来法(拡大ビーム照射技術)と比較して高速、高精度で他臓器への負担軽減が可能であり、且つ、任意の3次元照射が可能で主要全体に均一な線量を与えることが可能になった技術である。また、従来法では必要であった重粒子線と対象物間のコリメータ他の部品(放射線廃棄物となる)が不必要であり、施設運用の効率化も図られる。そのため、九州国際重粒子線がん治療センターの新設(3室目)、神奈川県立がんセンターも同技術を採用した設備を導入した。
同社は設備導入にあたって日立製作所(東証1部、6501)の設備を導入したが、これは既に日立製作所が陽子線治療システムで高速スキャニング照射技術を採用して実績があることによるもの。なお、神奈川県立がんセンターは東芝(東証1部、6502)製(当時)、九州国際重粒子線がん治療センターは三菱電機(東証1部、6503)製とのことである。
海外病院事業(ミャンマー、バングラデシュ)
海外事業では、ミャンマー・ヤンゴンにおける日本式医療拠点整備事業の経営を安定化させるとともに、バングラデシュ病院事業が2021年夏頃にグランドオープン予定。同事業は事業スキーム決定後、2016年2月に正式調印し2018年の稼働を予定していた。テロが発生した影響で着工が2017年4月に遅れた。その後、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて工事が一時中断し、2020年8月に工事再開している。病床数は600、当初の予定では、営業利益は、2022年3月期以降の本格稼働後に年間約300百万円、2025年3月期以降は診療科などの充実を図ることで700~800百万円、営業利益率20%超を目標としていた。総投資額は3,830百万円(1.5円/1ダッカ)、投資回収は12年(2031年3月期)を予定する。
(2020年4月末時点)
(2021年3月期)
(2021年3月期)
PFI事業
PFI事業は、重粒子線がん治療施設、バングラデシュやミャンマー等の海外事業、ヘルスケアリートを通じた展開に次いで、国際法務総合センターの維持管理・運営事業(PFI方式)の入札案件を2016年10月に獲得したもの。
国際法務総合センターは法務省が新たに東京都昭島市に設置を計画している矯正研修所や医療刑務所等の統合施設で、2017年9月に事業を開始。維持管理・運営にあたってはPFI手法を活用して民間委託されており、2016年10月に同社グループ(同社子会社を筆頭株主としてSPCを組成)が23,841百万円で落札した。PFIによる事業期間は2017年9月から2027年3月までを予定しており、同社は受託業務のうち、医薬品・材料等の管理・輸送、医療器具の滅菌・消毒、理容・給食業務、職員食堂運営、そして医療機器等の整備、維持管理・更新業務を担う。
事業費23,841百万円が全て同社の収入となる訳ではないが、医療機器の購入及び更新費は含まれていることから、2018年3月期及び更新時期(2024年3月期)に厚く、また各年に安定した収益が得られる計画である。また、医薬品・診断材料、消耗品の購入費は国の負担となっている。
戦略的なM&A展開
同社は創業来M&A投資を積極的に実施しており、中期経営計画期間中も以下のようなM&A投資を実施してきた。同社は、今後も医療機器ディーラー、調剤薬局を中心に、コア事業の面展開による収益力向上を図るため、積極的に戦略的M&Aを実践し、更なる売上・利益の成長を目指すとしている。
株主還元の強化
2019年3月期~2021年3月期の3期間で、最大約160億円の株主還元策を実施する計画である。このうち配当は3期間で約10,000百万円、自社株購入は毎期2,000百万円(3期間で6,000百万円)を上限に実施する予定である。
中期経営計画「SHIP VISION 2020」以降
同社は、2021年3月期をもって中期経営計画の最終年度を迎えている。次の中期経営計画を発表するタイミングではあるが、事業環境は、前中期経営計画期間中に新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、同社がそれまで想定していたものとは大きく変容している。同社は、中長期的な視点で、売上高1兆円に向けて同社グループでの戦略強化・発展を目標としており、SR社では、同社はこうした経営方針の中で、新たな中期経営計画を策定するものと考えている。
事業内容
概略
同社グループの事業は、持株会社ならびにM&Aで買収してきた事業会社を中心とする連結子会社47社および関連会社(持分法適用会社)2社により構成されている(2020年3月末)。
これらの企業群は、いずれも医療・保健・介護・福祉の4分野を事業ドメインとして設定しており、連結セグメント情報では事業内容ごとに、1)トータルパックプロデュース、2)メディカルサプライ、3)ライフケア、4)調剤薬局、5)その他、に分類されている。営業利益に対する貢献度でみた際、最も寄与度の大きいセグメントは、同社のコア事業でもあり、医療機関等に対する(コンサルティングに重きが置かれた)プロジェクト案件が含まれるトータルパックプロデュースである。