同社は純粋持株会社であり、ダイエットを成功に導くパーソナルトレーニングジム「RIZAP」の運営を行うRIZAP株式会社を中核として連結子会社72社(うち上場会社6社)からなる(2021年3月時点)。
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要約
概要
概要:同社は純粋持株会社であり、ダイエットを成功に導くパーソナルトレーニングジム「RIZAP」の運営を行うRIZAP株式会社を中核として連結子会社72社(うち上場会社6社)からなる(2021年3月時点)。子会社は「自己投資産業」をテーマとするM&Aによってグループ入りした。「自己投資産業」の定義が拡大解釈可能であるため、子会社の事業内容は補整下着の販売、CD・DVD販売店、衣料品店、雑貨店、フリーペーパーなど多岐にわたる。
当初はダイエット食品からスタート、2012年にボディメイク事業を開始:同社は現社長の瀬戸健氏が、2003年4月に24歳で設立した。当初はサプリメントの販売からスタートしたが業績は振るわなかった。そのおまけとして配布していた豆乳をベースとしたクッキーをダイエット食品に改良して販売したところ、ヒット商品となり、創業4年目の2007年3月期には売上高が10,000百万円を超えた。その後は豆乳クッキーの競争激化による売上減少、消耗品の定期購入と組み合わせた割安な美顔器、泥の石鹸などのヒットとブーム終了を経験した。2012年に現在の中核事業であるパーソナルトレーニングジムRIZAPの運営を行うRIZAPボディメイク事業を開始、「結果にコミットする。®」というキャッチフレーズと有名人がRIZAPの指導で痩せるテレビCMによって知名度が向上し、業績が成長した。
RIZAPボディメイク事業:連結子会社RIZAP株式会社が運営しているパーソナルトレーニングジムRIZAP(2021年3月時点で129店、海外を含む)の事業である。2018年3月期においてRIZAP株式会社の売上高は25,482百万円と連結売上高の21%であったが、税引前当期利益(日本基準)は2,169百万円と負ののれん益を除く連結営業利益(IFRS)の70%を占めた。RIZAPは、パーソナルトレーナーのトレーニング指導および食事指導によって、顧客が短期間(2ヵ月)で痩身または健康体への変化を達成するサービスである。筋力トレーニングや糖質制限の方法論に限らず、トレーナーが顧客に毎日食事指導を行い、励まし、成果を誉めることで目標達成に導くコーチングがその本質であり、一般的なスポーツジムとは異なる。
RIZAPボディメイク事業のビジネスモデル:売上高=加入者数×顧客単価。2021年3月時点の加入者数は累計16.3万人(前年同月比1.6万人増)であった。価格は入会後2ヵ月16回セットで348,000円(税別、入会金含む)。継続した場合は2ヵ月16回セットで298,000円(税別)である。加入者の(入会6ヵ月後の)継続率は45.6%、平均会員期間は6ヵ月程度、サプリメントの販売等も合わせると顧客1人当たりの単価は60~80万円であるという。一般的な総合スポーツジムと比較して施設面積および設備は限られ、投資回収が早い。顧客単価が高いため売上総利益率は60~70%、販管費の大部分は広告宣伝費で、営業利益率は10~20%である(SR社推定)。
M&Aによる事業拡大、M&Aの失敗と構造改革:同社は2006年5月に上場し、2006年3月期の売上高は2,429百万円であったが、2021年3月期の売上収益は169,649百万円にまで拡大した。その主な要因となったのはRIZAPボディメイク事業の売上成長もあったが、積極的なM&Aによる部分が大きい。上述の通り、同社は「自己投資産業」をテーマに2016年3月から2018年3月期の間に積極的にM&Aを実施し、事業の多角化を進めた。しかし、急速なM&Aを進めた結果、子会社の業績改善が遅れ、2019年3月期には減損損失、固定資産除却損を計上、親会社の所有者に帰属する損失19,393百万円となった。早期の経営改善のため、投資回収や収益改善が困難な企業の縮小、撤退、売却、ガバナンスの強化を進め、M&Aを原則凍結することとした。
売上・損益構成:同社の中核子会社は、RIZAP株式会社および関連商品などからなるRIZAP関連事業(2020年3月期売上高40,100百万円、営業損益は非開示であるが2,000百万円~3,000百万円の営業損失とSR社は推定))である。また、CD・DVD販売店運営の株式会社ワンダーコーポレーション(東証JASDAQ 3344)(2021年3月期売上高56,032百万円、税金等調整前当期純利益954百万円)、補整下着の製造販売を行っているMRKホールディングス株式会社(旧マルコ)(東証2部 9980)(同売上高18,330百万円、税金等調整前当期純利益462百万円)がそれに続く。その他の子会社は、雑貨の輸入販売を行う株式会社イデアインターナショナル(東証JASDAQ 3140)、雑貨店を展開している株式会社HAPiNS(旧パスポート)(東証JASDAQ 7577)、EC専業アパレルの夢展望株式会社(東証マザーズ 3185)、カジュアルウェア販売店運営の株式会社ジーンズメイト(東証1部 7448)、繊維素材の堀田丸正株式会社(東証2部 8105)などがある。
財務状況:2021年3月期時点で、同社の有利子負債は84,606百万円(2020年3月期末は104,878百万円)となったが、そのうち41,445百万円はリース債務で、多くがIFRS16号によるリース契約(主に店舗賃貸借契約のオンバランス化であり、事業継続の限りキャッシュフローで返済可能)による影響で増加している。それを除く有利子負債43,161百万円であり、実質的な有利子負債は2018年3月期以降に減少している。
業績動向
2022年3月期は、売上収益162,359百万円(前期比3.7%減)、営業利益5,234百万円(同228.4%増)、税引前利益3,530百万円(前期は525百万円の税引前損失)、親会社の所有者に帰属する当期利益2,131百万円(前期比32.5%増)となった。緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置に伴う休業や時短により、実店舗を主に展開している事業が減収となった。利益面では、グループ横断的なコスト最適化、業務の断捨離、グループ全社共通の最適業務フロー構築による業務効率化などの経営合理化策を実行した結果、全セグメントでの黒字計上および全社で増益を達成した。
2023年3月期通期会社予想については、同社の中核事業であるRIZAPボディメイク事業における中期経営計画の策定とあわせて検討している。増収増益を見込んでいるが、2022年5月現時点では適正かつ合理的な数値の算出が困難であると判断し、未定とした。2023年3月期第1四半期決算発表時に2023年3月期通期会社予想を開示する予定である。
同社の強みと弱み
SR社では、同社の強みを、1) 顧客に寄り添い、目標達成に導くRIZAPメソッドを開発、実績を積み上げ、知名度を得たこと、2)RIZAPボディメイク事業の深堀り、横展開によって事業領域を拡大していること、3)M&Aを成功させる意欲の3点だと考えている。一方、弱みは、1)過去のM&Aの失敗に対する再発抑止策の不十分さ、2)RIZAPボディメイク事業が効果的であることに起因する継続率の低さ、3)収益機会獲得のためにリスクを厭わない経営姿勢の3点だと考えている。(後述の「SW(Strengths & Weaknesses)分析」の項参照)
主要経営指標の推移
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*2020年3月期実績については、株式会社エス・ワイ・エス、北斗印刷株式会社および株式会社日本文芸社の売却等により非継続事業が増加したため、2020年6月に公表した2020年3月期決算短信に記載の値と異なっている。
*2021年11月、同社は2019年3月期から2021年3月期にかけての財務諸表の訂正を発表した。上表の数値は、訂正前のデータに基づく。
直近更新内容
ライフスタイルセグメントにおけるグループ内の企業再編、継続企業の前提に関する重要事象等」の解消に関して発表
RIZAPグループ株式会社は、ライフスタイルセグメントにおけるグループ内の企業再編に関して発表した。
(リリース文へのリンクはこちら)
同社のライフスタイルセグメントは、子会社のREXT(ワンダーコーポレーション、HAPiNS、ジーンズメイトからなる)、子会社のBRUNO等からなる。REXTにおいて、事業存続のために、大規模なリストラクチャリング、高収益業態への転換等の事業改革が必要であるため、以下の通り、グループ内の企業再編を行う。
REXTの子会社であるワンダーコーポレーション、ジーンズメイト、HAPiNSおよびライフスタイルセグメントにおけるグループ会社(BRUNO 除く)を、REXT Holdings 株式会社(本部機能・資産管理会社)と REXT株式会社(事業運営会社)に集約、再編する(効力発生日は2022年6月の予定)。ただし、HAPiNSのキッチン家電を中心とする生活雑貨の開発・製造販売に関する事業は再編から除く。
BRUNOが再編後のHAPiNS(キッチン家電を中心とする生活雑貨の開発・製造販売を主たる事業内容とする会社となる予定)を吸収合併する(効力発生日は2022年6月の予定)。
同日、同社は、「継続企業の前提に関する重要事象等」の解消に関して発表した。
(リリース文へのリンクはこちら)
2020年3月期に新型コロナウイルス感染拡大等の影響から、2期連続の営業損失および親会社の所有者に帰属する当期損失を計上した。これにより、金融機関との間で締結した金銭消費貸借契約における財務制限条項に抵触している状況となった。そのため、2019年3月期決算短信から、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象等が存在する旨を記載した。
2021年3月期に、営業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益において3年ぶりの黒字化を達成し、2022年3月期も黒字を継続した。同社の収益が改善し、黒字化を達成したことから、金融機関との間で締結している重要な借入金における金銭消費貸借契約において、財務制限条項に抵触していた状態は、2022年5月現在解消された。
業績動向
四半期業績動向
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*2021年3月期第3四半期に株式会社エス・ワイ・エスおよび北斗印刷株式会社を、2021年3月期第4四半期に株式会社日本文芸社を非継続事業に分類した。
*2022年3月期第2四半期に株式会社アクトを非継続事業へ分類した。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*前期比が1,000%以上の場合は“-”とする。
*純増は3ヵ月前との差。
*2019年3月期は会計期間の変更により13ヵ月決算となっている。
*2022年3月期はREXT株式会社のワンダー事業およびTSUTAYA事業の合計値。
*BRUNOは6月決算であるが、SR社が四半期業績(3ヵ月)をもとに3月決算に調整した。
2022年3月期通期実績
売上収益は減収となった。実店舗の減収分をECを始めとする非対面事業で補うには至らず、全社で減収となった。実店舗を展開している事業について、緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置に伴う休業や時短営業により減収となった。一方、新たな収益源の柱として注力しているEC領域で、ECへの転換に成功したアンティローザや過去最高EC売上高を達成したBRUNOの成功事例をグループ全体で共有する取り組みを行った。その結果、HAPiNSにおいてEC売上高が前期比で約1.8倍、ジーンズメイトにおいてEC売上高が前期比で約1.4倍になるなど、多くのグループ会社でEC売上高が増加した。
利益面では、経営改革を行った結果、収益構造が改善され、全セグメントでの黒字計上および全社での増益を達成した。グループ横断的なコスト最適化、業務の断捨離、グループ全社共通の最適業務フロー構築による業務効率化などの経営合理化策を実行した。
セグメント別業績
ヘルスケア・美容
同セグメントの主要事業はRIZAP関連事業、MRKホールディングスである。
RIZAP関連事業は、増収増益となった。前期に引き続き本社社員のリモートワークの推進やグループ会社とのシェアオフィス化による賃料削減などの継続的なコストの最適化および収益構造の改善を進めた。
MRKホールディングスは、売上高18,739百万円(前期比2.2%増)、営業利益588百万円(同3.9%減)となった。婦人下着及びその関連事業において、主力の補正下着で新色や限定商品が好評を得た。また、新規事業である医師監修のオリジナルサプリメントM.B.M.S(マルコビューティーメイクサプリメント)の新規販売および定期購入が好調に推移し、増収となった。利益面では、日本基準の営業利益は減益となったが、IFRSベースの営業利益は前期比で減損失が縮小したこと、広告宣伝費の最適化によって増益となった。。
ライフスタイル
ライフスタイルセグメントにおける中核子会社であるワンダーコーポレーション、HAPiNS、ジーンズメイトは2021年4月に経営統合し、REXT株式会社となった。
ワンダーコーポレーション事業は、アウトドア専門店「APORITO」のWonderGoo店内への導入や、リユース専門店WonderREXとエンタメ専門店WonderGoo、トレカ専門店Ganryuの複合業態となる新店舗の出店等を通じて、利益率の改善を図った。引き続き、顧客のニーズに寄り添った新形態店舗の出店および改廃を行った。
HAPiNS事業は、オリジナルキャラクターFuku Fuku Nyankoの商品開発に注力し、収益性の高いPB商品の拡充に取り組んだ。各種マーケティング施策を強化し、LINEスタンプなどのキャラクターIPコンテンツの強化を図った。Fuku Fuku Nyankoの売上高構成比は56.4%(前期比17.5%ポイント上昇)となった。EC事業においては、強化施策として、ECモールへの新規出店やWEB広告への投資、オンラインショップ限定商品の販売等を実施した。この結果、EC事業の売上高が前期比は78.2%増となった。実店舗事業においては、コスト最適化に取り組み収益基盤の強化を図った。
ジーンズメイト事業は、EC事業に注力し、各種WEB販促施策の取組み強化・専用商材の拡充等によって、EC売上高は前期比38.4%増となった。一方で、実店舗事業は、集客回復に向けた取り組みを行ったが、消費低迷や顧客志向の変化等によって苦戦が続いた。その他、PB商品強化策に取り組みプロモーションを強化した結果、PB商品の売上構成比は60.1%(前期比15.4%ポイント上昇)となった。
BRUNOの2021年4月-2022年3月の実績(3月決算調整ベース)は、売上高17,199百万円(前期比1.3%増)、営業利益1,195百万円(同13.8%減)となった。ライフスタイル商品ブランド「BRUNO」において、主力商品のコンパクトホットプレートなどのキッチン家電をテレビ番組やSNS等で配信したことから、キッチン家電の売上が前期を上回った。海外販売では、台湾における広告宣伝により「BRUNO」ブランドの認知度が向上し、売上高が増加した。トラベル商品ブランド「MILESTO」は減収となった。利益面では、コスト削減による固定費の削減を行ったが、ブランド認知向上のため広告宣伝を強化したことで減益となった。
インベストメント
SDエンターテイメントは、売上高3,987百万円(前期比8.9%増)、営業損失75百万円(前期は270百万円の営業損失)となった。有利子負債削減、事業の選択と集中、不採算店舗の整理を柱とする構造改革を実施した。
主力のウェルネス事業フィットネスは、フィットネスにおいては、「総合型」から「24時間型・365日型」への業態転換を行い、改善が難しい一部の店舗を閉店した。
保育事業は増収となった。前期末より開園した保育施設の園児定員充足率が順調に推移した。
夢展望は、売上収益4,950百万円(前期比17.8%減)、営業利益(IFRS)27百万円(前期は450百万円の営業損失)となった。主力のアパレル事業が減収増益となった。利益確保を優先し、連結子会社の不採算店舗の撤退を進めたほか、商品ごとのメリハリのある販売価格施策により不要な値引きを抑制し、売上総利益率が上昇した。ジュエリー事業は増収となったが、トイ事業は減収減益となった。
堀田丸正は、売上高3,702百万円(前期比2.0%減)、営業損失174百万円(前期は536百万円の営業損失)となった。事業の選択と集中を進め、機能の統廃合、経費の見直しならびに業務効率化、生産性向上による固定費の逓減に取り組み、減収増益となった。
今期会社予想
2023年3月期通期会社予想については、同社の中核事業であるRIZAPボディメイク事業における中期経営計画の策定とあわせて検討している。増収増益を見込んでいるが、2022年5月現時点では適正かつ合理的な数値の算出が困難であると判断し、未定とした。2023年3月期第1四半期決算発表時に2023年3月期通期会社予想を開示する予定である。
中長期展望
2021年3月期以降に新中計による成長を図る予定であったが、公表を延期した
同社は、2019年3月期には減損損失、固定資産除却損のために親会社の所有者に帰属する損失19,393百万円を計上した。2014年3月期以降に急速なM&Aを進めた結果、子会社の業績改善が遅れたことによる。同社は経営改善のため、2019年3月期を膿出し期間、2020年3月期を成長基盤の構築期間とし、投資回収や収益改善が困難な企業・事業の縮小、撤退、売却、ガバナンスの強化を進めた。また、M&Aを原則凍結していた。
2020年3月期第2四半期累計期間(上期)において、前年同期に計上した事業構造改革費の剥落などの理由から主要連結子会社であるワンダーコーポレーションおよびMRKホールディングスが増益となるなど、上場子会社を中心に業績が改善した。加えて、IFRS16号の影響による賃料の減少もあり、通期会社予想の営業利益3,200百万円に対し、上期実績の営業利益は2,709百万円(前年同期は5,879百万円の営業損失)となった。
2020年3月期に連結営業利益、当期利益の黒字回帰を果たし、2021年3月期には成長路線に回帰、新中期経営計画を策定する予定であった。しかし、2020年3月期第4四半期に新型コロナウイルスの影響を踏まえて店舗等の固定資産や在庫等を評価し、一過性の損失約5,900百万円を計上したことを主要因として、営業損失は752百万円(前期は8,394百万円の営業損失)となった。
2021年3月期は、成長路線へ移行し、新しい中期経営計画に基づき持続的な成長に向けて前進する計画であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で経営環境が悪化し、将来見通しも不透明になった。そのため、「新型コロナウイルス危機対応」に集中することとした。具体的にはグループ各社の共通機能の統合を進め、スケールメリットを最大化し、グループ全体のコスト最適化を行った。また、非対面・非接触事業を開発し、新たな収益源の確保を進めた。
2021年3月期の営業利益は1,241百万円と黒字化し、月次の営業利益は2020年8月以降、前年同月を上回って推移したという。同社は2021年3月期で新型コロナウイルス危機対応に目途がついて経営再建が完了したとし、2022年3月期から再び成長路線へ回帰するとしている。
中期経営計画は公表していいないが、以下のBPXを2022年3月期の重点テーマとして掲げている。また、RIZAPボディメイク事業における新プログラム(シニアプログラムおよびメディカルボディメイクプログラム)が業績成長要因になるとSR社は認識している。
BPX(Business Process Transformation:業務プロセス変革)の推進
2021年3月期において、同社はグループ全体のコスト削減を実施するとともに、グループ機能統合プロジェクト「ONE RIZAP」の方針の下、コスト最適化、グループ企業間での人材の流動化、新たな非対面事業の創出を進めた。その結果、販売費および一般管理費は前期比11,659百万円減(うち固定費は同約11,200百万円)となった。2022年3月期には以下の通り、BPX(Business Process Transformation:業務プロセス変革)を推進する。
同社が標榜しているBPXは業務プロセス変革と統合データベースの構築および活用からなるとSR社は理解している。
業務プロセス変革:
業務プロセスの変革は間接部門および事業部門で以下のように実施する。
間接部門のBPX(業務の選択と集中による高付加価値業務への転換)
間接部門では、グループ共通のバリューチェーン機能や経営支援機能など、具体的には物流、人事、企画、経理財務、システムについて、各グループ会社が間接業務の見直しと共通機能の統合を進める。さらに、ノンコア業務(データ入力、経費精算、印刷・発送、営業事務、デザイン、資料作成など)については、外注や自動化(BPOやRPAの活用)によって省人化を進める。これらの取り組みによって創出される社内リソースを、DX(ベストプロセスの定量化、指標化、統合データベースの構築)推進、PB商品の開発、EC部門に投入し、経営資源集中を進める。
事業部門のBPX(ベストプロセスの構築および横展開)
事業部門では、RIZAPボディメイク事業のトレーナーや店舗運営型企業の販売員などの中から、業績貢献度の高い従業員を選別し、その行動を定量化、指標化、可視化し、それを再現性をもって全従業員に横展開する。具体例として、RIZAPボディメイク事業のトレーナーの中から顧客満足度が高いトレーナーの行動を定量化、指標化、可視化して、それを全国のトレーナーに発信し、横展開する。RIZAPボディメイク事業は顧客紹介による新規入会が多く、このベストプロセスの構築および共有によって、顧客満足度を向上し、新規顧客紹介件数の増加を図る。
統合データベースの構築および活用
同社の各グループ会社では、それぞれの企業が別々に顧客情報、ポイントなどを管理している。また、同じ企業内でも、オンラインとオフラインで顧客情報が別々に管理され、統合されていないこともある。これらの顧客情報およびポイントを一元化・共通化する計画である。さらに、各グループ会社がOne RIZAPとしてその一元化された顧客情報を履歴を分析、活用し、かつ、顧客が必要な商品・サービスを、必要なタイミングで提案できるようにする。
具体的には、結婚予定がある顧客に対して、RIZAPボディメイクにおけるダイエット目的のトレーニング、MRKホールディングスの補正下着、MRKホールディングスの結婚式場などの商品・サービスを提案する。このように同社の商品・サービスを購入・利用した経験のある顧客に対して、接触回数を増やし、生涯にわたり寄り添い、高付加価値の商品・サービスを提供することで、顧客生涯価値の最大化を図る。
RIZAPボディメイク事業の業績成長
RIZAPボディメイク事業では従来の20~40代を中心とする美容・ダイエット領域での成長に、法人およびミドル・シニア層を対象とする健康・ヘルスケア領域での成長を加え、2つの成長ドライバーでの業績成長イメージの実現を図る。
美容・ダイエット領域(RIZAPボディメイク事業)
美容・ダイエット領域では、RIZAPボディメイクの会員数増加、シニア世代の会員獲得強化を進める。
RIZAPボディメイクの会員数の増加:RIZAPボディメイクの店舗数は2014年9月の30店から、2021年6月には123店に増加した。それに伴い、同期間における累計会員数は2.2万人から16.3万人に増加した。中期的には、このように店舗数の増加とともに、各店舗の効率向上によって、会員数の増加を図る方針である。
シニア世代の会員獲得強化:RIZAPボディメイクでは60代以上の会員の比率は5%であった(2020年3月期第3四半期説明会資料)。一般的なスポーツジムでは60歳以上の会員の比率が30~50%(2021年3月期において60代、70代以上の会員の比率は、セントラルスポーツ株式会社(東証1部 4801)で45.5%、株式会社ルネサンス(東証1部 2378)では35.9%であった。)であった。このことから、RIZAPでは60歳以上の会員を増やす余地があると同社は考えている。2020年7月には、60歳以上のシニアの体力向上、筋力向上、健康寿命の延伸を目的とした新プログラム「ライザップ シニアプログラム」を開始した。プログラムの指導は、顧客専属のRIZAPメディカルトレーナーがマンツーマンでトレーニングと日々の食事をサポートする。料金は、トレーニングコースと同水準の料金となっている。
健康・ヘルスケア領域(RIZAPボディメイク事業)
健康・ヘルスケア領域では大学との共同研究の継続、メディカルトレーナーの育成および配置、疾患ゲストの受け入れ態勢強化を図ることで、生活習慣病の改善を目的とする顧客の受入れを進める。また、引き続き自治体および企業への健康増進活動を進める。
医療との連携、生活習慣病の改善:従来、RIZAPボディメイク事業ではダイエット目的の会員を獲得してきたが、中期的には高齢化社会の到来に向け、生活習慣病の改善を目的とする会員も獲得することで事業の拡大を図る。
大学との共同研究:同社は複数の大学および医療機関と共同研究を実施している。朝日生命成人病研究所附属医院との“低糖質食の安全性”に関する共同研究では、2018年10月に開催の日本糖尿病学会において、“短期間の低糖質食は肥満症治療に安全で有効である”との成果を発表するに至っている。また、重度の糖尿病患者が、RIZAPの指導によって内臓脂肪が減少し、血糖値およびHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が正常化したという事例もある。また、日本臨床試験協会によれば、RIZAPのパーソナルトレーニングによって、メタボリックシンドローム、血圧、中性脂肪、血糖値の改善があったという。
RIZAPメディカルボディメイクプログラムを開始:2020年11月に同社はRIZAPメディカルボディメイクプログラムを開始した。同プログラムでは、トレーニーの血液検査の結果をもとに、RIZAPが医療機関との連携により医師監修の健康数値改善目的オリジナルプログラムを作成する。月2回のRIZAPの専属トレーナーとのマンツーマントレーニング、管理栄養士監修の週1回の食事指導、スマートウォッチでの管理によって、健康数値(体重、体脂肪、血圧、中性脂肪、血糖値)の改善を目指す。料金は新規入会50,000円(税別)、月額29,800円(税別)(12ヵ月継続が条件)と、マンツーマントレーニングの回数が少ないため、トレーニングコースやシニアプログラムより低い料金設定としている。
M&Aの再開について
上述の通り、同社は2019年3月期を膿出し期間、2020年3月期を成長基盤の構築期間とし、投資回収や収益改善が困難な企業の縮小、撤退、売却、ガバナンスの強化を進め、M&Aを原則凍結した。2021年3月期には経営再建が完了し、2022年3月期から再び成長路線へ回帰するとしている。
成長路線回帰とともにM&Aを再開することについては未定である。ただし、仮にM&Aを再開する場合でも、従来と比較して、M&Aによって損失を被るリスクに対しては低減が図られるとSR社は考える。2016年3月期から2018年3月期における急激かつ多数のM&Aを実施したことによって多額の損失を計上したことに対する原因分析、ガバナンスの強化、投融資委員会の設置などが機能することを期待したい。
過去のM&Aが失敗した要因に対する認識
同社は2016年3月期から2018年3月期の間に多数のM&Aを実施し、連結子会社数は2015年3月期の19社から2018年3月期には76社にまで増加した。
ジャパンギャルズSC
(旧アスティ)
エンジェリーベ
馬里邑
イデアインターナショナル
SDエンターテイメント
夢展望
タツミプランニング
三鈴
パスポート
マルコ
ジーンズメイト
ぱど
ワンダーコーポレーション
サンケイリビング新聞社
特に、2017年3月期および2018年3月期には負ののれん益が発生する多数のM&Aを実施し、それが営業利益の増加要因となっていた。2017年3月期には営業利益10,213百万円のうち5,832百万円が、2018年3月期には営業利益11,780百万円のうち8,665百万円が負ののれん発生益であった。同社は負ののれん益の獲得がM&Aの目的ではなかったとしているが、それを前提とした会社予想を公表するなど、この期間には利益をつくるためにPMI(Post Merger Integration)や同社とのシナジー効果を軽視した多数のM&Aが実施されたとSR社は考えている。買収企業の中には、衣料品専門店、フリーペーパー、CD・DVD販売業など、衰退産業で構造的に市場が縮小する中で、事業規模の繰り返しの縮小を余儀なくされる企業も多い。そのような企業ではM&A後は不採算部門の切り捨てによって一時的に業績が改善しても、継続性のある経営再建が可能であるかは不透明である。
同社によれば、過去にのれんが発生するM&Aで減損の計上を余儀なくされた経験から、M&Aの際にはできるだけ低い価格で買収する方針であるという。また、負ののれん益が発生するM&Aでは純資産を下回る価格で企業を取得するため、企業再生のために負ののれん益を使うことができるという考えである。
2019年3月期における多額の失敗計上の原因は、M&Aを急ぎ過ぎて、企業・事業再生に十分に注力できなかったことが問題であったと捉えている。純資産を下回る取得対価で買収できるような企業では、被買収企業に人材がいないことも多く、人材面も含めた管理、PMIの視点が欠けていたと評している。企業・事業再生に必要な要素は把握していたが、被買収企業の管理体制の構築、その後の再生プランの策定、実行に必要な人材を十分に配置できなかったという。
同社はM&A自体を失敗とは考えておらず、失敗の原因を分析し改善策を実行することで、M&Aによる成長は可能である考えており、中期的にはM&Aを再開するとSR社は考えている。ただし、その際には、M&Aの頻度やPMIについては改善が図られることを期待している。
ガバナンスの強化および投融資委員会の設置
取締役会の組織変更:
2018年3月期において、同社の役員は代表取締役社長CEO、代表取締役COO、取締役7名、社外取締役3名の12名体制であった。
2019年3月期における取締役は社外取締役5名と、社内は瀬戸社長のみの6名体制となった。2019年6月以降は、住友商事で副社長、SCSKの会長兼社長を歴任した中井戸信英氏(社外取締役)が取締役会議長を務めた。
2020年6月には、瀬戸社長の他、同社の執行役員3名が取締役に就任し、元シティグループ証券副会長の藤田勉氏およびフロンティア・マネジメント代表取締役の松岡真宏氏が社外取締役となった。
投融資委員会:2019年7月には、代表取締役を除くメンバーで「投融資委員会」を社内に設置した。投融資委員会は、投融資、M&Aに関するルールの再構築を行う。M&Aや提携などについて審議し、経営会議や取締役会に対して立案する役割を担う。
RIZAPグループの経営理念および事業領域
同社の経営理念は『「人は変われる。」を証明する®』であり、事業領域は、マズローの欲求5段階説の第5段階「自己実現欲求」を対象とする「自己投資産業」である。
2021年3月期決算説明会において、瀬戸社長は、同社が提供する商品、サービスについては、単なる消費財(コモディティ)ではなく、持っていることで価値を感じたり、自分に自信を持てるような商品・サービス群を投入することを目指すとコメントした。モノを売るだけでなく、顧客の自己実現を支える“自己実現ソリューション”を、生涯を通して継続的に提供することを自己実現産業と同社は定義し、世界で250兆円の市場規模があるという。
事業内容
事業概要
概要:同社は純粋持株会社であり、ダイエットを成功に導くパーソナルトレーニングジム「RIZAP」の運営を行うRIZAP株式会社を中核として連結子会社72社(うち上場会社6社)からなる(2021年3月時点)。子会社は「自己投資産業」をテーマとするM&Aによってグループ入りした。「自己投資産業」の定義が拡大解釈可能であるため、子会社の事業内容は補整下着の販売、CD・DVD販売店、衣料品店、雑貨店、フリーペーパーなど多岐にわたる。
当初はダイエット食品からスタート、2012年にボディメイク事業を開始:同社は現社長の瀬戸健氏が、2003年4月に24歳で設立した。当初はサプリメントの販売からスタートしたが業績は振るわなかった。そのおまけとして配布していた豆乳をベースとしたクッキーをダイエット食品に改良して販売したところ、ヒット商品となり、創業4年目の2007年3月期には売上高が10,000百万円を超えた。その後は豆乳クッキーの競争激化による売上減少、消耗品の定期購入と組み合わせた割安な美顔器、泥の石鹸などのヒットとブーム終了を経験した。2012年に現在の中核事業であるパーソナルトレーニングジムRIZAPの運営を行うRIZAPボディメイク事業を開始、「結果にコミットする。Ⓡ」というキャッチフレーズと有名人がRIZAPの指導で痩せるテレビCMによって知名度が向上し、業績が成長した。
M&Aによる事業拡大、M&Aの失敗と構造改革:同社は2006年1月に上場し、2006年3月期の売上高は2,429百万円であったが、2021年3月期の売上収益は169,649百万円にまで拡大した。その主な要因となったのはRIZAPボディメイク事業の売上成長もあったが、積極的なM&Aによる部分が大きい。上述の通り、同社は「自己投資産業」をテーマに2016年3月から2018年3月期の間に積極的にM&Aを実施し、事業の多角化を進めた。しかし、急速なM&Aを進めた結果、子会社の業績改善が遅れ、2019年3月期には減損損失、固定資産除却損を計上、親会社の所有者に帰属する損失19,393百万円となった。早期の経営改善のため、投資回収や収益改善が困難な企業の縮小、撤退、売却、ガバナンスの強化を進め、M&Aを原則凍結することとした。
売上・損益構成:同社の中核子会社は、RIZAP株式会社および関連商品などからなるRIZAP関連事業(2020年3月期売上高40,100百万円、営業損益は非開示)である。CD・DVD販売店運営のワンダーコーポレーション(2021年3月期売上高56,032百万円、税金等調整前当期純利益954百万円)、補整下着の製造販売を行っているMRKホールディングス(旧マルコ)(同売上高18,330百万円、税金等調整前当期純利益462百万円)がそれに続く。その他の子会社は、雑貨の輸入販売を行うイデアインターナショナル、雑貨店を展開しているHAPiNS、EC専業アパレルの夢展望、カジュアルウェア販売店運営のジーンズメイト、繊維素材の堀田丸正などがある。
事業セグメント
同社はヘルスケア・美容、ライフスタイル、インベストメントの3つのセグメントで事業を展開している。
ヘルスケア・美容セグメント(2021年3月期売上高構成比25.5%、営業損失113百万円)
ヘルスケア・美容セグメントでは、パーソナルトレーニングジム「RIZAP」およびパーソナルゴルフジム「RIZAP GOLF」などのRIZAP関連事業の運営、体型補正用下着、美容関連用品・化粧品・健康食品などの販売などを行っている。
パーソナルゴルフジム「RIZAP GOLF」の運営
RIZAP関連事業
RIZAP関連事業は、RIZAPボディメイク事業、RIZAP関連の商品・サービスからなる。RIZAP関連事業の中では、RIZAP株式会社およびRIZAP関連商品の業績貢献が大きいとSR社は考えている。
*RIZAP株式会社の実績は2021年3月期、 RIZAP ENGLISHの実績は2020年3月期。
同社はRIZAP関連事業の業績について、以下の通り、売上収益のみを公表している。
RIZAPボディメイク事業の概要
RIZAPボディメイク事業は、連結子会社であるRIZAP株式会社が主体となり、パーソナルトレーニングジム「RIZAP」(2021年3月期末時点で123店)、パーソナルゴルフジム「RIZAP GOLF」(同24店)、女性専用ボディメイクスタジオ「EXPA」(同12店)などを運営している。
パーソナルトレーニングジムRIZAPは、専属トレーナーが顧客一人ひとりに異なるトレーニングプログラムを作成し、糖質制限を中心とした毎日の食事指導、声掛けによって理想の体型を作り上げるように指導する。2012年に開始した同社の中核事業であり、「結果にコミットする。®」というキャッチフレーズと有名人がRIZAPの指導で痩せるテレビCMによって知名度が向上し、2021年3月末時点で累計会員数は16.3万人となった。
同社によれば、やせる方法やトレーニングのやり方は世の中に多数存在し、その方法も広く公開もされているが、多くの人はダイエットが続かない、または一時的にダイエットに成功してもリバウンドしてしまう。これは方法の問題ではなく、「続けられない」「やりきることができない」という行動心理が失敗の原因であるという。顧客がトレーニングジムに通う目的は、トレーナーにトレーニングの手段を教わることではなく、理想の体型になることであり、RIZAPでは理想の体型になるように、トレーナーが顧客に向き合って、毎日食事指導を行い、励まし、成果を誉めることで目標達成に導く“やりきらせる力”が強みであるという。
同社社長の瀬戸健氏は高校時代の彼女が痩せたいということで、一緒に走って、電話で励ましたところ、3ヵ月後には見違えるほどきれいになったという経験をした。その当時、ダイエットやトレーニングに関する知識は何もなかったが、テクニックや方法ではなく、一緒になって励ますことが目標達成に重要であることが分かったという。RIZAPは瀬戸氏のこの経験に基づき、従来のスポーツジムにはなかった全く新しいパーソナルトレーニングの方法として開発、事業化した。
RIZAPでは、累計会員のトレーニング実績に基づく行動調査・分析から、顧客によって一人ひとり違う最適なトレーニングプログラムをトレーナーが作成し、提供する。トレーニングでは同社の専属トレーナーがマンツーマンで指導する。トレーナーは採用率3.2%の厳選された候補者が、全国2ヵ所の施設(アカデミー)で200時間以上、集中的にトレーニングのノウハウから栄養学、接遇等の研修を受ける。
RIZAPボディメイク事業の料金
マンツーマントレーニングコース
パーソナルトレーニングジムRIZAPでは、加入者はマンツーマントレーニングコース、ペアトレーニングコース、特化プログラムから選択する。
マンツーマントレーニングコース(1回50分×16回/2ヵ月):入会金50,000円(税別)+コース料金298,000円(税別)=合計348,000円(税別)のプログラムで、トレーナーとマンツーマンで1回50分のトレーニングを週2回、最短2ヵ月続けて理想の体型を目指す。全3回の定期カウンセリング、食事指導、トレーニングウェアの無料貸し出しが料金に含まれている。
ペアトレーニングコース(1回50分×16回/2ヵ月):入会金50,000円(税別)+コース料金398,000円(税別)=合計448,000円(税別)のプログラムで、トレーナーとトレーニー2名で1回50分のトレーニングを週2回、最短2ヵ月行う。マンツーマントレーニングコースと同様に全3回の定期カウンセリング、食事指導、トレーニングウェアの無料貸し出しが料金に含まれている。
シニアプログラム
「ライザップ シニアプログラム」は60歳以上のシニアの体力向上、筋力向上、健康寿命の延伸を目的としている(2020年7月開始)。
同社がRIZAPボディメイク事業で従来から提供しているトレーニングコースでは理想の体型を目指す。それに対して、シニアプログラムでは、将来寝たきりにならず、自立した生活が送れる健康寿命を延ばすため、「筋肉」の機能に着目し、シニアの動ける・躍動できるカラダづくりにコミットする。その指標、尺度として筋肉率、体重、体脂肪率、体力年齢を用いている。また、ただ筋肉をつけるのではなく、筋力、柔軟性、バランス能力、俊敏性を高めて、健康寿命の延伸につなげる。
プログラムの指導は、顧客専属のRIZAPメディカルトレーナーがマンツーマンでトレーニングと日々の食事をサポートする。シニアプログラムは、ダイエット、運動、栄養学などの知識と192時間に及ぶ研修を積んだトレーナーの中から人材を抜擢し、シニア特有の病気やケガなどについての専門研修を修了したメディカルトレーナーが担当する。トレーニングは顧客一人ひとりに合わせた特別メニューで行う。食事については、顧客の体型にあわせ、食材選びや調理法まで、管理栄養士の指導のもと、毎日細かなアドバイスを提供する。
料金は、入会金50,000円(税別)と以下のテーブルのトレーニング料金である。シェイプアッププログラムと同水準の料金となっている。
メディカルボディメイク
メディカルボディメイクは血液検査の結果をもとに健康数値改善目的オリジナルプログラムを実行し、健康数値(体重、体脂肪、血圧、中性脂肪、血糖値)の改善を目指す。全国190以上の医療機関と連携し、医師の監修・サポート体制による血液検査、メディカルレポートを実施し、医師の指導によるトレーニングのサポートを行う。
トレーニーは採血キットで血液検査を受け、同社ではその検査結果をもとに、医療機関との連携により医師監修の健康数値改善目的オリジナルプログラムを作成する。当該プログラムをもとに月2回のRIZAPの専属トレーナーとマンツーマントレーニングを実施する。また、トレーニーは専用アプリを使い、週1回食事をチェックして管理栄養士監修のもと、食事アドバイスを受ける。その他、腕時計型健康測定機器によって日々の健康状態や睡眠をチェックし、トレーニングの状況も踏まえ、医師からアドバイスを受けることができる。
料金は新規入会50,000円(税別)、月額29,800円(税別)(12ヵ月継続が条件)で、マンツーマントレーニングは月2回であるが、RIZAP施設の個室スタジオは使い放題である。
RIZAPボディメイク事業の収益モデル
同社はRIZAPボディメイク事業の業績を開示していないが、同事業は子会社であるRIZAP株式会社が主体となって運営しており、RIZAPボディメイク事業の業績はRIZAP株式会社の業績に近いとSR社は認識している。
RIZAP株式会社について、同社は有価証券報告書で主要な損益情報として、売上高、経常利益、当期利益を開示している。ただし、売上原価、売上総利益、販管費、営業利益については開示していない。
2017年3月期および2018年3月期には決算公告で、下表の通りRIZAP株式会社の売上総利益、販売費及び一般管理費、営業利益も開示していた。ただし、2019年3月期は同様の開示内容はないとSR社は認識している。その他、同社は、2019年3月期決算説明において、2019年3月期のRIZAPボディメイク事業の営業利益が2017年3月期の3.5倍になったとコメントしている。
*2016年3月期、2019年3月期および2020年3月期の税引前当期利益は経常利益。
*2017年3月期および2018年3月期は決算公告の数値。
RIZAPボディメイク事業の売上高
RIZAPボディメイク事業の売上高は、加入者数×会員1人当たりの売上高に分解できる。加入者数、継続率が主な変動要因である。会員1人当たりの売上高は新しいプログラムの導入やサプリメント等の販売状況で変動する。
加入者数:2021年3月時点の加入者数は累計16.3万人(前年同月比1.6万人増)、アクティブ会員は1.5~1.7万人である。2019年3月時点において加入者の継続率(2018年4月入会者が6ヵ月後も継続している比率)は45.6%(前年は44.6%)であり、平均継続期間は約6ヵ月であったという。加入者数はテレビCMで起用するタレントによる宣伝効果、同社の業績に対する評判などに影響を受けて変動する。
会員1人当たりの売上高:マンツーマントレーニングコースの料金は2ヵ月16回セットで348,000円(入会金含む)である。同社では短期間でのダイエットによるリバウンド対策として3ヵ月24回セット482,000円(入会金含む)を推奨している。会員はマンツーマントレーニングコースを終了した後に退会するか、マンツーマントレーニングコース2ヵ月16回セットで298,000円(入会金不要)を継続するか、1ヵ月2回のメディカルボディメイクプログラムに移行する。上述の通り、平均加入期間は6ヵ月で、これらの基本プログラムにサプリメントやプロテインといった商品販売が加わり、会員1人当たりの売上高は600,000~800,000円(例:シェイプアッププログラム348,000円+メディカルボディメイクプログラム+サプリメント等)であるという。
RIZAPボディメイク事業の費用、利益
同社によれば、一般的なスポーツジムの売上原価率70%程度に対して、RIZAPボディメイク事業の売上原価率は20%程度であるという。一般的なスポーツジムは、会員料金が低く、人件費の比率が高い。また、プールや大入浴場などの設備を設置し、施設面積も広いことから地代家賃、水道光熱費、設備維持費、減価償却費が高い。それに比べて、パーソナルトレーニングジムRIZAPは会員料金が高く、顧客1人当たりに必要な従業員数が多い、1対1のパーソナルトレーニングでありながら人件費の比率が低い。さらに、一般的なスポーツジムほどの施設面積を必要とせず、プールや大入浴場もないことから、地代家賃、水道光熱費、設備維持費、減価償却費も低く抑えることができている。
2018年3月期のRIZAP株式会社の決算公告によれば、売上総利益は15,614百万円、売上総利益率は61.3%であった。また、後述の「RIZAPボディメイク事業の同業他社」の項で示している通り、RIZAPボディメイク事業同様にパーソナルトレーニングジムを運営している株式会社トゥエンティーフォーセブン(東証マザーズ 7074)の売上総利益率は60%程度である。それに対して、一般的なスポーツジムを運営しているセントラルスポーツ株式会社(東証1部 4801)または株式会社ルネサンス(東証1部 2378)の売上総利益率は15%程度である。
RIZAPボディメイク事業は一般的なスポーツジムと比較して売上総利益率が高い。その一方で、テレビCMなど様々な媒体で、有名タレントを用いた広告によって集客をしているため、多額の広告宣伝費を投じており、一般的なスポーツジムと比較して販管費率も高い。そのため、RIZAPボディメイク事業は広告宣伝費の使い方とその反響次第で営業利益が変動しやすい収益構造であるとSR社は認識している。
2018年3月期のRIZAP株式会社の決算公告によれば、販売費及び一般管理費は13,292百万円、売上高販管費率は52.2%であった。
パーソナルトレーニングジムを運営しているトゥエンティーフォーセブン社でも販管費率は44.2%(2019年11月期)であり、そのうち53%を広告宣伝費が占めていた(2020年11月期は新型コロナウイルス感染症の影響から売上高が減少し、販管費率は66.3%、広告宣伝費の比率は58%となった)。それに対して、一般的なスポーツジムであるセントラルスポーツ社の販管費率は7.6%(2021年3月期)、ルネサンス社の販管費率は7.7%(2120年3月期)であった。
同社の連結決算の広告宣伝費および販売促進費から、主要上場子会社の広告宣伝費または販売促進費を差し引くと、2019年3月期は12,026百万円、2020年3月期は9,175百万円であった。SR社はこの大部分がRIZAP株式会社の広告宣伝費であったと考えている。
RIZAPボディメイク事業の関連市場
フィットネスクラブ市場
経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」によれば、2020年のフィットネスクラブの売上高(7割程度をカバーする売上高上位の企業)は223,517百万円(前年比33.2%減)であった。市場は長期的に増加傾向にあり、過去10年(2010年から2020年の間)の年平均成長率は-2.8%であった。会員数は2.6百万人で、過去10年の年平均成長率は-1.0%であった。会員1人当たり売上高は86千円(前年は100千円)で、ほぼ横ばいの推移となっている。
後述の通り、フィットネスクラブ上位10社の合計売上高は320,000百万円(2015年度)を超えており、フィットネスクラブの運営は大手企業中心となっている。
RIZAPボディメイク事業の同業他社
RIZAPボディメイク事業の同業他社としては、パーソナルトレーニングでは株式会社トゥエンティーフォーセブン(マザーズ7074)があげられる。また、スポーツジムではコナミスポーツ株式会社(コナミホールディングス株式会社の子会社)、セントラルスポーツ株式会社、株式会社ルネサンスなどがある。
40代および50代が39%
(前期比25.9%減)
(前期比32.5%減)
(前期比32.9%減)
(前期は57.1%)
(前期は14.1%)
(前期は13.2%)
(前期は44.2%)
(前期は6.9%)
(前期は5.9%)
(前期は営業利益992百万円)
(前期比77.0%減)
(前期は営業利益3,318百万円)
(前期は12.9%)
(前期は6.3%)
(前期は7.3%)
*実績の決算期は、RIZAPボディメイク事業は2021年3月期、トゥエンティーフォーセブンは2020年11月期、セントラルスポーツおよびルネサンスは2021年3月期の実績。
株式会社トゥエンティーフォーセブン(東証マザーズ 7074)
トゥエンティーフォーセブンはパーソナルトレーニングジム「24/7Workout」(2021年5月現在67店舗)およびパーソナル英会話スクール「24/7English」(同5店舗)を運営している。
パーソナルトレーニングジム「24/7Workout」は、完全個室で会員ごとにカスタマイズした個別トレーニングを提供し、食事指導、モチベーションのケアも行うことで、最短2ヵ月で理想の体型に導くという。食事指導に関しては、RIZAPは申し込み後の食事指導に加え、食事毎に顧客からの報告とそれに対するトレーナーのアドバイスがあるが、「24/7Workout」では申し込み後に食事指導を行い、以降の食事管理は顧客に委ねる点が異なる。入会金は38,000円、月(8回)98,000円(1回当たり12,250円)、1コース75分であり、RIZAPと同様のサービスをより低価格で提供している。累計会員数は61,000名超(2019年9月現在)であるという。
セントラルスポーツ株式会社(東証1部 4801)
東京オリンピック出場者が集まり、水泳と体操選手の育成を目的として1970年に設立。複数の水泳および体操のオリンピック選手を輩出している。国内ではじめてフィットネスクラブを開設し、業界2位の売上高である。