同社は、世界中のNKGグループ技術者が相互に施術情報を交換・統合できる「NKG Global
Academy」という仕組みを構築し、大学などの外部研究機関との関係も形成・拡大していくことで、グループ全体の人材能力を底上げする体制を整備する。そのため同社は、デジタル情報基盤構築から、AI・ビッグデータ解析、仮想空間再現技術やそのプラットフォームの形成、情報発信のためのシステムなど、デジタルトランスフォーメーション(DX)技術を軸とした革新的な取り込みを推進する。また、人材の多様性を尊重し、従業員の健康・幸福を尊重したWell-being経営を推進し、サステナブルな経営を目指す。
要約
事業概要
日本工営株式会社(以下、同社)は、ダム、港湾、治山治水工事など社会資本の整備を行う国や地方公共団体、電力会社などの事業主に対し、企画立案、設計、調査、施工監理など土木建設に関するコンサルティングを行う企業である。コンサルティングの内容は、国家資格である「技術士」でなければできない技術的な提案や立案などから、発注業者に代わって必要な実地調査、測量や施工管理など、建設に係る専門領域に及ぶ。2017年6月期に初めて連結売上高100,000百万円を超え、経常利益は2018年6月期で6,000百万円台に乗った。2021年6月期より国際財務報告基準(IFRS)を適用。「日経コンストラクション」によれば、同社は国内の建設コンサルティング業界では売上高シェア第1位、また、所属数の多寡が受注の際に重要な要素になる技術士の有資格者数も業界第1位。米国業界誌「Engineering News Record」によれば、世界の建設コンサルティング業で売上高上位50社にランクされる唯一の日本企業で、手掛けた事業は世界160か国に及ぶ。
売上高の構成(2021年6月期実績117,859百万円)は、主力のコンサルティング事業が全体の68%(コンサルティング国内事業47%とコンサルティング海外事業同21%)。次いで電力エンジニアリング事業同13%、都市空間事業同17%、2018年6月期からの新規事業であるエネルギー事業他同1%。コンサルティング事業では、国内は国や地方自治体が発注する公共投資、海外では日本政府による開発援助(ODA)案件向けが主であり、いずれも安定した収益源である。電力エンジニアリング事業は、主に東京電力向けの変電設備の製造販売や、機電コンサルティング、電気設備の補強・補修に関する計画、調査、設計・施工等。都市空間事業は、2016年に買収した英国建築設計会社BDP HOLDINGS LTD(以下、BDP社)の建築設計を核とした事業で、ヨーロッパやアジア地域で公共建築物などを対象としたコンサルティングを行う。
同社は都市空間事業の新設により、コンサルティングの幅を従来の建設分野から建築分野にまで拡げた。さらに同社は、電力エンジニアリング事業から新たにエネルギー事業を派生させ、エネルギーマネジメント分野へと領域を拡大しつつある。同社は、事業領域の拡大と共に、事業展開の場を主にインフラ需要の旺盛な海外市場に位置づけ、特にインド、東南アジア諸国、中南米諸国などの新興国での受注を成長の柱として掲げている。同社は、コンサルティングの対象を土木建設から建築へと拡大させ、国内外でのコンサルティング実績に基づいた知見を背景に、海外の需要を取り込むことで持続的な成長を求める事業戦略を立てている。成長が期待される事業分野では、実際に、英国のウェストミンスター宮殿の改修事業、インドの鉄道インフラ事業といった大型案件を受注している。(同社は2022年6月期より、従来の5セグメントから3セグメントに集約する。)
業績動向
2021年6月期通期の業績(IFRS基準)は、売上収益117,859百万円(前年比8.7%増)、営業利益7,128百万円(同35.9%増)、税引前利益7,176百万円(同42.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益4,531百万円(同46.2%増)となった。受注高は、133,304百万円(同8.0%減)となった。受注高は、前年度にコンサルタント海外事業と電力エンジニアリング事業で大型の受注があった反動で減少した。売上収益は、新型コロナウイルス感染症の影響があるなか、エネルギーセグメント以外のすべてのセグメントで業務が進捗したことで増収となった。利益面では、生産性向上策や経費削減を行ったことで収益性が向上し、営業利益は同35.9%増となった。
2022年6月期の業績見通し(IFRS基準)は、第3四半期決算発表時に修正された。修正後の見通しは、売上収益131,000百万円(同11.1%増)、営業利益9,000百万円(同26.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益6,600百万円(同45.6%増)を想定している。受注高は130,000百万円(同2.5%減)を想定する(変更なし)。売上収益も変更なしだが、コンサルティング事業が1,000百万円上方修正する一方、エネルギー事業が同額下方修正となった。営業利益以下を上方修正した要因は、主力事業であるコンサルティング事業の海外部門において現地作業が好調に進捗し、渡航費等のコストが抑制傾向で推移したことや、連結子会社においても体質改善が順調に進捗したため。また、期初業績予想時の想定為替レートから円安が進んだことも、前回の予想を上回る背景となった。
2021年6月には、長期経営戦略「NKG グローバル戦略 2030」を策定した。最終年度となる2030年6月期の目標値として、売上高250,000百万円、営業利益率10%、ROE15%を掲げた。基本戦略は、1.事業区分の再編、ワンストップ体制構築、2.自立と連携の促進、3.NKGブランド、NKGクオリティの体現、の3点である。また、2021年8月13日付けで、「NKG グローバル戦略 2030」のもと、2021年7月から2024年6月までの期間をグループ強靭化に取り組む変革期と位置付け、中期経営計画「Building Resilience 2024」を策定した。重点ポイントを同社の強靭化(Building Resilience)とし、3事業ドメインでの自立成長、事業と地域のマトリクス経営、NKGブランドとNKGクオリティの確立と強靭化策を推進することでグローバル市場での事業拡大を目指す。最終年度となる2024年6月期に、売上収益155,000百万円、営業利益11,500百万円、営業利益率7%、ROE9%を目指す。
同社の強みと弱み
同社の強みとしては、1)公共投資案件の入札で重視される、国内最大手としての豊富な実績、2)業界最大級の基礎研究施設を背景とした、国内外での取得特許、実用新案権、意匠権などの技術力、3)充実した人財育成プログラムによる技術士資格者の確保、が挙げられる。一方、弱みとしては、1)公共投資への依存度が高く、国策に左右されやすいこと、2)施工分野を持たないため、デザインビルド(設計施工一体)型案件では受注競争力が低いこと、3)資産効率の低さ、と考えている。
主要経営指標の推移
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。**2013年6月期は決算期変更に伴い変則決算(3か月)
***2017年1月1日付で5:1の株式併合。1株当たりデータは調整済み。
****2021年6月期業績見通しは日本基準。
*****2020年12月14日発表の過年度修正分を反映
******2021年6月期第4四半期からIFRS基準に変更、以下同様。
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**2013年6月期は決算期変更に伴い3か月の変則決算。
***2021年6月期のその他の売上高予想は、エネルギー・不動産を含む
****2021年6月期の不動産賃貸の営業利益予想は、全社その他に含まれる
***** 2016年6月期にBDP社が連結子会社となり都市空間セグメントが追加された。(受注実績には4月1日時点のBDP社受注残高を表示)
******2017年6月期から受注高を新基準に変更。2016年6月の受注高は遡及開示(前年比は旧基準との比較)
*******2020年12月14日発表の過年度修正分を反映
********セグメント別営業利益は、会社決算短信コメントより。
*********2022年6月期より新セグメントでの開示となる。
直近更新内容
持株会社体制への移行準備開始および会社分割(簡易吸収分割)
日本工営株式会社は、持株会社体制への移行準備開始および会社分割(簡易吸収分割)に関して発表した。
(リリースへのリンクはこちら)
詳細はリリース参照。
栃木県小山市との「若木浄水場等更新整備及び維持管理事業」に関する事業契約
日本工営株式会社は、栃木県小山市との「若木浄水場等更新整備及び維持管理事業」に関する事業契約に関して発表した。
(リリースへのリンクはこちら)
同社は、東芝インフラシステムズ株式会社(株式会社東芝(東証1部、6502)の100%子会社)を代表とする民間企業グループの一員として、栃木県小山市との間で「若木浄水場等更新整備及び維持管理事業」(以下、「本事業」)に関する契約を締結した、と発表した。
本事業の内容は、若木浄水場の全面更新、羽川西浄水場の施設増強及び鶉島浄水場の設備修繕にかかる設計・建設事業及び市内の水道施設の運転管理。構成員は、代表企業である東芝インフラシステムズ社をはじめ、同社、株式会社クボタ(東証1部、6326)など計7社。本事業において同社は、民間企業グループの設計担当として、主に土木建築設計及び機械設備・電気設備を含む設計全体のとりまとめを担当する予定。事業規模は11,560百万円。事業期間等、詳細についてはリリース参照。
業績動向
四半期実績推移
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**2017年1月1日付で5:1の株式併合。1株当たりデータは調整済み。***2018年6月期から売上基準を完成基準から進行基準に変更
***2020年12月14日発表の過年度修正分を反映
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**セグメント別営業利益は決算短信コメントより
***2020年12月14日発表の過年度修正分を反映
****2021年6月期第3四半期までのIFRSは遡及修正値。
2022年6月期第3四半期累計実績(2022年5月13日発表)
業績概要
2022年6月期第3四半期累計(2021年7月~2022年3月)実績
経営環境
コンサルティング事業については、国内市場は、引き続き国土強靭化を中心に高水準の政府予算が確保され、デジタル改革の加速化やマネジメント事業への需要は高まっている。海外市場は、新型コロナウイルス感染症拡大による事業進捗への影響や渡航制限のリスクはあるものの、日本政府も「インフラシステム海外展開戦略2025」で高い受注目標を掲げており、同社も引き続き堅調な需要を見込んでいる。
都市空間事業については、国内および欧米等では都市構造の再構築、開発途上国では都市基盤整備を含む都市開発事業への需要が旺盛である。エネルギー事業については、国内では、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて新たな事業機会と競争が生まれており、世界全体では、再生可能エネルギー開発やエネルギー利用の効率化への需要が高まっている。
国際財務報告基準(IFRS)適用
同社は、2021年6月期第4四半期から、IFRSに準拠した連結財務諸表を開示した。同時に、前年同期実績もIFRSに準拠する遡及修正も行っている。なお同社は、IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」で、企業結合、在外営業活動体の換算差額、株式に基づく報酬、リース、借入コスト、以前に認識した金融商品の指定、の免除規定を適用している。
事業セグメント別状況
2022年6月期第3四半期累計セグメント別実績
コンサルティング事業
当事業では、DX推進による生産性の向上、収益管理・品質管理・リスク管理・安全管理の徹底を図った。また、防災・減災技術の高度化と世界展開、交通運輸関連事業の拡大、脱炭素に貢献するサービスの推進、マネジメント分野の本格展開にも取組んだ。
都市空間事業
当事業では、市街地開発やスマートシティ事業の推進とともに、英国市場の変化への対応、カナダ市場での事業拡大、グループ内協業によるアジア市場での事業拡大に取組んだ。
エネルギー事業
主力である電力機器ビジネスでは、生産体制の強化と新製品開発に取組んだ。再生可能エネルギーなどの発電事業においては、新規案件形成、エネルギーマネジメント事業においては欧州を中心とした蓄電池事業、および日本でのアグリゲーション事業(分散型エネルギー源を集約して電力市場取引等を通じてエネルギーサービスを提供する事業)の基盤形成に取組んだ。
その他
2022年6月期通期見通し
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
*表の数値が会社資料とは異なる場合があるが、四捨五入により生じた相違であることに留意。
**2020年12月14日発表の過年度修正分を反映
2022年6月期通期連結業績予想(IFRS基準)(2022年5月13日修正)
業期見通しの背景
営業利益以下を上方修正した要因は、主力事業であるコンサルティング事業の海外部門において現地作業が好調に進捗し、渡航費等のコストが抑制傾向で推移したことや、連結子会社においても体質改善が順調に進捗したため。また、期初業績予想時の想定為替レートから円安が進んだことも、前回の予想を上回る背景となった。
受注高は130,000百万円(同2.5%減)と、当初の想定から変更なし。コンサルティング事業においては、国内、海外の一体運営により生産性の向上を目指す。都市空間事業では、グループ会社との一体運営により、土木と建築の融合分野をメインフィールドとする事業基盤を形成する。また、エネルギー事業では、既存事業の価格競争力や生産体制の強化を図りつつ、再生エネルギー発電、蓄電池、アグリゲーション事業(分散型エネルギー源を集約して電力市場取引等を通じてエネルギーサービスを提供する事業)など成長領域での基盤構築を進める方針である。主要セグメント別の業績見通しは以下のとおり。
主要セグメント別見通し
コンサルティング事業(旧セグメント:コンサルタント国内、コンサルタント海外)
旧セグメント別の受注高見通しは、コンサルタント国内62,000百万円(同0.1%減)、コンサルタント海外33,000百万円(同7.6%減)。国内案件はほぼ前年度並み、海外案件は大型案件を考慮しない形で想定される案件を積上げた予想となっている。売上収益は豊富な受注残の消化に加え、海外事業の進捗が進んだことから上方修正となった。利益面では、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う渡航制限の緩和等で費用の反動増を見込み減益予想としていたが、海外事業の進捗で営業増益に修正した。
都市空間事業(セグメント名、事業内容は継続)
受注高については、前年度の公共案件やウエストミンスター改修案件の追加受注が好調に推移した反動減を想定している。売上収益については、受注残の消化で堅調に推移する見通し。ただし、利益面では、前回予想で、新型コロナウイルス感染症に関連してBDP社が2021年6月期に受けた補助金収入を当年度は想定していないことなどから営業利益は同33.8%の減益となる見通しとしていた。
エネルギー事業(旧セグメント:電力エンジニアリング、エネルギー)
旧セグメント別の受注高見通しは、電力エンジニアリングで当初の見込みより売上収益が減少する見込み。売上収益の減少に伴い、営業利益も下方修正された。
*2020年12月14日発表の過年度修正分を反映
中長期見通し
中期経営計画「NK-Innovation 2021」(2019年6月期~2021年6月期)振り返り
同社は2018年7月に、2019年6月期から2021年6月期までの中期経営計画(NK-Innovation 2021)を策定した。計画最終年度にあたる2021年6月期(IFRS基準に変更後)には、売上高140,000百万円、営業利益12,600百万円、営業利益率9.0%、ROE12.7%を目指す、としたが、策定期間中には新型コロナウイルス感染症拡大の影響などもあり、2021年6月期の実績は、売上高117,859百万円、営業利益7,128百万円、営業利益率6.0%、資産合計税引前利益率4.7%に終わった。
当初計画は未達成に終わったものの、前長期経営期間の6年間(2016年6月期~2021年6月期)で、売上高の規模は1.5倍に成長した。また、この期間に立ち上げた新規事業として、都市空間事業(2016年6月期にBDP社を完全子会社化したことにより、セグメントとして立ち上げ)、エネルギー事業(2019年6月期に新規立ち上げ)を挙げ、事業成長に貢献した。
成果と課題
同社は「NK-Innovation 2021」について、その成果と残した課題について、事業展開と企業運営の両面から以下のようにとらえている。
事業展開における成果としては、都市空間事業の拡大、コンサルティング事業での事業創生や海外展開を挙げている。都市空間事業に関しては、同社とBDP社のアジア都市開発案件の獲得や、土木技術と建築技術を融合したスマートシティ開発案件の獲得を目指した。成果としては、BDP社によるカナダQuadangle社のグループ化による英国以外の市場進出が可能となった。同社とBDP社との協業によるアジア市場開拓も途上ではあるが進行した。
課題として残ったのは、鉄道分野での生産性強化、エネルギー事業の確立である。鉄道分野は新興国にとっては重要な社会インフラであり、同社もこの分野においては、現地企業とのアライアンスや、リージョナルエンジニアの強化を通じ、プロジェクトマネージメント力の強化を目指した。しかしながら、大型案件を複数獲得したものの、要員不足が常態化した。また、エネルギー事業では、欧州を中心とした海外事業で、欧州に現地法人を設立したものの案件開発が遅延した。
企業運営面では、全セグメントのサービスを横断してソリューション提供すべく、顧客へのワンストップ提供を目指した営業本部体制の構築が進んだ。また、技術開発もテーマ集約で順調に進捗し、先端研究センターも新設したほか、グループガバナンスの強化として経営管理ガイドラインの制定やIFRS基準の適用なども行った。その一方で、2021年6月期には、事業管理面の問題から前年度の決算遡及訂正に至ったこともあり、同社では、引き続きガバナンスの強化を重視している。
長期経営計画「NKG グローバル戦略 2030」と、その遂行のための中期経営計画「Building Resilience 2024」策定
2022年6月期以降の長期経営戦略「NKG グローバル戦略 2030」を策定
先行発表された骨子(2021年6月期第2四半期決算発表時)
同社は、2021年6月期第2四半期決算発表後、2021年6月期で終了する現中期経営計画に続くものとして、10年スパンの長期経営戦略を策定し、2021年6月を目処にその内容に関して公表するとしていた(2021年2月18日付け決算説明会資料)。2030年は国連が採択したSDGsの目標年であり、日本のエネルギー基本計画(低炭素社会に向けたエネルギーミックス、再生エネルギーの活用)の目標年にも当たる。同社は、2020年6月期第2四半期決算発表時に、これを目指し、世界のトレンドを把握し、同社のミッション、事業戦略とターゲットを策定、その実現のための事業運営の仕組みなどの機能戦略に関する骨子をまず公表した。
骨子のポイントは以下の3点。最初の2点は、技術の革新と統合というコンセプト、残る1点は、新たな価値の提供、というコンセプトである。
(1)3つの事業ドメインの展開
従来より数多くの知見を培ってきた5つの事業群を3つに統合再編する。
コンサルティング事業は、現在のコンサルタント国内、海外両事業を統合、さらに中央研究所も取り込み、より機動的な事業として再編する計画。都市空間事業は土木と建築の融合、都市・地域再生事業の総合プロデューサーを目指す。電力・エネルギー事業は、現在の電力エンジニアリング事業とエネルギー事業を統一し、電力エネルギーに関するワンストップソリューションを提供する計画。
(2)ワンストップサービスの実現・機動的な事業運営
新ドメインのサービスを横断的に統合して提示できる営業体制を構築、幅広い社会ニーズに対応
(3)マネジメント分野への本格的展開
事業投資(PPP、PFI)、行政支援(PM、CM事業、海外ではプロジェクトマネジメントを総合的に進化)、データマネジメント各領域に進出(AI、ビックデータ技術とニーズ型研究開発による顧客ニーズ対応型の事業、今期よりグループ化しているジオプラン・ナムテック社のノウハウも活用)
計画の概要発表(2021年6月10日付け)
2021年6月に、正式に長期経営戦略の概要が発表された。ここでは、長期経営戦略の最終年度となる2030年6月期の数値目標は、売上高250,000百万円、営業利益率10%、ROE15%と明示した。
長期経営戦略は、国内外の環境変化*に対応した基盤強化と体制整備を継続することで、同社グループの企業価値向上を図る計画となっている。計画のコンセプトとして同社は、「共創。限界なき未来に挑む」を掲げている。同社グループでは、これまで培ってきた技術力・マネジメント力に新たな技術・知見を加え、持続可能な社会づくりに貢献することが使命と位置付けている。そのため、新たな価値を提供し続けるためには、社内外の多様なパートナーとの共創を通じ、知の探究、技術の革新と統合が重要と認識している。同社は、長期経営戦略に関しては、2021年6月期決算公表後に詳細な説明を行う予定としている。
基本戦略
1.事業区分の再編、ワンストップ体制構築:3つの事業ドメイン(コンサルティング、都市空間、エネルギー)での新展開、ワンストップサービスの実現と機動的な事業運営、事業マネジメント分野への本格展開、などに取り組む。
2.自立と連携の促進:自律と連携、意思決定の迅速化、多様性の共存のため純粋持株会社へ移行、事業と地域を両軸としたマトリクス経営の実施、などが主柱となっている。
3.NKGブランド、NKGクオリティの体現:技術戦略と連携した世界トップクラスの人財育成、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現化、などの施策を行う予定である。
新中期経営計画「Building Resilience 2024」
同社は、2021年8月13日付けで、長期経営戦略「NKG グローバル戦略 2030」を実現するための中期経営計画として、「Building Resilience 2024」を発表した。新たに発表された中期経営計画の最終年度となる2024年6月期に、売上高155,000百万円、営業利益11,500百万円、営業利益率7%、ROE9%を目指す。財務状態の健全性を確保するため、自己資本比率は40%を目処とし、安定的な配当と利益水準に応じた株主還元の充実のため配当性向30%を目処とする。
中期経営計画の対象期間は、2022年6月期から2024年6月期までの3か年。同社では、この期間をグループ強靭化に取り組む変革期と位置付け、この期間で行う具体的な施策を、中期経営計画「Building Resilience 2024」として公表した。重点ポイントを同社の強靭化(Building Resilience)とし、3つの強靭化策:(1)3事業ドメインでの自立成長、(2)事業と地域のマトリクス経営、(3)NKGブランドとNKGクオリティの確立を策定した。これらの強靭化策を推進することでグローバル市場での事業拡大を目指す。成長投資は、M&Aも含め3年間で約32,000百万円を計画している。
3つの強靭化策
強靭化策1「3事業ドメインでの自立成長」:コンサルティング事業
コンサルタント事業が置かれている市場環境は、国内では、国土強靭化5か年計画などを背景に、公共事業予算は拡大しており、2021年度の予算規模は約8.5兆円にのぼる。また、地方自治体でも、防災・減災対策や地域デジタル社会推進などの予算が増加している。海外では、日本政府が「インフラ海外展開戦略2025」の方針を発表しており、2025年34兆円のインフラ受注を目指している。
当事業の方向性としては、国内外のコンサルタント事業と同社中央研究所を一体化して機能させることにより、国際市場で技術と品質面での優位性を高める。具体的な強化内容は、防災・減災技術の高度化と世界展開、交通インフラ整備やスマートシティ構築のための交通運輸関連事業の拡大、地球温暖化対策として脱炭素に貢献する風力、小水力などのサービス推進、都市防災等に関するマネジメント分野への展開、などである。
強靭化策1「3事業ドメインでの自立成長」:都市空間事業
都市空間事業が置かれている市場環境は、国内では、公共、民間保有の建築物の改良や活用などの再生市場をはじめ、スマートシティやエリアマネジメント市場が拡大している。海外では、都市の人口集中により、交通関連施設の整備や付帯する周辺整備の市場が拡大している。
当事業の方向性としては、国内外での都市や地域の再生に対し総合プロデュースのビジネスを獲得するほか、セグメント内のグループ企業が一体となり、市街地開発やスマートシティの市場を新規に開拓する。具体的には、市街地の再開発事業でのワンストップサービス提供、脱炭素・安心安全を考慮したスマートシティの案件形成、BDP社の北米市場の拡大、都市マネジメント分野の本格展開などである。
強靭化策1「3事業ドメインでの自立成長」:エネルギー事業
エネルギー事業が置かれている市場環境は、国内では、2050年カーボンニュートラル目標により、再生エネルギーの主力電源化、水素活用、送配電網の整備、運用、電力取引市場の拡大などがある。また、電力の安定供給のために必要な既存設備の老朽化対策も必要となる。海外では、世界的に再生エネルギー市場が拡大する。
当事業の方向性としては、社内外との連携による蓄電池、アグリゲーション等の発電・エネルギーマネジメント事業展開のための基盤構築や、製造事業の安定化のための新製品の開発、コンサルティング・エンジニアリング事業の体制強化を図る。
*2023年6月期は、連結子会社の移管により、売上収益がコンサルティング事業で減少、都市空間で増加する計画。
強靭化策2「事業と地域のマトリクス経営」:組織戦略
同社は、2024年6月期を目処に純粋持株会社の設立を目指す。その目的は、同社グループで統一した意思決定の迅速化である。こうした組織体制の実現のため、中期経営計画では、事業と地域のマトリクス経営を実現するグループ体制の構築を目指す。マトリクス経営とは、同社の3つのセグメントによる事業軸と、注力する6地域(日本、東南アジア、南アジア、サブサハラアフリカ、欧州、米州)軸の2軸で、世界各地域単位の統括管理、運営の合理化・効率化を行う経営を指している。こうした体制を強化することで、各地域の社会問題やニーズに対し、迅速かつ最適な解説策を提案できる体制を作る計画である。
強靭化策2「事業と地域のマトリクス経営」:営業戦略
同社は、「Think Globally, Act Locally」を掲げ、世界水準の技術を駆使し世界の各地域における需要に対応する。そのため、同社グループの保有する技術(サービスや製品)の国内外での営業促進や、セグメントを横断する案件への対応を進め、ワンストップサービスの実現を目指す。世界各地域には、地域ごとに自律した運営拠点の整備を進める。
強靭化策3:NKGブランドとNKGクオリティの確立
同社は、世界中のNKGグループ技術者が相互に施術情報を交換・統合できる「NKG Global Academy」という仕組みを構築し、大学などの外部研究機関との関係も形成・拡大していくことで、グループ全体の人材能力を底上げする体制を整備する。そのため同社は、デジタル情報基盤構築から、AI・ビッグデータ解析、仮想空間再現技術やそのプラットフォームの形成、情報発信のためのシステムなど、デジタルトランスフォーメーション(DX)技術を軸とした革新的な取り込みを推進する。また、人材の多様性を尊重し、従業員の健康・幸福を尊重したWell-being経営を推進し、サステナブルな経営を目指す。
事業内容
ビジネスモデルの概要
ビジネスモデル:事業主に対し、立案から施工監理まで建設に係る分野の総合的な相談役(コンサルタント)
同社が示す事業領域は、国土・地域・都市整備事業の立案から構想・計画段階での検討業務、さらには地盤・地質調査や環境評価業務、設計業務、施工監理、維持管理業務を通じて、社会資本整備全体に携わる、としている。また、業務に関しては、顧客の要請を受け、社会資本を整備するうえでの真の課題は何かを把握し、第三者目線で各工程において実現に向けての最適解を導き出す、という姿勢を貫いている。
コンサルティングに係る報酬は、発注者、コンサルティング内容、事業規模等の諸条件により変動するが、同社によれば、概ね総工費に対し数パーセントとのことである。
セグメント別事業概要(2021年6月期までのセグメント分類による)
コンサルタント国内事業
全国の公共事業を手掛けた実績とコア技術力の強みを発揮する国内建設コンサルティング
当事業では、日本の国土交通省などの官庁や地方自治体などが発注する、社会資本の整備・維持、安全対策などの地域整備事業に対し、同社が計画立案や施工監理などに関するコンサルティングを行う。実際に計画が実行に移された後、施工はゼネコンなどの建設企業が行い、施工の進捗における監理監督は同社が行うこともある。このセグメントの売上高の大部分が、国や地方自治体の発注案件である。事業計画は全国各地で行われるため、同社は、日本国内の47都道府県に事業拠点を設置している。
主な事業領域は、水資源・河川、ダム・発電、都市・地域開発、交通運輸、防災、環境などである。各分野における業務内容は以下のとおりである。
水資源・河川:洪水の防御、水利用の効率化や水環境の改善、そして生活に欠かせない上下水道施設に関する技術サービスを提供。
ダム・発電:新規ダムの建設に対する技術提供、既設ダムの再開発、長寿命化に対する技術提供など、ダム事業に関わるすべての分野に対応。
都市・地域開発:地域開発調査、都市・地方計画に関わる政策の立案支援や、地盤・地質に関わる調査・解析・設計・施工監理などを実施。
交通運輸:道路、橋、空港など生活を支えるインフラの計画・調査・設計や、長寿命化、維持管理の効率化などの幅広いサービスを提供。
防災:国土保全や人々の安全・安心を実現するため、大規模地震・火山噴火、集中豪雨などさまざまな災害から社会を守る技術サービスを提供。
環境:“自然と調和・共生する社会”に向けて、大気環境、水環境、土壌環境や生物多様性を保全し、開発と環境の調和を図る事業に取り組む。
マネジメント:アセットマネジメントや官民連携(PPP)での技術マネジメントなど、行政・民間企業・市民が協力、連携する際のコンサルティングを行う。
公共工事の受注に当たっては、価格、技術力はもとより、その実績についても重視される。公共工事に係る建設コンサルタント業務等については、2009年3月に「建設コンサルタント業務等におけるプローザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン」が定められた。その後、関係規則の改定等を経て、2014年に「公共工事に関する調査・設計等の品質確保に資する技術者資格登録規程」が告示され、今日の登録制度が開始されている。公共工事の落札に関する国土交通省の基本的な考え方はこのようになっている。