同社によれば、店舗あたり出店費用は40百万円程度で、店舗はパートおよびアルバイト中心の運営体制を構築しているという。出店数の制約は金額または人材ではなく、出店候補地の有無による。同社は100円ショップの商圏を1店舗当たり人口2万人と考えており、2021年5月現在、大手4社で約8,000店(大創産業約3,600店、同社約1,800店、キャンドゥ社約1,120店、ワッツ社約1,330店)の店舗数は飽和状態であると見做している。ただし、同社については他社のシェアを獲得することで成長が可能であるという。2004年のPOSシステム導入と2006年の発注支援システム導入、2009年3月期以降の新店舗Color the daysの展開によって、同社は同業他社を上回る1店舗あたり売上を達成・維持している(同社の2021年3月期における1店舗あたり売上高は117百万円、キャンドゥ社の2020年11月期における店舗あたり売上高は88百万円、ワッツ社の2020年8月期における店舗あたり売上高は39百万円)。その結果、同社は2014年3月期以降、商業集積施設を中心に、同業他社の契約切れ後の出店要請が増加傾向にあるとしている。
同社は、POSシステムと発注支援システムの導入によって、2010年代に客数、1店舗あたり売上高が増加した。また、2007年に商業集積施設の来店客にあわせた店舗Color the daysを開発し、2009年3月期以降にColor the daysの店舗展開を本格化した。その結果、2021年5月現在、同業他社を上回る店舗あたり売上高を達成・維持している(「同業他社」の項参照)。
同社は2009年3月期から本格的にColor the daysへの切り替えを始めており、2021年5月現在、新規出店はColor the daysを中心に進めている。一方、Color the days以外の店舗は退店によって、店舗数が減少傾向にある。Color the daysでは従来の100円ショップのイメージからの脱却を掲げ、女性視点の内装、商品陳列を施し、女性の支持が高い商品の構成比を増加させている。インテリア、ガーデニング、ラッピング、手芸、料理レシピなど、様々な提案も行っている。
同社がColor the daysの開発、展開を進めた背景には、100円ショップに来店する顧客の消費行動が、かつての衝動買いから目的買いに変化していることをPOSシステムのデータから把握したためである。この変化に対応するために、品揃えの点では発注支援システムの導入を進め、店舗についても従来型の100円ショップにみられた圧縮陳列を見直し、目的の商品を探しやすい店舗を設計した。
要約
概要
同社はメーカーから商品を仕入れ、全商品を100円均一で販売する100円ショップを全国で運営している。2021年3月末現在、店舗数は直営店1,742店(前期は1,633店)、FC45店(同46店)である。同社の特徴は、POSデータを活用し、体系的に商品の発注・在庫管理を行っていることにある。これによって、同社は同業他社比で高い1店舗あたり売上高、売上総利益率、営業利益率を実現している。同社はPOSデータをベースとした独自開発の発注支援システムを活用しており、その効果が発現し始めた2009年3月期から2021年3月期において、売上高で平均年率9.4%成長、営業利益で同24.4%成長であった(同期間において株式会社キャンドゥ(東証1部2698)は売上高が同1.2%成長、営業利益が同14.2%成長。株式会社ワッツ(東証1部2735)は売上高が同4.0%成長、営業利益が同4.5%成長であった)。
同社は2000年代前半において、100円業界では第3位で経営難の状態にあった。当時の100円ショップ業態では最大手の株式会社大創産業を中心に、販売商品の多様化(大創産業社の商品数は9万点であった)、店舗従業員の勘と経験に頼った発注・在庫管理、圧縮陳列を是としていた。2003年に創業者の甥にあたる現社長河合映治氏が同社に入社し、常務に就任。株式会社大垣共立銀行(東証1部8361)にて統計的手法に基づくシステム構築業務を経験していた同氏が中心となって、2004年以降にデータ活用をもとに変革を推進した。2004年に同業他社に先駆けてPOSシステム導入、2006年に独自の発注支援システム導入、2007年に新デザインの店舗を開発し、客観的なデータ分析に基づく商品の発注・管理の推進、商品入れ替え、顧客の目的買いに対応した空間にゆとりある店舗、女性視点の品揃えを進めた。その結果、同社は同業他社を上回る業績成長を達成している。
同社は単独決算であり、2021年3月期において、直営店の売上高構成比は98.4%(前期は98.3%)であった。直営店売上高は店舗数に1店舗あたり売上高を乗じた金額となる。店舗数は前述の通り1,742店(同1,633店)、1店舗あたり売上高は117百万円(同112百万円)であった。中長期的には既存店売上高は固定客の増加、他社固定客の移行などによって増加する傾向がある。
売上総利益率は43.3%(2021年3月期)で、部門別売上高では直営店の売上高構成比、商品別売上高では雑貨の売上高構成比の上昇によって上昇傾向にある。また、為替レート変動による仕入価格の減少/増加などによって上昇/低下する。2011年3月期から2021年3月期で、売上高総利益率は41.0%から43.3%に上昇した。
販管費は、給料及び手当および地代家賃が中心で、売上高より店舗数に応じて変動する。よって、1店舗あたり売上高の増加は販管費率の低下、営業利益率の上昇につながる。
業績動向
2022年3月期は、売上高208,084百万円(前期比3.7%増)、営業利益20,918百万円(同1.7%減)、経常利益21,347百万円(同0.0%減)、当期純利益は14,301百万円(同2.9%減)であった。店舗数の増加によって増収となったが、直営既存店売上高が前期比2.1%減となったことから営業利益以下の各利益は減益となった。
2023年3月期の会社予想は、売上高216,800百万円(前期比4.2%増)、営業利益17,500百万円(同16.3%減)、経常利益17,500百万円(同18.0%減)、当期純利益11,900百万円(同16.8%減)を見込む。巣ごもり需要の反動減と消費マインドの悪化を見込み、会社予想の前提として、既存店売上高を前期比1.8%減(上期は前期比3.0%減、下期は前期比0.7%減)とする。
中期では、出店による店舗数増加と既存店売上高の増加によって、10%前後の売上・利益の成長継続が可能であるとSR社は予想している。
同社の強みと弱み
SR社では、同社の強みを、独自のアルゴリズムを活用した発注システムによる在庫管理、機会損失低減、品揃え、洗練された店舗による高い集客力が作り出す好循環、出店機会を逃さないための十分な投資余力の3点だと考えている。一方、弱みは、他業態との競争激化、成長戦略が同一業態内のシェア獲得競争に終始していること、同業他社に劣後する店舗立地の3点だと考えている。(後述の「SW(Strengths & Weaknesses)分析」の項参照)
主要経営指標の推移
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
直近更新内容
2022年4月の月次売上高発表
株式会社セリアは2022年4月の月次売上高を発表した。
(月次売上高へのリンクはこちら)
自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による 自己株式の買付けに関して発表
株式会社セリアは、自己株式の取得および自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による 自己株式の買付けに関して発表した。
(リリース文へのリンクはこちら)
取得の内容
業績動向
四半期業績動向
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
*同社の決算期との比較のために、四半期累計は四半期(3ヵ月)の業績をもとに3月から翌年2月の累計を計算している。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
同社の決算期との比較のために、四半期累計は四半期(3ヵ月)の業績をもとに3月から翌年2月の累計を計算している。
*前年同月比既存店売上高3ヵ月分の単純平均を四半期の前年同期比既存店売上高としている。
*決算期の違いからキャンドゥおよびワッツは同社と1ヵ月分のずれがある。例えば、同社の4-6月とキャンドゥおよびワッツの3-5月の実績を比較している。
2022年3月期通期実績
同社の取り組み
同社は、「100円ショップとしての魅力を追求する」をテーマとして以下の施策を実施した。
顧客層拡大を狙いとした商品開発のための体制強化策として、前期における大阪市のサテライトオフィス開設に続き、情報収集を目的として東京サテライトオフィスを開設し、商品部スタッフを配置した。
複数出店案件が見込める企業との関係強化および未出店地域の重点開拓を実施した。
システムを活用した社内全体の効率化追求に取り組んだ。セルフレジについては、2021年7月において後継機種を決定し、導入を再開した。当第4四半期(2022年1-3月)において127店舗に導入し、設置店舗数は258店舗となった。導入済み店舗においては、取扱カード種類の追加等の施策によって利用率が上昇傾向で推移した。
出退店、店舗数の推移、直営既存店売上高の状況
出退店については、採算性を精査しつつ前向きに進め、2022年3月期通期において、直営店は出店が137店舗(前期は141店舗)、退店が46店舗(同32店舗)であった。FC店舗は出店が1店(同0店舗)、退店が3店舗(同1店舗)となった。当期末の店舗数は、直営店1,833店(前期は1,742店)、FC店43店(同45店)の合計1,876店(同1,787店)となった。
直営既存店売上高は前期比2.1%減となった。前期の緊急事態宣言の発令による店舗休業による売上減および宣言解除による売上増の反動があったものの、2021年末および2022年バレンタイン商戦の繁忙期に降雪の影響を受けた。
実績についての説明
売上高は208,087百万円(前期比3.7%増)となった。
事業部門別売上高では、直営店売上高が205,110百万円(前期比3.8%増)となり、売上高構成比は前期比で0.2ポイント上昇の98.6%となった。FC売上高は2,076百万円(同9.3%減)となり、売上高構成比は前期比で0.1ポイント低下の1.0%となった。
商品区分別売上高では、雑貨の売上高が204,988百万円(前期比4.0%増)となり、売上高構成比は前期比で0.3ポイント上昇の98.5%となった。一方、菓子食品の売上高は2,886百万円(同17.2%減)となり、売上高構成比は前期比で0.4ポイント低下の1.4%となった。
売上総利益は90,262百万円(前期比3.8%増)、売上総利益率は43.4%(同0.0ポイント上昇)となった。売上総利益率の上昇は、相対的に売上総利益率の高い雑貨の売上高構成比が上昇したことによる。
販売費及び一般管理費は69,344百万円(同5.5%増)となった。販管費率は、前期比で0.6ポイント上昇の33.3%となった。
以上の結果、営業利益は20,918百万円(同1.7%減)、経常利益は21,347百万円(同0.0%減)、当期純利益は14,301百万円(同2.9%減)となった。
今期会社予想
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
2023年3月期通期会社予想
2023年3月期の会社予想は、売上高216,800百万円(前期比4.2%増)、営業利益17,500百万円(同16.3%減)、経常利益17,500百万円(同18.0%減)、当期純利益11,900百万円(同16.8%減)を見込む。巣ごもり需要の反動減と消費マインドの悪化を見込み、会社予想の前提として、既存店売上高を前期比1.8%減(上期は前期比3.0%減、下期は前期比0.7%減)とする。
出退店については、直営店は出店が150店舗(前期は137店舗)、退店が40店舗(同46店舗)、FC店舗は出店が0店(同1店舗)、退店が1店舗(同3店舗)を見込む。
中長期展望
中長期的な会社の経営戦略
同社は、中期3ヵ年経営計画を策定し、毎年見直しを行っている。ただし、計数目標は公表していない。
売上高は店舗数増加と既存店売上高増加によって、年平均では10%前後の成長が可能
SR社では、同社の出店戦略、売上総利益率の上昇余地に着目し、中期的に平均年率10%前後の利益成長が可能であると予想している。
出店戦略:直営店数は年間100から150店の純増見込み
出店戦略について、同社は2021年3月期の直営店数1,742店(前期比109店純増、6.7%増)に対し、2021年3月期以降、年150~200店の出店を目途としている。退店は年50店舗程度で推移する予定である。なお、2022年3月期は直営店150店の出店、38店の退店、純増112店を計画している。
同社によれば、店舗あたり出店費用は40百万円程度で、店舗はパートおよびアルバイト中心の運営体制を構築しているという。出店数の制約は金額または人材ではなく、出店候補地の有無による。同社は100円ショップの商圏を1店舗当たり人口2万人と考えており、2021年5月現在、大手4社で約8,000店(大創産業約3,600店、同社約1,800店、キャンドゥ社約1,120店、ワッツ社約1,330店)の店舗数は飽和状態であると見做している。ただし、同社については他社のシェアを獲得することで成長が可能であるという。2004年のPOSシステム導入と2006年の発注支援システム導入、2009年3月期以降の新店舗Color the daysの展開によって、同社は同業他社を上回る1店舗あたり売上を達成・維持している(同社の2021年3月期における1店舗あたり売上高は117百万円、キャンドゥ社の2020年11月期における店舗あたり売上高は88百万円、ワッツ社の2020年8月期における店舗あたり売上高は39百万円)。その結果、同社は2014年3月期以降、商業集積施設を中心に、同業他社の契約切れ後の出店要請が増加傾向にあるとしている。
2021年5月時点において、同社は年間150店舗程度の出店ペースを見込んでいるという。同社によれば、賃借人である商業集積施設は、同業他社の既存店舗との契約終了時に、賃料の引き上げを条件とした更新または同社をはじめとした他の100円ショップへの変更を行うことが一般的であるが、最近は同業他社が賃料引き上げを受け入れるケースが多いという。そのため、既存の契約が更新されることが多く、100円ショップ間の移行ペースは緩やかに進んでいる模様である。
店舗あたり売上高、既存店前年比
同社の店舗あたり売上高(直営店売上高を直営店数の期首期末平均で除した数値)は、発注支援システムの効果が発現し始めた2009年3月期から2020年3月期では、平均年率3.1%のペースで増加した。また、同期間における既存店売上前年比の平均は年1.8%増であった。
同社では既存店売上高は前年比プラスで推移することが多い。その理由としては、新店舗開店以降に定期的に同社の店舗に来客する固定客が期間経過に伴い積み上がること、同社は商品在庫管理・品揃えの点で同業他社より優れていることから、他社店舗の固定客を徐々に奪うことがあげられるという。2011年3月の東日本大震災直後の需要変化、2014年4月の消費税率引き上げの際にも、欠品を起こさずに需要の変化に対応したことが、その後の客数増加につながっているとしている。同業他社に対する同社の競争力は、独自の発注支援システムに基づく在庫管理および品揃えにあり、同業他社は真似できないとSR社は考える。
利益面では、売上高成長と売上利益率の上昇、販管費率の低下が期待できよう
中期的に同社の利益成長は平均すると年率10%前後が見込まれるとSR社は推測している。上述の通り、出店と既存店売上高の増加に伴う増収が見込まれる。売上総利益率の改善余地は限定的ではあるものの、販管費率の低下によって営業利益率が上昇する可能性がある。同社の販管費の大部分は店舗数に連動する固定費であり、既存店売上高が増加することによって販管費率が低下する構造となっている。
ただし、同社は中期的に同業他社から市場シェアを奪取する意向であり、同業他社の淘汰を促すため、戦略的に利益率向上を抑制し、利益率の上昇余地を商品またはサービスの向上に配分する可能性もあるとSR社は考えている。その場合には利益率は維持されることになるであろう。
売上総利益率は上昇余地があるものの限定的
売上総利益について、過去10期間では、部門別売上高では直営店の売上高構成比の上昇、商品別売上高では雑貨の売上高構成比の上昇が、利益率の上昇に寄与した。SR社では、直営店とFC店の売上総利益率の差または雑貨と菓子食品の売上総利益率の差はともに約20%であると推定している。よって、理論的には直営店、雑貨ともに売上高構成比1%の変動は売上総利益率0.2%の変動要因になる。
2011年3月期から2021年3月期の業績推移では、直営店の売上構成比は94.3%から98.4%に、雑貨の売上構成比は90.0%から98.2%に上昇した。その結果、売上総利益率は41.0%から43.3%まで上昇した。2021年3月期末で、直営店の売上高構成は98.4%、雑貨の売上高構成比は98.2%であり、上昇余地があるものの限定的といえよう。
販管費は半分以上が店舗数連動であり、既存店売上高増加による販管費率低下が見込まれる
販売費及び一般管理費は、人件費(2020年3月期販管費の41.9%)、地代家賃(同33.1%)が主な費用項目であるその他に、減価償却費(同5.9%)、水道光熱費(同4.7%)、荷造運搬費(同3.4%)が続く。このうち人件費、地代家賃、減価償却費、および水道光熱費の大部分は店舗数に連動する費用であり、SR社では販管費の60~70%が店舗数に応じて変動する費用であると推測している。
1店舗あたり売上高が増加しても、これらの費用は増加せず、販管費率の低下を通じて営業利益率が上昇する。例えば、販管費率33%、うち店舗連動費用が販管費の70%を占めるという条件で、既存店売上高が1%上昇し、他の条件が一定であれば、営業利益率は0.23%上昇する計算になる。
上述の通り、同社の既存店売上高は増加する傾向があり、販管費率は中期的には低下が見込まれる。
一方、アルバイト・パートの時給の変動は人件費の変動要因となる。下表は株式会社リクルートジョブズ「アルバイト・パート募集時平均時給調査」をもとにSR社が年平均の時給を計算したものである。2015年以降、三大都市圏の平均時給は上昇が続いている。同社は店舗オペレーションの効率化を推進し、店舗人件費の増加を抑える方針である。
その他:中期では海外展開には消極的
100円ショップ業態のなかでは、最大手の大創産業社が積極的に海外展開を進めている。店舗数5,892店(2021年2月現在)のうち、海外店舗が2,272店であり、24の国と地域に進出している。それに対して、同社の海外売上高は2021年3月期で654百万円(前期比19.7%減)と売上高構成比0.3%に過ぎず、前期比で減少している。同社は中期的にも日本市場における成長機会が十分にあると考えており、海外展開には消極的である。
その他:100円均一以外の商品投入はしない方針である
同社を除く100円ショップ大手3社では、100円ショップ内の300円商品コーナー設置や300円均一店の展開など、100円以外の高額商品ラインナップの拡充も進めている。2021年5月現在、同社は100円均一店のみを継続する方針である。同社によれば、100円ショップとしての成長余地が十分にあり、また、消費者にとってセリアでは全品100円で買い物ができるという安心感が、同業他社に対する差別化要因になると考えているという。
財務戦略
同社の貸借対照表の特徴として、現金及び預金の保有高が多いことがあげられる。2021年3月期において、現金及び預金は53,593百万円で総資産の46%を占めている。
現金及び預金の主な使途としては、出店に伴う支出がある。同社によれば、1店舗あたりの出店に必要な投資額は40百万円程度であり、2022年3月期会社予想の出店ペース年150店程度を基準にすれば、6,000百万円程度の現金支出、出店ペース200店を基準としても、8,000百万円の現金支出となる。同社では急激な環境の変化による出店の機会を逃すことがないよう、出店資金を準備しているとしている。
M&Aは成長への必要性が乏しいという考え
上述の通り、同社は同業他社のシェアを奪う形で成長が可能であり、M&Aによる成長は考えていないという。仮に、同社が同業他社をM&Aで取得した場合、スケールメリットを得るスピードを上げられる可能性はあるが、技術等の相互補完は見出しにくい。逆に同社が同業他社と合併した場合に、店舗の改装、従業員の再教育、商品の入れ替え、商圏が重複する店舗の整理が必要であり、金額および業務の負担が増すことになるであろう。
事業内容
ビジネスモデル
主要収益源:日本全国で直営店を中心に100円ショップを運営、直営店売上高は全売上高の98.4%
同社は全商品を100円均一で販売する100円ショップを日本全国で運営している。店舗は直営が中心だが、FC店への商品の卸売販売、大口顧客への商品販売も行っている。直営店舗における商品販売収益が同社の主要収益源である。2021年3月期において、直営店売上高は全売上高の98.4%(前期は98.3%)を占めた。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
商品
雑貨を中心に2万点の商品を販売
同社が販売している商品は、下表の通り、雑貨(2021年3月期売上高構成比98.2%)、菓子食品(同1.7%)で、取扱商品数は約2万点、1店当たりの平均的な商品数は1.5万点である。菓子食品の売上高構成比は同業他社と比較して低水準となっている。同社ではこれらの商品のうち月400~600点、年6,000点程度を入れ替えている。売れ筋商品は、キッチンの水切りネット、乾電池などであるという。同社によれば、売れ筋商品は1万人の来店客に対して10個か20個売れるものであり、大半の商品は1万人の来店客に対して4個か5個しか売れないという。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
雑貨の売上高構成比が高く、上昇傾向にある
商品に関して、大半は一般に流通している商品であり、仕入先メーカーは同業他社と大きくは変わらない。商品別売上高の区分では、雑貨の売上高構成比が上昇傾向、菓子食品の売上高構成比が低下傾向にある。菓子食品は、一般的に集客効果が高いと考えられている一方、雑貨と比較して売上総利益率が低い。同社では独自開発の発注支援システムによって、店舗売上への影響を管理しながら菓子食品から雑貨への入れ替えを進めた結果、菓子食品の売上高構成比は低減している。その成果として、全体の売上総利益率向上に成功している。
プライベートブランド商品と専売商品
同社では、プライベートブランド商品が商品数の10%程度を占めている。プライベートブランド商品は、同社店舗とのマッチングを意識した定番商品が中心であり、利益率向上よりはブランディングの役割を狙っている。また、商品数の30%程度は専売商品(メーカー商品であるが同社のみで販売している製品)である。
商品の仕入先は180社程度
仕入先は約180社で、主な取引企業は、レック株式会社(東証1部7874)、エコー金属株式会社(非上場、家庭日用雑貨、DIY用品などを100円ショップ向けに販売)、サンノート株式会社(非上場、100円ショップ向けに紙製品、ファイル、筆記用具などを販売)、協和紙工株式会社(非上場、紙製品の製造販売)などである。
店舗の状況:直営店中心に全1,787店、商業集積施設向け店舗「Color the days」が半分を超える
店舗数は全1,787店(直営店1,742店、FC45店)、直営店は賃貸により出店している。直営店の1店舗あたりの面積は574㎡(174坪)(2020年3月期有価証券報告書「主要設備の状況」をもとにSR社算出)、1店舗当たり売上高は117百万円(2021年3月期における直営店売上高/直営店数の期首期末平均)。
同社は2006年以降に直営店に対して発注支援システムの導入、発注・在庫管理を進めた。そのため、同社の管理が及ばないFC店との取引は減少傾向にあり、FC店舗数は減少が続いている。
店舗形態
店舗形態は商業集積施設などのインショップ型と道路沿いのロードサイド型があるが、インショップ型の方が集客力は高い。同社は常設店舗の100円ショップの設立が同業他社より遅れたことから、2000年代前半は相対的に集客力が高いインショップ型の出店余地が限られ、ロードサイド型の出店が中心であった。しかし、2000年代後半以降の業績回復の結果、同業他社を上回る1店舗あたり売上高、集客力が商業集積施設から評価され、2014年3月期前後からは、同業他社の契約切れに伴う商業集積施設からの出店要請が増加しているという。
同社は、POSシステムと発注支援システムの導入によって、2010年代に客数、1店舗あたり売上高が増加した。また、2007年に商業集積施設の来店客にあわせた店舗Color the daysを開発し、2009年3月期以降にColor the daysの店舗展開を本格化した。その結果、2021年5月現在、同業他社を上回る店舗あたり売上高を達成・維持している(「同業他社」の項参照)。
一般的に、商業集積施設としては、同一業態内の企業の中で、歩合制賃料の増加が見込まれ、集客効果が高い店を誘致する。商業集積施設において、各業態の一番手企業の組み合わせと二番手以下の企業の組み合わせを比較した場合、その相乗効果がもたらす来客数、売上高への影響は大きく異なる。一番手企業の集客効果が二番手企業の集客効果を1割上回っているとすれば、一番手企業同士2店舗の組み合わせは、二番手企業同士2店舗の組み合わせに対し、1.21倍の集客力を持つことになる。商業集積施設全体のテナントではこの相乗効果はさらに増大する。そのため、来客数、売上高などの点において業態内で優位な企業では出店機会が増加し、逆に劣位な企業では出店機会が減少する。上述の通り、同社では2014年3月期前後から、来客数の評価が高まり、同業他社の契約切れに伴う出店要請が増加傾向にあるという。
同社は2009年3月期から本格的にColor the daysへの切り替えを始めており、2021年5月現在、新規出店はColor the daysを中心に進めている。一方、Color the days以外の店舗は退店によって、店舗数が減少傾向にある。Color the daysでは従来の100円ショップのイメージからの脱却を掲げ、女性視点の内装、商品陳列を施し、女性の支持が高い商品の構成比を増加させている。インテリア、ガーデニング、ラッピング、手芸、料理レシピなど、様々な提案も行っている。
同社がColor the daysの開発、展開を進めた背景には、100円ショップに来店する顧客の消費行動が、かつての衝動買いから目的買いに変化していることをPOSシステムのデータから把握したためである。この変化に対応するために、品揃えの点では発注支援システムの導入を進め、店舗についても従来型の100円ショップにみられた圧縮陳列を見直し、目的の商品を探しやすい店舗を設計した。